番外編 ミラング共和国滅亡物語(216)~最終章 滅亡戦争(71)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。
その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。
一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。
その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。
一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。
その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。
それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。
その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。
ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。
そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。
一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。
数日後。
リース王国軍の右軍とミラング共和国軍は対峙する。
すでに、両者の戦闘は始まろうとしていた。
(…………………………我々が裏切れば、いつでも殺せるようにしているのであろう。ミラング共和国にはシエルマスという組織が存在すると噂されている。本当かどうかは分からないが―…。)
と、この兵士は思う。
この兵士は、クローデル領から派遣された領主の家系のかなり傍系の一人であるが―…。
そして、シエルマスが存在するという噂は、領主の館の中でも有名な話であり、聞いていないはずもない。シエルマスという存在がどれだけ強いのかというのは、噂の類でしかないが、かなりのものだと思っている。隙をなしに生きる人間なんてこの世にはいない以上、対処のしようがない。さらに、この兵士は自身の実力を自らが把握できる範囲でしっかりと理解しているため、シエルマスに自身の力のみで対抗できないと分かっている。暗殺系の力量はないのだから―…。
暗殺や暗躍に関する力量は、戦闘での兵士に求められる力とある程度は同じでも、違いはある。その違いのせいで、兵士に一般的に実力があったとしても、対抗することができないようになるのである。
気配を消され、隙を突くようなことをされてしまえば、どうしても何も対処することができずに、始末される未来しかない。それをも防げる力を手に入れるなら、グルゼンのような規格外の才能やそれに相当する力を身に付ける必要がある。天成獣の宿っている武器を手に入れて、扱えるようにする必要がある。
そのどれもを満たさないこの兵士は、何もすることができない。
怯えるしかない。
勝てるように努力をすればよいと言う者もいるだろうが、それで何とかなっているのは、その面での才能があり、それを生かすように適切な解を見つけ、実践しているにしか過ぎない。
人は、自らの力の全てを常時把握できているわけではないし、自分の能力を完全に理解しているわけじゃないし、完全に正しいと思える判断を下せているわけではないし、そう評価しているわけでもない。
だからこそ、才能の差、対応できない悲観さ、努力というものが報われないという結果が伴うこともあるのだ。要は、努力ではどうすることもできないということも存在するのだ。
ならば、人はなぜ、そのように他者や自分の中の努力という言葉をもとに、何かの物事を一生懸命にするのかと言われれば、まず、人は未来を完全に理解できないことにより、その未来が実現できると自らに暗示をかけ、信じ込んで実践することによって、それが確実に実現されることがあるからだ。要は、自らの示した方針に進み、その通りの結果を掘り当てるのがごとくのことを実現するのだ。
それを人々は、努力は実る、努力は実現するという言葉で表現し、他者にも同じことができると進める。時に強要という領域までのことをする。
成功が次も保障されているわけでもないのに、それを人は保証しようという、無責任なことを言い出すのだ。この世界に希望があるように、絶望もある。そのことを理解して欲しいし、こんなマイナスになるようなことも受け入れた上で、プラスの気持ちで捉えて生きていくしかない。思い込むというデメリットを伴いながら―…。
だからこそ、努力という言葉は、他者の勝手な思い込みを人々に無理矢理に植え付ける効果があり、その危険性を理解した上で、慎重に使っていくことが必要であり、称賛だけの素晴らしい意味だけをもった言葉ではないのだ。
さて、話も逸れたので、戻すことにする。
この兵士は、対峙しながらも、警戒しながらも、いつ、降伏しようかを考えるのだった。
そのために、自分の部下達には、降伏するまで生き残るように、ということをひっそりと伝えたのだ。
シエルマスに聞かれている可能性は十分にあるだろう。
恐怖でしかないが―…。
(できることをやるしかない。)
と、心の中で思う。
人は、このような場で自分の力以上に実力を発揮させることもあるが、そんなものはほとんどないし、狙って起こせるようなものでない以上、自らができることをやるしかない。それしかないのだ。
人という生き物は、完全に合理的で、最高に素晴らしい考えができるわけではないし、それを当てているかも、その時には分からないのだから―…。
だけど、最大限に動けたかどうかは後になって、ある程度の比較ができる段階や、いろんな可能性を考えられる状況となって初めて、判断することは可能であるし、その可能性を無視してはいけないし、それを過大に評価してもいけない。
大事なのは、冷静にその可能性を理解した上で、次にどのように行動すれば良いかを考えることだ。
物事には元々に善悪があるかどうかは主観的な判断によってなされる以上、ケースによる善悪もしっかりと考慮しないといけない。善悪は主観的である以上、自分の善悪の価値観が完全に正しいと思ってはいけない。それは、最悪の展開を招く可能性を含むものであるから―…。さらに、すべてのケースで正しく良い結果を導くわけではないのだから―…。
そして、両陣営は対峙しながら―…。
「我がミラング共和国軍の領域に侵入し、侵略しようとするとは、神をも畏れぬ行為だ!!! 我々の力によって、その野望を挫いてみせよう!!! リース王国軍の蛮族ども!!!」
と、ミラング共和国軍のファルケンシュタイロの側近の一人が言う。
この人物は煽るだけ煽れば、ここからすぐにでも離れるようにしている。
なぜなら、この場にいても、自分の命がリース王国軍によって奪われるだけであり、そんなことを望む気はない。こんなミラング共和国のために犠牲になるだけの存在の輩と同じ場所では―…。
それに、このファルケンシュタイロの側近の一人は、
(……逃げた後は、俺の部下を率いて、弱っているリース王国軍を攻撃して、勝利を収め、ファルケンシュタイロ様に褒められ、いつかはファルケンシュタイロ様の右腕と称される男となり、その後は、ミラング共和国軍の英雄を継ぐ者にでもなってやろうではないか。)
と、心の中で思う。
野望はしっかりと持っているし、自分ならそれができると思っている。
ミラング共和国軍の英雄を継ぐ者になれないという未来が完全に保障されていないということはない。ゆえに、なれる可能性も十分に存在するであろうが、その可能性はかなり低いと言ってもおかしくないし、自分が何を相手にしているのか、しっかりと重要なところを理解していないといけない。
それができているのか、今、試されようとしている。
「何も言う気がないのか!!! リース王国軍とは腑抜けの集まりなのだな!!! さあ、こっちは強いのだから―…。」
と、さらに、このファルケンシュタイロの側近は挑発する。
挑発しまくっている間に、アンバイドは前線にいながら―…。
(こいつの率いている周囲の兵のほとんどは戦意がない。こちらへの降伏を狙っているのは確かだな。それに加えて、挑発して煽っている奴は、戦いが始まるとすぐにでも逃げ出す気満々だな!!! 強そうに見えない上に、ここまでの自信。自分が助かる方法がある奴の目だ。なら―…、やることは決まっているな。)
と、心の中で冷静に分析する。
ファルケンシュタイロの側近がわざとリース王国軍を煽っているのは分かっている。
こんなことをすれば自らが標的になることぐらい分かっているだろうに―…。
そして、標的になることぐらいは想定しており、自らがこんなに煽ったとしても勝てる方法、いや、逃げ出せる方法を知っているからだ。その計画を事前にしておいておかしくもない。
さらに、周囲にいる兵の士気があまりにも低いことから、その兵を利用して、自分だけでも逃げ出し、その兵を犠牲に使うというわけだ。
(シエルマスなんて知ったことではないな。あんな雑魚―…。)
と、アンバイドは心の中で思う。
アンバイドは、シエルマスのことを知っている。
ミラング共和国の領土へと侵入する時に一回ほど、アンバイドが一人となったところを、襲ってきたのだ。狙いは分かっている。
アンバイドを始末することができれば、ミラング共和国の形成は一気に逆転ができるという頭がはたらいたのだろう。
同時に、アンバイドが伝説の傭兵であり、かなりの実力者であることも分かっているだろうに―…。だけど、始末すれば逆転できるプラスの要素に、マイナスの要素が重なる要因が起こった後に触れると、プラスへの執着はいっそうと強くなる。なぜなら、できたことを想像すれば良いし、できないという完全に否定される要素がないのだから―…。完全に不可能を証明するのは難しいし、できないものである。ゆえに、人は希望に縋ることができる。
その解決方法を見つけていなくても―…。
そして、シエルマスの一部はラウナンの命令を無視して、このような行動に出た。
ゆえに、アンバイドによって、あっさりと始末される運命を辿ったのだ。襲ったシエルマスの命は何も得ることのできない代償として―…。要は無駄死にである。
そして、シエルマスの情報は、アンバイドも知っている。
ミラング共和国の裏組織であり、政府と繋がっていて、今は、対外強硬派の中で裏の支配者として君臨していることも含めて―…。
だけど、アンバイドは天成獣の宿っている武器を扱い、かつ、その戦いにおいて伝説級の実力があるので、その隙を突くのはかなり難しいし、アンバイドも暗殺者から命を狙われたことは数えきれないほどにあるので、対処ぐらいには慣れている。
それに、暗殺者の考え方もある程度は分かっている。
だからこそ、安易にアンバイドを暗殺するなどという作戦をとってしまえば、こんなことになるということを示している。
そして、アンバイドは、ファルケンシュタイロの側近の一人で、煽っている兵士を見ながら、すぐにでも動き出す気にはなっていた。
「おい、攻めてこないのか!!! 攻めてこないのならこっちから攻めてきてやろう!!! クローデル領の兵士共、リース王国軍へと攻めろ!!!」
と、叫び出す。
煽ったのにリース王国軍の右軍が攻めてくることがなかったので、思い通りにならなかったこともあり、クローデル領の兵士を犠牲にして、自分がすぐにでも逃げることにしたのだ。クローデル領の兵士が攻めている間は、リース王国軍もそちらの方に目線がいくから、自身の方へとは向かわないだろう。
そう、思っていた。
だが―…。
「煽った奴が逃げようとするな!!!」
と、アンバイドは言う。
言い始める時には、アンバイドはこのファルケンシュタイロの側近の一人のいる場所へと向かい、長剣を用いて、その側近の体とその馬を上下真っ二つに斬るのであった。
その光景を見ていたクローデル領の兵士は、驚きをもって見るしかない。釘付けと言っても過言ではない。
今、目の前で起こっていることは、今までの人生の中で、見たこともないので、その衝撃に思考がぶっ飛んでしまっているのだ。
そんなクローデル領の兵士をよそに、アンバイドはすぐに距離を取りながら―…。
「俺の攻撃に一撃でも対応できない奴が煽るな。弱い奴ほど吠えて、人を煽るのだな。」
と、アンバイドは言う。
アンバイドにとって、弱い奴の名前は聞く価値もない。というか味方なら話は別だが、敵なので、そんな感じだ。
そして、ファルケンシュタイロの側近は、上半身が地面につくまでの間に、意識がなくなり、そのまま白くなり、この世での生を終えるのだった。
アンバイドの行動を見ていたクローデル領の兵士の中の代表は、
(あれが、アンバイドなのか―…。こんな相手に勝てる気がしない。降参するしかないだろ。)
と、心の中で思う。
アンバイドという人物が伝説の傭兵と言われるぐらいに実力がかなりのものであることは知っていたが、現実にこのようなシーンを見せられると、もう、戦意なんてあるはずも、湧くはずもない。
あるのは、こいつと戦っても無意味だという感情だけだ。
だからこそ、このクローデル領の兵士の率いているものとしての判断は決まっている。
白旗をあげ―…。
「降参する!!!」
と、宣言するのだった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(217)~最終章 滅亡戦争(72)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
クローデル領とファウンデーション領へのリース王国軍の進軍に関しては、区切りのいい場所で双方に話を移していく感じになりそうです。
そういう感じの方が、話を無理せずに書き続けられそうな感じがしましたので―…。
そして、明日は、カクヨムの方で投稿している『ウィザーズ コンダクター』の第10部の投稿が始まります。こちらは、前半はあまり大きな動きというものは少ないですが、中盤から後半にかけては大きな戦いになると思います。最後には「ざまぁ」を入れられたらと思います。まだ、第10部の執筆は終わっていないんですが(2024年3月27日の時点では)―…。
ということで、『水晶』、『ウィザーズ コンダクター』が読まれますように―…。
では―…。