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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
560/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(214)~最終章 滅亡戦争(69)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。


翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。


戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。

その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。


翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。


リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に

、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。


リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。

その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。


ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。

その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。

一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。

その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。

一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。

その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。

それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。

その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。


ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。

そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。


一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は―…。

 時は戻る。

 リース王国軍の左軍がオットルー領での戦闘を開始する前。

 場所は、クローデル領。

 そこには領主がおり、ファルケンシュタイロに関して、なるべく必要最低限しか協力する気はなかった。

 どっちが勝っても自身に恨まれないようにしないといけないという小国の悩みみたいなのが凝縮されている感じだ。

 クローデル領の領主は、今、ファルケンシュタイロと交渉していた。

 「マーゼル殿。ミラング共和国軍が敗退していることを感じていて、少ししか兵を出さないとは何事であろうか!!! ミラング共和国の領主の中で忠誠度が高いと評判であるはずなのに!!! 嘆かわしい!!!」

と、ファルケンシュタイロは怒りの感情をぶつける。

 ファルケンシュタイロがなぜ怒っているのか。剣幕な表情となっているのはなぜか。

 そんな質問を口に出していなくても、ファルケンシュタイロの表情に出ている顔がすべてを物語っている。

 それに気づかないマーゼルではない。

 「忠誠心はあります。だけど、リース王国軍には、あの伝説の傭兵とされるアンバイドがいるとのことで―…。彼を相手にするだけの実力者は、このクローデル領にはいません。領民を無駄死にさせるわけにはいかないのです。そんなことをしてしまえば、領民から恨まれてしまいます。反乱なんて勘弁です。どうか、どうか、ファルケンシュタイロ様、この人数でご勘弁ください。」

と、マーゼルは言う。

 マーゼルとしては、ファルケンシュタイロを怒らせたいわけではない。

 兎に角、今の状況を脱したいし、クローデル領の未来を考えれば、ここで多くの兵を出すのは危険でしかない。

 すでに、このクローデル領の領主マーゼルは、リース王国の王妃リーンウルネとは会談を済ませており、そこで、アンバイドがいるということを知らされてしまっている以上、アンバイドのいるリース王国軍と戦うのは得策ではないと判断しているのだ。

 真面な判断であり、アンバイドの情報を基にしているのが分かる。

 それをマーゼルは、ファルケンシュタイロに教える義理はないし、漏らす気もない。

 ファルケンシュタイロにその情報を漏らしてしまえば、シエルマスを呼ばれて殺されるかもしれない。そんなことは嫌だ。

 だからこそ、この場における嵐が過ぎ去るのを待つしかないのだ。

 その嵐は、ファルケンシュタイロであることに間違いはない。

 だけど、その嵐を満足させるだけのことができていないのが今のマーゼルなのである。

 「ご勘弁ください……だと…………。………………。」

 この間は恐怖でしかない。マーゼルにとっては―…。

 そのような恐怖の象徴となってしまっているファルケンシュタイロからすれば、満足できるものではない。今回のリース王国軍の右軍を抑えておくための兵が足りないのだ。それを補うためのクローデル領の領兵であるのだから―…。

 要は、クローデル領の領兵は、ミラング共和国軍のための捨て駒であり、リース王国軍の右軍との戦いでファルケンシュタイロ率いる軍の勝利のために、いくらでも犠牲になっても良いという存在でしかない。

 そんなことぐらい、マーゼルも分かっているし、そのクローデル領の兵を多く出すことによって、自領の兵に大きな損失になることも―…。リーンウルネの指摘に納得できるところがあるのだから―…。

 一方の意見だけを聞いて、他の意見を完全に聞かない、検討しない、真面に採用しない、採用しない理由を他の意見を発した側だけでなく、より多くの者が納得できるように言わない者、他の意見を排除する者にこのような臆病だと、弱気だと、思われる判断を下すことはできない。

 自分を大きく見せようとするだけにしか興味がなく、現実に起こるかもしれないというマイナスの想定をすることができず、現実に起こった自身の失敗を予想外という言葉で逃げようとするだけだ。

 現実に起こることにマイナスもプラスという主観的な判断とは関係ないので、臆病や弱気の判断も時に重要な要素となることは十分にある以上、それすらもできたうえで、何が必要かをしっかりと判断できるようにしないといけない。

 責任のある立場ほど、その気持ちは重要であったりする。

 楽観的な気持ちは必要であるが、悲観さも時に合わせておく必要もあるのだ。

 人間は、完璧な生き物になることができないのだから―…。

 そして、マーゼルは、この恐怖という嵐が過ぎ去るのを望みながら、ファルケンシュタイロはそのことを意に介することもないし、気づきもせずに言う。

 「ふざけるな!!! お前はそれでもミラング共和国の領内の領主か!!! 我々は、お前らの領土をあの悪でしかないリース王国軍の連中から守ってやっているのだ!!! なのに、お前はミラング共和国軍にばっかり頼って、自分からは何もしないのか!!! お前には、ミラング共和国軍を愛する気持ちはないのか!!! そんなものがミラング共和国の領内領主であるとは!!!」

と、ファルケンシュタイロは言いながら、さしている剣を鞘から引き抜き、構える。

 何をしようとしているのかマーゼルでも分かってしまう。

 「許されざることだ。ミラング共和国の精神に則り、ミラング共和国ではなく敵国に与するクローデル領の領主マーゼル、お前にはお前の死が相応しい罰だ。」

と、ファルケンシュタイロが続けて言うと、マーゼルへと斬りかかろうとする。

 ファルケンシュタイロにとっては、許されないことだ。

 そう、ミラング共和国のために、国民が自らを犠牲するのは当たり前のことであり、それはミラング共和国という素晴らしい国を愛しているからこそ、当たり前なのだ。そうでないとおかしいのだ。なぜなら、ミラング共和国軍のこれまでの戦の勝利は、ミラング共和国軍が強いということと、ミラング共和国の国民の誰もがこの国を愛してやまないからこそ、そこに現れる士気によってなされているのだ。

 そして、その軍を最高に指揮することができるのは、ファルケンシュタイロにおいて他にはいないし、他国より強いのはミラング共和国軍の中では自軍は当たり前なのだ。

 その軍に協力しないのは、ミラング共和国を滅ぼそうとしている敵国のスパイでしかない。

 ならば、そのような輩に思い知らせるために、スパイの奴らにミラング共和国を敵に回すとはどういうことかを教えるための見せしめをしないといけない。彼らは実際に、目の当たりにしなければ分からないのだ。

 だからこそ、それを示すために、ファルケンシュタイロ自身が動く。

 周囲から見れば、歪んだ感情でしかないが―…。

 その歪んだ感情は、権力などの力、周囲を圧するほどの力を得ると、とんでもない災厄と化し、人々に不幸をまき散らす。それに、災厄の本人は気づいていない。感情に他者があったとしても、それは自らの思い通りに動かすことの当たり前の駒でしかない。将棋だろうが、囲碁だろうが、チェスだろうが、いくらでも例にできるぐらいの駒だ。

 「お止めください、ファルケンシュタイロ様!!! 分かりましたから、分かりましたから!!! 領兵を派遣しますから!!!」

と、マーゼルは自らの命を請う。

 領主ではあるが、その前に一介の人間でしかない。

 自らの命が可愛いのだ。

 領主としてはあるまじき行為であるが、自らの家族のことを思えば、自らが生き残ることが大切である。武力でファルケンシュタイロには対抗できない。言葉も意味をなさない。

 ゆえに、差し出すしかない。自らの代わりとなる数多くの兵を―…。

 そのマーゼルの言葉を聞いたのか、ファルケンシュタイロは剣を鞘に収め、自らの言葉を発する。

 「最初からそうすれば良い。私の要望通りの数の兵を出せば良い。ミラング共和国は、お前らの命という礎によって栄えることができる。そう、お前らは、そのための駒でしかない。そして、約束を守れないというのであれば―…、分かっているよなぁ~。」

と。

 ファルケンシュタイロは脅迫する。

 自らが天成獣の宿っている武器を扱うことができ、さらには、元帥という軍の中でも最高の地位にあり、かつ、ミラング共和国の対外強硬派の幹部であり、ミラング共和国における英雄の称号を持つ存在なのだ。そのような存在に逆らうということは、ミラング共和国内の者にはできない。

 そして、少しだけ脅してあげれば、誰もがファルケンシュタイロのために、命を捧げて戦ってくれる。

 そのように、自身が思っているからこそ、それができるだけの力があると思っているからこそ、周囲に思わせているからこそ、このようなことができるのだ。横暴なことをも―…。

 他者の気持ちに配慮することができない者が周囲に益をおよぼさなければ、力の衰えとともにそいつに反抗する者を増やすだけだ。

 結局、ファルケンシュタイロは気づかない。

 自らを推し量ることができなくなってしまっているようだ。ラウナンや対外強硬派の幹部の連中に対する以外においては―…。

 「は……はい…………。」

と、マーゼルは動揺しながらも言う。

 だけど、心の中ではファルケンシュタイロへの恨みを増加させていた。

 (何が英雄だ!!! ふざけるな!!! もし、俺にファルケンシュタイロ(クソ英雄)よりも力があれば……、ここで叩き切ってやるのに―………。)

 マーゼルの弱さのせいだと責める者がいるかもしれないが、何でもかんでも努力をすれば解決できるという考えを抱く者は気をつけないといけない。

 努力で何でも解決できるのは幻想だ。

 ある程度正確に正しく言うのであれば、お前がしてきた努力というものは、自分以外との関係、つまり、環境や要素に反響を与えることがあり、その反響がお前が望むような効果となって現われたからこそ、解決されたと判断しているだけに過ぎない。

 要は、お前の努力がないわけではないが、それがすべてではないということだ。

 そのことを勘違いした者が自信を持ち、その自信のせいで、他者より優れていると思い込んでしまっているだけだ。

 だからこそ、努力をすればと思うが、そうではない。

 どうにもならないことがある。

 そのことを踏まえて考えた上で、それは努力という言葉で可能かどうかを判断を下すべきであるし、人間は完璧や完全というものになることができない生き物であるということを認識し、完璧や完全に限りなく近づくことができる極のような存在であると理解すべきであろう。

 直せるところがあるということは、自らが完璧でも、完全でもないということを認めていることになるのだから―…。

 成長、それは自らの完璧や完全に近づいていく行為でしかない。

 そのことをしっかりと理解した上で、自らの考えを抱いて欲しい。

 「じゃあ、さっさと用意しろよ。そうしないと、俺の剣が火をふくぜ!!! ガハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

と、ファルケンシュタイロは笑いながら、マーゼルのいる部屋から去って行くのだ。

 その時のファルケンシュタイロは怒りの形相から変わり、自分の思い通りになったのか、そこにはニヤけた面となっている。その表情には、他者に恐怖を与えるものとなってしまっている。というか、ファルケンシュタイロをもうどうすることもできないとファルケンシュタイロ部下達は思っているのかもしれない。

 それだけ、嵐が過ぎ去った場所は、避難な状況となってしまっているのだった。

 その表情は、マーゼルの喪失した復讐に満ちた顔を見れば、分かってしまうことであろう。

 (ファルケンシュタイロ~……。)

 マーゼルは、怒りの炎を燃やし始めるのだった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(215)~最終章 滅亡戦争(70)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の投稿日は、2024年3月26日を予定しています。

次回の投稿からは、いつも通りのペースでの投稿が可能になると思います。

巻き込まれからは解放されそうなことなので―…。

では―…。

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