番外編 ミラング共和国滅亡物語(207)~最終章 滅亡戦争(62)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。
その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。
一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。
その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。
一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。
その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。
それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。
その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。
ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。
そんななか、イルターシャの居場所を見つけるのだった。
昼が過ぎた頃。
夕方へとなるかどうかはまだ、空の模様からは分からない頃。
リース王国軍の左軍の本陣。
そこでは、焦りもありながら、ハミルニアは平常心のように装う。
そうしないと、周りに焦っているように思われてしまうからだ。
そのことによって、暴走する味方が発生しないようにしないといけない。
軍の暴走ほど怖いものはないのだから―…。
「ハミルニア様。戻りました。」
と、さっきまで、ミラング共和国への諜報をおこなっていた兵士が戻ってくる。
それは、イルターシャに会った者である。
「どうだった。」
と、ハミルニアは尋ねる。
ハミルニアからしてみれば、今の事態が好転できれば…と思っていたりする。
そうしなければ、今の精神では自身の気持ちの安定性が崩壊してしまってもおかしくはないからだ。まあ、崩すことはないであろうが―…。
持ち直すことぐらいができるほどには、挫折というものをハミルニアは経験しているからだ。これまでの人生で―…。
適度の挫折の中で劣等感を抱くことはあるが、自分は他人に完全になることができないし、他人もまた完全に同じ自分になることはできず、領域を統合して、一緒の領域という範囲になることができれば話は違ってくるのであるが―…。
これも、完全に正しいとは言えないものである以上、まだまだ、人における可能性という未知の理解というのは十分にあり得ることであろう。
「ええ、今から話します。ミラング共和国のオットルー領におけるミラング共和国軍のトップがいる場所が判明しました。その場所は、ここから少しぐらい距離がありますが、オットルー領の領都ラウハウゼルから南方方面であります。案内は私が先頭でおこないます。それと―…、ここから大事なことですが、オットルー領におけるミラング共和国軍の指揮している者のトップは、女性です。名前はイルターシャ。彼女は能力者もしくは天成獣の宿っている武器を扱うことができます。属性は幻です。あの女は私の近くで、自らがミラング共和国の今の体制に対する不満を述べていました。降参させることは可能です。」
と、言う。
その時、近くにいたイルターシャを町娘と判断してしまった自身の苦い経験というものを思い出してしまう。
それは恐怖でしかない。
あんなのを相手に勝つには、こちらもそれなりの犠牲を払わないといけないのだと思ったぐらいだ。
降伏したい気持ちに対する真意が本当かどうかは分からないが―…。もしかしたら、ミラング共和国軍の左軍を騙すために敢えて、言っているのではないかということである。
そして、ハミルニアは考える。
(………降伏したがっている。ミラング共和国の体制に不満をもっている。そんな人間がなぜ、ミラング共和国軍の指揮官のトップになっている。今の話から推測すれば、天成獣の力もしくは自身の能力で幻覚を見せて、そうなっているのだろうか。いや、能力者はその存在を隠したがるから、その可能性は低い。ということは、天成獣の宿っている武器を扱うことができるというのが最も妥当な考えで正しいかもしれない。そうなると、かなり厄介だな。降伏したがっているということを利用すれば、ランシュとヒルバス君に、その大将をぶつけるのが真面な選択になる。こういう指揮官は敵にまわっている状態はかなり厄介なことになると思う。適当な実力者ではなく、同等もしくは上の実力者を出し惜しみさせない方が良い。残しておいて良い意味などないから―…。)
と。
ハミルニアは、次のオットルー領での戦いの中で、イルターシャを降伏へと導かせるためには、適当な兵士によって攻め込ませるよりも、ランシュとヒルバスというミラング共和国軍が恐れているだろう人物に大将を探させ、直接、降伏させる方が良い。そっちの方が場合によっては、自軍の犠牲者数を減らすことができるからだ。
ミラング共和国の首都ラルネを攻める可能性がある以上、自軍の犠牲者が少ないことに越したことはない。なぜなら、その時にはミラング共和国軍の多くはラルネの中に籠り、リース王国軍がラルネを包囲して戦うことになるから、ミラング共和国軍の最低でも三倍以上の兵力がいることは確かである。城を守るよりも、攻める方に戦力を欲することが定石となっているからだ。
そう考えると、ここで迂闊に犠牲の数を増やすわかにはいかない。
ハミルニアはすぐに指示を出す。
「報告をしてくださりありがとうございます。あなたの報告で、明日から決着をつけることが可能になりました。皆さん、指揮官を召集してください。会議を開きます。」
と。
ハミルニアの指示を聞いた部下達はすぐに、ここにはいない指揮官たちを呼びに向かう。
これから、ミラング共和国のオットルー領にミラング共和国軍の指揮官を降伏させて進軍することができるのだから―…。
この疲弊させられるゲリラ戦に終わりが見え始めたのだから―…。
一時間後。
リース王国軍の指揮官たちが集合した。
その場には、リース王国の騎士団のトップであるフォルクスもいた。
(……伝令の者から聞いたが、オットルー領にいるミラング共和国軍の指揮官を見つけたとのことだ。その指揮官は、このようなゲリラ戦を展開するような人間だ。そんな人間が簡単に見つかるのか。何かしらの考えがあるはずだ。)
と、フォルクスはこのことを心から怪しんでいた。
見つかったこと、つまり、見つけたことが敵にとっては重要な作戦なのではないだろうか。
そう考えると、罠だと考えるのが妥当であろう。
敵が簡単に拍子抜けなことをしてくることはないのだから―…。
そんなことを思いながらフォルクスは、この会議でどのような結果になるのかを聞くのであった。
(俺が逆らえるはずもないのだから―…。)
と。
フォルクスは、騎士団のトップであるが、それでも、今回はリース王国軍に編入されている以上、一現場指揮官よりは上であるが、ハミルニアよりは下の扱いとなっている。
そうである以上、ハミルニアの命令にフォルクスは逆らうことができない。そのせいで、ランシュとヒルバスはハミルニアの直接の命令を受ける機会が多いのだから―…。
それで、二人が戦功を挙げている以上、フォルクスとしてはハミルニアに文句を言うことはできない。無茶苦茶なことはあまりさせえていないのだから―…。
そういう意味で、フォルクスはハミルニアの指揮官としての実力を認めている。
だけど、ハミルニアがまだ、どれだけの力量の持ち主か完全に理解することができていない。騎士団の中にいるメルフェルドの実家のある近所の人であったことぐらいは知っている。
そんなわけで、フォルクスはハミルニアを警戒はしている。
「では、会議を始めさせていただきます。今回は、緊急に召集したこと、誠に申し訳ございません。」
と、ハミルニアは集まった指揮官たちに向け、頭を下げる。
それを数秒続けた後、頭を上げ、
「伝令の方からも概要を言われたと思われますが、オットルー領にいるミラング共和国のトップの指揮官の居場所を見つけることができました。ので、明日、その指揮官のいる場所へ攻めていく予定です。ゲリラ戦を展開され、疲弊しきっているでしょうが、ここを陥落させることができれば、オットルー領でのミラング共和国軍との戦いを終わらせることができます。我々の勝利で―…。」
と、言いながら、今度は力強く、
「協力をお願いいたします。」
と、再度、お願いするのだった。
ハミルニアにとっては、ゲリラ戦を続けていくよりも、さっさと決着をつけた方が良いと判断している。勿論、罠の類がないわけではない。
そうである以上、慎重に行動しないといけないのは確かであるが、今の状況を考えれば、士気が上昇するのはミラング共和国軍の指揮官の居場所を速攻で攻めることであろう。相手が罠を仕掛けているかもしれないが、それは実際に、今日中に偵察で探らせてみるしかない。
そして、イルターシャが降伏したがっていることは敢えて、ここでは伏せることにした。
その理由は、罠がないとは言い切れない以上、罠がないと思えるような要因を、ここで示すのは、仮にミラング共和国軍のいる場所を攻めた時に、罠があった時に、大きなショックを受けて、一瞬の動きが停止し、その隙を相手側から突かれることである。
そのことによる損害はかなりのものだと想定することは容易であるし、そこから立ち直るのにはかなり時間がかかることが分かっているからである。
そのハミルニアの言葉は、この場にいる現場指揮官たちに疑いと同時に、これで苦しい戦いが終わるのだと言うことを告げる。
喜ばない者と喜ぶ者で分かれる。
そして、会議は終わる。
その後、フォルクスは、何かを警戒したのかハミルニアを呼び付ける。
「ハミルニア左軍指揮官。少し話をしてもよろしいでしょうか。」
と。
ハミルニアは、
「いやぁ~、そっちから話しかけてくれるとは―…。いいですよ。」
と、言う。
そして、フォルクスとハミルニアの二人は、人があまりいない場所で話を始めるのだった。
「どういうことだ。敵がこんな簡単に居場所を分かりやすくするとは思えない。何か罠があるはずだ。」
と、フォルクスは口調をとがらせるような感じで、鋭く言う。
それは、ミラング共和国のオットルー領にいるミラング共和国軍による罠であることを明白に告げているに過ぎない。
そう思ったとしても、間違っていないし、当たり前のことだ。
そのフォルクスの問いに対して、ハミルニアは、
「分かっていますよ。フォルクス騎士団長にはすべてのことを言っておく必要がありますね。」
と、語り始める。
(…………………………………。)
と、フォルクスは心の中で、ハミルニアが何をもって、このような愚かな判断を下しているのかの理由を聞こうとする。
「私の部下の中で、偵察をおこなえる兵士にミラング共和国軍のオットルー領での指揮官のいる場所がどこかを探らせていました。今日、そのうちの一人が戻ってきて、その居場所が分かったことが伝えられました。その者からの報告によると、オットルー領でのミラング共和国軍のトップの指揮官は、イルターシャという女性だ、そうです。」
と、ハミルニアは言う。
女性がミラング共和国軍のオットルー領における今の指揮官のトップになっていることに驚かずにはいられなかった。ミラング共和国が男尊女卑の風習がある国であることは周辺諸国では有名なことであり、リース王国もそのことを知っている。忌々しいと思えるものであるが―…。
そして、そのような国で女性が社会的地位を確立するのはかなり難しいはずだ。
そのようなことを思っていたとしても、フォルクスは静かにハミルニアの言葉の続きを聴く。
「本当の女性かどうかまでは報告者による主観もあるので、容易に判断するべきではありませんが、ミラング共和国軍が多かったことから判断すると、そこにミラング共和国軍におけるオットルー領で指揮しているトップがいるのは間違いないと思います。そして、そのイルターシャ、天成獣の宿っている武器を扱うことができる可能性があり、そうなら属性は幻。町娘に変装して、報告してきた私の部下の偵察兵に話しかけてきたそうです。リース王国軍に降伏する意思があるのだと―…。だから、その真相を確かめる必要がありますから、ランシュ君とヒルバス君には、イルターシャを探させます。」
と、ハミルニアは言う。
その理由を聞いたフォルクスは、すぐにある可能性に気づいた。
「余計に怪しい。そんな敵国にすぐ降伏を考えるなんて、指揮官として……恥としか言いようがない。罠だと考える方がよっぽど話の筋が通る。」
と、フォルクスは言う。
相手を有利にさせる理由がない。
そう思えば、フォルクスの考えは断然、真面な思考となる。
「そのイルターシャって人、偵察兵に、今、自分はミラング共和国の体制に不満を抱いていると言っている。それを本当ととるか、嘘ととるか、それは自由だけど、嘘の内容によって、ミラング共和国軍との全面対決になることは覚悟しているし、それに―…、ランシュ君とヒルバス君がイルターシャを見つけることができれば、二対一でオットルー領での戦いを終わらせられる可能性は十分にある。フォルクス騎士団長のように警戒をしないということは私もしません。それに、今のこちらは、長引けば長引くほど、兵士は疲弊し、暴走しかねません。ミラング共和国を征服することが王国の目標となってしまっている限り、私たちは、この地の人々に暴力的で、傲慢な対応はできないのです。どんな彼らに恨まれたとしても―…。」
と、ハミルニアは言う。
その言葉の後半からは、ふざけている雰囲気はなくなり、むしろ、真剣な、真面目な声音となり、フォルクスさえも、ハミルニアが真剣なのだということを理解してしまうのだった。
そのハミルニアの言っている言葉の理由もできてしまう。
だからこそ―…。
「わかった。ランシュとヒルバスは貸す。だが、酷い目に遭わせたら、お前を許さない。」
と、フォルクスは言う。
それは、かつての部下を守る上司の姿であった。
「ええ。」
と、ハミルニアは返事をする。
その後、この会話は終わり、二人はそれぞれの持ち場に戻るのだった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(208)~最終章 滅亡戦争(63)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
では―…。