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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
550/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(204)~最終章 滅亡戦争(59)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。


翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。


戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。

その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。


翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。


リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に

、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。


リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。

その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。


ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。

その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。

一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。

その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。

一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。

その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。

それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。

その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。


ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが―…。

 逃げる、逃げる。

 いや、撤退と表現する方が正しい。

 (クソ!!! あの女~、リース王国軍の中に天成獣の宿っている武器を扱う今回の戦争で、一番活躍している奴らがいると知って、俺たちを当てさせやがった!!! ふざけるな!!! 無事に帰還したら、始末してやる!!!)

と、スファイディッターは心の中で思う。

 今日のリース王国軍の左軍の戦闘で、前線で直接の指揮を執っていたのはこの人物である。

 スファイディッターは、ランシュとヒルバスの力を目の当たりまではしなかったが、近くにいたことは確かだ。

 だけど、距離があったおかげで何とか生き延びることができた。

 運が良いのは確かなようだ。

 それもいつまで続くかは分からない。

 大事なのは、これからのことだ。

 リース王国軍の左軍がオットルー領側に侵攻し始め、その中にはミラング共和国軍の兵士を一日で千程を始末したとされるリース王国軍の騎士の格好をしているランシュがいて、さらに、ヒルバスもいるのだ。

 それをスファイディッターは、ある程度は大袈裟にいったものであろうと思っていたが、警戒はそれなりにしていた。せいぜい数十から数百を始末するぐらいの実力があるのだと―…。

 だけど、大袈裟に言ったことの方が真実に近いとされていたと思い、ランシュとヒルバスを恐れたのだ。スファイディッターは―…。

 ランシュとヒルバスの実力を理解してしまった以上、より慎重に戦わないといけないことは確かであるが、それと同時に、ランシュとヒルバスと直接に戦うことは危険だと認識させられた。

 この数日の中で、今日の戦いの中で理解させられてしまった。目で見ることによって―…。

 逃げるしかない。

 逃走といっても、戦線から完全に離脱するわけではなく、態勢を整え、頭にはくるがイルターシャの言うゲリラ戦をもっと組織的になさないといけないと考えるのだった。

 その理由は、当たって砕けるような戦い方は通じない。

 無駄な犠牲を出してしまうだけだ。

 理解してしまえば、スファイディッターであったとしても、自分が何をしなければならないのかは分かっている。

 だからこそ、そのための時間稼ぎを―…。

 そして、このオットルー領におけるミラング共和国軍の最高指揮権を持つイルターシャへと文句を言って、地位をひっくり返して、自分の思い通りにするために―…。

 スファイディッターが指揮するミラング共和国軍は、何とか命からがらに本陣に辿り着くのだった。


 時は夜となる。

 場所は、オットルー領の入り口から数十キロメートル進んだ場所。

 そこにはリース王国軍の左軍がいた。

 連日のミラング共和国軍におけるゲリラ戦により完全に疲弊してきっていた。

 神経を使う日が多いし、さらに、緊張感を抜くことができない日々が続いているからだ。

 今日も、その日の食事は、夜襲をかけられないようにするために、火を扱わない保存食を中心としたものにならざるをえない。

 そうなれば、士気なんて簡単に下がってしまうだろう。

 事実、防衛のための戦いでなく、侵略戦争である以上、やる気の面で維持することはかなり難しい。守る者が殺されるという段階は、とうに通り過ぎたのだ。

 いや、ミラング共和国軍がリース王国軍を撤退させることへと追い込み、かつ、リース王国を征服するだけの戦力を整えているのであれば、リース王国の領土へとミラング共和国軍は攻めてくる可能性がある以上、ここで完全に士気がなくなってしまうことはないであろう。

 自分の国にいる家族や大切な人達を守るためには、戦うしかないということを理解しているから―…。

 人は自らの国のために戦争を選択する者は少ないし、かつ、自らが生まれた国のために戦えと平時から叫ぶ者ほど、愛国心と組み合わせている者ほど、その言葉はちっぽけなものであり、他人の命で、自らとその取り巻き達の権益を守ろうとしているだけだし、煽られた側の命なんてこれっぽちも大切だと思っていない輩である。

 そのような者の言葉に乗せられて起こされた戦争は、結局、多くの罪なき人々を生命の終わりに導くだけだ。そのことにいい加減に気づいて欲しい。

 実際に、それが起きないと気づけない存在よりも、想像の中で気づける存在の方がよっぽど、人の命というものを大切にしていると思える。

 要は、声を大にして、あなたにとって都合が良いことばかり言っているだけの輩には気を付けろということだ。人を騙したいと思う輩は、騙したい人にとって都合が良い言葉を言うのだから―…。ドッキリとかで、良くそのケースを目撃しているのだから、そのことに気づいて欲しい。

 さて、話が逸れたので、戻すことにしよう。

 この疲弊しきった中、ランシュもヒルバスも同様であった。

 だけど、完全に疲弊しきらないのは、ランシュには目的があるからだ。

 そう、ランシュは、ミラング共和国の今の総統であるエルゲルダに復讐することがあるからだ。

 ゆえに、この戦争が終わって欲しいとは思っていないが、それでも、今は気分的に辛いという気持ちが勝っていた。

 だからこそ、オットルー領の中にミラング共和国軍を指揮している人物を倒す必要があると感じている。

 そんななか、ランシュとヒルバスに声をかける人物がいる。

 「ランシュ君、ヒルバス君、今日もご苦労さん。それに、戦ってくれている君たちにも感謝します。ささやかですか、今日は食糧の供給が多かったので、少しだけ豪勢にしたいと思います。とにかく、落ち込んでいても意味はありませんよ。やるべきことは決まっているんですから、最大限成果をあげましょう。」

と、ハミルニアが言う。

 実際、リース王国軍の左軍の食糧事情は、ここ数日のゲリラ戦で、生ものの野菜をあまり使うことができなかったのだ。

 そして、腐らせてもいけないので、今日は、なるべく後方の方で気づかれないようにしながら、近くにある村の人にお願いして、左軍の中の料理ができる人々と一緒に、提供した食材で料理を作って、運んできたのだ。

 そのため、火は通されているが遠くまで運べないので、村の近くへと順番、順番の移動となるが―…。

 その説明は、ハミルニアの後にやってきた指揮官が言う。

 「皆さ~ん、ここから少しだけ歩いてもらいますが、ちゃんと皆さんの分はありますので、ちゃんと並んでくださ~い。」

と、ハミルニアの部下の一人が言う。

 これは、良い食事が食べられると言って、自分が一番先に食べようとする目先の欲に憑りつかれる者が必ずいるので、それを防止するためだ。ちゃんと、人数分プラス余分に用意しているのだ。

 だからこそ、喧嘩するよりも、ともに分かち合って欲しいのだ。

 ハミルニアとしては、兎に角、食材を腐らせないことと、同時に、士気を回復させようと必死なのだ。

 なぜなら、士気の低下によって、ハミルニアへの求心力が減って、兵士がオットルー領の各地で、オットルー領の住民に対して、残酷な行為をしてしまう可能性があると踏んでいるからだ。

 戦争中において、兵士が残酷な行為をその地の住民に対して、しないということはほとんどあり得ない。特に、何々兵は高潔な存在だから、そのような残酷な行為も女性に対する強姦などの行為もしない、という宣伝する輩ほど、信用はできない。

 それに、戦争において、兵士が戦闘以外での残酷な行為をした場合のルールやらはその軍の中に記載があったりする場合もあり、一応は処分することができる。

 それが機能するようにするのは、ハミルニアような上官たちであり、上官がそのルールを破るようなことをしていれば、返って、部下達への信頼を失っていくこととなり、統制が効かなくなる。

 一方で、ハミルニアが言葉を言っている間に、ランシュは考え事をするのだった。

 (ハミルニアは、俺たちや兵士の士気を取り戻そうと必死になっている。ハミルニアにとっても、ここまでのミラング共和国軍の兵士の行動はかなり厄介に感じているし、苦戦をしているということがわかっているのだろう。中央軍の指揮官がこの場にいたなら、どんな暴言を吐いて、士気を低下させていたかと思うと、恐怖としか思えなかった。だって、そいつがいたら確実に、リース王国の軍内で反乱が起こって、ミラング共和国軍にとっては好機としかいえない展開になっていることであろう。そんなことは誰もが望まないが、そうなってしまうのだ。リース王国の中央で権力を握っている奴らは気づいているか。他者がどう思っているのかを知らないと、最悪の場合の展開を知らず知らずのうちに選択していることがあるんだよ。分からないよな、あいつらには―…。)

と。

 ランシュもハミルニアが必死に自らに属す兵士の士気を取り戻そうとするのに必死であることを理解している。

 それを理解できないのであれば、あまり上には出世しない方が良い。

 上の人間に求められる力の一つに、周囲の部下のやる気をどれだけ引き出し、持続させることが可能であり、部下を如何に無理させずに、疲弊させずにするかということである。

 そのことに気づかずに威張り散らかすような輩に、上での仕事は務まらないし、結局、組織というものを駄目にする。

 さらに―…、ランシュは、指揮官であるハミルニアにもできることの限界があることには気づいていた。

 (指揮官の限界なのかもしれませんが、ハミルニアは充分にやっているのだとは思いますが―…。ただし、オットル領地に侵入してから、左軍は略奪や強姦などは禁止されており、その時の処分は重いものとなっていて、処刑すらありえると言われている。まあ、そうだろうなぁ~、とわかってしまう。略奪や強姦は、戦争に必ずついてまわるものだ。これは昔からおこなわれていたとか、言われており、俺は詳しくはわからないが、その二つに少しだけ嫌悪感を俺は抱く。なぜなら、略奪や強姦をおこなえば、領地を占領して支配する時に、その領地に住む住民の反抗を呼ぶだけだ。娼館のようなものを設けるという考えもあるが、それも結局は女性を傷つけている可能性もあるので、好きにはなれないが、それでも、略奪や強姦よりもましだと思うところはあるかもしれないが、なぜ、戦争になると、兵士は凶暴化し、普段の時ならほとんどすることのないようなことをしてしまうのか。だが、わかるのは、優越性と支配欲がそれをさせているのかもしれない。普段は、法などによって抑えられている欲望に、ストッパーがなくなって暴走しているのだろう。まあ、考えすぎても良くないか。それにしても、娼館を設置する金があるのなら、リース王国の中央で権力を握っている奴らは自らの懐を豊かにするだろう。それにしても、欲を出すのは仕方ないとしても、それを上手く自身の中でコントロールして欲しいものだ。無理だから、起こるのか。今回は、ハミルニアやその部下が上手くやってくれているおかげで、何とか、略奪や強姦をしている奴らはいなかった。それでも、いつ起こってもおかしくない状況ではあるが―…。人というのは、道徳的に過ごそうとする面もあれば、それに反することによって快楽を満たしたいという二つの相反する気持ちがあるのだろう。)

と。

 兵士が現地住民を強姦する理由は、自らが戦争に勝っている側であり、正義だと思っているから、これも正しいと思ってしまうことによる優越感に原因があるのだろう。

 だけど、正しく認識するのであれば、兵士が勝っている側だから正しいのではなく、そのおこないが正しいのではなく、何らかの要因が組み合わさることによって自らが勝っている側にいるだけであり、決して、自分自身が完全に正しいということはないのだ。

 間違う可能性は十分に存在する。

 さらに、そういう現地住民への強姦を抑えるために、娼館を設けたとしても、実際は、現地住民への強姦が減るかは怪しい。現実世界には、そのような効果が見られないと判断されるケースが実際に、存在していたりする。

 効果がある可能性が高いと判断すべきではないが、強姦や虐殺にしても、不容易に犯せば、確実に罰せられるということを示す規定されたルールが有効に機能している方が、それを徹底的に通知し、かつ、起こった場合には、その犯した者がどうなったかをしっかりと示すことだ。

 戦争という恐怖が付きまとうものにおいて、恐怖という名の上位存在によってでしか律せられないのだろうか。人の欲というものは諸刃の剣のようなものであろう。適度であれば良い効果を発揮するが、それも度が過ぎると、自らの行動によって、自分だけでなく、自分以外の他者にも大きな災いを起こすことになるのだから―…。

 結局、自らの心の中に抑止と同時に、それを慎重に判断するための間を置くということが必要であり、かつ、越えてはいけないラインをしっかりと決めて、それを自らに恐怖として課す必要があるのだろう。これ自体も完全に良い方法とは言えないが―…。

 一応の解決案だと思うしかない。

 そして、ハミルニアは、ランシュの様子に気づく。

 「ランシュ君、考え事?」

と。

 「このままだと左軍内で、略奪や強姦などが起きるじゃないかと―…。」

と、ランシュは自身の考えをハミルニアに言ってみる。

 ランシュとしては、気になるのだ。

 リース王国軍の信頼が落ち、さらに、恨みを余計にかってしまうようなことが起きていないか。

 それが起きると、これからかなりの抵抗が想定され、戦後の復興にかなりの時間を要するし、かつ、反抗勢力の数が多くなり、リース王国におけるミラング共和国の領土の統治を危うくし、かつ、それが原因でリース王国が崩壊するのではないか。

 そうなると、レグニエドへの復讐を果たせば良いが、その後、リース王国の統治をヒルバスと約束している以上、その約束が実現されない可能性が出てくる。

 約束は守った方が良いので、その約束のためにリース王国が余計な理由で滅んでしまうのは良くない、ということだ。

 ハミルニアは、ランシュの言葉を聞いて、少しだけ考えた後に、言い始める。

 「そうなんだよねぇ~。男という生き物は、どうしても他者よりも自分が優れているのかということを示そうとする癖があるんだよ。食欲、睡眠欲、性欲。その中でも性欲というのは厄介だよ。どんなに女性を無理矢理に合意もないのに襲うのはいけないとしても、一定数は出てしまうからねぇ~。国内であれば、法律にそのことをいけないと定め、捕まえて、罰せばいいし、未遂でも可能だ。だけど―…、こういう戦争状態である場合、どうしても、いろいろとゴタゴタがあって、管理が行き届かないことがある。そのせいで、優越感に溺れた奴らが、占領した住民を殺す、略奪する、女性を襲うなどのことをするのだよ。そうすれば、支配する時に嫌なしこりを残すことは間違いない。それをさせないために娼館を設置したりすることもある。貧困の女性の最後の逃げ場という面もあるけど、その環境は千差万別としか言いようがないし、女性側の気持ちを踏みにじっていることに変わりない。それとは逆も存在するかもしれないが、個別個別のケースになってしまうだろう。本当に、欲とは怖いものであり、逃れられないものだ。本当、人の欲ってのは底なし沼だよねぇ~。そう思うと、良い解決案が示せればいいが、無理だろうなぁ~。人生、そのことを考えても良い答えはでないし―…。ということで、俺は、自分ができることを最大限やるしかない。そして、自分のやったことに正当性あることだと言って、自分の罪から逃れないで、受け止めること。そして、自分の感情と向き合うしかないし、社会に対してもそうだとしかいえない。」

と。

 ハミルニアが言っていることは、現実的な妥協であり、それ以上のものになることはない。

 理想論を唱えることを非難する気はないが、自らの理想論だけが正しいと認識し、それ以外を切り捨て、自分の意見を現実という実世界に押し付けることをしている人々は、現実における妥協というものを知らない。

 いや、その現実的な妥協すら恨みの対象にするであろう。

 現実的な考えというのは、この現実を生きていく上では必要であるし、上手く生きることに繋がる。だが、そのことによって、一部の人々の欲だけを満たすために、自分の欲の実現を最大化させるために、他者や他の要素を無視して、踏みにじる行為をすれば、必ずと言っていいほど彼らに最悪の形で返ってくることがある。思い通りになることによる最悪の結果の同時実現、反対勢力の拡大による自らの実現したいことを阻止されることなど。

 そして、ハミルニアは、現実的な妥協を抱きながらも、自分のためではなく、リース王国軍における信頼と同時に、ミラング共和国に住んでいる人々が酷い目に遭わないことによって、リース王国に対する恨みを最小限にしようとしているのだ。

 自分の欲を大きくすればするほど、他者の利益を侵害し、奪ってしまうことがあったりするのだ。

 何でもかんでも、偏らせることは悪しき結果を導くことになるので、バランスは必要だ。自らの欲望に対しても、だ。

 だからこそ、ハミルニアは、最悪のことも想像しながら、自分がしないといけないことをするし、そのことが正義に適っているとは思っていない。正しいとも思っていない。正当化されるとも思っていない。

 自らが正しいというのは、そこでより良い思考があるかもしれない可能性を思考することを閉ざすことになり、成長ではなく、停止を意味することになるからだ。

 そして、ハミルニアの話が長いとランシュは感じながらも、ハミルニアの言っている言葉の表面をしっかりと理解するのであった。さらに、人の心が自らが思っているものと完全に同じになることはないのだから、上手く調整するしかないということを理解し、大変だろうなと、思うのだった。

 そこに―…、

 「まあ、娼婦全員が娼館のことを本心でどう思っているのかわからないし、娼婦であることに誇りを持っている人もいるかもしれません。だけど、そう思っていない人もいます。後者の方が多いのかな。本当に大事なのは、その人たちの意向を汲んでいるかどうかが一番大事なんですよ。ランシュ君―…。そして、戦争というものは、人の欲望面を最大化させますので―…。それでも、ランシュ君がやれることを最大限すればいいんです、未来に向けて―…。人の歴史なんて失敗でしか成り立っていないんですから―…。なくなる、滅びるという結末を迎えているように―…。成功と言っているのは、一時的な期間のことでしかないのだから―…。」

と、ヒルバスが加わってくる。

 ヒルバスとしては、あくまでも話に加わっただけであり、他愛のないとは言えないが、大きな意味のあるものではなかった。

 そして、人という欲望は戦争の中では最大化されやすいし、人はそれぞれ完全には同じではない、違った部分を持ち合わせている以上、それぞれに違った考えがあり、その意向を理解して、なるべく配慮するしかない。

 そして、今やらなければならないことを最大限するしかないのだ。自分のすべきことを―…。

 結果なんてものは、後でないと分からないものである。

 ランシュはヒルバスの言っている言葉を理解し、

 「そうだな。深く考えるべきではないな、今は―…。だけど、事件が起これば、確実に対処する。二度と悪い事が起こらないように―…。前提としては、起こらないのが一番なんですが―…。」

と、言う。

 その後は、三人で他愛のない会話を繰り広げるのだった。

 ちゃんと、暖かい食事がある村まで行き、ちゃんと料理をいただきましたとさ。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(205)~最終章 滅亡戦争(60)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


明日で、水晶は投稿を開始してから4周年になります。

ここまで、良く続いているなぁ~、と自分自身ながら思っています。

何度、投稿を続けることを止めようとか思ったりもしましたが、何とか続けられています。

無理しない程度に頑張ります。

では―…。

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