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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
543/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(197)~最終章 滅亡戦争(52)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。


翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。


戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。

その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。


翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。


リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に

、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。


リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。

その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。


ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。

その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。

一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。

その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。

一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。

その間に、リース王国軍側でも動きがあるようだ。

 ここから三十分ほどの時間が経過する。

 「では、会議を始めることにしよう。」

と、ファルアールトは言う。

 さっきまで、ファルアールトは、自らのこれまでの功績を自慢させていたり、ファルアールトを称賛させるようなことをしていた。

 そのようなことは、ファルアールトの側近でも呆れるようなことでしかないし、こんな馬鹿の大将をなぜ持ち上げないといけないのか。そのような感じで―…。

 彼らの気持ちをファルアールトは知るはずもない。

 言葉にしても理解できるかは分からない。

 ファルアールトは、自身の欲を最大限に満たすことしかできない。さらに、強き者に媚び、弱き者を挫く、そのようなことを当然の真理の状態までに自身の心の中で持っていってしまっているのだ。

 だからこそ、周囲を見ようとしなくなったし、その面での思考を完全に停止させてしまった。

 この世における人が想像および創造できるものは、完全であることはなく、完璧なものはない。あくまでも、有限の回数の中で見つけられた法則を信じているだけに過ぎない。それが社会を成り立たせているのであるが―…。

 だからこそ、違う可能性というものは確実に存在することになる。

 じゃあ、何もかも知ることができないといえば、それは嘘となる。完全に知ることができないだけであって、完全に知らないことができるわけではない。

 要は、知っていたり、知らなかったり、という場合が状況の次第によって発生するというものである。曖昧な答えであるかもしれないが、これがある意味で事実の可能性かもしれない。確定的な答えを下すことはできないが―…。

 この世の中なんてそんなものだ。

 ファルアールトは、夜、眠りながら考え付いた作戦を言い始める。

 「さて、私の素晴らしい作戦を聞くが良い。まず、ミラング共和国軍の主要部隊はアルデルダ領に逃げたという。だけど、作戦を変更させる理由はない。我らがアルデルダ領へと攻め込み、弱ったミラング共和国軍を倒してみせよう。右軍はクローデル領を、左軍はオットルー領を攻めろ。ハミルニア、君の活躍には期待しているよ。それと二時間前にもたらされた情報によると、その主要部隊のいくつかがオットルー領やクローデル領へと向かう情報をメタグニキア様の私設部隊が私に報告してきたなぁ~。」

と。

 ファルアールトは、昨日の戦での勝利によって、完全に自信を取り戻し、今の自分なら不可能なことはないと思っている。

 昨日の戦の勝利を決定づけたのは、左軍の中にいるランシュがイマニガを倒したからに他ならないが、そんなこと、ファルアールトの頭の中に入っていない。シエルマスの工作員を一人倒したぐらいで、戦局が動くわけがない。そのように思ってしまっているのだから―…。

 思い込みが時に、物事の真実を見えないようにする。

 それは時に強力な視野狭窄というものを提供する。それに陥っている本人には一切、気づかれないようにして―…。

 この怖さを知ることができるものは、自らを賢人だと名乗ることは憚るであろうし、完璧な人間などと思うことは一切できるはずもない。

 なぜなら、そのように思えるということは、思い込みというものに自身が気づいており、それによる弊害をしっかりと認識しているからだ。だからこそ、自分にも愚かな面があることを、嫌でも理解していることになる。自分は完璧ではない、と。

 ファルアールトはそのことに気づきもしないのだから、大きなショックを大失敗の前に与えられなければ、気づきもしないだろう。それは、ファルアールトの肉体をも粉々に、この世に存在しなかったのではないかと思わせるようにするぐらいの威力でもあっても、ファルアールトに自身の思い込みを気づかせるのは不可能であろう。それほどに、強いものであるのだから―…。

 ただし、ファルアールトの思い込みによって大きな成功をもたらされることは十分にあり得ることであるが、それは賭けをするのと同じことである。運、と自他の要素の結果によって、ある一定の未来の結果が良いことになることが実現することでしかないという不確実なことを確実に達成される、そのようなことである。

 そして、ファルアールトは知っている。

 (ハミルニアには、ミラング共和国でも侵攻するのがオットルー領を攻めさせる。そうすれば、確実に、彼らの兵力は減っていくことになろう。ミラング共和国でも、オットルー領を御すのは難しいとされているのだからなぁ~。グヘへへへへへへへへへへへへへへへへへ、俺の活躍のための贄となれ、ハミルニア。)

と、心の中で思っている。

 そう、ファルアールトは、ハミルニアが邪魔な存在であるし、ハミルニアとその軍団には、死者が多く出やすい危険な場所へと向かわせるのだ。

 確率でしかないが、ファルアールトの言っていることのオットルー領を攻めることが難しいと思われる場所に関して、読み取れる箇所がある。

 オットルー領は、ミラング共和国の政府側からも御しやすい場所ではなく、変な反抗をしてくるわけではないが、積極的に対外強硬派に協力してくれるわけではない。協力はしないわけではないが、それ以外は、ミラング共和国の対外強硬派を無視している感じだ。

 そんな土地であるからこそ、ミラング共和国の諜報および謀略機関であるシエルマスの工作員が派遣されていたりする。国内担当の中でも優秀な者たちが常時―…。

 そして、オットルー領は、決して、リース王国に味方する可能性は低いであろうし、ラーンドル一派とは過去に一度揉めたことがあり、彼らの存在を許すとは思えないからだ。

 抵抗も激しいものとなる。

 そして、ファルアールトは気づいていないが、今、ミラング共和国軍の中でオットルー領に向かったのは、イルターシャが率いる元グルゼン将軍の軍団に属していた者を中心とする軍団である。ミラング共和国軍の中でも、猛者が多い。

 つまり、ハミルニアはその猛者たちと戦わないといけなくなるのだ。

 そういう意味では、ファルアールトの思惑は外れてはいないだろう。

 リース王国の右軍の方も、かなり難所となるだろうし、クローデル領にはファルケンシュタイロというミラング共和国軍の英雄が自ら軍団を率いているのだから、それと対峙しないといけない。天成獣部隊もいるからかなりの苦戦となるだろう。

 だが、この時、ファルアールトは気づいていない。

 本当に、大変なことになるのは―…。

 「分かりました、承ります。ファルアールト元帥。」

と、ハミルニアは返事をする。

 その表情は、何となく予想することができるものであった。

 (……………やっぱりか。こうなるとは思っていたよ。覚悟は必要だな。)

と、心の中で思う。

 ハミルニアに逆らうということはできない。

 なぜなら、ハミルニアの意見が受け入れられるということはないし、ハミルニアの意見など聞き入れるだけ無駄だと思われているからだ。

 嫉妬、恨めしさ、そのような気持ちをハミルニアに対して抱き―…。

 その後、会議は解散となり、それぞれの本陣へと散っていくのだった。


 少し時間が経過する。

 ハミルニアは歩きながら、護衛とともに、左軍の本陣へと戻って行く。

 その過程で―…。

 一人の黒装束の人間が姿を現わす。

 そのことに対して、ハミルニアの護衛が警戒する。

 だが―…。

 「大丈夫だ。シエルマスでもメタグニキアの私設部隊でもない。」

と、ハミルニアは言う。

 その言葉だけでは、ハミルニアの護衛の方も信頼することはできないが、それでも、上司の命令である以上、従わないわけにはいかない。

 完全に警戒を解くわけではなく、何があっても対処できるようにしている。

 「ハミルニア様。そのような言い方では―…。」

と、ハミルニアの護衛の一人が言う。

 この人物も理解している。ハミルニアが言いたいことを―…。

 「怪しい者ではないと言っても信じてもらえませんが、リーンウルネ様の私設部隊の裏の者です。」

と、黒装束をしている者は言う。

 そう、黒装束の者は、リーンウルネの部下であり、裏のことを担当する者である。その服装を他の裏の者と区別するのは、かなり難しいものであるが、特徴的な白いユリの花の形をしたマークがあるので、それで理解した。

 黒装束の者が嘘を吐いている可能性は十分にある。

 そんななか、黒装束の者は言葉を続ける。

 警戒が解かれることはないことは十分に理解しているのだから―…。

 「ハミルニア様にご報告を申し上げます。たぶん、ハミルニア様はオットルー領へと攻めることになると思いますが、そこにはミラング共和国軍の中で過去最強を誇っていたグルゼン将軍が指揮していた軍団が向かっております。さらに、その指揮をしている人物は男性であると―…。ハミルニア様でも苦戦を強いられるのは確実だと思います。それと追加して、オットルー領は、あまりミラング共和国軍の現体制に協力的ではなく、領主との交渉は可能とリーンウルネ様は判断しています。」

と、黒装束の者は言う。

 この言葉を聞いたハミルニアは、

 (………思っている以上に、ミラング共和国の方も一枚岩という感じではないということか。まあ、どんな国も一枚岩になるなんてことは絶対にあり得ない。人一人、個性があるのだから―…。はあ~、この交渉絶対にリーンウルネ様がしそうだよぉ~。あの人、良く城から出て、いろんなところに向かったりしているから―…。リーンウルネ様の身は心配しても無駄なことだから、オットルー領の……特に、グルゼンの元部下達を降伏させること。どうなることやら。)

と、心の中で思う。

 ハミルニアとしては、グルゼンの元部下達を降伏させることは、場合によっては簡単であるが、場合によってはかなり難しいことでしかない。

 要は、彼らが簡単に降伏してくれるかは賭けとなるわけだ。

 さらに、グルゼンの元部下である以上、実力はかなりのものであり、彼らは軍人として優秀な集団であることに間違いない。才ある者の場所には、同様に、才のある者が結集する。そのようなことをハミルニアは頭に浮かべながら―…。

 ハミルニアは、表情を僅かであるが、厳しいものとしながら、返事をする。

 「そうですか、それをリース王国の中央軍に報告したりはしないのですか。」

と、ハミルニアは質問する。

 リーンウルネの行動には反対しない。

 反対しても無駄であることは分かっているし、リーンウルネ様はリース王国にとって本当の意味で不利になるような交渉はしないはずだ。なぜなら、そのようなことをしてしまえば、リース王国に対する諸外国における評価がマイナスになってしまう。紳士的に振舞おうが実態が酷いものであれば、結局、台無しになり、それだけでなく、マイナスの評価は諸外国を巡ることになり、貿易で不利になることだって十分にある。人道的である必要はないが、人としてもしもの時は信頼できるようにしないといけない。

 そのマイナスになるような振る舞いが嘘であるように宣伝したとしても、結局、大抵のことはどこかでバレてしまうものだ。バレないと思っていたとしても、だ。

 リーンウルネが、オットルー領の領主と交渉をするのではないか、という予測をしたりするが、それを聞いたりはしない。そんな野暮なことは―…。

 それよりも、今の報告をリース王国軍の中央軍に対して、ハミルニアにしたように報告するのではないかという点を質問する。

 これは、ラーンドル一派にも情報が共有されてしまうことになり、かつ、リーンウルネのような行動はラーンドル一派が嫌がるからだ。ラーンドル一派は、リーンウルネの功績を一つでも挙げさせることに対して、反対しているのだから―…。

 リーンウルネが功績を挙げれば、それだけ自分達、ラーンドル一派の権力基盤が揺るがされるようなことであり、リース王国に住む人々に知られれば、リーンウルネを神輿に担ぎ上げ、ラーンドル一派に反抗してくるに違いない。そんなことは許されないし、あってはならない。ラーンドル一派がリース王国における中央の権力を握り続ける未来を望むのだから―…。

 ハミルニアの方も、今、話した情報がリース王国の中央軍に伝わるのは危険だと判断している。

 ゆえに、リーンウルネに味方することになるが、そのことに対して、恨めしい気持ちを抱くことはない。むしろ、オットルー領の領主と交渉して、交渉に成功してくれることの方がハミルニアにとってはメリットが大きいし、兵力を多く失うこともなく、グルゼンの元部下達の属する軍団と戦うことに集中できるのだから―…。

 「しません。そんなことをすれば、ラーンドル一派(バカ)は邪魔してきますから―…。」

と、黒装束の者は答える。

 その答えを聞いて、ハミルニアは安心するのだった。

 その間に、黒装束の者は消え、それを確認すると、黒装束が消えるのに驚いていた護衛に対して、

 「では、戻りますよ。」

と、ハミルニアは言って、自身の陣地へと戻って行くのであった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(198)~最終章 滅亡戦争(53)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


ここから交渉とか、いろいろ僅かにしかにおわせておいたことへと話が進んでいきます。

自分自身がその内容を忘れていないか怖いです。

次回の投稿日は、2024年1月30日の予定です。

ストックを無理せずに溜めます。

では―…。

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