番外編 ミラング共和国滅亡物語(196)~最終章 滅亡戦争(51)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。
その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。
一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。
その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。
一方で―…。
翌日。
リース王国軍の側。
その中の中央軍の本部がある陣において―…。
そこでは、軍事会議が開かれていた。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!! 私の素晴らしい指揮と活躍により、ミラング共和国軍どもに勝利をし、撤退させることに成功した!!!」
と、ファルアールトは叫ぶ。
この人物は知っての通り、リース王国軍の中央軍の指揮官であると同時に、リース王国軍の今回の戦争における指揮官のトップである総大将なのだ。
彼は、今までの戦いの中で、リース王国軍の左軍のトップであるハミルニア以上の成果を挙げることに成功して、有頂天になっている。ハミルニアという存在が気に食わない。
なぜなら、最初の方で、ハミルニアは指揮官として成果を挙げてきた。自分よりも―…。
だからこそ、許されない存在であるが、結局は、自分が一番の戦果を挙げられるのだ。
そのことを現実で示された以上、ハミルニアなどいつでも処分できる存在だと思い、より傲慢になっていく。
すでに、人格は歪んでいる。
ゆえに、自分の信じた者以外の声を聞くことも、それを聞いたとしても、そこから真偽を見破るという能力も機能しなくなった。
要は、何を言いたいのかと言えば、ファルアールトは自分にとって都合が良いと自らが信じることを優先して判断を下すことができず、より可能性の高い、自分達の軍にとって必要な判断を下せるかはその時にギャンブルをするような状態になってしまったということだ。
そのことにファルアールトは気づかないだろうし、気づくこともしない。
人の思考範囲には限界というものが存在し、それを広げることは可能であるが、成功への道しるべになるようなことは運の要素が介入することになる。
多くの人々はそのことに気づかないであろうし、気づこうともしない。それは、普段からの思考よりも日々の生活に忙しいがゆえであろう。
そして、成功はその成功者に自信を与えると同時に、考えたり、工夫したりすることをしなくても良いということを与える場合がある。いや、そのことに成功者が気づいてしまうことがある。これで成功したのだから、次もこのような方法で成功するであろうという感じで―…。
具体的な例をここで挙げている暇はないので、話を進めていく。
「素晴らしいです!!! ファルアールト様!!! 元帥!!!」
と、ファルアールトの取り巻きで、側近の一人が言う。
この人物は、ファルアールトの元帥の地位を狙う者であり、ファルアールトの後釜としての地位を得るために、ファルアールトに媚びているのである。
媚びるぐらいしか出世する方法がないと理解しているのだ。
人脈は重要だが、人脈も決して使い方を誤れば、ろくなことにならないのは事実だ。
そんなことにここにいる多くの者は気づきことはないだろう。
たとえ、自分にとって生命に関わる危機が起こったとしても―…。特に、政治生命に関わることが起きた時であったとしても―…。
そして、この側近の言っていることに対して、ファルアールトは気分を高揚させる。
(そうだ。私こそが称賛されてしかるべき。ハミルニアには誰も称賛がされないではないか。人望がないに違いない。)
と、ファルアールトは心の中で嘲笑しながら思う。
ファルアールトは、ハミルニアをいまだに目の敵にしている。そうすることで、自身が優れているという優越感を満たすことができるのだ。
そんなものを満たすことでしか心が保てないのであれば、一瞬、崩壊した方が社会的に良い結果になることは目に見えている。
そこから、歪ませることなく、立ち上がることができれば良いのであるが、それが可能かどうかは今のところ判断することが難しいことであるし、未来を完全に予言するような類のことは誰にもできない。もし仮に、未来を予言することができるものがいるのであれば、彼らの人生は絶望に見舞われることは避けられないであろう。そういう状態になったのであれば、やるべきことは希望を持つことしかできない。未来を変えられるかはやってみないと分からないことであるし、そのことによる何度も繰り返される決闘というものになるであろう。
そして、ハミルニアに人望がないわけではないし、部下からの人望はある。
ただし、ラーンドル一派からは、あまり良い印象を受けていないのは事実であるし、ラーンドル一派から得ている情報だけで判断しているファルアールトは決して、ハミルニアという人物を自分の目で視て、評価することはできないであろう。ラーンドル一派の情報に依存している限り―…。
ファルアールトの側近たちは、ファルアールトの側近の言葉が言われた後、ファルアールトの側近の全員が拍手する。褒めているのではなく、そうすることで、ファルアールトの派閥に属していない者達に威嚇しているのだ。
その状況の中でハミルニアは、
(……………気持ち悪い拍手というものもあるのですか、この世には―…。まるで、それが正しく、他は間違っているかのように思わせる。同調圧力―……。呆れました。)
と、心の中で思う。
ハミルニアとしては、今のファルアールトへの拍手をしている側近たちを心の中で唾棄すべき存在だとみなす。
そうであろう。
拍手は誰かを褒めるためにやるが、そこに邪な気持ちというか意図が混じってしまえば、それは気持ち悪いものへと早変わりしてしまう。
いや、拍手をしている者たちは、そのような気持ち悪さを感じないどころか、自分は多数派であり、少数派を見下す気持ちになっている。そうすることで、自分は優れている人間だと思うことができるのだから―…。
残念ながら、そんなことをしたとしても優れた人間になれるわけでもなく、返って、自分の中の感情が歪み、心の中が醜い化け物になっていくだけだ。傲慢という化け物に―…。
少数派の中でもちゃんと物事を考えることができる者達にとっては、この異様な光景に呆れという感情と、余りにも他者がどうを思っているのかという考えがおよばない愚かな人物にしか思えず、彼らからは好感度ではなく、嫌悪感の方を増大させるしかない。
いや、ここでの多数派というのは、リース王国軍の中央軍の本陣での軍事会議に参加している者の中での多数を占める者を指している。現実に、彼らが多数派になることは、リース王国の中で、ということになるとあり得ないことだ。
世間の一般的な良識を兼ね備えている者から見れば、少数派の中で物事を考えることができる者達と同じ思考にいたるだろう。愚か者ほど、自らの愚かさに気づくことには大きなきっかけというものを必要とする。
そのきっかけでも金銭及び名誉、地位という名の自身の欲望が消失するかもしれないと思う者たちには、気づけたとしても改めさせるのはかなり難しいことになってしまう。彼らは自身の金銭及び名誉、地位というものが失われることを心底恐れているのだ。もう二度とそれらを得ることができず、惨めな人生を送り、生の終わりを迎えるのではないかという不安を抱き、それなら、今の状態に何が何でもしがみつこうとする。その力はゴキブリ並みの生命力と同じなのではないかと言葉を悪くした例えであるが、そう思ってしまう。
そのような者達が権力を握れば、ろくなことにならない。というか、いつかどこかで自滅することは目に見えている。旧アルデルダ領がなぜ前のリース王国とミラング共和国の戦争の中で割譲されたのか、という理由は聞かされている。リース王国軍からではなく、いろんな裏の伝手で―…。
「そうか、そう言ってくれるか。さらに、私を称賛するが良い!!!」
と、ファルアールトは言う。
傲慢であり、歪んで、かつ、調子にすら乗っている。
ファルアールトはすでに有頂天とかし、自らにとって都合が良い言葉以外は聞こえなくなってしまっている。
そんな状態はハミルニアがすぐに気づくのである。
(……………完全に、馬鹿の大将、敵よりも怖い。このようなことを思ってしまうとは―…。これからミラング共和国の領土内へと侵入していくことは規定事項となる以上、どこから攻めるかが重要となる。私としては、かなり厳しい場所を攻めるよりも、地の利の差を埋められる旧アルデルダ領、今のファウンデーション領を攻める方が成果を挙げやすい。そこへと向かわせてもらえる可能性の方が難しいだろうけど―…。………それにしても、さっさと作戦会議を始めてくれないか。)
と、ハミルニアは心の中でさらに、呆れる。
溜息の一つでも吐ければどれだけ楽なことであろうか。
この場にいる自分が情けなく思えてきた。
もし、馬鹿な大将であるファルアールトが、昨日の戦いの中で負傷し、指揮できなくなっていれば、すぐにでも、自身がリース王国軍の指揮権を掌握する行動に出ただろう。まあ、それを選択する可能性は低いのであるが―…。
ハミルニアは、なるべく、ファウンデーション領方面へと侵攻したと思っている。リース王国の中央で政権を握っているラーンドル一派はミラング共和国を征服することを目的としてしまっているのだ。
ここからは、ミラング共和国の領土内へと入ってくるから、住民からの抵抗が十分に予想される。そうなると、侵攻を進めれば進めていくほど、その抵抗が強まる可能性がある。
さらに、リース王国軍がミラング共和国軍以上に、支配したミラング共和国の国民を虐げるようなことをしてしまえば、すぐに、住民は反乱軍とかし、自分達に大きな損害を与えることになる。そのことを理解できないハミルニアではないからこそ、ここからはより慎重に自らの被害の可能性が少ない選択をしないといけない。
そして、情報は決して、多い方でもないし、集められる情報にはどうしても限界がある。敵国に関する情報に関しては―…。
それでも、集めることができた情報から判断しないといけない。
どんな重要な部分での情報が集まらないことがあったとしても、判断しないといけない時はそのようなことを考慮してくれるわけでもない。
そして、ハミルニアが持っている情報では、昨日のうちに、ミラング共和国軍が三つに分かれたということは伝わっていないし、その情報がもたらされるにはそれなりの時間がかかるだろう。日数を計算することをここではすべきではないかもしれない。
さて、ハミルニアは今のファルアールトが称賛されている……いや……ファルアールト自身が自らの側近に対してさせている称賛よりも、今後の方針に関しての重要な会議をさっさと開始して欲しい。敵であるミラング共和国軍が準備を完全に整えることができない間に―…。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(197)~最終章 滅亡戦争(52)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
では―…。