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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
541/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(195)~最終章 滅亡戦争(50)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。


翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。


戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。

その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。


翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。


リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に

、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。


リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。

その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。


ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。

その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。

一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。

その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。

一方で―…。

 ミラング共和国の首都ラルネ。

 その中にある有名な料亭と思われる場所。

 そこでは、会談がおこなわれていた。

 「早馬の情報だと、リース王国軍の奴らに敗れたそうだ。」

と、クロニードルが言う。

 ついさっき、会談している人間と話していると、そこに対外強硬派での情報共有をするための早馬に乗った者が今回のミラング共和国とリース王国における戦況を伝えにやってきたのだ。

 その結果を知って、クロニードルと会談相手は驚きを隠せなかった。

 あり得ないのだ。

 なぜなら、ミラング共和国軍は、周辺諸国と比べて、それらの国よりも強い軍事力を有しているからだ。

 そうである以上、周辺諸国であるリース王国に負ける理由がないのだ。

 「はあ、敗れたとなると、前回の戦争で奪われた………いや、我々に奪わせたファウンデーション領を取り返しに侵略してくるに違いない。」

と、会談相手は言う。

 その人物は、ミラング共和国の中で政治家の家として有名な一族であり、その一族の当主である。

 その名はディマンド=ファウンデーション。

 対外強硬派の重鎮の一人である。

 「だろうな。」

と、クロニードルは言う。

 クロニードルの表情は、苦々しいものとなっており、ディマンドが舌打ちするのを見逃すぐらいに余裕がないものであった。

 それも一時的なものであり、すぐに、冷静さを取り戻す。

 だが、この二人は、頭が決して良い方ではないので、リース王国が次からファウンデーション領を狙ってくるだろうと思っていた。

 「ファウンデーション領は、ファットが行政官のトップとして治めており、領の経済も順調に回復しているという感じだ。特産品であり宝石類やその加工品は周辺諸国の貴族や王族、富裕商人層には好評だ。そこから得られる大金は、クロニードルさんにも―…。」

と、ディマンドは言う。

 ファウンデーション領は、ミラング共和国の領土となってから、一般的には経済の回復も好調となっており、そこから得られる利益はファットを中心として、ディマンドやクロニードルにも行き渡っている。ディマンドはファットから上納金という感じで、クロニードルはファウンデーション領での一族に商売の全権を手に入れることによって―…。

 そのため、この二人にとっては、ファウンデーション領は好調に経済が回復していると判断しているのだ。

 「ああ、一族の者達が喜んでおったわい。だが、ファウンデーション領がリース王国の連中に奪われれば、一族どもの商売が成り立たんくなる。リース王国の奴らは、儂の一族の商売が上手くいっていることが気に食わないから………いや……儂が頑張って良くしたファウンデーション領の利益を奪うために―……。なんて卑劣な奴らだ!!! 許せん!!!」

と、クロニードルは最後の方で怒りを感じるのだった。

 その理由は途轍もなく簡単なことであり、リース王国のアルデルダ領を奪った後、ファウンデーション領と名を変えた後、それを発展させるためにどれだけの苦労をしたというのか。

 反抗してくる輩を武力やアマティック教を使って鎮圧し、自分達の言うことを聞くようにして、かつ、タダ同然にして働かせるようにした。時には危険な薬などを使い、薬を手に入れるために厳しい労働ノロマを課したほどだ。そうすることで、生産性を上げたのだから―…。

 そう、ファウンデーション領の経済回復には、このような闇の部分が強く存在するし、その噂はしっかりと情報をとることができる商人達にはバレているし、利益に汚い商人達がそこからお零れを得ようとして、運搬を請け負っていたりする。

 危険な薬に関しては、この薬をミラング共和国内で製造することは禁止されているから、隣国のリース王国で生産していたりする。その工場には、ラーンドル一派の人間が関わっていたりする。その利益の一部はラーンドル一派も吸い上げており、リース王国とミラング共和国の関係はかなり複雑である。

 まあ、それでも、危険な薬の生産は、今回のミラング共和国とリース王国の戦争中でも続いているし、運搬もされている。なぜなら、薬を求める需要は常に一定数あるのだから―…。そして、高額にふっかけても、確実に買ってくれるのだから―…。

 その薬のせいで、ファウンデーション領の一部の者は食べ物を買うことができず、餓死すらしている。ファウンデーション領では問題となっていたが、ファットはそのようなことを上に知られるわけにはいかないので、外に漏れないようにしていた。だけど、漏れているのだが、その利益を得たい者達からすれば、労働者の犠牲など微々たるものでしかないし、替えはいくらでもいると思っているので、何も対策をうってはいない。うつ必要すらないと思っている。

 残念なことに、利益に汚染され、自分だけが救われれば良いと思っている輩が上に立つと、このようなことになるのだ。彼らはある意味で囚人であり、自ら囚人になることを意味も分からずに言っているのだから、そして、実行しているのだから、愚かでしかない。

 さて、話を戻す。

 「ああ、感謝してる。」

と、クロニードルは感謝の意を伝える。

 クロニードルの一族は、ファウンデーション領で唯一の商売をおこなうことができる商会ということになった。元からいた商売をおこなう者達は、全員、クロニードルの商会に入会させられ、そこからクロニードルの一族に税金とは別に上納金を支払うようにさせられたのだ。

 この二重苦により、生活をかなり崩壊させてしまった商人も多い。

 そして、ファウンデーション領で生産された工芸品は、クロニードルの一族と関係のある者たちによって、中抜きだけでなく、法外な値段で商売されることになり、品質は良かったので、貴族や王族、富裕商人に売れたりしたのだ。他国や自国の―…。

 それゆえに、クロニードルの一族はファブラの鉱山利権だけでなく、ファウンデーション領の商売でも多額の利益を得たことになり、ミラング共和国一番の商会の家になったのだ。

 その利益に与ろうとして、クロニードルの一族に関わろうとするミラング共和国の商会や商人達はここ五年と半年で増加し、その勢力によって、クロニードルはミラング共和国の中での地位をさらに盤石にさせることができた。

 その基盤の一つであるファウンデーション領を失うことは、クロニードルの一族の基盤を一つを失う結果となり、それに加えて、失った結果、離反を招くことになり、裏切り者達が何か重要な情報を漏らすことは必須だ。クロニードルの一族にとって不都合な情報が―…。

 最後に、クロニードルやディマンドは、なぜリース王国が再度、ミラング共和国のファウンデーション領に攻めるのかという理由を予測している。

 それは、ファウンデーション領がここ数年でミラング共和国の領土になってから、経済が回復しており、それに嫉妬して、奪って、自分達の利益にしようと考えている、と。

 だけど、本当の理由はそこにはなく、リース王国のラーンドル一派の方もファウンデーション領の経済回復の実態が何かであることを理解しているし、そこまで、ファウンデーション領に利益など気にしていない。それ以上に、海外からの貿易によって得られる利益が大きいのだ。そっちの方に比べると、ファウンデーション領の経済回復によるものは微々たるものでしかない。

 つまり、ファウンデーション領を狙うとすれば、ミラング共和国の総統であるエルゲルダがリース王国に対して戦争を仕掛けてきたのだから、逆に、征服仕返そうとしているだけに過ぎない。それ以上の理由がない。

 人とは、時に相手の意図を越えて、解釈するものである。

 「こうなったら、何が何でも死守するように、ラウナンに対して、圧力を―…。」

と、ディマンドは言う。

 ディマンドとしては、自らの勢力基盤のために、ファウンデーション領を守りたい。

 だが―…。

 「そういう発言はするべきではない。この国の支配者は、エルゲルダ様が表向きであって、実質はラウナンによって握られているのだ。ラウナンに対して、圧力をかけるなど、口は慎むべきだ。どこでシエルマスが監視しているか分からないからの~う。」

と、クロニードルは言う。

 クロニードルでもラウナンに対して、逆らうことができないと分かるほどなのだ。

 ラウナンというか、ラウナンの率いるシエルマスを恐れているのだ。

 シエルマスにクロニードルが対処できることはできない以上、ラウナンに大人しく従うしかない。

 (ラウナンのような裏でしか動けない野郎が権力を握るとは―…。ここまで調子に乗るとはなぁ~。だが、場合によっては、別の意味で動きを変えないといけないな。儂は政治家でもあり、商人人脈も持っている。ディマンドごときの政治家の家にただ、生まれたわけじゃねぇ~。)

と、クロニードルは心の中で思う。

 なぜなら、彼は老人と言われてもおかしくない年齢ではあるけれど、人脈というものはかなりある。

 長い生きをしているからというのもあるが、クロニードルは大商人界隈や政治家の者達と幼い頃から関わることがあり、彼らの思考や考えというものをしっかりと理解しており、その中で、生き抜くためにはどうすれば良いのかを自然に身に付けられる環境にあった。

 穏健派の元トップであった者とは考えの違いから一時的に離れていたが、ラウナンが対外強硬派に関わったことから、そっちの方へと向かった。ラウナンに逆らってはいけないという感覚を本人と出会った時に分かったからだ。

 それでも、ラウナンが完璧な存在であるとはいえない。

 そのことを理解しているからこそ、ラウナンが不利になり、こっちまで目を光らせることができなくなれば、クロニードルはすぐにでもこれからミラング共和国の中で有力になる者へと、交渉して、手を結ぶ気でいる。

 政治とは、世渡りが上手くなければ生きていけないのだ。

 信念が大事だと言われるが、現実に政治家として長生きできるのは、機を見るに敏でないといけない。いくら信念というものを持っていたとしても、強い権力の前では無力な代物でしかない。

 そのことを理解しているからクロニードルは、信念なんかよりも現実を優先する。ただし、政治の世界におけるものであり、ミラング共和国の国民のためのものではない。自身とその一族および自分の味方の商売関係者の上の者が利益を得られるようにするためにしか行動しない。

 いくらそれ以外の者に対して、良いように振舞ったとしても、金に一銭たりともなるわけではないし、余計な期待を抱かれて、自由に行動をすることができなくなるだけだ。

 そのようにクロニードルは考えている以上、彼は自分から利益を得ることができる資格のある者以外は、搾り取られて当然であるし、彼らが不幸になっても知らないことだし、無視して良いことだと認識している。

 このような考えは、結局、自分という人間の視野を狭ませることになるし、かつ、すべてが間違っていない結果になったとしても、完全な解答ではないからこそ、クロニードルは安寧の反対に位置するものから逃れることはできない。

 そう、クロニードルが無視した利益を甘受すべき資格のない者達による自らの奪われる利益を守るための行動のせいで、クロニードルは後に、ミラング共和国が存続したとしても、苦しめられることになり、ろくな最後を迎える可能性はかなり低かったであろうし、結局、ミラング共和国に住む人々からの本当の信頼を得ることによって手に入る利益を知ることはなかったであろう。

 未来を完全に理解することも、予知することもできないのであるから、確定的に断言することはできない。

 「………………。」

と、ディマンドはクロニードルの言葉に反応することができずに、黙り込むのだった。

 その後、いくつかの会話が繰り広げられることになり、お開きとなった。

 その様子をシエルマスの工作員が監視していたが、脅威はほとんどないと判断し、放置となった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(196)~最終章 滅亡戦争(51)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


では―…。

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