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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
540/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(194)~最終章 滅亡戦争(49)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。


翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。


戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。

その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。


翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。


リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に

、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。


リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。

その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。


ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。

その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。

一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。

その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。

一方で―…。

 オットルー領内。

 すでに日が沈み、闇が夜を包んでいる時。

 目から見ると、視界というものが黒となり、進むことを止めさせるようにさせている。

 そんななか―…。

 「裏の者からの情報によれば、今日の戦いでリース王国軍が勝利し、ミラング共和国軍が領内に撤退したとのこと。リーンウルネ様。」

と、リーンウルネの従者の一人がいる。

 リーンウルネがなぜこのような場所にいるのか。

 それは、リーンウルネは今回のリース王国とミラング共和国軍の戦争が開始されるという、エルゲルダによるリース王国への宣戦布告を知った時から、どのような可能性になるのかを考えていた。

 その中で、ミラング共和国という国がどういう国であるのかを、周辺諸国を探っている裏の者たちから集め、かつ、ラーンドル一派の息のかかっていない商人達からの情報をも集め、自らの得た知識、経験などからいくつかの大まかな可能性に辿り着いた。

 一つとしては、ミラング共和国がリース王国と戦争する前に、ラフェラル王国と戦争をしており、その時に、ミラング共和国で投入した天成獣部隊の三割がラフェラル王国と契約している傭兵集団によって、殺されているということだ。

 ここから考えられるのは、リース王国への戦争までの期間から考えて、補充すること、再編成することができる可能性はかなり低いということだ。なぜなら、天成獣の宿っている武器をラフェラル王国との戦争の中で、味方の武器をどれだけ回収できたかということも重要であるが、天成獣に選ばれるのはかなり確率の低いことである。

 天成獣の宿っている武器が扱えるためには、天成獣に選ばれる必要があるのはその武器を扱う者にとっては常識ぐらいに知れ渡っていることだ。選ばれない場合は、持ち上げることができても、力を借りることができず、普通の武器と変わらない。

 それに加えて、天成獣は、天成獣自身が認めなければ、扱えないようにしており、それを選ぶのが、人の側では分からないということだ。賭けの要素であり、未知の要素でもある。

 ミラング共和国軍のことであるから、軍人だけでなく、後方部隊を含めて、天成獣の宿っている武器に選ばれる可能性の、リース王国でいう「騎士試し」に相当するものがおこなわれているはずだ。

 実際、ラフェラル王国との戦争前の状態までに完全に回復させることはできなかったのだから、ミラング共和国側は大きな戦力を回復させることはできていない。

 リース王国軍が勝つ可能性があるのなら、そこと同時に、こちらは前回のリース王国とミラング共和国との戦争の時に、かなりの活躍した人物を惜しげもなく投入し、最初から戦線を有利に優位を確立することである。

 そうすれば、どんな強力な軍隊を有する国であっても、それを盛り返すにはかなりの時間がかかる。いや、その編成をする暇を与えないようにすれば良い。

 それは可能である。ラーンドル一派の息のかかった人間が、相手が弱っているチャンスに攻撃を仕掛けないという選択肢をしないはずだ。なぜなら、チャンスをみすみす潰すなんて絶対にしてはいけないことであるとはっきりと分かっているからだし、チャンスを潰すのは愚か者がすることであると思っているからだ。

 その優位になる可能性を考慮しながら、リーンウルネは戦争相手国であるミラング共和国に裏からコソコソと侵入し、相手国側を崩す工作に出ていることになる。ただし、脅しというよりも、相手国側の弱点を突くというような感じだ。

 ミラング共和国の内情は、いろいろと知っている。

 「そうかの~う。儂の考えの中では、良い方向であるが、懸念点しかないの~う。ミラング共和国軍がこのままで終わるとは思えないし、リース王国軍は必ず三つに分けて、ミラング共和国の首都ラルネの方へと向かっていくじゃろう。その時、必ずやミラング共和国の住民は、リース王国軍が勝てば、かなりの被害を受けるのは避けられないし、戦いがミラング共和国の中で起これば、必ず発生するの~う。戦争だから仕方ないということで諦めるのは簡単じゃが、被害はなるべく最小限にした方が良い。ミラング共和国の各領土の領主もミラング共和国の今の体制に完全に賛成しているわけでもあるまい。そこを突いていくしかない。」

と、リーンウルネは言う。

 リーンウルネは、分かっている。

 物語で語られる戦争なんて、この世のどこにも存在しないことを―…。

 戦争をすることが国を守るための美しいものだというのなら、自分から見ているヘドロなどの汚いと多くの者が思っているものさえ美しいとみなすことができるであろう。

 後者に関しては、美しいと思えるのであれば、変わり者か、それとも、とんでもないほどに心の広い者であるかもしれない。

 だが、多くの者はそうでない。

 それなのに、戦争に関して、美しい、勇ましい活躍ができる機会だと捉えるのなら、それは絶対に戦争に対する一面しか見ようとしていない視野狭窄の人間であることを自覚した方が良い。

 戦争は決して美しくなどない。

 戦争というものは、勝てば勝った兵士による負けた側の人間に対する酷い仕打ちがおこなわれていたりするものだ。ここでは言葉にすることもしたくないほどだ。想像すれば分かるだろう。自分が世界の支配者であり、他者に対して何も許されるのであれば、他者の尊厳を傷つけることを厭わないことをしても良いと思うであろう。その具体例がまさにそうだ。

 想像し、言葉にしたくもない。

 だけど、戦争ではそのようなことが起こるのだ。

 自らの軍隊は、素晴らしい精神やら、何々魂を持っているからしないなど、という考えは今すぐ捨てた方が良い。

 人は善人であり、悪人だ。

 その双方を持ち合わせているから、人という面を構成しているのだ。

 そのことを無視して、過剰にある人、所属する人々のことを美化するのは、危険なことでしかない。

 いい加減に気づけ、とそのような美化概念に囚われている者達には問いたい。

 さて、話が逸れてきたので本旨に戻すと、リーンウルネはリース王国軍が勝っていき、ミラング共和国軍の領土を支配していく過程で、リース王国軍の兵士はミラング共和国の降伏兵および住民に対して、酷い仕打ちをするのは分かっている。特に、リース王国軍の中央軍が―…。

 自らの息のかかったリース王国軍の左軍の指揮官であったとしても、部下がしないという保障はどこにもない。どんな組織も一枚岩であることなどない。目的を達成して、そこから個々人に都合の良い利益を得ることができれば、途中や考えが異なっても成り立つのが組織だ。

 だからこそ、ハミルニアがミラング共和国軍の降伏兵およびミラング共和国に住んでいる住民に対する酷い仕打ち、例えば、虐殺、強姦などをすることを禁止し、その禁止事項を犯せば、重い罰を課すとしても、抜け目がないわけではないし、ハミルニアらに見えないようにして、禁止事項を犯す可能性は十分にある。

 組織が一枚岩でないことによる弊害とも言える。

 だが、組織が一枚岩になることによる弊害も存在する。例えば、ミラング共和国の対外強硬派、シエルマスのおこなっているのを見ていただければ、分かっていただけるだろう。

 一枚岩であるからこそ、暴走すれば、最悪の結果へと一直線へと向かっていくのだということを―…。

 そのことを理解することもなく、権力闘争に溺れ、すべての物事は自分の思い通りのままにしようとする者は多いであろうし、そのことをすることを善行のように感じて、このことに対するデメリットに目を一切向けようとしない。

 これ以上、このことに触れても本筋からズレていくので、ここまでしておこう。

 そして、どんなに一枚岩にしようとも、本当の意味で一枚岩にすることなどできるはずもない。

 なぜなら、人は他人の気持ちを完全にすべてを理解することができるわけではないし、それと同時に、すべてのことで賛成してくれるわけでもない。

 権力を持っていると思われる者についていくことで、自らにその権力を行使することによって得られるお零れに与りたいだけだ。そのお零れがいつまでもあるかどうかという問いが発せられれば、こう答えるしかない。そんなものは永続にはない、と―…。

 ゆえに、決して完全に同じではないのだから、程度によっては、力のあるうちは従うが、弱れば、どこかのタイミングで離反することを考えていてもおかしくはないのだ。

 そして、今の対外強硬派に不満を持っている者だっている。

 そうなると、今まで、力によって防いできたものが、力では防げなくなるし、力に対抗するために、権力者の動向を利用することだってある。敵の動向さえも利用する。

 そうやって、自らが生き残ることを、いや、自らと自らの勢力にある者達を生き残るようにするのだ。

 生き残らなければ、次の利益を得ることもできないし、自らにとって幸せだと思える未来に辿り着く可能性を消滅させてしまうことになる。自分が報われない未来をほとんどの人は嫌がる。決して、そこに自分が望む未来というものが存在しない結果になったとしても―…。

 より、さっきのことと違いがあるかもしれないが、オットルー領を具体的に例として説明していくのであれば、オットルー領の領主は穏健派との繋がりが強かった。理由としては、リース王国と対立することはオットルー領の領内における利益を損なうだけでなく、リース王国との対立の矢面に立たされることになるので、損益を被るのは必須だし、人材を失うことのリスクが高すぎる。

 そう考えれば、リース王国とミラング共和国が対立せず、交易をしっかりとおこなっていれば、宿泊関係で使われる金銭やオットルー領地ならでは特産品を売る方が、利益になり、雇用にも繋がり、領の繁栄にも繋がる。

 だからこそ、対外強硬派の人間がミラング共和国のトップになった時、あまり心の奥底では歓迎することができなかった。リース王国との交易が途絶える可能性に怯えないといけなくなった。交易によって得られる利益を失えば、領内の経営もままならぬことになる。

 だけど、今まで、リース王国との交易は完全に途絶えることなく上手くやってきている。それは、ミラング共和国の対外強硬派に気づかれても文句を言われない程度の規模でおこなっていたし、今の戦争中であっても、必需品の中でもリース王国から運んだ方が安い物もあるので、その物資のルートに自領のルートを入れているからである。

 ファウンデーション領は、そこまで治安が良くないので、近道しないといけない物資はそのルートを使わざるをえないが、そうじゃないものはオットルー領地を回った方がラルネまでの運搬が安くなる。ファウンデーション領を使うよりも―…。

 オットルー領地は、自分達の利益がどのようにして得られているのかを理解しているからこそ、交易の大事さを理解しているからこそ、自分達がしないといけないこと、自分達を危機に巻き込まれないことに対して悩むことができているのだ。そのことによって下している選択だからこそ、最悪の結果になっていないのだろう。

 そして、オットルー領内では、今、リーンウルネが言っているように、今のミラング共和国の体制に関しては、しっかりと不満を抱いているし、リース王国側の勝利により、ミラング共和国から最悪の場合は離脱して、リース王国に属すべきではないかという案すら浮かんでいるのが実情だ。

 それをシエルマスが知らないわけではないが、そのこともオットルー領の支配層は勘づいていたりする。

 そこをリーンウルネは狙っているのだ。

 場合によっては、リーンウルネの思惑通りに戦果を減らすことによって、リース王国の領土を増やすことができるし、自身の勢力の拡大もできるからだ。

 「そうですか。」

と、従者が反応し、それ以後は会話がなくなる。

 そして、この日は、野宿をして、オットルー領地の領主のいる場所へと目指していくのであった。

番外編 ミラング共和国滅亡物語(195)~最終章 滅亡戦争(50)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


では―…。

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