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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
539/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(193)~最終章 滅亡戦争(48)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。


翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。


戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。

その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。


翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。


リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に

、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。


リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。

その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。


ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。

その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。

一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするか?

 「これが、ファットが貯め込んでたものですか。」

と、ラウナンは言う。

 ラウナンがやってきたことにフィードもドグラードも気づき、すぐに緊張感を纏わせる。

 その緊張感には、ミスをすれば自らの命が危ういということだ。

 たとえ、自らの上司であったとしても……だ。

 「ええ。」

と、フィードは言う。

 ラウナンは、

 (………フィードは優秀だな。彼が国内担当首席をやってくれているからこそ、私はエルゲルダの側で、奴がおかしな行動しないようにゆっくりと監視できる。そして、この金庫にある資金をラルネに運び込みさえすれば……………………、大量の工作をすることができ、リース王国軍を混乱に陥れることができる。素晴らしい、ファットよ。死んでこそ、貴様は感謝される。)

と、心の中で言う。

 ラウナンにとって、手に平の上で踊る者こそ、他者という者の価値であり、それ以外はいらない。

 そして、ファットは、生きている間に掌で踊りながら、反抗し、最後に自らの命が奪われることによって、ラウナンにとっての価値を達成してくれたのだ。

 ファットがもし、幽霊という存在になることができるならば、シエルマスのことを恨み、呪い殺そうと考えているだけでなく、実行していたことであろう。そうなれば、さすがのラウナンでも対処できない可能性の方が高い。

 幽霊とか霊体とか言われるものの存在に関しては、あるかどうかも分からない。否定することも肯定することもできない。厄介な概念である。

 実際には、そのことは分からないので、存在するかしないかという考えを無視して、ファットという存在はラウナンによって認められたのだ。ファットが望みもしない方向で―…。

 ファットはこの資金を自分のために貯め込んでいただけだ。

 ラウナンは、金庫を見ながらもすぐに行動に移る。

 「これをラルネのシエルマスの本部へと運んでおけ。」

と、ラウナンが言う。

 そのラウナンの言葉が終わると、影に隠れていたシエルマスの工作員が十数人も現われ、彼らは一斉にラウナンに命令された行動をとる。

 それは、ラウナンに忠実に命令に従うことが、シエルマスの中で生き残るためには必要なことなのだ。

 それに加え、ラウナンはシエルマスのトップである統領の地位にある人物で、シエルマスという組織が統領絶対支配という性格を実質に持ち合わせているのだ。

 統領の地位に就く者は、諜報および謀略、暗殺戦闘における組織の中で一番の実力を有していないといけないし、さらに、天成獣の宿っている武器を上手く扱える者の方が就任しやすかったりする。

 それは、実力で他人を従わせることができるからだ。

 この組織は分裂してしまえば、簡単に崩壊するようなものであったら困るし、ミラング共和国の内の政府への反乱分子、危険存在、周辺諸国の動向を探り、場合によってはミラング共和国にとって都合良い状態にするのだ。

 ラウナンは、自主的に自分にとって、ミラング共和国のためという名目のもとに、好き勝手している。

 結局、自身の欲望を達成することでしかないが―…。

 そんなラウナンの欲望に対して、シエルマスの誰もが反抗することができない。できるはずもない。

 ラウナンがシエルマスの中で、一番の実力を有しているし、入ってきた時からラウナンの実力を見せつけられ、反抗することを許さないほどに、反抗心というものを折ってしまうのだから―…。

 「俺たちも金庫室にある物の回収に―…。」

と、ドグラードが言いかけると―…。

 「ドグラード。お前には、別行動をとってもらう。」

と、ラウナンが言う。

 ラウナンにとっては、ドグラードに金庫室の金などの金目の物を回収させて、ラルネに運ばせるよりもさせないといけないことがある。

 責任を取らせるということではなくて―…。

 「何ですか。指令は―…。」

と、ドグラードは尋ねる。

 「指令か。しばらくの間、ドグラード、リース王国軍の左軍の方に張り付いていて欲しい。旧穏健派の生き残りが、変な行動をしないか監視しておけ。オットルー領方面の指揮官となるあの女が我々を裏切るかもしれん。」

と、ラウナンは言う。

 言葉としては大きな声というものではなく、ドグラードにギリギリ聞こえるぐらいのものである。

 指令内容である以上、必要を超える人数にその内容が聞こえてしまうのは良くない結果となる。

 例えば、情報が漏れてしまい、相手方に対策を講じられる場合がある。そうなった場合、こちらの指令が目指す目的を達成することができなくなる。

 それだけは避けないといけない。

 そんななか、ラウナンは、

 (あの女、名前は確かイルターシャとか言ったか。あの女がなぜミラング共和国軍の中で出世しているのか意味不明だ。何かしらの手を使ったのは確かだが、我々すら予想することができないとなると、どこかで排除しないといけない。なかなか機会がなかったが、戦争のどさくさなら、何とかなるはずだ。私はグルゼンに勝った人間なのだ。できないことはない。)

と、心の中で思う。

 ラウナンは、イルターシャという人間のことを信用することができないでいる。イルターシャからは、なぜか分からないけど、信用してはいけないという勘がはたらくのだ。それは正しいと思っている。

 さらに、イルターシャが女性であることから、さらに、その人物が出世していることに怪しい何かがあるのではないかと思っているのだ。

 そして、今、イルターシャは、オットルー領に自らが指揮官として赴いているのだ。

 ファルケンシュタイロは怪しむことはなかっただろう。なぜなら、情報によれば、リース王国軍の左軍がオットルー領の方へと向かう可能性があるとのことだ。この情報は、シエルマスの工作員の中で、

リース王国軍の中央に潜り込ませている潜入員が、中央軍のトップに近しい人物に会話を盗み聞きして手に入れたものだ。それだけ実現される可能性が高いということである。

 ファルケンシュタイロは、イルターシャがリース王国軍の左軍によって、簡単に倒されてしまう未来を見ているだろうし、大きな損害を受け、旧グルゼンの部下であった者達を合法的に始末することができる。どんな作戦を採ろうが、イルターシャごときに対処できる局面ではないと思っているのだ。

 一方で、ラウナンは別の可能性を考えている。

 それは可能性でしかないが、イルターシャがリース王国軍に対して、すぐに降参するのではないか、と。そのことを考えた場合、リース王国軍の左軍に降参した方が味方の軍が酷い目に遭う可能性が低くなり、身の安全が保障されやすくなる。そういう計算ができるのであれば、かなり厄介な存在となる。

 だけど、ラウナンは自らの記憶そのものを捻じ曲げている。

 そう、グルゼンは殺されておらず、グルゼンに倒されたのがラウナンであることを―…。先のミラング共和国とリース王国の戦争の中で―…。

 その捻じ曲げを正当化するがゆえに、自分は完璧であり、できないことはないという結論に辿り着く。

 人という生き物は完璧にも、完全にもなれるはずがない。それを目指すことができるだけで―…。

 そのようなことにはラウナンを含め、多くの者が気づきもしないことである。身を弁えることを知ってる者達が、上手く他の要素を上手く折り合いをつけながら、やっているだけだ。

 さて、話を戻すと、ラウナンはこれからイルターシャの方を見張るようにドグラードに命じている。

 ドグラードの返事は決まっている。

 「はい。」

 それ以外の返事は認められない。

 ドグラードがたとえ、シエルマスの西方担当の首席であっても、ラウナンはシエルマスのトップである統領であるから、逆らうことなんてできない。ラウナンが滅茶苦茶な難易度の任務を指令してきたとしても、できないという言葉は使ってはいけないし、言ってもならない。それは、自らの命の終わりをすぐに迎えることになる運命という名の言葉を実行されるだけなのだから―…。

 ドグラードは消えるのだった。

 逃げたのではない。

 ラウナンの指令を実行するために、イルターシャのいる場所へと向かって行ったのだ。

 (さて、あの女が我々を裏切るのであれば、シエルマスがそれを許さない。我々は、誰もが逆らうことのできない実力を有している。)

と、ラウナンは心の中で思いながら―…。

 そして、金庫室の金貨や貴金属などの品物のほとんどは運び出されてしまっていた。

 ラウナンとドグラードが会話している間に―…。

 そういう意味では、シエルマスという組織の工作のための作業の早さから優秀な組織であることがわかる。

 それでも、何でもかんでも優秀であることはない。

 なぜなら、完璧や完全に人はなれないのだから、どこかしらに綻びがあったりするのだ。

 さて、ラウナンにとっては、イルターシャというのは許されない存在であるし、ミラング共和国の概念を刷り込まれている典型的な人物の特徴を有している以上、女性が男性より優れているということは許されないことである。

 そのため、イルターシャがミラング共和国軍の中で出世していることは、前の文の条件に当てはまることになる。

 そして、ミラング共和国の典型的な人物の考えをもっているからこそ、イルターシャを見下し、さらに、シエルマスの統領であるラウナンがミラング共和国における権力を実質握っているのだから、誰も逆らうことはできないし、それができるための実力がある。

 そう、ラウナンははっきりと自信をもって思っているし、間違いなど起こりはしないと思っている。

 そして、ラウナンは人間であり、完璧で、何でも合理的に最大の効用を見つけ、判断することのできる存在では実際にない。

 (私の手の上で踊っていないといけない。踊らない奴は、始末しないと―…。)

と、ラウナンは心の中で思い、続けるのだった。

 そう、ラウナンは、自らの思い通りにならないと文句を言う人と何も本質は変わらない。

 他者から得られる自分では見つけることのできないものを無視して―…。

 そして、ラウナンは、この金庫室から消えるのであった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(194)~最終章 滅亡戦争(49)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


ブックマークしてくれた人が増えました。

ブックマークをしていただきありがとうございます。

ポイントが増えると、気持ちが嬉しくなります。感謝しかありません。

『水晶』の番外編「ミラング共和国滅亡物語」も最終章となり、その中でも中盤ぐらいだと思いますが、無理しない程度に頑張って執筆していきます。

では―…。

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