番外編 ミラング共和国滅亡物語(192)~最終章 滅亡戦争(47)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。
その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。
一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするか?
時間を少しだけ戻る。
場所は、ミラング共和国軍の会議が開かれている場所。
そこでは、今後の作戦の大まかな方針は決まり、ミラング共和国軍を三つに割って、リース王国軍に対処することになった。
一つはオットルー領、もう一つはクローデル領、最後にファウンデーション領の三つである。
「では、どこに配置するかを決めることにする。」
と、ファルケンシュタイロが言う。
その言葉によって、自分達がこれからどういうことをするのかを理解した上で、どこの方が自分が活躍できるのか、と決める時がきたのだ。
それと同時に、最悪の場合、自分が生き残れる可能性を上げるための選択肢でもある。
(ファルケンシュタイロ様がいる場所へとついていくことができれば―…。)
(ファルケンシュタイロ様がいる軍団に決まっているだろ。)
ミラング共和国軍の将校の中で、ファルケンシュタイロがいる軍団の方へと一緒に同行する方が生き残る確率は高くなる。
なぜなら、ファルケンシュタイロはミラング共和国軍の英雄であり、彼の軍隊にいれば、勝利する可能性が高いということを実績として分かっているのだ。
これは自らが生き残るための賭けということも意味しているからだ。
「ラウナンは、このままファウンデーション領で、リース王国軍の足止めを担当してもらう。たぶんだが、ここにはリース王国軍の中央軍が向かってくる可能性が高い。中央軍のトップはシエルマスの情報からによると、自分が手柄を挙げることに必死のようだ。ならば、ファウンデーション領の領都であるミグリアドを陥落させた方が一番だと判断する可能性が高い。そして、私は、クローデル領の方へと向かい、そっちで押し返すために奮迅することにする。オットルー領の方に関しては―…。」
と、ファルケンシュタイロは言いながら、誰に任せようかと見渡す。
ファルケンシュタイロの考えとしては、オットルー領の方がリース王国軍の左軍がやってくるかもしれないという可能性があると思っているのだ。
オットルー領地は、ミラング共和国に対して、今、かなりの猜疑心をもっていることは分かっている。あまり言うことを聞いてくれる領地ではないからだ。
ならば、妨害される可能性があり、そこに軍を割いている暇はないし、ファルケンシュタイロにとって気に食わない人間を向かわせるのが適当ではないかと思うのだ。
そう思っていると―…。
「私がオットルー領地で指揮を執りましょう。」
と、イルターシャが手を挙げ、志願する。
まるで、ファルケンシュタイロには天啓としか思えなかった。
(女の分際でいつの間にか将校になっているとか―…。許されないことだが、まあ、オットルー領地を指揮させてみるか。こいつらがいくらしくじっても、グルゼンの元部下どもの数が減るだけだ。)
と、ファルケンシュタイロは心の中で思う。
ファルケンシュタイロにとって、ラウナンによって始末されたグルゼンのことをいつまでも気にすることができないというわけではない。グルゼンという存在はファルケンシュタイロにとって邪魔であるが、それだけ彼を意識してしまっている以上、ラウナンによってグルゼンが始末されたとしても、グルゼンの幻影は消えることなく、心の中で思い浮かび上がらせ、グルゼンの元部下達をも戦争の中で危険な地に送ろうとする気持ちは消えない。
グルゼンをこの手で越えることができなかったファルケンシュタイロの後ろめたい気持ちのせいで―…。
だが、現実には、グルゼンはラウナンによって始末されてはおらず、どこかへと行方を晦ませている。正確に言えば、ベルグの部下となっている。
それをファルケンシュタイロは知らないであろうし、これからも知ることはないだろう。
そして、グルゼンの部下だった者たちの数を減らすことに迷いはない。
そうすることでしか、自身の気持ちをスッキリとまではいかないが、紛らわせることはできない。
ならば、答えは決まっている。
「そうか、任せよう。」
と、ファルケンシュタイロは言う。
ファルケンシュタイロの気持ちぐらい、簡単にイルターシャには理解できた。
(私の軍団にはかつてグルゼンの部下だった人間が多く在籍している。それは、ミラング共和国の中にある男尊女卑の考えと同時に、ファルケンシュタイロ元帥の中にあるグルゼンに対する劣等感の二つが奇妙に組み合わさることによって、成立したものに過ぎない。そして、何度も何度も、危険な戦地に送ることで、グルゼンの部下だった者および私を戦死という形で始末しようとした。大人気ない。幼き頃より与えられた考えを根底に肯定してしまっていることに起因し、それが正しいのかということを考える機会を持とうとしなかったのが、あの歪んだ気持ちを形成する上での要因の一つになってるぽいね。)
と、イルターシャは心の中で思う。
ファルケンシュタイロのグルゼンに対する劣等感と、ミラング共和国の男性が一般的に持っているとされる価値観によって、自身の軍団のメンバーは決められているのだと、イルターシャは理解しており、ファルケンシュタイロらのような人々を見下すことはしないが、あまり良い感情では見ていなかった。
男性を無理矢理にでも尊敬しないといけない社会に対して、女性が良い印象を抱きにくい。男に媚びていくことでしか上手くいかないのだから―…。
だけど、自分が逆の立場になったとして、自分がファルケンシュタイロのようにならないという可能性を考えるほどまでに、視野が広いというわけではない。
だが、今、そのようなことを考えても意味はないであろうし、その暇さえない。
イルターシャは、自分と部下がなるべく多く生き残るためにしないといけないことをする必要があるのだから―…。
「畏まりました。」
と、イルターシャは返事する。
自らの希望が叶ったのだから―…。
後は、自分が望んだ方向に上手く、リース王国軍の左軍がやってくるかどうか、ということだ。
こればかりは相手側の判断によるものであり、自らが介入できることではないので、自分ではどうしようもできない。自らにこのことに対する運があるのかどうかを祈るのみだ。
イルターシャは、この後の動向を見るために、喜ぶ気持ちを心の奥底に隠して、振り分けを聞いていくのだった。
「後は、将校たちの希望を聞きながらの配属となる。一部、俺の方から指定することになるがな。」
と、ファルケンシュタイロは言う。
ファルケンシュタイロにとっては、三つに割る軍団のバランスをしっかりさせることは重要なことである。
なぜなら、分割した軍のバランスが悪いと、すぐに、少ない方の軍が総崩れとなったり、突破されたりして、補わないといけなくなり、そこが隙となって、軍全体が総崩れしてしまうことになるのだから、それは避けないといけない。
ゆえに、イルターシャの方へと軍が集まらない可能性があるので、それを避けないといけなくなるのだ。それでも、イルターシャの方にはファルケンシュタイロが冷遇している者を所属させるという独断的な私見が含まれることになるのであるが―…。
その後、ミラング共和国軍を三つに割られることになり、翌日に、それぞれの持ち場へと向かうことになったのだ。
一方、話はファウンデーション領の金庫室。
そこでは、二人の人物がいた。
シエルマスの工作員だ。
それも、国内担当首席と西方担当首席である。
「ファットの野郎は、こんなにもたくさんの蓄財をおこなっていたということか。ファウンデーション領の民からこれほどの税金を集めて―…。いやぁ~、大したご身分だ。死んでしまえば、蓄えた金もあの世に持ち越しはできないけどな。」
と、西方担当首席のドグラードは言う。
皮肉である。
ファット=ファウンデーションは、国内担当首席のフィードによって始末されてしまったのだから、結局、蓄えた金も意味をなさないのだ。
お金はあの世に持ち越せないのだから―…。
本当にあの世があるかどうかは、寿命が尽きねば分からぬことでしかないが―…。
「まあ、子孫がいれば、その子孫が使っていたであろうから、意味はあったかもしれないな。だが、これほどの財産となると、ファウンデーション家の本家にも知らされていないものも含まれるかもな。戦争の資金にもなるし―…。一番まずいのは、この金がリース王国側に渡ることだ。これだけは避けないといけないな。」
と、フィードは言う。
フィードは、今、ミラング共和国がリース王国と戦争中であることは十分に理解している。その中で、一番まずいことは、ファットがこの五年と半年で私腹を肥やした金銭が、ミグリアドの陥落によって、リース王国軍に渡ることが一番に不味いことである。
その可能性は現時点で低いとフィードも見積もっているが、それでも、万が一ということがあるので、そのことに備えておかないといけない。
この山積みのような感じになっている金銭があれば、ミラング共和国はリース王国と戦争のための資金にすることができるし、リース王国側がファウンデーション領を占領したとしても、復興のために使える資金がない以上、リース王国側の持ち出しになるのだ。
ラーンドル一派がそのようなことで、自身の財産を使うことを好むかと言われれば、好まないので、結局、ファウンデーション領(旧アルデルダ領)に暮らす人々が自らの復興のために、自らのなけなしの資金を持ち出すことになり、なかなか復興が進まず、以前よりも貧しくなるだけなのだ。
本来、自らの力で自らの土地の復興にあたるのは当たり前のことであるが、ここで大事なのは、一人や自らの力だけでできることには限度があり、他者や公的機関からの協力が必要になるのだ。他者に関しては人であり、儲けを主としない団体であり、資金よりも人手という面で、公的機関は人脈および組織団体脈、資金や法律という面で―…。公的機関である政府および国の首脳部は、そこから税を普段からとっているのだから、税を支払っている人を助けなければ、その存在意義を問われることになる。それに、これは公的機関側にもメリットがあり、復興が早く終われば、そこへの長期的に資本を投入する機会を減らすこともできるし、そこから得られる税金の徴収も早めに可能になる。そのことを忘れてしまっては再度言うが、公的機関の存在意味があるのだろうか。政府を含めて―…。
そういうことの意味も理解できないのがラーンドル一派である。
ファウンデーション領の人々が自らの力で復興することで大事なのは、意志であり、その意志がなければ、そもそも共助とか公助とかしても、あまり良い結果になることは難しい。だけど、その意志を阻害するようなことを公的機関や政府がするようなことをしては絶対にいけない。そういうことをしてしまえば、その社会は絶望しかなく、希望は過去が良かったと縋りつくことしか残らず、人々の力を活かすこともできず、国およびその地域の崩壊という最悪の結果を導くだけだ。
結局、人という社会というものは助け助けられることによって、共同体として上手く成り立つのであろう。
「だけど、これだけの金を持ち運ぶのはかなり苦労するぜ。勿論、首都のラルネだろ。持ち運ぶ場所は―…。」
と、ドグラードが言う。
ミラング共和国の首都であるラルネへと運んでしまった方が、安全性が高い結果となるのだから―…。
ドグラードの考えに関しては、フィードも思い浮かんでいる。
だからこそ―…。
「ああ、運ぶ場所は決まっている。首都のラルネのシエルマスの本部だ。この金は、我々、シエルマスとラウナン様によって使われた方が効率的で素晴らしい結果になり、ミラング共和国もきちんと繁栄することになる。」
と、フィードは言う。
その言葉を聞いたドグラードは、何も言い返すこともなく、ただ頷くのだった。
ここで会話をしすぎてしまっているような感じもして、いち早く、この金庫室にある物をシエルマスの本部へと運ばないといけないのだ。
そこに、話し合いを終えたラウナンがやってくるのだった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(193)~最終章 滅亡戦争(48)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
お久しぶりです。
今日から、『水晶』の投稿を再開します。
だけど、2024年度は、投稿頻度を落として、投稿していきます。月曜日は全週で休みとして、それ以外の日は一週間交互に投稿、休みを繰り返すことになると思います。
これは、執筆ペースがなかなか上がらないことと、無理しないためです。
体調自体は調子は悪くないのですが、あまり無理すると、一気に悪い方にきそうな感じがするので、無理しないでできる感じで、2024年度は、以上のような投稿頻度になることが多くなると思います。ご迷惑をおかけいたします。
一応、2024年度には、去年の『水晶』の目標である「番外編 ミラング共和国滅亡物語」を完成させていくことにします。
今年も一年、『水晶』をよろしくお願いいたします。
では―…。