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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
536/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(190)~最終章 滅亡戦争(45)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。


翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。


戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。

その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。


翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。


リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に

、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。


リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。

その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。


ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。

 「リース王国軍は強い騎士二人と、アンバイドがいる以上、犠牲を無駄に増やすような突撃は危険だ。我が軍の作戦は、三方向に分かれ、それぞれに当たりながら、リース王国軍の中央軍を粉砕していくものにする。」

と、ファルケンシュタイロは言う。

 ファルケンシュタイロとしては、もうこれ以上は、ミラング共和国の国内への被害が出ることは避けられない。

 防衛戦になることは間違いない。

 だからこそ、ファルケンシュタイロは、リース王国軍が三つに軍を分けているので、ミラング共和国軍の方も再度三つに分け、それぞれで、リース王国軍に対峙するのが良いと判断を下したのだ。

 それに、リース王国軍で砕けば良いのは中央軍であり、中央軍自体はそこまで強くないのだ。ランシュとヒルバスがいないし、アンバイドもいない。

 ならば、そこを狙えば良い。

 「理由を話すが、リース王国軍の中央軍には、二人の騎士、後、アンバイドがいない。そして、シエルマスからの情報によれば、中央軍の方にリース王国軍の今回の戦争における総大将がいる。そいつの命を奪っていき、かつ、中央軍を全滅状態にしてしまえば、リース王国軍の左軍も右軍も、どうしようもできなくなるだろうからな。彼らは中央軍の指令には、忠実に従っているだろう。今までの戦いから分かることだ。」

と、付け加える。

 シエルマス、いや、ラウナンからもたらされた情報によると、リース王国軍の中央軍に総大将であるファルアールトがいるのは分かっている。

 ファルアールトがリース王国の全軍の指揮権を握っているので、彼を始末して、中央軍の方を壊滅状態にさせることができれば、リース王国軍に勝利することができるのではないかと、ファルケンシュタイロは思っているわけだ。

 その言葉に対して、反対しようなどという者はいない。いるはずもない。

 ファルケンシュタイロは、ミラング共和国の英雄であり、彼が戦争で負けるようなことは有り得ないのだ。有り得てはいけないのだ。

 それを帳消しにするために動かないといけないと、この場にいる者の多くは思っている。

 だけど、ファルケンシュタイロに関して、疑問に感じる者もいる。

 そんななか、イルターシャは心の中で思う。

 (三方に軍を割る。…………ならば、考えないといけないことは、いくつかあるわ。旧アルデルダ領であるファウンデーション領を守る軍。次に、オットルー領を守る軍。クローデル領を守る軍。この三つがリース王国と接しているし、この三領からでないと首都ラルネへと攻め入るのに、かなりの遠回りをする羽目になるわ。リース王国軍の方も三つに軍を割っているのであれば、そういう攻め方をしてくる。ここで、一番困難な場所はオットルー領かしら。情報によれば、リース王国軍の左軍のトップが中央軍のトップに恨まれているそうね。ならば、私は真っ先にオットルー領の方に向かう方が先決だわ。)

と。

 イルターシャは、リース王国軍が三つに軍を割ったまま、ミラング共和国の首都ラルネへと向かってくるだろうと予想している。その予想は、ファルケンシュタイロも想定している。

 そして、ここから重要となってくるのは、イルターシャはミラング共和国が征服されないという未来はほとんどないし、縋りつくほどのものではないと考えているのだ。

 なぜなら、イルターシャは元々、穏健派側の人間であり、今のミラング共和国の政権を握っている対外強硬派にはあまり良い印象を受けていないのだ。特に、対外強硬派によって企画された遠征、いや、侵略は、結局のところ、ミラング共和国を強国と思わせることはできたが、その成功が余計に、人々の邪な欲望を仰ぎたてることになってしまったし、人々の景気を良くすることはなかった。侵略から得られた利益がほんの僅かに人々の中に零れただけに過ぎず、多くの者の生活が良くなったかというと、そうではない。戦争に勝っているから、誤魔化せただけに過ぎない。

 リース王国に対して、宣戦布告をして、征服するどころか、返って、征服され返そうとなっているので、ミラング共和国内に住んでいる人々からの信頼は一気になくなることになるし、誤魔化せた問題も一気に噴出する可能性がある。

 だけど、シエルマスという組織がある以上、実際に起こっていることをミラング共和国の危機だと煽って、負けていることをミラング共和国の国民が怠けていることが原因だということに世論を誘導して、ミラング共和国に住んでいる人々を罪深き存在にしようとしているのだ。罪悪感を抱かせるようにして―…。

 まるで、ミラング共和国を衰退させたのは、ミラング共和国民のせいにして―…。

 現実の政治に、ミラング共和国に住んでいる人々がどれだけ自身に直接的な力を及ぼすことができたのだろうか。間接的にはどれほどなのか。そのことを考えることもなく、制度や体制だけを見て、実体もしくは実態を見ることなく判断して、発言することほどに愚かなものはない。物事を分析し、それに対する結論を発するぐらいのレベルになるのは、簡単なことではないし、時間がかかることなのだ。そのことを理解していて欲しいし、安易な言葉に騙されないで欲しい。

 人という生き物は、善であり悪であるのだから―…。善悪は主観的なものである以上、立場や状況によって簡単に入れ替わったりするものだ。だからこそ、人は状況に流されるだけでなく、考えられるのであれば、考えないといけない。そのために、視野を広くし、いろんなことを学ばないといけないのである。視野を狭くすることは時に、状況に対する最適と思われる解もしくは方法を見落とすことになる。それが最適な方法かどうかは本当の意味で、誰も認識することはできないが―…。

 さて、これ以上横道に逸れるわけにはいかないので、戻すことにしよう。

 イルターシャは、三つに分けるとオットルー領、旧アルデルダ領(今のファウンデーション領)、クローデル領から攻める方がミラング共和国の首都ラルネへと到達するには早いということになる。

 リース王国はそのような攻め方をしてくるので、ファルケンシュタイロの言うミラング共和国軍を三つに分ける方法になると、イルターシャはオットルー領の方が良いと判断するのだ。

 ファウンデーション領に関しては、旧アルデルダ領ということもあったので、リース王国軍の中で、その領地に詳しい者が軍人の中にいるだろうし、長く持ちこたえることは不可能であろう。

 ファウンデーション家の者とアマティック教の関係者が支配しているようだが、政治が良いものとは言えない以上、反乱をこの機に反乱を起こす可能性は十分にある。エルゲルダとは関係のない人物が―…。

 それでも、今のファウンデーション領の者達が反抗できるぐらいの体力があるかは不明だし、リース王国軍の中央軍が攻めてくる場合、ここの住民は酷い目に遭う可能性はかなり高い。

 イルターシャはそのように想定するし、この領地にいても意味はない。

 だけど、ファルケンシュタイロが最も嫌がるものとして考えるのが、オットルー領である。

 オットルー領は森や山が多く、攻めるのがかなり難しく、軍人であれば、攻めようなんて考えないし、守るのに向かない。さらに、オットルー領の領主は、あまりミラング共和国の今の体制に関して、あまり良い印象を抱いていないという噂がある。

 だからこそ、支援が得られない可能性も十分にあるのだ。

 そう思えば、ファルケンシュタイロも、ラウナンも嫌がるであろう。

 チャンスがあるのなら、オットルー領である。

 それに、リース王国でも、グルゼンの元部下で構成する軍隊は、かなり脅威であると認識されている可能性は高い。

 そうである以上、イルターシャはオットルー領の方を担当したい。

 リース王国軍の方も中央軍が嫌がるはずだ。

 つまり、中央軍の総大将であるファルアールトが、左軍の大将であるハミルニアにオットルー領側から攻めさせることに指令を下すはずだ。賭けの要素はあるが、外れる可能性が低い賭けでもあるとイルターシャは感じるのだった。女の勘の類だけど―…。

 イルターシャは、自分のすべきことを決めると、ファルケンシュタイロが言い始める。

 「では、ファウンデーション領を防衛する軍団と、オットルー領に向かう軍団、クローデル領に向かう軍団に分けることにしよう。」

と、ファルケンシュタイロが言うと、そこに―…。

 「おい!!! リース王国軍が攻めてくるんだ!!! さっさと俺の領地からミラング共和国軍の全部を使って追い出してくれよ!!!」

と、一人の人物がこの会議に乱入する。

 その人物は―…。

 「ファット様。」

と、ラウナンが言う。

 そう、乱入してきたのはファット=ファウンデーションであり、今のファウンデーション領の領主である。

 彼がどうしてこのようなことを言うのかは、少しだけ頭を働かせることですぐにでも理解できるであろう。

 そう―…。

 「三つになんて軍を分けたら、リース王国軍が一つに纏まって、俺の領地へと攻めてきた時、どうしてくれるんだ!!! 俺の領地がリース王国軍に支配されたら、俺は―…。」

と、ファットは興奮しながら言う。

 動揺が興奮のような感じになっているようだ。

 ファットにとっては、この領地は自分のものであり、自分の領地が今、危機に瀕しようとしているのだ。

 そう、リース王国軍がファウンデーション領を征服してしまえば、ファウンデーション領の領主であるファットは責任者として処分されることになる。

 生死のかかったことであることに間違いはない。

 ファウンデーション領の領兵を動員することはできるかもしれないが、リース王国軍を追い払えるほどの規模になることはない。できるのは、滅ぶ時間を稼ぐことぐらいだ。

 そのことを理解しているからこそ、自分を守ってもらうために、ミラング共和国軍には三つに分けないで欲しいのだ。

 必死の形相は、周囲には理解されるものであるが、だが、同情をかうことはできない。

 「ファット様。あなたの要望を聞くことはできません。我が国よりこの地の領主として任命されている以上、領を守るのはあなたの使命です。そのことによって、征服されるようなことがあれば、それはミラング共和国の責任ではなく、ファット=ファウンデーション様個人の責任であります。そうです。そうでないとおかしいですよね。」

と、ラウナンは言う。

 ミラング共和国の責任がないというのは嘘でしかない。

 ファウンデーション領は、ミラング共和国の領土だからこそ、それが征服されれば、当然にミラング共和国の政権にも責任が発生する。同時に、ファウンデーション領の領主にも責任が発生することは免れない。

 だけど、ラウナンならミラング共和国の責任ではないことにすることができる。

 方法はいたって簡単なことであり、ラウナンの言うことに異論を唱えるのであれば、実力で無理矢理に言うことを聞かせれば良いし、異論を唱える者を始末すれば良い。それをすることができるだけの実力をラウナンは有しているのである。

 そして、ラウナンはファットに対して圧をかける。

 (………ッ!!! これがシエルマスの統領の―………。だけど、この俺の領地をリース王国軍なんかに征服されてしまったら、折角の領主としての生活が―……。)

と、ファットは心の中で思う。

 ファットにとって、責任を取りたくないのと同時に、自分がこれまでしてきた生活が崩壊してしまうことに、恐怖を感じているのである。

 そのことによって、失われてしまった生活は元に戻ることはないだろうし、それよりも良い生活ができるという期待など持てるはずもない。

 そうなってくると、失う恐怖によって、何が何でも自分の今の状態を守りたいと思ってしまうものだ。人として、そう思うのは当たり前のことだし、それが人らしいということになる。

 だが、余計に失う未来を実現するかもしれない結果になることもあり得るわけだ。

 現に、そのような可能性を示しているだろう。高く―…。

 そんななかで、ファットは―…、

 「だが―…。」

と、僅かばかりの反抗をしようとするが―…。

 目の前からファットは消えるのであった。

 その光景に誰も驚かずにはいられなかった。

 (…………………シエルマスね。)

と、イルターシャだけが何が起こったのか、見ることができ、気づくことができ、ラウナンの意図を理解したのである。

 決して口にして発することはないが―…。

 「さて、これで作戦はよろしいですか?」

と、ラウナンは圧を発する感じで、問うのだった。

 逆らうことなどできない。

 肯定以外の返事は許されない。

 こうして、今後のミラング共和国の大きな方針が決定されるのだった。

 次は―…。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(191)~最終章 滅亡戦争(46)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


明日(2023年12月23日)の投稿で、2023年中の投稿を終えます。

そして、反省しないといけないことは決まっています。

番外編を仕上げることができなかったことです。

反省の理由は、どこか前の『水晶』の後書きで書いたと思いますが、いろんなものを入れ過ぎたことと、展開を早くさせられなかったことが原因です。反省します。

では―…。

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