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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
535/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(189)~最終章 滅亡戦争(44)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。


翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。


戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。

その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。


翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。


リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に

、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。


リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。

その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。


ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。

 (…………………やっぱりこうなった。ミラング共和国軍に多数の死者を出しているリース王国軍の二人の騎士の実力がどこまでかを判断することを完全にはできないけど、ミラング共和国軍が束になって敵うような相手ではないことは確かね。だから、早めにゲリラ戦に変えて、リース王国軍の二人の騎士をなるべく避けて戦わないといけないのよ。さらに、アンバイドもそう。今回の戦争でミラング共和国軍がリース王国の征服の可能性を高めるためには、危険人物以外のリース王国軍の兵士を減らしていって、上の人間が撤退と嫌でも判断させないといけない状況に追い込むこと。今までと戦ってきた相手が違うのだから―…。過去の勝利なんか、忘れてしまうぐらいにしないと―…。行方不明になったグルゼン将軍がいれば、話は違うかもしれないけど―…。)

と、一人の女将校は心の中で思う。

 イルターシャである。

 この五年と半年の間に、出世しており、今のミラング共和国軍の状況をしっかりと理解することができている。

 ランシュとヒルバスの実力がどれくらいかを完璧に判断することができないという自身の状況を理解しており、ミラング共和国軍が早めから自身の言っているゲリラ戦へと変えていたのであれば、まだ、リース王国を征服する可能性も十分に残されていた。

 だけど、心の中の言葉にはしていないが、イルターシャはリース王国を征服するのは不可能だと判断していた。なぜなら、リース王国を征服したとしても、いつものように圧政を加えることで支配することが可能かというと、そうならないと思っているからだ。リース王国に二人の騎士がいる以上、彼らの実力があれば、二人だけでミラング共和国に大打撃を与えることができるし、王族が生き残っていれば、反抗するチャンスを与えることになり、ミラング共和国の国力に大ダメージを与えることになってしまうのだ。

 そこに気づかないわけがない。周辺諸国が―…。

 それに、ミラング共和国が征服した被征服者側の方も反乱を起こし、独立を確立するのに好機と捉えるだろうし、行動を起こしてくる可能性はかなり高い。

 そうなれば、今のミラング共和国は完全に、国力は弱体化し、領土を狭めていくこととなり、最悪の場合は滅亡という結果を現実に起こしてしまうかもしれない。

 そんな想像をすることができるが、すでに、この想像は起こらないと思っている。

 (すでに、時遅し。シエルマスの統領ラウナン=アルディエーレがリース王国軍の左軍の方に、何かしらの工作をしたけど、失敗したね。確か、国内担当の副首席がその工作を担当していたけど、その後、行方不明―……。いや、殺されてしまったかもしれないわ。勘だけど―…。)

と、イルターシャは続ける。

 口で発することはしない。

 発すれば、ラウナンに睨まれるか、恨まれるかするのは確実だと分かっている。

 なので、口に発してしまうことにはかなりの注意を払っている。

 この場にいるミラング共和国軍がイルターシャにとって、本当の意味で味方だとは思えないし、思ってすらいない。

 イルターシャは、幼い頃から頭の方が良く、秀才であったことから、穏健派のトップの人物から目をかけられており、軍人としてのキャリアを幼くから始めることになった。その頃から、すでに、天成獣の宿っている武器を扱うことができ、属性が幻だったので、女性を弄ぶ行為から逃れることができた。そのことによって、自身の天成獣の宿っている武器の扱い方をマスターしていかざるを得なかった。

 だからこそ、ここにいる者たちの多くは敵であるという認識でもある。

 対外強硬派が穏健派から政権を掌握して以後、グルゼンの部下たちと交友を持つようになったし、彼らとともに行動することが多くなったが、彼らの方が人として礼儀を知っており、一人の軍人として扱ってくれた。ちゃんとした軍事的な訓練とともに、勉学、社会がどうなっているのかを教えてもらえる機会がかなり保障されたし、自由にもできた。すべてではないが―…。

 そんななかで、ゆっくりと目立たないようにして出世してきたつもりだ。ミラング共和国軍の主要部にそのように思わせるようにしていたのだから―…。

 そして、今も警戒を緩めていない。

 さて、話を戻し、シエルマスに関する情報も全部ではないが、重要なところは知っている。

 ラウナンが、リース王国軍の左軍に対して、何かしらの工作を仕掛けようとしていたのは分かっているし、その担当になっている人物がどういう地位にあるのかも知っている。

 そして、その担当人物の天成獣に関しても―…。

 さらに、戻ってきていないことも―…。

 そう考えると、女の勘の類の領域ではあるが、そこから結論を下すと、工作を担当した人物はすでにリース王国軍の左軍、特に、二人の騎士によって始末されたのではないか、と―…。

 だからこそ、ラウナンが悔しそうな表情をしている理由として、イルターシャは納得することができるのだから―…。

 (もう、ミラング共和国の寿命は尽きてしまったのと同じね。後はどうやって生き残るかということになるし、抵抗せずに生き残れば、シエルマスの工作員が私の指揮する軍の中にも潜り込んでいて、彼らが工作行為をしてくるかもしれない。だけど、味方の犠牲は最小限にして、行動しないと―…。タイミングは、敵側の軍隊がどの部隊か、かしら―…。)

と。

 イルターシャは、心の中で、もうミラング共和国は滅んでしまうものだと、感じ取ってしまっていた。

 イマニガの工作が失敗してしまっているし、すでに、撤退を開始している以上、ミラング共和国軍の士気があるとは思えなかったからだ。

 ここで大事になってくるのは、ミラング共和国軍からどうやって、犠牲を最小限にして、抜け出すのか。

 そこに論点が移るというわけだ。

 イルターシャは、ミラング共和国に未来もなければ、リース王国に征服される未来しか考えられないのだ。

 犠牲を最小限にするにしても、今の自身の状況を冷静に考えると、抜け出すのは簡単なことではない。

 イルターシャ一人だけならば、いくらでも、すぐにでも、逃げ出すことも、抜け出すことも簡単であるが、部下や後輩がおり、彼らのことを考えると簡単に裏切るような真似をすることはできない。

 最悪の場合は、裏切ることも厭わないが、それでも、イルターシャにはできないであろう。

 彼ら自身もまた、ミラング共和国軍の中で冷遇されている者たちであり、天成獣の宿っている武器を扱えるかどうかを調べるための対象にすら選ばれなかったのだから―…。意図的に―…。

 そのような軍人たちが、イルターシャの下につかされていたりする。

 彼らにとっては、当初外れのように思われたが、意外にもイルターシャが奇策に接することから、イルターシャのことを尊敬する者たちは部下には多くなったりしている。

 そのため、イルターシャの身動きがなかなかできないような状態になってしまっているのだ。

 だが、このような事態であったとしても、イルターシャの力であれば、乗り越えることはできるであろう。

 彼女は、日頃から、学ぶことを怠ることなく、経験をしっかりと積んでいるのだから―…。

 そして、ミラング共和国軍側だけでなく、リース王国軍側のことも考えないといけない。

 イルターシャが自軍がシエルマスから狙われることなく行動するためには、リース王国のどの軍団に降伏するかということが重要となってくる。

 例えば、リース王国軍の中央軍に降伏することになったとしよう。その時、中央軍のトップであるファルアールトは、戦争を仕掛けてきたミラング共和国軍のことをあまり宜しく思っていないのは確かであり、自分の気持ちを満足させるために、降伏したイルターシャの軍の一部を降伏したにもかかわらず殺してきたり、酷い扱いをしてくる可能性が高い。

 なぜなら、自分は勝者であり、勝者なら、何をしても許されるという勝者の間違った高揚感に支配されてしまうからだ。この気持ちに支配されてしまうと、後々、降伏する側が降伏しにくくなり、かつ、降伏した人間を恨むだけでなく、リース王国軍を恨むきっかけをミラング共和国軍だけでなく、ミラング共和国の国民にも与えることになってしまう。

 そのことに、ファルアールトは気づかないであろうが、イルターシャは気づいている。支配者もしくは征服者が支配した土地の上で一番に気を付けないといけないことは、支配した土地の人々から恨まれるようなことをすることである。支配した人々を辱めて殺したり、重税を課したり、さらに、彼らの文化を侮辱したりなどのようなことである。これは、例として挙げたものであり、それ以外の要因で、恨みを買うことはある。

 このように恨まれるようなことがあれば、軍事的に圧倒していれば抑えつけることも可能であるが、結局、反乱を招く結果となり、支配に使うための費用を余計に出費せざるをえなくなる。軍功を稼ぐ上ではメリットなのであろうが、征服地を支配する者からしてみれば、本当の意味で損でしかない。

 このことに気づける支配者も少なかったりする。自らの優越感と、自らの利益だと思っていることに対して、夢中になっているがあまり、他のことを見落としてしまうからだ。

 一方で、リース王国軍の右軍に降伏した場合を考えると、右軍のトップであるフォルルークが傭兵を完全にコントロールすることができない可能性があり、兵士を完全に統率することができずに、一部の者が降伏した軍を乱暴に扱ったりするかもしれない。規模は小さいであろうが、それでも、なるべくならそのような目に遭いたくない。恨みは確実に残ることになるのだから―…。

 ちなみに、アンバイドはそういうことは一切しないとは言えないが、そのことに関して興味がない。アンバイドがしたいことは復讐であり、その復讐の対象の情報ぐらいしか集めることはしないのだ。他の情報も集めたりするが、それはあくまでも必要最小限という感じだ。

 そして、最後の例として挙げるのは、リース王国軍の左軍に降伏した場合だ。左軍にもミラング共和国軍に対する恨みを持っている者は、決して少なくない。それでも、ハミルニアが降伏してきた者に対して、不当な扱いをすることを好むことはない。なぜなら、ミラング共和国を征服することが目的となっている以上、征服した後、彼らを支配しないといけないのだ。恐怖の大王とかのような支配形式なんてしたら、返って、征服した住民からの反発を招き、軍事力を余計に弱らせるだけだ。正義なんて言葉は立場や状況によって、変わるし、どんなことがあったとしても絶対的になることがないのだから、相手との関係が重要になってくる。

 ただし、相手との関係は、自らが一方的に考える妄想の類には、絶対になってはならない。そこに注意しないといけない。

 そうなってくると、ミラング共和国軍左軍は降伏した兵を丁重に扱うし、イルターシャが率いる軍の者達には、リース王国軍に対して、降伏後は一切、反抗的なことをさせる気はない。なぜなら、こちらが反抗してしまえば、降伏によって得られるメリットをすべて無くしてしまうことになるし、ミラング共和国に対する不信感を与えることになる。そのことは避けないといけない。エルゲルダ、ファルケンシュタイロやラウナンにとって、すでに、ミラング共和国の心象はかなり悪くなっているのであるが―…。

 支配される側の支配する側に恨まれないようにする必要がある。

 双方が相手方に不利益になるようなことをすれば、関係性の悪化を導くだけなのだ。

 そのことをイルターシャは、考えながら、心の中で一つの結論を下す。

 (………降伏するなら、リース王国軍の左軍。これは勘の分類もあるわね。後は―……………、………私の軍に運があるからどうか。)

と。

 イルターシャは、これからどうなるかを考えながら、ラウナンとファルケンシュタイロの二人を見るのであった。

 「さて、作戦を決まった。発表することにしよう。」

と、ファルケンシュタイロが言うのだった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(190)~最終章 滅亡戦争(45)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


では―…。

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