番外編 ミラング共和国滅亡物語(187)~最終章 滅亡戦争(42)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
死体が燃えていく。
ゴオー、ゴオー、と。
その凄さを表現するのであれば、文章という方法とても、表現しきれないものでしかない。
ここに文章で表現することの限界があるのかもしれない。
まるで、文章というものは区切りだ。
ちょうど良いということになることが本当の意味できないのだから―…。
範囲で括られる感じで、範囲とは違う点にならないのだから―…。
こんなことを永遠と述べたとしても意味のないことであるが―…。
今の状況は、戦死者の遺体を燃やして処理しており、そこに、ミラング共和国軍、リース王国軍は関係がない。アウルとかイマニガとかいう区別すらも―…。
これをもし平等という言葉で感じることができるのであれば、誰もこのような平等を望みはしないだろう。死んで平等に扱われるなんて―…。
生きて、平等に扱われることを人は望んでいたり、……いや、生きて、他者よりも自分が上だという扱いを好むのかもしれない。
結局、それは人によりけりということかもしれない。
そんななか―…、ランシュはただただ、見ることしかできなかった。
(……………………。)
言葉にすることもない。
ただ、感じているのだ。
戦争における現実というものを―…。
戦争は、味方である兵士が次の瞬間、屍と化していてもおかしくはないし、それが可愛い後輩や、大事な親友であることだってある。
命は、平等なのか、不平等なのか、その答えに理不尽な解答を与えるかのように―…。
そう、もしも不平等が平等に存在するということに気づいてしまえば、どれだけに今の状況を楽に納得することができたことであろうか。
平等と不平等を区別してしまっているがゆえに、悩むし、苦しくもなる。
それで良い。楽に納得できたとしても、理不尽な思いを抱く気持ちには変わりないのだから―…。
その横でヒルバスも同様に燃えている死体を見るが、ランシュに声をかけることは今はしない。
(人の死を悲しめない人間に、人としての成長はない。)
と、ヒルバスは心の中で思う。
ヒルバスは、ラーンドル一派が血も涙もない人間だとは思っていない。
むしろ、自分の利益のためだけに、他者を犠牲することも厭わない人種であることを理解している。
彼らのようなものたちが、自らの失敗に気づくこともないだろうし、その犠牲者に対する罪悪感を感じることも、笑って犠牲になった者の死を喜ぶであろう。
結局、彼らは悲しむことがないので、人として次はより良くしようと考えるのではなく、同様のことをして、再度失敗するのだから、成長できるはずがないということだ。
そのことを思えば、ランシュは成長できる人間なのであろう。
その後、火を消した後、埋葬して、リース王国軍の左軍の本陣の方へと、ランシュとヒルバスは戻って行くのであった。
アウルのことは記憶の片隅において―…。
リース王国軍の左軍。
ここでは宴会が開かれていた。
ミラング共和国軍が撤退していったのだから、気分が良く、盛り上がるには十分だ。
それでも、警戒しないわけにはいかないので、見張りはしっかりと置いているのであるが―…。
参加できない者たちの嫉妬という気持ちはあるかもしれないが、彼らの気持ちも理解できる以上、何も言う気はない。
ミラング共和国軍を撤退させることに成功させたのだから―…。
味方を失った悲しみを含めて、盛り上がることで一時的にも忘れて、彼らの犠牲が報われたということを思いたいのだ。
逃げかもしれないが―…。
そんななか、浮かない顔をしている人物がいた。
その人物はランシュである。
ランシュは、今日の戦争で、イマニガの暴走を抑え、解決するという働きをしたが、そのイマニガによってアウルが数日前に殺されてしまっていたのだ。
アウルが殺されたのが何日前かは知らないが、それでも、未来ある後輩の死だ。
割り切るにしても、中々、気持ちではどうしようもできないことはある。
それを受け入れたとしても―…。
そんなランシュの近くでは―…。
「浮かない顔してるな、ランシュ君は―…。」
と、一人の人物の声が聞こえる。
ランシュにとっては、今回のリース王国とミラング共和国との戦争の中で聞きなれてしまった声である。
その正体を知っている。
一方で、ヒルバスが、
「そうですよ、ハミルニア指揮官。アウルが敵の兵に殺されたうえに、操られたのだから―…。」
と、ハミルニアに向かって返事する。
ハミルニアが声をかけているのは、ランシュであるが、ランシュが返事できる状態かと言われるとその可能性が低いとヒルバスが瞬時に判断し、ハミルニアに向かって返事をする。
その返事に関して、ハミルニアは嫌そうな顔をしないし、話せない可能性もあることを考慮に入れていたからだ。
そして、ハミルニアは、今回の戦争の死者の中に、騎士団の騎士も含まれているのを知っている。
アウルという名前に関しては今回の戦いの途中まで知らなかったが、イマニガというシエルマスが潜入していて、暴走したことをハミルニアは後の報告との関連で知ることになり、シエルマスに対して、かなり警戒心を持たざるをえなくなった。
その理由は、シエルマスの工作員をこちら側から見破るのは難しく、潜入されていた場合、すぐにそれを見つけることができないと分かっているからだ。
だからこそ、どこにシエルマスの工作員が潜り込んでいるのか分からないからこそ、警戒を怠らないようにして、シエルマスがハミルニアの命を狙ってきた場合に、すぐに対処できるようにしているのだ。それも付け焼刃なものでしかないが―…。
そして、ハミルニアは、いつも通りの態度を崩さないようにして、話し出す。
「意外、ランシュ君って、仲間思いだったんだ。何というか、自分の目的のためなら、人を平気で利用するという感じ。だけど―…、根は善人だというのはわかる。」
と。
ランシュがリース王国の現国王であるレグニエドや、ミラング共和国の現総統であるエルゲルダに対して、復讐しようとしていることをハミルニアは知らない。
だけど、目的のために人を利用としていることだけは、ハミルニアの勘であるが、分かっている。
ハミルニアは自らの勘を科学的根拠がないからとして馬鹿にすることはなく、あくまでも、可能性の範囲内で考慮して、頭の中に入れておくことができるし、検討することができるタイプの人間である。
そして、同時に、ランシュという人間の根が善人のそれだということも理解できる。
なぜなら、味方の死を悲しむことができるし、浮かない顔をするほどに相手を大切に思える気持ちを持っていることを、今、ハミルニアの目の前で証明してしまっているのだから―…。
さらに、付け加えるなら、目的のために人を平気で利用することが人間の中には、自分の利益のためなら、相手が不利益を被ることを当然だとするし、そのように行動し、何の罪の意識も感じないものだっている。
そういうのを上の人間で見ているからこそ、ランシュの中にある善人の心を見破ることができたのである。完全ではないが―…。
そして、このハミルニアの言葉を聞いたヒルバスは、
「本当に、ハミルニア指揮官は、何でランシュ君のことをそう思ったのですか?」
と、問う。
ヒルバスにとって、ここで重要なのは、ハミルニアがランシュがクルバト町の出身であり、クルバト町の虐殺という事件の生き残りであり、レグニエドとエルゲルダへの復讐をしようとしていることを知られてしまうことである。
そうでなければ良いが、そうであるなら、始末しないといけなくなる。
ヒルバスは表立ってそのような行動はとれないので、裏でやるしかないと思いながら―…。
ヒルバスの警戒した表情を見破ってなのかどうかは分からないが、
「何となくだけど、勘?」
と、ハミルニアは答える。
本当に、勘の部類なのだから―…。
「勘って―…。」
ヒルバスは、ハミルニアの解答に呆れるのだった。
今までの自分の警戒は何だったのか?
そう思ってしまうぐらいに―…。
ハミルニアは、ヒルバスが懸念していることには気づいていない。
今はそのことに集中する時間もない。
そして、
「まあ、気にするな。俺が少し声をかけてくる。」
と、ハミルニアは言う。
それを聞いたヒルバスは、
「ハミルニア指揮官!!」
と、慌てた解答をしてしまうのであった。
ヒルバスは、ハミルニアがランシュへと声をかけようとするのを阻止しようとするが―…。
その理由は、さすがに空気を読んで欲しいと思ってしまったからだし、ランシュの性格を探られたりするのを阻止する必要があるからだ。
だけど―…。
「何を落ち込んでいるんだ。」
と、ハミルニアはランシュの目の前で声をかけてしまう。
ヒルバスは、自分の失態に気づき、落ち込みはするが、それでも、すぐに表情を元に戻す。
ランシュは、ハミルニアから声をかけられたことに気づき、
「ハミルニアさん。」
と、返事をする。
そこに深い意味などはない。
一人でいたいという気持ちではあるが、ハミルニアの前では無理だろうと思い、諦めるのだった。
ハミルニアは話し始める。
「ランシュ君、アウル君のことは本当に残念だった。だけど、彼からは死体特有の匂いがしていたからね。香水とか誤魔化しているような感じだったけど―…。君たちの話によると、殺された上に操られ、ランシュ君を殺すための刺客にされるなんて―…。ちなみに、ミラング共和国軍側じゃないからな、私は―…。」
と。
ハミルニアは、今回の件までの間、アウルという存在の名前は知らなかったが、騎士の中の一人から死体のような匂いを感じたことはあった。
その人物の顔を確認できなかったが、アウルであることは状況から推察して間違いないと思っている。
そして、事件の詳細の報告を受けている以上、どういうことがランシュとヒルバスやその付近にいたリース王国軍の左軍にあったかははっきりと知っているからこそ、こういう言葉が言えるのだ。
詳しいことを言ってしまっているので、ミラング共和国軍側だとランシュに思われそうなので、自分はリース王国軍側であり、スパイなどしていないと補足を付け加える。
自身も記憶を操作されていない限り、リース王国軍側であり、ミラング共和国軍の側であった記憶など一切、思い出せる範囲ではないのだから―…。
ランシュは、ハミルニアの今の言葉の最後の方が必死の表情だったので、ランシュは何となくハミルニアという人のある一面を理解してしまうのだった。
「はいはい、そう言うと、余計に怪しいと思ってしまうから―…。」
と、ランシュは言う。
ランシュとしては、堂々と言えば、怪しまれることもないのに、なぜ…、という感じで―…。
だけど、ハミルニアの表情から理解できた。呆れながら―…。
(本当に、この人は、用心深いというか、余計なことを言って、自分を少しだけ追い詰めようとする。これは違うのかもしれない。自分という存在を相手に信頼して欲しいから言っているのかもしれない。そう思うことにしよう。)
と、心の中でランシュは思う。
ランシュとしては、ハミルニアをミラング共和国軍側からのスパイであると疑うことが馬鹿々々しいと思ってしまうのだった。
ハミルニアは、さらに、
「そうか、難しいなぁ~、信頼を得るって―…。アウル君はリース王国の騎士になって二年ほどか―…。まあ、騎士や兵士である以上、戦場で死なないということを完全に保障することはできない。できるのは、せめて死なないように注意したり、有利に戦いを進めていって、戦場の死という確率を減らしてあげるだけだろう。人生なんてものは、失敗の連続だし、人が言う完全な成功なんて稀でしかない。だからこそ、失わないように必死になるんだろう。ラーンドル一派は自らの覇権のために、俺たちは、身の回りの大切な人のために―…。辛気臭くなってしまった。これは良くない。幸運が逃げるじゃないか。中央軍の馬鹿みたいに、今回ははしゃごう。私の身勝手な想像かもしれないが、亡くなった人も生きている人の笑顔を望んでいるかもしれないし―…。ということで、ランシュ君、今日は、君に何か面白いことをやってもらおうか。」
と、言う。
ハミルニアとしては、結局、ランシュを元気づけようとしているのだ。
話しかけながらも、自身が空回ってしまっていることに気づき、いろいろと言葉を追加してしまっているし、長くなりすぎてしまっている。
返って、ハミルニアがミラング共和国軍側ではないということを、より証明していく。
本人は気づいていないだろうが―…。
そんななか、いつまでも辛気臭くしても、意味のあることにはならないであろうし、勝利を喜んで、今日の戦いで亡くなった人達の犠牲を無駄にしないようにしないといけない。犠牲にならない可能性はどんなことがあっても残さないといけない。それを無視した輩の言葉ほど、その軍の不幸はないのだから―…。
ハミルニアは、なるべく犠牲が少なく済むのであれば、その戦いを選択すべきであろうし、どこで避けられない戦いがやってくるのか分かったものではないのだ。人の数は無限になることなく、どんなことをしても有限であり、優秀な人材をすぐに代えることなどできやしないのだから―…。その人の人生は、誰にも代えられるはずもない。
そして、楽しくするのが幸運を掴むために必要なことなのだ。
だから、落ち込んだランシュを、落ち込ませないようにするために、何か面白いことをやらせようとするのだ。
面白いことをやっている間は、アウルのことを考えなくて良いのだから―…。
「はっ!!!」
と、ランシュは気づく。
(何か感動的なことを言っていて、最後に俺にネタふり。何、感動的にハミルニアさんと言いかけようとしていたのが台無しだ。俺の感動返せよ。)
と、心の中でランシュは思うが、ハミルニアはランシュの上官に当たるので、完全に言い返すことができないことに気づく。
そう、ランシュが面白いことをすることは確定事項となってしまったのだ。
ランシュにとっては、絶望でしかない。
「お――――――――――――――い、みんな―――――――――――――――――。ランシュが面白いことやってくれるって!!!!!」
「ちょい、ハミルニアさ―――――――――――――――――――――――――――――ん。」
さらに、ハミルニアはランシュが面白いことをやるので、周囲の兵士に大きな声を出すので、ランシュはツッコむのであった。
ランシュにとっては恥ずかしいことでしかなかった。
一歩間違えれば、パワハラになることは間違いない。
上の者は、下の者との関係を冷静に主観性をなるべく排除して分析してから、下の者に面白いことをさせないと後悔することになるので、注意が必要である。
自分ではできていると思って、実はできていないことがあるのだから―…。
結局、ランシュの面白いことは、周囲から失笑をかうこととなった。
そのことに、ランシュはショックを受けるが、一方でヒルバスはこのような目に遭うランシュに心の中で爆笑するのだった。
(イジりがいのある人ですね、ランシュ様は―…。)
と、ヒルバスは心の中で思いながら―…。
その後―…。
「ランシュ君、君は普段の行動でときどき面白いことをやるけど、ネタをふると駄目なタイプかぁ~。ごめんね。だけど、これで、アウル君に対して、一人で浸っていた悲しい気分は吹き飛んだと思う。それに、面白くなかったけど、頑張っていたよ。」
「ハミルニアさん、ハミルニアさんをいつか後ろから刺してしまうんじゃないかと思いましたよ。」
「うわぁ~、それは、後ろも警戒しないとなぁ~。」
と、いうランシュとハミルニアの会話があったそうだ。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(188)~最終章 滅亡戦争(43)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
風邪は、鼻づまりだけになったので、不定期投稿を解除します。
いつも通りの感じで、二週間(月曜日を除く)で投稿し、一週間を休むという感じに戻します。
では―…。