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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
532/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(186)~最終章 滅亡戦争(41)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。


翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。


戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。

その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。


翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。


リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に

、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。


リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。


 リース王国軍の中央軍。

 時は少し戻る。

 「攻めろ――――――――――――――――――――――――――――――!!!」

と、リース王国軍の中央軍の現場指揮官の声が木霊する。

 その声は、「攻めろ」の一辺倒であり、兵力をかなり消耗している。

 リース王国軍の兵士であったとしても、ラーンドル一派の息のかかった者が指揮していて、かつ、戦略というものをあまり上手く行使していない以上、無謀な攻めの状態になっている。

 だけど、ミラング共和国軍の本陣の軍は、耐えながら機を待っていた。

 そして、場所をミラング共和国軍の本陣へと視点を移す。

 そこでは、ラウナンがイラつきながら待っていた。

 エルゲルダは、ラウナンの表情から何も言えなくなってしまっていた。

 (怖ッ!!!)

と、心の中で思うので精一杯だ。

 ラウナンは、

 (まだか!!! 一体、いつになったらリース王国軍の左軍の方を混乱させることができる!!!)

と、心の中で思う。

 ラウナンは、リース王国軍の左軍を混乱状態に貶めてから、中央軍に生じるであろう隙を突いて、一気にリース王国軍を瓦解させ、その後、リース王国の領土への侵略を進める予定である。

 ファルケンシュタイロもそのことに同意している。

 なぜなら、ファルケンシュタイロは、ラウナンに逆らうことが得策ではないということも分かっているし、それに、リース王国軍の中でも強い者を最初に始末しておくことは、自分達の味方の軍を有利に戦いを進めていくために都合が良いと判断したからだ。

 だが、そのリース王国軍の左軍の中で混乱が起こっていないのだ。

 いや、正しくは混乱は起こっているのだが、それでも、混乱に陥れるために派遣した国内担当の副首席であるイマニガがランシュとヒルバスと当たってしまい、さらに「不死体の生」で命を落とした上に、イマニガの扱っている武器の鼻ピアスに宿っている天成獣のガルゲイルによって、人格すら消え去られ、ガルゲイルがイマニガの体を支配してしまったのだ。

 さらに、ランシュとヒルバスがしっかりとガルゲイルを相手にできているからこそ、リース王国軍の左軍はそこまで混乱せずに、ミラング共和国軍と上手く戦えるようにしているのだ。

 そして、今から後のことであるが、ランシュがガルゲイルを葬り去っている以上、ラウナンの作戦は失敗に終わったということになる。

 そんななか―…。

 「ラウナン様。」

と、シエルマスの一人が現れる。

 その人物は、シエルマスの西方担当首席のドグラードである。

 ドグラードは、イマニガをさっきまで監視しており、異変が起こったので、部下に任せて急遽戻って来たのだ。

 「何だ?」

と、ラウナンは返事をする。

 「国内担当副首席イマニガが、自身の使っている武器に宿っている天成獣に人格を奪われてしまった模様です。」

と、ドグラードは報告する。

 そう、ドグラードは離れた場所からであるが、イマニガの人格が消滅してしまったことを見てしまったのだ。

 ゆえに、暴走状態であると判断して、ラウナンの指示を仰ぐために、報告に参上したという次第だ。

 「暴走?」

と、ラウナンは疑問を口にする。

 ラウナンの気持ちとしては、イマニガが何をやらかしたのか素直に疑問に感じる。

 シエルマスの天成獣の宿っている武器を扱える者の武器そのものは、ラウナンがその武器が天成獣の宿っている武器かを確認している。ただし、能力や力まで確認できていないので、どういうものがあるかは使用者の工作員から聞くしか知る方法はない。

 そして、イマニガの扱っている武器は、死者を操ることができる能力であり、自らの体を不死身にすることができるものであると聞いている。

 それが暴走するということのだ。

 (何をしたんだ、イマニガは―…。…………………。)

と、ラウナンは心の中で思いながら、少しの間考える。

 「暴走の原因は?」

と、ラウナンは疑問を問う。

 「イマニガが使った技によって、人格が変わったかのように叫び出しています。その人格とリース王国軍の左軍の中で、ミラング共和国軍にかなり被害をおよぼした二人が対峙している状態です。」

と、ドグラードは言う。

 ここでドグラードは、自分が重要なことを遅くラウナンに伝えてしまう失態に気づくのだった。

 だからこそ、ドグラードは、緊迫した状態になり、手が僅かであるが震えだす。

 ラウナンという存在は、シエルマスの中では絶対なのだ。

 実質、ラウナンのためにある組織となってしまっており、ラウナンの気分を害することをする奴に存在する価値などない。

 それがシエルマスの現実であり、実体なのだから―…。

 (さらに、騎士二人か。我が軍に大打撃を与えている―……。と、なると、イマニガの暴走によって、あの二人のうち、最低でも一人を始末する……いや、弱らせることができれば、我々、シエルマスを使えば、対策可能だ。)

と、ラウナンは心の中で考える。

 ラウナンにとって、イマニガの暴走はチャンスであった。

 イマニガの暴走でランシュかヒルバスの一人でも弱らせることができれば、シエルマスを総動員して、始末することができるという計算をする。

 だからこそ、こういう命令が出てきたりする。

 「シエルマスの精鋭をイマニガの近くに派遣し―…。」

と、ラウナンが言いかけたところで、急に騒がしくなる。

 「リース王国軍の中央軍が本陣中枢に侵入。守れ―――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」

と、声がする。

 (チッ!!! 侵入してきたか!!! この状況で、エルゲルダの首がとられるのは不味い!!!)

と、ラウナンが心の中で動揺する。

 ラウナンにとって、エルゲルダの後釜の人形は見つかっていない。

 そうである以上、エルゲルダを始末されるわけにはいかない。

 ラウナンにとって優先事項は、自分が表向きのトップになることはなく、表向きのトップを自分の操り人形を据え、ラウナンの思い通りにミラング共和国の政治を操り、世界支配を実行することである。

 そして、エルゲルダが始末されてしまった場合、ラウナンが表向きのトップにならないと統制がとれなくなる可能性が高くなる。実質のトップが権力を掌握しないと、軍隊や国民の信頼を手に入れていないので、返って、自身の政権基盤が不安定になりかねない。

 ということで、ラウナンにとっての選択肢は、ラウナンが思い浮かぶなかではこれしかなかった。

 「撤退だ!!! 撤退!!!」

と、ラウナンはそう命じるしかなかった。

 その後、ミラング共和国軍は、ミラング共和国の中にある領土に、一時的にバラバラに逃げるのだった。諸侯領という感じに―…。


 数時間後。

 ミラング共和国軍の本陣があった場所。

 そこはすでにもぬけの殻になっており、ほとんど物がなかった。

 そんななか、ファルアールトは高慢な笑みを浮かべ、そこを見るのだった。

 (ミラング共和国軍に逃げられてしまったが、本陣を陥落させることができた。ハミルニアよりも、私は優れている。私だからこそできたのだ。私だからこそ。)

と、心の中で思うのだった。

 ファルアールトは、今回のリース王国とミラング共和国の戦争の中で、大きな戦果を得ることができず、かつ、大失態をやらかしている以上、心の中で焦りがあり、心が歪んでしまうこととなった。

 だが、勝利を手にすることによって、自身の弱さというものが存在しないということを自覚することができた。

 そう、弱くないのだ。

 相手の意図なんかを無視して、自らの実力だけで勝利したのだと。

 決して、そのようなことはない。

 人が為したことによるある未来における出来事の結果というものは、簡単に言えば、自分とそれ以外の行動が幾重にも重なったがゆえに、発生した結果に過ぎない。

 自分という存在がどれだけ重要な役割を果たしたのか、という問いに関する否定はする必要がないし、自身の努力という面を否定する必要はないが、そこには自分以外の存在が大きな関わりがあったことを忘れてはならない。

 それを忘れて、自分が為したことだと思えば、それは傲慢な行動への一歩となり、自分が万能であり、完全なんだというあり得ない妄想の類を現実だと誤認する結果となり、最悪の場合、自らの人生を殺すことになるかもしれないのだ。

 ゆえに、自分以外の要素に感謝をする必要はないが、それが関わっていることを認識しておいた方が良い。

 人は、完璧になることもできなければ、完全にも、合理的にもなることができない生き物なのだから―…。

 そのことに気づくことが人という生き物であるかは、人による、としか言いようがないが―…。

 「ガハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。」

と、急に、ファルアールトは叫ぶように笑う。

 その声には同時に恐怖を感じさせるものがある。

 それを聞いたリース王国軍の中央軍の一般兵士は―…。

 (ブッ壊れてしまったのか。)

 (ヤベェ~。関わるな。)

 このような気持ちは一部でしかないが、ファルアールトの心が歪んでしまい、その歪みが自身にとっての正常だと思っている時点で、外部から言うことができるが、本人が自覚しなければどうしようもないことである。

 人が他者に影響を与えないということはないが、それは他者というか、言われている対象がしっかりと言われていることの意味をしっかりと理解し、自分でおかしいと気づかないといけないし、そうしないと、何も直すことはできないのだ。病気を治したり、物を物理的に直したりするのとは違って―…。

 ファルアールトの心の中では、自らの素晴らしさで満たされており、

 (私は最強だ!!! 私はリース王国軍の元帥なのだ!!! 軍の中で一番偉いのだ!!! 偉いイコール正しい。そう、正しい。正しいからこそ、勝ったのだ。一番の戦果を手に入れたのだ!!!)

と、心の中で言う。

 これはすでに傲慢と言っても良いだろう。

 さっきも触れたけど、人は完璧ではないし、この世における事象というものは自分とそれ以外の行動が積み重なった結果によって、ある未来の点で起こっているに過ぎないのだ。

 ファルアールトの行動もあるが、ここではミラング共和国軍の行動もあるのだ。

 再度言うが、自分とそれ以外の行動によって、事象は発生しているので、そのことによって自分という現状がつくられている以上、そのことを忘れてはいけないし、そのことをなかったかのように無視してはいけない。

 自分だけで成していると思っている限り、自らの結果の本当の意味での理解など得られることは一切ないのだから―…。そこから発生する間違った理解によって、自らの人生を最悪の方向へと向かわせてしまうことがある。自分だけが逃れるという思いも抱かない方が良い。自分もなるかもしれないと思っていた方が良い。そうすれば、何とか調子に乗らずに、自分を冷静で見つめられる可能性を残すことができるから―…。

 ファルアールトは、笑い終えると、すぐに確認をする。

 「お前たち、エルゲルダの首をとることに成功したのか。」

と。

 ファルアールトにとって、エルゲルダの死体を確認することは、今回のリース王国とミラング共和国における戦争で、一番の功績になるのは間違いないのだ。

 そうである以上、この本陣がもぬけの殻になったとしても、可能性が低いなりにエルゲルダの遺体があるのかを聞いておく必要がある。誰か他の奴らにその手柄を奪われるのは気に食わないことであるから―…。

 そんななか、ファルアールトが指揮するリース王国軍の中央軍の中の下っ端の士官が報告する。

 「残念ながら、エルゲルダの死体は見つかりませんでした。上手く逃げられた模様です。」

と。

 その報告を聞いたファルアールトは、怒りの表情を浮かべることなく、

 「そうか、わかった。あればラッキーということだ。」

と、言う。

 ファルアールトは、エルゲルダが上手く逃げられたとしても、そこまで感情に変化があるわけではない。

 むしろ、エルゲルダの首を自らの手で取るために、エルゲルダが上手く逃げたことに対して、喜びの感情が心の奥底であったりする。

 (まあ、良い。これで―…、私が直々にエルゲルダの首をとるチャンスを得たということだ。さらに、ミラング共和国軍の領土内へと侵攻することが合法的にできる。)

と、心の中で思っていたりする。

 そう、これからミラング共和国を征服することができるのだ。

 先に宣戦布告してきたのは、ミラング共和国側であり、ミラング共和国はリース王国を征服しようとしていることを宣言しているのだから、リース王国が逆にミラング共和国を征服しても問題はない。ラーンドル一派はその結論に達しており、すでにファルアールトに命じているのだから―…。

 しばらく、視察した後、ファルアールトは本陣へと戻るのであった。

 これからのミラング共和国の征服への策を練るために―…。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(187)~最終章 滅亡戦争(42)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の投稿日は、2023年12月19日を予定しています。

風邪の方は咳はほとんどなくなり、後は鼻づまりと痰のからみが主となっています。

皆様もお体に気をつけください。←言うのが遅い作者である。

では―…。

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