表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
53/747

第31話-2 一人の責任

前回までのあらすじは、第一回戦、瑠璃が勝利することによって、チームを勝利させることに成功したが、その試合で受けた傷による大量出血により、瑠璃は倒れてしまう。礼奈の青の水晶の回復によるなんとか一命をとりとめるも、李章は大切な人を守れなかったと思い落ち込みすぎるのであった。そのなかで、アンバイドに説教されるのであった。

今回は、第31話の後半となります。さらに、第31話-1と同じの日の投稿となりました。

 「ここは――……。」

と、瑠璃は気づく。

 瑠璃は辺りを見て、理解する。

 そこが暗闇であることを―…。

 瑠璃以外の存在が黒一色で周りが見えないということを―…。

 まるで、この暗闇はこれから瑠璃に対して、不安を与えることになるということを―…。

 トン……、トン……、と音がなる。

 瑠璃は

 (足音!?)

と、思った。人が歩いて近づいて来ているのだと―…。

 トン……、トン……、と音がしだいに大きくなる。

 (音が大きくなってる。こっちへ近づいてきてる。)

と、瑠璃は心の中で呟く。そう、今の状況とこれからのことに対する不安を抱きながら―…。

 そして、足音は止む。

 瑠璃の前に姿を現わし、瑠璃の近づいて歩くのをやめた。

 (止まった。)

と、瑠璃はその時心の中でそう言った。

 そして、瑠璃は足音の正体である姿を目の前で見た。

 「あなたは―…。」

と、瑠璃は言いながら、驚く。

 瑠璃に近づいていた足音の正体が、

 「李章君。」

と、瑠璃は言い、驚くのであった。

 どうして、ここに李章君がいるのかわからなかった。それに、瑠璃はどうしてここに自分がいるのかもわからなかった。

 だけど、瑠璃はどうしてここに李章がいるのかについて考えることはすぐに放棄した。それは、瑠璃は李章が助けに来てくれたのではないか、と思ったからである。

 そして、今、目の前には李章がいるのだ。だから、こんな不安の気持ちを李章に抱きついて消し去ろうとした。そう、誰の暖かさがここにいる理由を冷静になって考えられることを―…、そして、二人で一緒にいられるという気持ちにほんの少しの割合、いや、気持ち的には大きく、うれしく感じられていたからだ。

 瑠璃は、その中でも気づく。

 李章が、刀をもっていることを―。

 それは、李章が自らの武器としているもので、天成獣の力が宿った物である。李章は、普段から刀を抜いた状態で持っていたりはしない。刀を持って戦おうとは李章は決してしないと瑠璃は思っていた。理由は、李章がずっと師と慕っている人から蹴りでの戦い方を教えてもらっているからだ。その師との約束で、蹴りでしか戦うことはなかったし、この異世界に来てからも、ずっとそれを守っていた。

 だから、瑠璃は、

 「何で、刀を持っているの?」

と、李章に尋ねた。

 李章は、瑠璃の質問には一切答えることがなかった。ただ、黙っていたのだ。

 そのような李章の態度に、瑠璃は驚かざるを得なかった。

 驚いているうちに、李章は瑠璃へと向かって来ていた。

 その李章の行動に瑠璃は気づく。

 李章は走りながらも、自らの武器である刀を構える動作をしていく。そう、刀を振り上げているのだ。

 そのなかで、瑠璃は、

 「まさか、そんなこと―…。」

と、言う。

 その瞬間に、李章は瑠璃の近く、李章の刀が瑠璃を斬るのに十分な距離まで来ており、走るのをとめ、振り上げた刀を瑠璃に向かった振る。瑠璃を斬るために―…。

 その李章の行動に、体を動かすことができない瑠璃は、

 「やめて!! 李章君!!!」

と、叫ぶしかなかったのだ。

 「すべては思い出にすぎない。」

と、李章は言う。

 そして、この目の前に見えていた景色は、シュンとして消えてった。


 瑠璃は目を開ける。

 そして、

「………。」

と、瑠璃は辺りを見回す。

 瑠璃の目で見える上には、天井があり、右横には奥の鏡が見え、左横には壁が見えた。

 そして、瑠璃は体をゆっくりと起こす。あくまでも顔と上半身を起こすだけだ。

 「ここは―…。」

と、瑠璃は言う。そうしながら、再度辺りを瑠璃は見回した。

 そして、二人の人物に瑠璃は気づく。

 一人は、

 「礼奈。」

と、瑠璃が言った人物である。礼奈は、椅子に座っているが、瑠璃が眠っていたベッドの上に両手を合わせ、その上に顔をのせて眠っていたのだ。瑠璃は礼奈が起きそうにないのでそのまました。

 もう一方の人物は、瑠璃が起きたのに気づく。

 「瑠璃!!」

と、嬉しそうに言う。

 その声に気づき、声のするほうに顔を向ける。

 そこには、

 「クローナ。」

と、瑠璃が言う。そう、クローナが礼奈の近くにいたのだ。瑠璃から見れば、礼奈の後ろにである。

 「私―…、どうしてここに――…。」

と、瑠璃はクローナに向かって言う。

 クローナは、

 「瑠璃は、あの時、第一回戦で相手の攻撃で出血するほどのダメージを受けて、勝利したけど、それが原因で倒れたの。その出血量は死んでしまうかもしれないほどの量だったの。それを礼奈が水晶の能力を使って、治してくれて…。その後は、アンバイドさんに運ばれてリース城の中へ、そして、ここは瑠璃の部屋だよ。瑠璃、ここで、昨日の試合から後からずっと倒れた後、眠ったままだったんだよ。」

と、言う。それは、瑠璃がどうやってここに来たのか、どうしてそうなっているのかを説明するものであった。決してうまい説明とは言えたものではないが―…。

 「…ありがとう。」

と、瑠璃は静かだけどはっきりと言う。それは、ここにいるクローナだけでなく、自分をここまで運んでくれたことに対する感謝と心配をかけたということに対するものであった。

 「礼奈は心配して昨日からずっとこの部屋で付切(つきっきり)で看病してくれたんだよ。それに―…、李章は―…。」

と、クローナは言う。礼奈が昨日から瑠璃の看病をずっと離れずにしていたことは言えた。礼奈がものすごく瑠璃の事を心配していたことを知っていたからだ。さらに、李章の状態を説明することは躊躇われた。

 (なんか―…、あれは、瑠璃に伝えられない。瑠璃に伝えたら、余計なほど心配させてしまう。)

と、クローナは心の中で思った。そう、クローナは、昨日の夜の李章の状態を思い出したからだ。あれは、今の瑠璃に伝えるのは、瑠璃にとって心を痛めてしまいそうで、さらに、李章が危険な行為を冒してしまいそうな感じをクローナは感じたからである。

 ゆえに、クローナは、

 「李章も心配していたみたい。それに、瑠璃が元気なってくれることを信じていたみたい―。だから、李章がここに来たら、元気なことを伝えてあげて―…。」

と、嘘を言う。昨日の李章は、何か重要な人やものを失って、心の底の喪失感に悩まされている雰囲気をクローナは感じ、李章は最悪の場合、復讐へとはしりそうな、荒んでしまいそうになるのではないかと思った。これを解決することは、クローナ自身はできないといたたまれなくなり、自分の部屋へと戻っていったのだ。

 クローナは、このように昨日の瑠璃の部屋の近くでの出来事を思い出したのだ。

 「うん、わかった。クローナ、ごめんね。私のせいで、みんなに迷惑をかけてしまって。」

と、瑠璃は申し訳なさそうに言う。瑠璃は昨日、セグライの攻撃をちゃんと回避し、勝利をしていれば、大量出血で倒れるようなこともなかったし、礼奈や李章、それにセルティーやクローナ、アンバイドなどを心配させることもなかった、と思っていた。

 そんな瑠璃の感情をクローナは、察してか、

 「そんなことないよ。瑠璃は試合に勝った。だから、今度は私たちに任せて!!」

と、言う。瑠璃は迷惑なんてかけていない、今度は私たちが頑張るから、瑠璃は傷を治すことと、体力を完全に回復させて、完治することに全力を尽くしてほしいという意味をクローナは、この言葉に込めていた。

 「わかった。私は―…、次は絶対にみんなに迷惑かけないようにするから。」

と、瑠璃は言う。瑠璃はクローナが言おうとしたことの本当の意味を理解していなかった。それは、クローナの「そんなことないよ。」の部分が、私を気遣うために言ったことで、本当は、迷惑をかけないでという意味に解釈してしまったからである。

 瑠璃のこの発言の意味を理解したクローナは、

 「いや、迷惑をかけるなってことではないよ、瑠璃。これは本当に裏があるわけではなくて―…、だから、迷惑をいっぱいかけてもいいんだよってことなの。私だって、これからの戦い瑠璃に迷惑をかけるかもしれないし、それに他の礼奈、李章、セルティーだって迷惑をかけるかもしれないよ。そのときは、瑠璃が助けてくれればいい。なので、瑠璃はいっぱい迷惑かけてもいい、そのときは私や礼奈、李章、セルティーが助けるよ、絶対に。」

と、強い口調で言う。それは、迷惑なんてかけていい、そのときは、クローナを含めた仲間が助けるから、と、その意思をうまく言えないけれども、強い強い気持ちで伝えようとした。

 本当に意味でクローナの言おうとしていることがわかった瑠璃は、

 「わかった、クローナ。……そうなると、今は昨日うけたダメージを回復することに集中するよ。」

と、瑠璃は言う。

 それに答えて、

 「それだよ、今はそれでいいんだよ、瑠璃。」

と、クローナは言うのであった。


 その後、礼奈が目覚めて、瑠璃が起きていたことに驚いて、椅子を後ろに倒したのである。

 そして、瑠璃が目を覚ましたことは、李章、セルティー、アンバイドにも知らされた。

 瑠璃は、それに応対したので、少しだけ疲れたのであった。


 瑠璃が目を覚ましてから翌日。

 リースの城の中庭である。

 ここは、とても広く、訓練場としても活用することも想定されている。そのため、植木などの芸術な物は、いっさいここにはなかった。その代わりに、周りの壁は、天成獣の攻撃を受けたとしてもそれなり耐えることのできる代物であった。

 そして、ここにはアンバイドを含め、李章、礼奈、クローナ、セルティーが集まっていた。

 瑠璃については、まだ完全に回復していないだろうと、リースの城にいる医者の判断したことにより今日はここにはいない。ゆっくりと自分の部屋でお休み中である。

 「これからは、基礎的な体力づくりの時間は減らすことになる。ある程度体力はついていると思う。二回戦までに備えて、天成獣の武器や能力の使い方に関して、個人的に俺がみていく。」

と、アンバイドが言う。

 この五人の中で、アンバイドの実力がずば抜けており、アンバイド自身も一回戦による瑠璃の勝利もあったが、全体的に李章、礼奈、クローナ、セルティーの実力をあげていく必要があった。それに、セルティーに関しては、アンバイド自身、セルティーの武器に宿っている天成獣の属性について何もわかっていないし、クローナに関しても確信を持てるものではないとアンバイドが思っていたからだ。

 そして、李章の能力を確実にわかることと、礼奈の武器の扱い方の実力に関して理解しておく必要があったからだ。

 そして、二回戦の前日まで、アンバイドによる李章、礼奈、クローナ、セルティーの修行が開始された。このとき、瑠璃は参加することを医者によって止められていた。


 リース近郊。

 一つの豪邸のような建物の中のある部屋に、ランシュが椅子に座っていた。

 ランシュは、一回戦について感じたことを心の中で、

 (セグライはまあ、倒されてしまったが、いい働きをした。)

と、言う。それは、セグライという人物が瑠璃にしばらく戦えないぐらいの負傷を負わせてということに対して、ランシュなりに心の中で褒めるのだ。そこに、セグライはいないが―…。一回戦の終了後、セグライは、ヒルバスによって回収され、しばらくの間治療を受けたという。その後のことを、ランシュは知らないし、セグライ自身の人生を自らの生のなかで生きているのかもしれない。

 これ以上、セグライのこの後のことについてみても意味がない。話を戻すこととしよう。

 ランシュは続けて、

 (瑠璃(雷使い)にしばらく戦えないほどの負傷を負わせた。向こうはしばらくの間、最大五人でしか戦えないということだ。すでに、こっちは最終戦までにどのチームを出すかを決めているし…。まあ、次の二回戦はあっちは―…なぁ~。それに、ベルグが十週のうちに完成するかねぇ~。)

と、心の中で言う。

 そして、ふと、ランシュは気づく。

 「ヒルバス。」

と、ランシュはヒルバスを呼ぶ。

 「なんですか、ランシュ様。何か馬鹿なことを思いついたのですか。」

と、ヒルバスは言う。いつも通りに、何かランシュをいじりたいという気持ちをもちながら―…。

 「いや、そうじゃねぇよ。忘れたんだが。リークの状態はどうなんだ。修行の状況は。」

と、ランシュは言う。

 そう、ランシュが気づいたこととは、ルーゼル=ロッヘでフードを被った一人の人物のことである。名をリークという。

 ランシュは、リークをルーゼル=ロッヘの近郊で回収し(このとき、瑠璃たちにランシュが企画したゲームの招待状を渡す)、リークの傷が回復した後に、修行させていたのだ。リーク自身が、ルーゼル=ロッヘの件以降、アンバイドよりも強くなりと思うようなった。それが、リークをより強く、自らのチームとしての重要なピースとなると思い、ランシュは、過酷な修行をリークに課したのだ。そう、別の異空間において―…。

 「ええ、今のところは、順調に進んでおります。」

と、ヒルバスはランシュの要件に答える。

 「そうか。リーク(あいつ)は、この俺のチームとして重要なうちの一つになるだろう。だから、大事にしておかないといけない。たとえ、厳しい修行を課しているとしても。」

と、ランシュは言う。

 そして、

 「さて、二回戦はどんな試合になるか。楽しみだ。」

と、ランシュは笑みを浮かべながら、楽しそうに言う。


 二回戦がおこなわれる日。

 リースの競技場の中央の舞台。

 すでに、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドがそこにいた。

 瑠璃に関しては、今日の朝、医者は完治を宣言したが、今日の試合には念のため、参加させるようなことはするべきでないと判断した。そのため、瑠璃はリースの城の自分の部屋でゆっくりと過ごしていた。リースの遊びをセルティーのメイドさんたちから教えてもらいながら―…。自分が所属するチームが勝利することを祈りながら―…。

 ファーランスは、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドに対して、

 「あの~、一回戦ではチーム名とお前を確認していませんでしたが…、お教えくだされば―…。」

と、尋ねる。

 それに対して、

 「わかりました。」

と、セルティーが言い、ファーランスにチームの名とチームに所属する者の名を教えた。

 このとき、セルティーは、適当にチーム名を伝えた。それは、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、アンバイドに相談せずに勝手に決めたものであった。今の緊張している状態では、おいそれとは聞けなかったからだ。

 「ええ、ありがとうございます。」

と、ファーランスは言った。

 そして、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドのいる側とは、反対の方から足音がし始めた。

 そう、二回戦の対戦相手が来ていたのだ。


【第31話 Fin】


次回、大剣とは?

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


第32話はちょっと内容が……アレなので……。たとえ、●●であってもね…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ