番外編 ミラング共和国滅亡物語(183)~最終章 滅亡戦争(38)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。
アンバイドは、オーロルのいる場所の近くに到着する。
そこで、すぐに攻撃態勢に移り、剣をアンバイドから見て右から左へと動かし―…。
(!!!)
と、その時、オーロルはアンバイドの攻撃に気づく。
今まで、経験したことのない速さであると、感じる。
心の中でさえ、言葉にすることができずに―…。
一瞬、驚くがすぐに防御の態勢をとり、アンバイドから距離を取る。
キーン!!!
剣どうしがぶつかる。
金属音をならせながら―…。
アンバイドは、
(ほお~、これを受け止めるか。さっきまでの相手からこの攻撃で終わらせたけど―…。実力があるのは確かなようだな。)
と、心の中で思う。
アンバイドとしては、少しはやるなぁ~、という気持ちしかない。
アンバイドとオーロルの実力を比較したら、圧倒的に何度も述べていることであるが、アンバイドの方が圧倒的に強いということで間違いはない。
アンバイドはそのことを理解しているから、あくまでも余裕な態度を崩すことはなく、どうやって倒すのかを考えている段階だ。
臨機応変に対応することができることも考慮に入れながら、失敗しても感覚で次の動きができればと思う。
一方―…、
(なんて強さ!!! 一撃の重みが違い過ぎる!!!)
と、オーロルは心の中で表情を動揺させながら思う
オーロルにとっては、経験したことのない一撃の重みを感じている。
オーロルは、天成獣の宿っている武器を扱う者同士の戦闘経験はほとんどないに等しいが、それでも、天成獣部隊同士での模擬戦は何度も経験している。
そこから、天成獣の宿っている武器での戦いというのが、どういうものかを理解している。
知っているからこそ、戦い方を学ぶことができたのだ。
それでも、実戦経験が伴っていないので、こういう場での戦い方というのは素人のそれでしかない。いや、天成獣の宿っている武器がない時の戦いは知っているので、素人に毛が生えた程度と表現した方が正しいのであろう。
(一旦、距離を取る!!!)
と、オーロルは思いながら、アンバイドから距離を取るためにバックする。
オーロルはその間も、
(伝説の傭兵がここまでとは―…。一対一でどこまで戦い続けられるかは分からない。)
と、心の中で焦りを募らせる。
アンバイドとの間にある圧倒的な実力差を理解させられてしまっているのは分かっている。
さらに、部下の手前弱音を吐くことはできない。
強がるしかない。
だけど、オーロルがアンバイドと戦い続けられる時がどれくらいになるかは分からないが、長いものとは思えない。
「俺の一撃を受け止めるのはさすがだな~。だけど、実力差もあるんだ。撤退してくれると助かるが、目を見ている感じ、そのようなことはできないようだな。まあ、それでも構わないが―…。」
と、アンバイドが言っていると―…。
アンバイドは、自分の方に近づいている者の存在に気づく。
(そっちか!!!)
と、すぐに守りに徹するのではなく、反撃を頭の中で浮かべる。
「気づかれても構わねぇ―――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
と、叫びながら、大柄の男が近づいてくる。
この人物の武器は、大きな斧である。
この一撃は、どれだけの強さを誇るのかというのを想像することは容易い。
「ああ~、バレて喋るのは二流だな。」
と、アンバイドは言うと、すぐに、その大男の前へと移動する。
「アンバイドの首を討ち取ッ………………。」
大男の言葉が一瞬にして、次の言葉を紡ぐことなく消える。
その理由は簡単だ。
すでに、アンバイドの攻撃を受けてしまっていたからだ。
下から上へと真っ二つに斬られてしまったからだ。
それも一瞬において、綺麗にスパッと―…。
そして、アンバイドはすぐに距離を取り、オーロルの方へと視線を向けるのだった。
その間に、斬られた大男は、地面に真っ二つにされたまま衝突するのだった。
立っていられることはできない。倒れるのみだ。
そのことに従うかのように前へと倒れていく。
その光景はアンバイドやオーロル以外の者で、周囲にいる者たちに言葉を与えないほどだ。
それだけ、見慣れない光景であり、かつ、人という領域の中にいる生き物にできることではないことを改めて認識させられてしまい、アンバイドの強さに、この光景を見続けている者達にアンバイドを人の領域から外してしまうのだ。アンバイドを怪物の領域や化け物の領域に入れる。
そう認識しなかれば、自分の心の中で納得させることができないからだ。
自分の中で分からないということの方が恐ろしく、無理矢理納得できる理由を探らないと、人が感じる恐怖という感情に支配され、自らの精神の優位性がなくなってしまうのだ。
安定した精神のためには、事実を曲解することも時に必要としてしまっているのだ。
さらに、付け加えるなら、人間という生き物自体が世界を完全に正しく解釈することができないし、正しい解釈が何であるかという完璧な基準すら見つけることのできない存在なのだから―…。
それで、適当に自分勝手の理由をでっち上げることが許されるか、というと、そうではない。
なるべく、しっかりとした周囲を説得できる根拠が必要なのであるが―…。
これ以上、深いところ考察に入っても意味はないと思われるので、これまでにしておくべきであろう。
「こうなるぜ。」
と、アンバイドは、さっき自らが斬った大男の方を剣が持っていない手で指し示す。
その間に、敵から攻撃されてしまいそうな油断を見せているが、すぐに対処が可能な状態にしていたし、警戒を怠ってはいない。
アンバイドは今のところ、油断も隙もない状態であると言った方が正しい。
(……………斬られるところを何とか見ることができたが―…。簡単に、ビッグバルドーラが殺されてしまうなんて―…。)
と、オーロルは驚きのあまり冷静になれなかった。
ビッグバルドーラというのは、さっきアンバイドの斬られた大男のことだ。この人物は、ミラング共和国軍の中で力持ちであることで有名であったが、剣術の腕はそこまで良くなかったし、槍も振り回す感じだったので、軍隊の中に入れることができないと判断され、後方もしくは土木部隊の方に属すことが多かった。
その中で、天成獣の宿っている武器を扱える者を探していたミラング共和国軍は、兵士の中で幹部以外にも範囲を広げる。
つまり、ビッグバルドーラにとっては、偶然、そこに該当し、天成獣の宿っている武器を握る機会があり、そこで天成獣に選ばれたのだ。その結果、天成獣部隊に属すことができた。
そして、最後はこの世にいなくなるのであるが―…。アンバイドに斬られて真っ二つになることによって―…。
このような結末を見せられて、冷静でいろというのは不可能である。
「さて、さっさと決着をつかせて―…。」
と、アンバイドが言っている途中で、すぐに避ける。
ほんの一、二秒という時間が経過する段階で、一つの人物がアンバイドのいた場所に自らの武器である槍を地面に付きつける。
グサッ!!!
と、軽い音がしているが、それとは正反対の効果を発揮したであろう。
あの槍に触れてしまえば―…。
アンバイドは着地して―…、
「目の前で対峙している奴と同じぐらいの実力者がもう一人いるとは……な。」
と、さっきまでいた場所に視線を向ける。
そこにいたのは―…。
「フィスガーか。」
と、オーロルがフィスガーの方に向かって言う。
フィスガーの持ち場は、オーロルのいる場所から遠くはないが、それでも、駆けつけるにはそれなりに時間がかかるものであることに間違いはない。
フィスガー、正式に言えば、オッド=カット=フィスガー。
ミラング共和国軍の天成獣部隊の幹部の一人である。
「オーロル。こいつがアンバイドか、強者の雰囲気が漂いすぎて、すぐに分かってしまったぁ~。」
と、フィスガーが妖艶に微笑みながら言う。
男性であるが、今、好きな強者との戦いができるとあり、楽しみのあまり興奮してしまい、妖艶にさえなってしまうのだ。
フィスガーの正体を知っている者からしてみれば、恐怖でしかない。
その恐怖というものをアンバイドは初対面なのに理解してしまうが、抱いた感情は恐怖ではなく、面倒くさい奴がさらに追加されたという、呆れだ。
(絶対に戦闘狂だ。フィスガーは―…。)
と、アンバイドは心の中で思う。
アンバイドほどの戦闘経験がある者になると、一人や二人ぐらい強者との戦闘を求める戦闘狂と言われる者と当たることがあるのだ。
そういう人物は実力以上に手ごわく、倒すのに時間がかかったりするのだ。
兎に角、戦闘狂という奴らは、戦闘を楽しむので、戦いが己の心を満たすものであればあるほど、成長の速度はそれに比例するぐらいに上がってくる。自分の今までの考えというものを自然とぶち破り、かつ、相手の戦い方を実践の中で吸収するし、いろんな可能性を好奇心良く探ってくるので、新たな自分の可能性を発見するのが上手かったりする。それに応用力も高い。
要は、戦闘狂という輩は、戦闘が趣味であり、人生そのものなのだ。
そんな相手の手ごわさを理解しているアンバイドは、嫌いなタイプであったりする。
だからこそ、嫌そうな表情をするのだった。
「フィスガー、あいつがアンバイドなのは事実だ。さっき、ビッグバルドーラがあっさりと真っ二つにされてしまった。一人で敵う相手ではない。」
と、オーロルは言う。
オーロルは、フィスガーがここにやって来た以上、自分一人ではアンバイドを倒すということを無理だと言ったとしても、アンバイドを一対一でフィスガーに戦わせなければ、問題はない。
フィスガーは戦闘狂であり、一対一の戦いを好む傾向があるので、アンバイド相手であっても、一対一の戦いをする可能性が高い。だからこそ、オーロルは釘を刺しておく必要がある。なぜなら、アンバイドの実力は一対一で勝てるほど、甘いものではない。
フィスガーを失うことは、ミラング共和国軍の天成獣部隊に大きな損失をもたらすことになるからだ。それでも、過保護にする気はないが、ここは戦場である以上、命の奪い合いが発生している現場なのだから―…。
勇ましい言葉や煽り言葉だって、時には意味をなさないのだ。武力というものを持っていなければ―…。
それを自分の中で冷静に自身の実力を見極めることができないことほど危険なことはない。
フィスガーの方は―…、
(一対一で戦いたいけど、アンバイドが強いのは分かるのだよなぁ~。オーロルの言う通りにしないといけないなぁ~。ここは戦場なんだから―…。)
と、心の中で思っている。
フィスガーは、一対一で戦いたいが、戦場であり、アンバイドの実力が圧倒的に強く、自身の方がかなり弱いので、一対一で戦えば、ほとんど時間をかけることもなく殺されていてもおかしくはない。だからこそ、オーロルの言うことを聞く決断を下す。
「オーロル、わかった。」
と、フィスガーは返事をする。
「そう言っていただけると助かる。アンバイドは、二人がかりでやるしかない。」
と、オーロルが言う。
その言葉を聞きながらも、アンバイドはオーロルとフィスガーをどうやって倒そうかということに集中していた。
それに加えて、周囲への警戒を怠ることはない。
(ふう~、槍と刀か。)
と、心の中で考えながら、オーロルとフィスガーの天成獣の属性が何かが分かっていない以上、完璧な対処法はできないと思う。
そんななかで、フィスガーは、
「あんたがアンバイドなら、倒せば俺たちは伝説を倒して、最強になることができるなぁ~。」
と、アンバイドの方へと視線を向けて言う。
その言葉は、フィスガーの挑発であり、フィスガーとオーロルがアンバイドを倒すことができたら、現実になることである。
その挑発にアンバイドは乗る気もなく、言葉を発する間に、油断しているフィスガーの方へと向かい、剣で攻撃しようとするのであった。
「!!!」
と、フィスガーは驚くが、すぐに、アンバイドから距離を取る。
ズン!!!
斬撃は空を切る。
(対処はできるというわけか。)
と、アンバイドは心の中で思うのだった。
それでも、動揺することがないのがアンバイドであり、その実力がかなりのものであることを示すのに十分な貫禄である。
そして―…、アンバイドが攻撃している時から…………、オーロルがアンバイドが攻撃する場所へと向かい、かつ、アンバイドの攻撃が当たらない場所を探して動き、アンバイドの攻撃がやむと同時にアンバイドに近くづく。
が―……。
「!!!」
オーロルの目の前に、一つの見たこともない形のものが現れるのだった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(184)~最終章 滅亡戦争(39)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
風邪の方は何とか状態は改善しつつあるような気がします。
まだ、完全に治っていないので、『水晶』の投稿の不定期は解除できない感じです。
最近、ブックマークの件数が増えました。ブックマークしていただいた方に関しては感謝しかありません。今後とも『水晶』に関して、よろしくお願いいたします。
さらに、『水晶』を読んでくださっている方に関しても、感謝です。
ありがとうございます。
無理しない程度に進めていくと思いますので、読んでいただければ幸いです。
では―…。