番外編 ミラング共和国滅亡物語(182)~最終章 滅亡戦争(37)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
少し時が戻る。
リース王国軍の中央軍とミラング共和国軍の本陣いる軍隊と衝突が開始される前。
ほんの少し前。
そこでは、リース王国軍の中央軍の現場指揮官の一人が言う。
「ミラング共和国軍よ!!! 今日は、お前らの本陣を壊してみせる!!!」
と。
できるかどうかは分からないが、できませんとは言えない。
これは、軍として面子である。
人という生き物は不安を感じさせられる、完全にはできないことに対して、信用をしない。
なぜなら、発生することが未来において確実でなければ、やる意味がないと思っている。
それは、失敗すれば、自分を滅ぼすのではないかという不安が付きまとっているからであり、それは、自らという生存のために必要な力の一つであるからだ。
ただし、完全に生存を保障するかというと、そうではない。
現実に、人が選択することができるルートは、すべてにおいて、完全には未来を見通せないほどであり、かつ、自分は滅びないということを教えてくれることはないし、見せてもくれない。
だからこそ、不安な部分を排除してくれることを保障をしてくれる言葉を言う人間に耳を傾け、その人間の言う通りの動いたりする。そこに完全な安全は存在しないはずなのに―…。
つまり、人という生き物は、不安から逃れ、自らが生き残りたいがために、確実というものに引っ張られるのだ。
それを利用しているだけに過ぎない。
できる言葉ほど信頼できる言葉はない。
そんなことはないのに―…。
「そんなことができるわけがない!!! ミラング共和国軍は強力であり、我々に勝てる者など存在しない!!! リース王国軍ども知能では、我々の凄さなどが今のところ分からないようだな!!! あいつらを人にしてやるために、俺らに支配されれば良い!!! 話は通用しない!!! 攻めろ!!!」
と、ミラング共和国軍の現場指揮官の一人が言う。
この人物は、今の時代の典型的なミラング共和国人であろう。
他国を見下しており、かつ、自分の属している国の考え方は正しく、他国に自分達の考えを広めることによって、他国の人は正しい人間になれると思っているのだ。
これほど、傲慢なものはない。
というか、自分達の心の中の醜い部分を綺麗だと主張しているようなことに過ぎない。当人たちにとっては、美しいものに見えているのかもしれないが、他国の人々から見れば、傲慢であり、嫌なものにしか見えない。
そして、その傲慢さによって、ミラング共和国の周辺諸国は警戒するのだ。
奴らは暴走しているとして―…。
そんなことに気づきもしないのだ、ミラング共和国の今の人々は―…。
その原因は、ミラング共和国が戦争に勝ち続けていることと、自分は強いのだというミラング共和国の支配層から提示される情報しか接していないことによる。他国のことをしっかりと学習することができるのであれば、このような考えにはならない。
自分が属している集団もしくは組織、国家が強くて、素晴らしいものであるということを誇らしいと思うものはないが、時に空虚なものもある。
だからこそ、その背景をしっかりと把握しないといけない。それが情報の精査には必要なことであり、それをするのがかなり難しいことなのである。
しっかりした情報源と言っても、その情報源自体が嘘を吐いている可能性は十分にあるのだ。
もしも、一つの情報を判断するのであれば、信じるだけでなく、信じるために疑わないといけないし、その疑いが事実かどうかを調べないといけない。視野狭窄ではなく、視野を広げることに焦点を当てて―…。
さて、このようなミラング共和国軍の現場指揮官の一人の言葉である以上、どこか、馬鹿にしているのではないかと、リース王国軍の中央軍の一般的な兵士だけでなく、指揮官たちもそのような印象を与えるのだ。
(馬鹿にしやがって!!!)
と、さっき言葉を発したリース王国軍の中央軍の現場指揮官は思いながら、
「攻めろ!!! あんな馬鹿どもを蹴散らせ―――――――――――――――!!!」
と、叫ぶように言う。
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』
と、叫びながら、リース王国軍の中央軍の兵士は、ミラング共和国軍に攻めて行くのだった。
そして、戦いが始まる。
リース王国軍の右軍。
ここではすでに戦いが始まっており―…。
「アンバイドを討ち取れ――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
と、ミラング共和国軍の兵士が言う。
現場指揮官の一人であろう。
兵士達も叫び声を上げながら、攻めていく。
(ふう~、大量に攻めてきやがって!!!)
と、アンバイドは心の中で悪態を吐く。
アンバイドは、別に今、攻めてきているミラング共和国軍に対して、負けるという心配も、殺されるという心配もしていない。
驕りも油断もしていない。
冷静に自分の状況を計算している。
アンバイドに悪態を吐かせているのは、昨日の戦いで、十人もの天成獣部隊の者を始末したのに、懲りずに攻めてきているということだ。
「アンバイドはこの俺が――――――――――――――ッ!!!」
と、天成獣部隊の一人が言う。
アンバイドから見たその人物の見た目は、
(…………弱そうだな。大柄だがな。)
と、心の中で思う。
アンバイドはそう思いながら、すぐに、自らの武器である剣で、その人物を真横に真っ二つに斬るのだった。
「喋っている暇があるなら―…。」
と、アンバイドは言いながら、次の相手の方へと高速で向かい―…、
「攻撃の一つでも―…。」
と、さらに、一人を縦に真っ二つに斬り、
「してこいよ。」
と、アンバイドは言う。
アンバイドは、さらに、動きを止めることなく、天成獣部隊との交戦の中で、槍を持っている者、弓を扱う者、果てはモーニングスターを扱う者を、一撃も彼らに技を発させる前に始末するのだった。
剣だけでなく、三つの別の武器を使って攻撃していく。
その武器による光線攻撃を受けた天成獣部隊の者は、なかなか生き残る者は少ない。
(ふう~、俺一人で、天成獣の宿っている武器の相手を請け負っていると感じだな。どれだけ数を集めたか知らないが、練度がなっていない。)
と、アンバイドは心の中で思う。
アンバイドとしては、天成獣の宿っている武器を扱う者の数は多い方がいいかもしれないが、練度がなければ意味を持たない。
天成獣の宿っている武器は、天成獣の特性や属性を理解し、その力の使い方が分かった上で、工夫して戦うのが定石であり、ミラング共和国軍の天成獣部隊はそれを疎かにしているのではないか、と思っているのだ。
原因はシエルマスの影響でもあるし、ミラング共和国軍は、天成獣の宿っている武器を扱うことができること自体がステータスになってしまっており、そのことに気づくことができていない者が多いのだ。悲しいことに―…。
そして、まだ、五年も経過していない者も多く、ちゃんとした師という存在もいなかったので、成長はほとんど見られない。
それで、アンバイドに勝負を挑んでいるのだから、ちゃんとした天成獣の宿っている武器同士の戦闘の経験があるものであれば、すぐに、気づくことできたが、そうではない。
アンバイドは、斬っていくし、光線攻撃をしていく。
それに、天成獣部隊の数を確実に減らしていく―…。
そんななか―…。
「これ以上、我が部隊の数を減らすわけにはいかない。」
と、何かの声がアンバイドに聞こえると、アンバイドはそこへと視線を向ける。
そこには―…。
すぐに、アンバイドは、斬撃がきているのを確認して、自らの武器である剣を構えて―…。
受け止める。
アンバイドは僅かばかり、後ろへと下げられるのだった。
(良い攻撃だな。俺の隙を突くとは―…。)
と、アンバイドは心の中で感心する。
だけど、アンバイドを感心させただけであり、この斬撃をしてきた者の実力を理解してしまうのだった。
だからこそ、そいつのいる場所の目の前へと高速移動して向かうのだった。
その途上にいる者たちを、斬り殺しながら―…。
斬り殺されている者たちは、自分達が斬り殺されていることに気づくことも意識を真っ暗にしていき、その生を終えるのだった。
アンバイドのようなかなり実力者であることからできることであろう。
それを見ていた斬撃を放った者は―…、
(どんだけの技量とスピードだ!!! これが我が天成獣部隊を減らしていた者の実力ならば、アンバイドで間違いないだろ。)
と、心の中で思う。
アンバイドが為していた行動は、まるで神業のようなものとしか思えず、実力の差を嫌でも理解させられてしまう。
「そうか、お前はこの天成獣の宿っている武器を扱う者達の部隊の長か。」
と、アンバイドは問う。
その間も、アンバイドは油断することなく、警戒をしながら周囲を見渡す。
アンバイドの油断なさを感じ、さらに、さっきの味方が減っていく過程を見せられてしまい、アンバイドへと攻撃をすること、戦闘をすることができなくなっている天成獣部隊の者達が多くなっている。
例外はいるかもしれないが、ほとんどは動くことができなかった。
アンバイドの実力を無意識のうちに植え付けられてしまったのだろう。さっきの光景によって―…。
「私はトップではない。トップは別の人物であるが―…。それでも、お前のような輩にこれ以上、好き勝手にさせるわけにはいかない。」
と、さっきの斬撃をした人物が言う。
その人物をアンバイドは見ながら、
(剣か―…。斬撃から予測できたことだが―…。注意だな。)
と、心の中で思いながら、警戒を強める。
実力であれば、アンバイドに遠く及ばないが、さっきまで殺してきたミラング共和国軍の兵士よりも明らかに強い匂いがしたのだ。
それを理解したからこそ、警戒の度合いを高めるのであった。
「我が名はオーロルだ。ミラング共和国軍天成獣部隊のナンバースリー。アンバイド、お前を殺す者の名前だ!!!」
と、オーロルは言う。
オーロルは、アンバイドとの実力差に圧倒的なものがあるのかは知っている。だけど、味方のいる場で弱音を吐くわけにはいかない。一つの弱音だけで、味方から裏切り者扱いされるかもしれないし、味方の士気を削ってしまうことになる。だからこそ、毅然とした態度をとるのだった。
アンバイドは、
(味方の目の前だからこそ、威勢を張っているというわけか。)
と、心の中で思う。
オーロルの今の気持ちを見透かしているのだ。
アンバイドは、戦闘の経験が豊富である以上、こういう人物の気持ちを見破ることぐらい難しいことではない。
ある程度予測することができるからだ。
「そうか。俺を殺す者か―………。まあ、さっきの集団よりは強そうだけど、実力から言わせてもらうと、オーロルって言ったか、俺よりも弱い。」
と、アンバイドは言う。
アンバイドにとっては、当たり前のことであり、絶対的に近いものであること。
疑うことはしないわけではないが、疑ってはいない。
アンバイドは自身の実力を自分で意識的に把握している限りにおいて、オーロルに負ける要素は何一つないのだから―…。
そして、アンバイドは油断することなく、しっかりと警戒しながら、オーロルの方へと視線を向ける。
「そんな言葉をいつまで言うことができるのだろうな、アンバイド。ミラング共和国の繁栄のために、邪魔をするなら殺す。」
と、オーロルは言う。
今、動いたら、危険だと判断しているからだ。
アンバイドは、オーロルが動いたら、すぐに、オーロルの攻撃方法だけでなく、軌道を読み、それに対処した上で、一発でオーロルをこの世から葬り去る一撃をしてくる。
そんな感覚をオーロルは抱いたのだ。
そのオーロルの直感は正しい。
実際に、アンバイドは、オーロルに攻撃させ、攻撃軌道を読んだ上で、自らの武器である剣で始末しようとしていたのだから―…。
オーロルの直感したことなど、すぐに現実にすることができる。
アンバイドには、それだけの実力を有しているのだから―…。
「ほお~、危険なことが何かを理解できるようだな。じゃあ、行くか。」
と、アンバイドは言いながら、オーロルの方へと向かうのだった。
オーロルを始末するために―…。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(183)~最終章 滅亡戦争(38)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
風邪ひきました。
熱はないのですが、咳は少しぐらい?
薬は飲んでいるので、動くことはできるし、行動することは可能です。
しかし、念のために、風邪が治るまでの間は『水晶』の投稿が不定期になる場合があります。申し訳ございません。
皆様も、風邪には気をつけてください。
では―…。