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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
525/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(179)~最終章 滅亡戦争(34)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。


翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。


戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。

その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。

 その日の夜。

 ランシュは珍しく、一人で自らの陣地の近くを散歩していた。

 そこで―…。

 〈俺はずっとというか、アウルと一緒にいた後からおかしく感じていたんだよ。酔っているように見えるけど、何か人の酔い方じゃない。これだと根拠は弱いが、一番疑ったのは、まるで生きているように感じるように見せかけている。そう、死体に生前の意識の記憶を保存して使う、天成獣と同じ奴の―…。今回のランシュとヒルバスの位置が知られたのは、そのアウルという奴の後であろう。〉

と、念話をしてくるのだった。

 この念話をしてくるのは、ランシュの所有している武器の中にいる天成獣のトビマルである。

 そのトビマルが急にランシュに念話をしてきたのだ。

 トビマルは何か、嫌な予感を感じていたが、それが何だが分かっていなかったが、考えていくうちにある可能性に気づいたのだ。

 だからこそ、ランシュに念話で話しかけてきたのだ。

 その言葉を聞いたランシュは、

 〈何で教えてくれなかったんだ。〉

と、念話で返事をする。

 ランシュからすれば、途轍もなく重要なことである。

 そして、それを今になって教えるのか疑問にしか感じなかったし、すぐに教えてもらって欲しかったのだ。

 ランシュはそのような意味を込めて言うのだった。

 〈ランシュなら気づいているのではないかと思っていたが、それの糸をただの糸に近い状態にするのに、時間がかかったからだ。〉

と、トビマルが言う。

 ランシュは体を探ると、あまりに細い糸が付いていた。

 糸を付けた覚えはない。

 そして、蜘蛛の巣を通ったわけではない。

 だけど、普通の糸になっている感じからすると、トビマルが念話で言っていることは正しいこととなる。

 元々は、人の目では見えないほど細かい糸だった。それをトビマルは自らの天成獣の力を流すことで大きくしていたのだ。

 ランシュは、この糸に気づいていたのではないかと思ったが、そうではなかったようだ。

 ゆえに、ランシュは、すぐに糸を切るのだった。大剣で―…。

 さすが、トビマルの「ただの糸に近い状態」という念話での言葉があったので、警戒をしてのことだ。触れることに毒を受けるのではないかと思いながら―…。

 〈それはどういうことだ?〉

と、ランシュは疑問に感じたので、トビマルに質問する。

 〈たぶん、状況によっては、糸から毒を流して殺すつもりだったのだろう。ヒルバスはアウルに触れる、触れられることはなかったから、その心配はなかったけどな。〉

と、トビマルは言う。

 トビマルは、ランシュから視れる視界からいろいろと見ており、ランシュが気づかないところまで気づいていたりする。

 だからこそ、ヒルバスが安全であることを理解していた。

 そして、ランシュは、アウルに触れる機会があったので、その時にアウルから糸を付けられたのだ。

 それを確認していたからこそ、トビマルはその糸を「ただの糸に近い状態」にしたのだから―…。

 ランシュはその糸を見ながら―…。

 〈ヒルバスはそれに気づいていたとして、俺には教えてくれなかったんだけど―…。〉

と、ランシュは、ヒルバスに対して、なぜ教えてくれなかったのか不満を念話で言う。

 〈俺が分かるか!!! だけど、俺と同じじゃなかったのか。ランシュなら糸に毒が流される段階で気づくのではないか…と。だから、必要な場面じゃないから言わなかったと思うぞ。それに、死体を動かす天成獣の宿っている武器があるということは、かなり危険なことでもある。ああいうのは、場を混乱させるのには御誂え向きだからなぁ~。〉

と、トビマルが念話で言う。

 トビマルは……いや、天成獣は、いつ誕生したのか分からないが、かなり昔のことであるので、過去に何度も自らの宿っている武器の使用者がおり、そこからいろいろなことを学んだりしている。

 だからこそ、いろいろとこの世界における知識を持っていたりする。ただし、最新の知識や常識に疎いという一面はあったりすることもある。

 それでも、戦いの場での経験というものが多い以上、いろんな天成獣のことについて詳しかったりする。使用者が言ってくるまで、答えることはあまりなかったりする。

 一概に全員が同じことを天成獣がするわけではない。

 天成獣には、それぞれの個性があるので、そのことに関しては、しっかりと理解しておく必要があるだろう。

 トビマルは自らの経験から、死体を操る天成獣が力が発揮する事例は敵方の死体を利用して、油断させることによって、隙を突くことに長ける戦術を採ってくるということだ。突然の対応というのは、かなり難しいものであるし、暗殺にも向いているから、急所を突かれてしまえば何も反撃することができずに、使用者の命が消える。そんなことを望むはずもない。

 〈ということは、俺は今からずっと、どこにいるか分からない相手に注意しないといけないということか。〉

と、ランシュは念話で言う。

 こればかりは、呆れるというか、溜息の一つを吐きたい気分になる。

 それぐらいに憂鬱なことなのだ。

 警戒をし続けるということは、かなりの労力を使うことであり、戦争の中では油断しないようにしているつもりであったとしても、油断しない人間がこの世にいないように、ずっと警戒し続けられる人間はいない。

 そうである以上、ランシュの気分が優れないのは致し方ないことである。

 そして、ランシュは落ち込むことを一瞬で終え、今、自分がすべきことに集中するのだった。

 〈トビマルありがとう。〉

 〈どういたしまして。〉

 その後、ランシュは、テントの方へと戻って行くのだった。


 一方、リース王国の左軍の騎士団の陣地の中。

 そこでは、一人の騎士が見張りをしていた。

 この人物は本当のリース王国の騎士団の騎士ではない。

 (私を騎士団に思わせることに成功はしているが、ここまで警備がざるとはなぁ~。そのおかげで俺は、この場に侵入することができているのだが―…。大事なのは、今日の戦いではリース王国軍の左軍の混乱を起こさせることができなかった。だが、明日は―…。)

と、心の中でこの人物は思う。

 この人物の名はイマニガである。

 ミラング共和国の諜報および謀略組織であるシエルマスの一員であり、国内担当の副首席の人物である。

 シエルマスのトップであるラウナンの命令により、今回のミラング共和国とリース王国における戦争に動員され、今、リース王国軍の左軍の方に潜入し、この軍を混乱させることを任務としている。

 今朝、戦いの前にシエルマスの諜報員からラウナンの命令がきていた。


 ―混乱させるための死体を用意したようだな。命令の確認だ。リース王国軍の左軍を混乱させることだ。そして、その混乱のためには、以下の二人がいる場合におこなうように―…。ミラング共和国軍の騎士団の騎士で、銃と空を飛ぶ二人が左軍内にいる時で、我が軍が戦っている時に状況を見て、混乱させるように動け―


 ―分かった―


 そのことをイマニガは思い出す。

 イマニガは、その命令が明日の戦いで変更される可能性があるのは、常に頭の片隅の中においている。

 そして、イマニガは見張りをしながらも、二人一組の体制となっていることもあり、中々抜け出すことができるものではないというのを理解している。

 それでも、一緒に見張りをしているのが―…。

 (隣に死体がいるとはな。不気味で、これ以上、近くにいたくはねぇ~。だが、こいつと一緒に見張っていた方が得だ。それに―…。)

と、イマニガが心の中で思っていると―…。

 「死体と一緒に見張りとは―…、まあ、良い。」

と、一人の声がする。

 その声は、イマニガにはっきりと聞こえるものであるが、同時に、少し遠くで見張っている者に聞こえないようにしている。

 なぜなら、これからのことは、リース王国軍の兵士に聞かれると困るものであるからだ。

 聞かれたら、その時はやることが決まっている。

 聞いてしまった者はその時から数秒後に、この世界から強制的におさらばさせるのだ。

 シエルマスが―…。

 「お前かよ。西方担当首席自らが私へと伝令ですか。」

と、イマニガは言う。

 その声の人物の正体を知っている。

 そう、シエルマスの西方担当首席であるドグラード=ポッタラがイマニガの目の前に姿を現わす。

 理由は、ラウナンからの指令を伝えるためだ。

 「俺の方がシエルマスでの地位は上だ。ドグラード様と呼んだらどうだ、イマニガ。」

と、ドグラードは言う。

 ドグラードは、劣等感の塊であり、東方担当首席に対して、このように思っているが、その東方担当首席がラフェラル王国での戦いの中で戦死した後も、その劣等感は無くなるどころか、増幅させていた。

 自分の活躍で、ラウナンからの寵愛を一身に受けないと、この劣等感を拭い去ることはできない。自分の気持ちでどうにかなる場合も存在するが、そうじゃない場合も十分にあるのだ。

 そして、ドグラードの言葉に対して、

 (国内担当の者にも押し付けてくるとは―…。)

と、イマニガは心の中で思う。

 だけど、西方担当首席と国内担当では管轄がそもそも違うので、上下関係があったとしても、ちょっかいをかければ、国内担当の首席が黙ってはいない。

 「残念ながら、ドグラード=ボッタラさんと私とでは、担当している管轄が違うし、このようなパワハラをしてくれば、国内担当首席のフィード様が黙っていませんよ。フィード様は自分の部下に圧を加えようとする他の担当にはかなり厳しい人ですよ。」

と、イマニガは言う。

 イマニガは、シエルマスの国内担当首席のフィード=アルクマールの直属の部下であり、副首席であるからこそ、フィードの性格をしっかりと理解している。

 だからこそ、ドグラードがイマニガに対して、暴言を吐き続けていれば、どこかでフィードがドグラードに対してに何をするかわかったものではない。警告である。

 「チッ!!!」

と、ドグラードは舌打ちをすると、すぐに、用件を言い始める。

 「わかったよ。ラウナン様からの命令だ。今日は、リース王国軍の騎士団の騎士の格好して、我が軍に千人以上の死者を出した二人の存在がいる時に、リース王国軍の左軍を混乱させようとしたが、次の戦いは、そういうこと関係なく、お前のタイミングでリース王国軍の左軍を混乱させろ、と。以上だ。」

と、ドグラードは言うと、どこかへと消えるのだった。

 そのドグラードがどこへ向かったのかを、イマニガは追う気も、命令の確認もする気はない。

 なぜなら、ラウナンの命令を間違って伝えてしまえば、そのシエルマスの工作員の未来は悲惨な最後がすぐ目の前からそいつにぶつかってくるのだ。

 ドグラードほどの幹部が分からないわけがない。

 だからこそ、ラウナンの命令を嘘を含めて伝えることは一切ない。

 確認をする必要はない。

 (ふう―…。自由にやって良いということか。)

と、イマニガは心の中で思う。

 そう、次の戦いで、予想外の出来事が起こることになる。

 その時、まだ、誰も知りはしなかった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(180)~最終章 滅亡戦争(35)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


この後、『この異世界に救済を』を投稿します。

では―…。

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