番外編 ミラング共和国滅亡物語(178)~最終章 滅亡戦争(33)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
「いやぁ~、中央軍との話し合いでね、今日の戦いは本陣に攻めたんだけど、後、一歩のところで粘られて、本陣を落とすことができなかったみたい。まあ、彼らにしては、よく頑張った方だと思うよ。だけど、これで、こっちの優勢が少しだけ揺らいだんだよねぇ~。こうなると、左軍は戦わないといけなくなるわけだ。昨日と戦ったミラング共和国軍に―…。激戦必須だよ。ということで、ランシュ君とヒルバス君には戦ってもらいます。今回はごめんだけど、私の指揮に従ってもらうよ。もちろん、ランシュ君とヒルバス君に対して、不当な扱いをする気はない。」
と。
ハミルニアとしては、ランシュとヒルバスの二人に関しては、なるべく自由に行動させてあげたいとは思っていた。
だけど、ミラング共和国のシエルマスがランシュとヒルバスの後をつけている以上、二人でシエルマスに対処することは可能であろうが、それでも、どうしようもできない場合も十分に存在するというわけだ。
そうである以上、リース王国軍の左軍の中に入れて、ハミルニアの指揮の中で戦ってもらうことになる。
だけど、ハミルニアはランシュとヒルバスに対して、不当な扱いをすることはなかった。
もう一つは、リース王国軍の中央軍のトップで、リース王国軍の今回のリース王国とミラング共和国との戦争における総大将であるファルアールトの滅茶苦茶な要求を生き延びるためには、二人を自らの軍隊の中に入れておき、指揮する必要がある。
なぜなら、戦争において、最も怖いのは味方の数をかなり減らしてしまい、かつ、相手の兵力を削れないことである。
それに、ミラング共和国は、国民の多くがリース王国を憎んでいるので、士気という面で下がる可能性はかなり低い。今のトップの馬鹿政策によってなされているのに―…、であるが―…。リース王国のアルデルダ領の領主の時におこなっているのだ。
もう、ややこしいことになっているのだが、それによって、今はエルゲルダが憎まれているのではなく、リース王国、そのものが憎まれており、リース王国のラーンドル一派がエルゲルダの当時の政策を支持したので、リース王国に責任がないと言えば、嘘になるが―…。
そして、ランシュは考える。
(次の戦いは、ハミルニアさんの指揮下の中での戦いか。まあ、大丈夫だろう。)
と。
そして、すぐに返事をするのだった。
「分かりました。」
「そうか、ありがとう。ランシュ君。本当に済まないね。」
と、ハミルニアは、ランシュに向かって感謝するのだった。
「私も問題はございません。」
と、ヒルバスも返事をする。
「ありがとう。」
と、ヒルバスにも感謝する。
ハミルニアは、一呼吸をおき―…。
「ミラング共和国軍は、シエルマスを使っていると思われるから、常に気をつけて欲しい。これは私の予想でしかないが、何か嫌な予感がするから―…。」
と、ハミルニアは続きを言う。
それは、ハミルニアの中にある直感的な嫌な予感であり、説明しろと言ったとしても、できるものではない。ゆえに、嫌な予感としか表現することしかできない。
嫌な予感が具体的に何かを詳しくわかっていないのだ。
そうである以上、嫌な予感としか言えないが、それでも、言わないよりましだと判断したからであろう。
そんな中で、ヒルバスは、
(嫌な予感……かぁ~。心当たりはありませんが、違和感というものは感じています。まるで、何か異質なものが左軍の中に混じっているような………、そんな感じが―…。)
と、心の中で思う。
ヒルバスも言葉にすることができない以上、心の中で留めるのだった。
その後、ランシュとヒルバス、ハミルニアの会話は終わったわけではないが、他愛のない話で夕食が終わるとともに終わったことは確かである。
少し時間が進み、ミラング共和国軍。
その陣営の中で、会議が開かれていた。
「申し訳ありませんが、残念ながら、リース王国軍の左軍の中に、今日の戦いの間、我が軍に大きな打撃を与えているリース王国の騎士団の格好をされている二人に関して、いなかった模様であり、ずっと探しているのですが、情報が―…。」
と、ラウナンは申し訳なさそうに言う。
ラウナンとしては、これはあってはならないことである。
だけど、ランシュとヒルバスの方へと派遣したシエルマスの工作員が誰一人として帰ってこないのだ。どうなっているのか。知りたいのラウナン自身である。
結果としては、ランシュとヒルバスによって、彼らに向かったシエルマスの工作員は全員、見事に始末されてしまい、この世にはいない。
そういう結果を予測することはラウナンにとって、可能であるし、さらに探しに行かせている。
良い結果になる可能性は、現時点でかなり低いものと思われる。
そんな申し訳なさそうとラウナンはしながらも、
(どうなっていやがる!!! シエルマスが返り討ちに遭うなんて!!! こんな屈辱一回もない、というのに!!!)
と、ラウナンは心の中で怒気をはらませる。
それを表情に出さないように注意しながら―…。
ラウナンが、このような仕打ちを受けたことは、一回もないというのは嘘だ。
自身の失敗というか、それを心の中で認めることができないのだ。
失敗は失敗でしかないのに―…。
それでも、失敗して諦めるのか続けるのかということの選択はある程度の自由をもってできるのだが―…。
諦めるか、続けるのか、その二つの選択肢は片方が常に正しいとしてあり続けるとは限らない。
大事なのは、その時、他の要因がどのようになるかという完全ではないけど、それなりに根拠がもてる予測をし、それを選択するということだ。自身の気持ちで―…。他者の意見を聞くということは大事だが―…。
ここで一番してはいけないのは、意固地になることであり、その意固地が周囲にとんでもない迷惑をかけさせることになることだ。それでも、その意固地によって、成功することは十分にあり得る。だからこそ、人の選択というものに正解がないと思えるほどであるし、結局、自分が納得する方向へと向かうしかない。
それで、最悪の結果を周囲含め自分におよぼすことは避けないといけないことであるが―…。
未来が完全に分かるのであれば、それは運命というものが存在し、導かれていることが成り立っていることになる。
人という生き物は、未来を完全に視ることも知ることでもない。
さて、話を戻すと、ラウナンは失敗の記憶をなかったことにしたのだ。過去は一人であるが、過去のすべての視点で見たり、聞いたりすることができない以上、過去もまた完全に把握することは不可能であり、自分が認知していない部分で過去というものは変わったかのような錯覚の現象を生むのであるが―…。歴史は変わる、そのような言葉で表現されるように―…。
「そうか―…。」
と、ファルケンシュタイロは、そういう言葉のみである。
場の空気は重い。
(俺の方も、天成獣部隊がアンバイドに手も足もでなかったということだ。十名がいとも簡単にやられてしまうとは―…。どうなっていやがる!!!)
と、心の中で悔しそうにする。
ファルケンシュタイロもリース王国軍の右軍のアンバイドの実力に手も足も出ないような感じだ。天成獣部隊が簡単に十数名の者が亡き者にされてしまったのだから―…。
天成獣部隊の中でも下っ端の者であろうとも、平均的なミラング共和国軍の兵士の百人分ぐらいの実力を有しているはずだ。
そうである以上、アンバイドを倒せなくても、時間を稼ぐことや、弱らせることができたのではないか。そのように思っていた。
計算違いだった。
その最大の理由は、アンバイドには戦闘経験があるということと、天成獣の宿っている武器での戦い方をしっかりと心得ていること、油断することが自身の命に危険を及ぼすことを頭の中で理解し、体にも勘にもしっかりと染み込んでしまっているのだ。
ゆえに、こういう場の経験が少ないことに負ける可能性はかなり低い。時に、相手側の方がビギナーズラックで勝利することも可能である以上、あり得ないということを宣言することはできない。
そして、ファルケンシュタイロは、
(だが、ラウナンがここまでしくじっているのを指摘するのは危険だな。ラウナンのここ数年の狂気的な感じの状態で敵に回しても、良いことはない。)
と、ファルケンシュタイロは冷静に分析する。
ラウナンの状態、今がとても危険な方に分類されることはすぐに理解できる。
ラウナンは、何かしらをこちらに情報として伝えることがないということは分かっている。
そして、ミラング共和国の実質的な支配者はエルゲルダではなく、ラウナンなのだから―…。
ラウナンは権力だけでなく、武力という力を、暗躍に優れているという力を持っているのだから―…。
そのことによって、ミラング共和国の政府の要人たちを自らの意のままに動かそうとしているのだ。
そうである以上、ファルケンシュタイロの考えになることは致し方ないことだと分かっていただけるだろう。
だけど、ラウナンもまた一人の人間である以上、完璧にもなれなければ、完全にもなれない一存在であることに間違いはない。本人はそのことに気づいてはいないだろう。気づいていれば、反抗しなければ、このような滅茶苦茶な自分にとって都合の良いことばかりはしていなかったであろう。
まあ、そんな別の世界線上の可能性を考察することは、意味がないわけではないが、しても解決できるかどうかは怪しい。それを解決できる者は、一種のその分野における最適解に近い考えを当てられる人かもしれない。人は自らにとっての最適解を選択して行動しているのか、知ることは一切できないのだから―…。知ることができるのであれば、それは未来を預言しているのと同じであり、人は行動を選択することを否定していることになり、かつ、失敗するという未来における結果は一切存在しなくなることだ。そのような現に存在するのか疑問でしかないが―…。失敗という経験談が過去に存在することはない。
完璧でもなく、完全でもなく、どこか欠けていることが存在し、完璧や完全を目指すことができるのが人間であり、ゆえに、新たな発見を約束されるのだから―…。
ラウナンの狂気的な雰囲気から話しかけることをしばらく止めて、考え続けてきていたが、全体の雰囲気がピリピリしたものとなっている。
(だけど―…、こうなったらリース王国軍の左軍を混乱させるための作戦を状況に関係なく、実行に移すしかないな。次のリース王国軍との戦いの中で―…。どうせ、リース王国軍は明日も私たちに戦いを仕掛けてくることは分かっている。私の部下が探ってくれていますので―…。)
と、ラウナンは心の中で思う。
すでに、心の中で今日の途中から思っていた作戦を、次のリース王国軍との戦いの中で実行に移そうと考えていた。
だからこそ―…。
「リース王国軍の左軍の様子を見ながら混乱させる作戦を実行させる予定であったが、あの我が軍に大きなダメージを与えた二人のリース王国の騎士団の人間がいなかったので、実行はしませんでした。だが、もう関係はありません。明日で、リース王国軍の左軍を混乱させ、リース王国軍の中央軍を壊滅させ、リース王国軍から勝利を手に入れましょう。」
と、ラウナンは狂気な声で言う。
その声は、周囲に作戦会議に参加していたミラング共和国軍の将校たちを畏怖させるのに十分であった。
(恐怖…だな。)
と、ファルケンシュタイロは心の中で思う。
ラウナンの恐怖を自らの実力で回避することは、ここにいる者達にはできない。
それほどに、ラウナンは実力があるということだ。
だからこそ、返事は決まっている。
「わかった。」
と、ファルケンシュタイロは言う。
それ以外の返事など認められるわけがない。
作戦会議はここで終わることになった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(179)~最終章 滅亡戦争(34)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
『この異世界に救済を』に関する1年の成果(「小説家になろう」の分)報告は、2023年12月2日の投稿時にする予定です。
すみません。言うのが遅れまして―…。
一週間一回なので、次も忘れそうになる時があるかもしれません。
なるべく忘れないようにします。
では―…。