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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
523/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(177)~最終章 滅亡戦争(32)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。


翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。


戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。

その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍は―…。

 少し時を戻そう。

 夜になる前。

 太陽はすでに、沈んでおり、青、橙色、黒が領域争いをしているのではないかと感じされる時―…。

 ミラング共和国軍とリース王国軍の双方とも引き上げていく。

 その理由は、夜襲などの場合は別であるが、大軍での戦いであるし、さらに、夜に戦うのはそれなりの危険が伴うのだから、事前の準備をしないといけない。

 まあ、即というわけではないが、上が命令すれば可能であろう。

 ミラング共和国軍の側の理由は、エルゲルダを撤退させる時が夜の場合、不都合なのだ。女遊びをしている可能性もあるし、エルゲルダが夜の撤退を好まないのだ。

 寝たいときに寝たいと言ってくるので―…。

 そして、リース王国軍側の理由は、ファルアールトの頭になく、指令すらされていないのだから―…。

 一方で、ランシュとヒルバスのいる場所では、火が燃やされていたがミラング共和国軍側の引き揚げる時間だったので、そこには向かうことがなかった。

 そこまで注意を向ける気力もなかった。

 ランシュとヒルバスは、今日、自らが始末したシエルマスの者の死体を燃やし、それを終えると、火がちゃんと消えたのかを目視で確認して、消えたと判断すると、リース王国左軍の方へと戻って行くのだった。

 そんななか―…。

 「俺、今回の戦争で死体処理の記憶が鮮明に強く残ってしまっているんだが―…。」

と、ランシュは言う。

 ランシュとしては、自らが今回のリース王国とミラング共和国との戦争で活躍している自覚は十分にあるが、その後、死体処理に関しても思い出してしまうのだ。

 まるで、セットにされているかのように―…。連想記憶のようになっている。

 それをさせているのは、死体を一か所に集め、燃やす時に死体からの強烈な激臭があまりにもランシュの印象に残ってしまっているせいであろう。

 それが、ランシュに戦争の現実というものを教えてくれるし、一歩間違えれば、自分もこのようになるのではないかという思いもめぐっていた。ここは無意識であろうが―…。

 もし、感受性が強い人間であれば、この戦争の光景には耐えられるかどうかは分からないが、耐えられない者もでてくるであろう。その結果、戦争に恐怖して、戦後の日常生活に影響を与えるかもしれない。目の前の死に慣れていない者も同様かもしれない。

 (本当に、戦争というのは起きない方が良いものだ。)

と、ランシュは心の中で思う。

 それでも、ランシュは、人の死に慣れているというよりも、感受性があまりにも強いタイプではないが、人の死に辛いという気持ちを抱くことはできる。本当に―…。

 「まあ、戦争とは私たちから見たら、こんなものかもしれません。昨日までの仲間が今日にはいなくなる。だけど、自分たちではどうすることもできなくて、生き残るために必死に戦うしかありません。自分を無理矢理に納得させて―…。ここでいい思いができるのは、この盤上を見ながら、私たちを駒のように扱う人だけかもしれません。それでも、駒にも感情があるし、盤上を動かす人の中にも本当は皆が生き残って欲しいと思っている人もいるかもしれません。リース王国の中央で権力を握っている奴らは違うと思いますが―…。」

と、ヒルバスは言う。

 ヒルバスの気持ちとしては、戦争という現実は先のリース王国とミラング共和国との戦争で、嫌でも理解させられてしまう。

 英雄が、相手を殺しまくる素晴らしい行為ではないのだ。

 そんなヒーローの戦いなど、この戦争には存在しない。戦争自体に存在しない。それは妄想であり、幻想だ。

 あるのは、とある権力者や権力を持っている者に引っ付いていたり、関係がある者達にとっての欲望の成就のために、使い捨てにされる彼ら以外の人々の命と生活を目の当たりにさせられることであるし、被害者に彼ら以外の人々が付け加わることなのだ。

 そのことに対して、権力者や権力者と深い関係にある者達は、自分達の利益のためだ、という自分達が納得できる理由をつけて、自らの行為を正当化しようとする。彼らは自らを正義のためにしているのだということに対して、一方的に人々に押し付ける力を持っているし、方法も知っているし、それを実行することも可能だ。

 自らの言い分にとって都合が悪いことを排除することによって―…。

 だけど、そのことによって、彼らを含め、彼ら以外の人々も決して幸福になることはない。本当の幸福を知らず、破滅の快楽に権力者や権力者と深い関係にある者達が溺れているだけだ。

 芯を持ち、真っ当な信念に生きる者にとって、それが本当の幸福でないことを知っている。だからこそ、自らの芯となるものを根拠として、彼らの愚かな行為を否定するのだ。他者を労わる気持ちがあるから―…。他者とともでなければ、自らの本当の幸せが手に入らないことを知っているからだ。

 たとえ、少数者であったとしても―…。

 その少数者を見分けることは難しいことだし、答えは今のところない。

 そうこうしていると―…。

 「ああ、っと、そろそろ左軍に合流できるな。」

と、ランシュは言う。

 そう、ランシュとヒルバスが話しているうちに、リース王国軍の左軍が見える場所にいた。

 二人は迷うことなく、リース王国軍の左軍のところへと加わる。

 喋りながらも、警戒は怠ってはいなかった。

 どこに敵が潜り込んでいるのか完全に言い当てることはできない。

 そうである以上、油断しないということが今の状況では重要である。

 その後、ランシュとヒルバスは、リース王国軍の左軍とともに行動し、拠点に戻ると、夕食を食べるのであった。

 その最中に、ハミルニアがやってくる。

 「ランシュ君とヒルバス君、今日はどうだった。」

と、聞いてくる。

 ハミルニアは、リース王国軍の左軍のトップである以上、自由に行動させていたランシュとヒルバスの今日の戦果というよりも、どういうことがあったのか確認して、把握しておく必要がある。

 なぜなら、情報は戦場、戦争において重要な役割の一つを占めるし、知っているか、知っていないかによって、生死が分かれることだって、部隊が全滅か勝利かに分かれることだってあるのだ。

 そうである以上、情報は常に集められるだけ、集めておかないといけない。

 そこからは、情報の正確性をしっかりと判断しないといけない。

 そう、戦争における情報には、偽物が確実にどこかしら含まれているのだから―…。相手を貶めて、自分達が正義の味方だということを示すための情報が紛れ込んでいることは当たり前のことだ。

 だからこそ、戦争における情報を簡単に信じることは危険だ。

 今までの価値感で判断することは難しいこともあるし、味方だと思っていた者が、嘘というかプロパガンダを流すことは十分にあり得るのだから―…。

 これ以上は、話が逸れてしまうので、ここまでにしておくが、情報が重要なものであることは確かであることを再度、言っておく。

 ヒルバスは、正直にハミルニアに報告するのだった。

 「はい、今日は、一緒にランシュ君と行動し、左軍と並行して少し離れた場所で、共に行動しつつ、左軍と対峙したミラング共和国軍の軍団を見渡せる場所にいました。そして、ランシュ君と私をつけてきたミラング共和国軍の兵士とシエルマスの兵士を殺しておきました。」

と。

 ここで言われている言葉に、嘘はない。

 ランシュとヒルバスは、判断できる情報の中には―…。

 ただし、ランシュとヒルバスが間違った判断をしていないという保証はない。

 なぜなら、人間という生き物が、物事を完全に正確に把握することはできない。どこかしら間違いというものは存在する可能性がある。そもそも本当の意味で正解だと知る方法を持っていないのだから―…。

 そして、ハミルニアは、ヒルバスの言葉を聞いて考えるのだった。

 (知られてしまっているのか、ランシュとヒルバスの存在が―…。そして、二人の方を襲ったということは、狙いはランシュとヒルバスなのか。だけど―…、左軍の中にいないと言えない。どう作戦をとってくるのか分からない以上、まだ、しっかりと作戦を考えたり、話し合ったりする必要があるな。)

と、心の中でハミルニアは思う。

 ハミルニアは、まだ、ミラング共和国軍がどうしようとしているのかについて、自らの感覚で掴み取ったという感じ、得られたという感じがなかった。

 だけど、一応の判断を下さないといけないと思っていた。

 やっぱり会話しながら、得られる感覚もあるので―…。

 「……シエルマスやらミラング共和国軍の兵士を殺したのは良いのだが―…。君たち二人の存在がミラング共和国側に知られていて、つけられているのか。でも、君たち二人なら何とかできるだろうが、念には念を入れたかったが―…。仕方ないか。」

と、ハミルニアは言う。

 ハミルニアは、喋りながらも、何となく予想できたことであった。

 だからこそ、ランシュとヒルバスを今日、別行動させたのだから―…。

 そうすることで、ミラング共和国軍とシエルマスが誰を狙っているのかを理解することができた。ランシュとヒルバスであり、二人の存在は知られている。

 そして、そのシエルマスやミラング共和国軍は、ランシュとヒルバスで対応することができることを証明できたので、次はどのように動くかを考えないといけない。

 それは決まっているような感じだろう。

 (何が仕方ないのかがわからない。俺とヒルバスの存在が知られるのは仕方ないことであろうが、つけられていることに何かあるのか?)

と、ランシュは心の中で、ハミルニアの言葉のある部分に疑問を感じるのだった。

 それを深く考えようとすると、ハミルニアが言い始める。

 「あ~、ちゃんと説明しないといけないね。知られていることは問題ないんだ。だけど、つけられているということは、左軍へと偵察に入っていることになって、動向がミラング共和国側に漏れているということだし、特にランシュ君とヒルバス君がつけられているのは、二人の行動をミラング共和国側に言い当てられる可能性があるということ。そうなってしまうと、事前に相手に対策を打たれてしまい、こっちが不利になってしまうからね。」

と。

 ハミルニアにとって、ここでランシュとヒルバスに対して、嘘を吐く理由がない。

 そう、ランシュとヒルバスがシエルマスにつけられているということは、ランシュとヒルバスの行動によって、相手側にリース王国軍が何をしようとしているのか、バレてしまう可能性があるのだ。

 それに、遊撃をすることも難しくなる。

 ランシュとヒルバスの二人でミラング共和国軍への遊撃はシエルマスに監視されているので、シエルマスに対処できるとしても、僅かの時間でも作戦の遂行が遅れてしまうことになる可能性が存在する。

 作戦は、場合によって、その時のベストタイミングというものが確実に、必要とされる場合が存在するのだ。そうである以上、僅かな遅れが戦争における敗退に繋がることはある。

 まあ、遅れたことによって、よりベストタイミングになることも十分にあり得るので、一概にデメリットかというと、そうでもない。

 ランシュは、ハミルニアの言っていることを自分なり理解する。

 (俺とヒルバスの狙いが読まれかねないということだ。現に、俺らの位置に何人もミラング共和国軍の偵察部隊の兵士とシエルマスが来ていた以上、俺とヒルバスの位置は完全に分かっているか、マークできる何かがあるのだろう。そうなると、ミラング共和国軍側がどうやって―…。考えても分からないものは分からないか。だが、シエルマスの中に実力者でもいるのだろう。はあ~、マジで早く戦争を終わらせたいし、エルゲルダに復讐を果たしたいわぁ~。だけど、焦りは禁物だ。戦いで冷静さを失った奴らから負ける。相手を知ることをやめた人間から負ける。自分の欲望しか考えられなくなった愚か者は負ける。)

と、心の中で思いながら、息を一つランシュは吐く。

 その後、ランシュは冷静になる。

 そして、当然のことを聞く。

 「で、ハミルニアさんは、何か策があるんですか?」

と。

 そう、ハミルニアが何か策があるからこそ、ランシュとヒルバスに話しかけてきたのではないか、と。

 ランシュは、ヒルバスも自分と同じように今、思っているのだろうか、と考えるのだった。

 実際に、ヒルバスの方は、

 (………ランシュ様の言う通りですね。)

と、心の中で思っている。

 つまり、ランシュの考えていることは、当たっているということがわかる。

 そして、ハミルニアは真剣な表情によりなって―…、

 「じゃあ、話すとしますか。」

と、ハミルニアは話し始める。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(178)~最終章 滅亡戦争(33)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


明日(2023年11月30日)にいつもの時間に投稿できるか分からないので、明日の投稿はお休みにします。

次回の投稿日は、2023年12月1日頃を予定しています。

では―…。

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