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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
521/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(175)~最終章 滅亡戦争(30)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。


翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。


 リース王国軍の中央軍。

 すでに、ミラング共和国軍の本陣近くでの戦闘を始めていた。

 「いけええええええええええええええええええええええええええええええええ。」

と、ファルアールトが叫ぶ。

 ファルアールトはもう負けたくないと思っている。

 これ以上、負ければ、指揮官としての信頼を無くしてしまうし、リース王国軍の今回のリース王国とミラング共和国との戦争における軍隊のトップなのだから、勝って当たり前だと思われている。 

 だからこそ、好い加減に結果を出さないといけないのだ。

 その結果は、勿論、勝利である。

 勝利を手に入れるために、動かないといけないのだ。

 そのような完璧な方法などないのに―…。

 結果だけが求められる。

 相手側の要素など考慮されることなく―…。

 そして、ファルアールトは、勝利する方法があるという信念というか、そうでも思っていないと、やっていけない。精神はすでに異常をきたしており、自分の本来の正常さえも忘れてしまっている。人という生き物が本当の意味で正常かどうかを判断することはできないであろうが―…。

 (負けるわけにはいかねぇ。)

と、ファルアールトは心の中で思いながら―…。

 一方で、リース王国軍の中央軍は、左軍と右軍の活躍により、自分達が活躍しないとどんな文句を言われるのか彼らの基準でわかったものではないと思っている以上、意地でも活躍しようとする。

 現状維持を望まず―…。

 リース王国軍の中央軍の士気は、かなりあると見てよい。

 その結果、ミラング共和国の本陣へと固い守りを少しずつ切り崩していくのだった。


 今日の開戦から、二時間ほどの時間が経過する。

 リース王国軍の左軍より近く。

 リース王国軍の左軍を観察できる場所。

 ランシュとヒルバスのいる場所。

 そこで、ランシュとヒルバスはリース王国軍の左軍の様子を見る。

 そして、リース王国軍の左軍は、ミラング共和国軍の対峙している軍によって、囲まれようとしているが、それでも、戦いは発生していなかった。

 ランシュとヒルバスにもその様子は目で見て、分かっている。

 要は睨み合いだ。

 「さすがの練度というか。傭兵も我慢できるのは、ハミルニア指揮官とその部下たちの気遣いのおかげかな。」

と、ヒルバスが言う。

 ヒルバスとしては、傭兵を上手く扱うのはかなり難しいことである。

 信頼がないと彼らは言うことを聞くことがない。

 強い者、ここでは戦で勝つことができる者について行くのだから―…。

 傭兵団であれば、傭兵団同士の戦争では適当に戦って、決着をつけないということはざらにある。傭兵団は、戦争があるから需要がある産業である以上、戦争を終わらせるのは避けたいのである。国の保護下にあれば、話は変わってくるかもしれないが―…。

 傭兵団が適当に戦うことによって、傭兵の死者を極力減らすことができているという側面もある。お互いのことを知っているし、そこからお互いどういうことを思っているのか理解することができるのが原因だろう。戦場で何度も顔を合わせるのだから―…。

 そして、傭兵団同士ではなく、国と国の本気の戦争の場合は、このようなことは自分達が指揮官をしている場合に限られるし、その時でもできない場合が多かったりする。

 そんななか、ハミルニアは、左軍の中にいる傭兵と上手く話ながら、いろいろと上手にやっているのだろう。その具体的な内容をヒルバスが予測することはできないであろうが―…。

 「だな、飴と鞭をしっかりと使い分けているのだろう。本当に敵に回したくないよ、ハミルニアさんは―…。」

と、ランシュは返事をする。

 いくら戦の中にあったとしても、緊張で張り詰めることはできない。集中できるのは、そんなに長く時間は不可能なのだから―…。

 そうであると、体を休めて、しっかりと万全に戦える状態にしておく必要がある。気持ちの面で―…。

 ただし、ランシュは体を休めているからと言って、警戒をしていないわけではないし、怠らないように注意している。

 そして、ランシュとヒルバスの後ろには、ミラング共和国のシエルマスの者達の死体が積み上がっていた。

 だけど、ランシュとヒルバスは気づくのだった。

 「つ~か、俺とヒルバスのことを偵察、いや、始末してしまおうとする奴らが多いことだなぁ~。」

と、ランシュは言う。

 「そうですね。で、結局、あの世行きになっているのですが―…。ランシュ君と私のところへと派遣したミラング共和国の偵察部隊などが帰ってこない、様子を見てこい、その様子を見に来た人も帰ってこない。ミラング共和国側は、動揺している頃でしょう。上の方が―…。」

と、ヒルバスが返事をする。

 そう、ヒルバスの予見は正しい。

 ここで場面を記すほどのことではないので、文のみで表現する。セリフなしで―…。

 この死体として積み上がっているシエルマスの者達は、一、二時間でランシュとヒルバスを始末してから本陣のラウナンのいる場所へと戻ってくる予定であった。

 だが、戻ってこないので、ラウナンがさらに、シエルマスを派遣したというわけだ。

 今回のミラング共和国とリース王国の戦争では、シエルマスを約六割、最大限派遣できる数だけ、派遣しているのである。

 理由は、リース王国軍の戦力がかなりあることと、メタグニキアの私設部隊が戦争に投入される可能性を考慮に入れており、リース王国軍を混乱させることと、情報収集が目的となっている。

 そして、派遣された者達が戻ってこない以上、情報を得るために、何かあったと判断して、さらに、シエルマスの者を派遣したというわけである。

 「だな。」

と、ランシュは言う。

 こう言いながらも、ランシュとヒルバスは、リース王国軍の左軍とミラング共和国軍の一つの軍団が睨み合っている状態を見ることができている。

 (俺とヒルバスの所へ派遣した奴らが帰ってこないので、何かあるのではないかと判断して、警戒しているのだろうか。ある意味で、真面な選択だな。)

と、ランシュは心の中で思いながら、今、気配で気づいている者たちの上の存在の判断を真面だと評する。

 その評価をするが、その評価で自分達が殺されるとはランシュもヒルバスも思っていない。

 思うわけがない。

 「で、中央軍は負けると思うか、それとも―…。」

と、ランシュは言う。

 リース王国軍の中央軍が負ける可能性をヒルバスに尋ねる。

 ランシュの中では、リース王国軍の中央軍が敗北する可能性は十分にある。だけど、完全ではないし、未来を完全に言い当てることができない以上、ヒルバスの考えを聞いて、判断することが必要性を感じたのだ。他人の意見を聞くことも、時には重要なことなのだから―…。

 「私にもわかりません。今回ばかりは、ミラング共和国の本陣の判断によって変わってきますので―…。」

と、ヒルバスは言う。

 結局、自分達は、ミラング共和国軍の本陣の見える場所には直接にいないので、どう判断しようもない。

 それに、リース王国軍の中央軍がいくら弱いと言っても、相手があることなので、ミラング共和国軍の本陣の判断によって、結果が変わるなんてことは幾らでもあり得ることなのだ。

 そうである以上、自分達だけで判断することはできない。

 「そうだな。」

 ヒルバスのこの意見に対して、ランシュも理解できるからこそ、賛成するのだった。

 そして、ヒルバスは、ランシュから少し離れ、監視しているシエルマスの者を殺害するのに、向かうのだった。

 もう記す必要もないが、一分もかかることはなかった。

 それが、夕方までに、合計七回もあり、シエルマスの者の死体は軽く百を超えた。

 ランシュとヒルバスは、これらの死体を処分するのには、かなりの時間がかかると思い、辟易するのだった。


 ミラング共和国軍の本陣。

 その中では、ファルケンシュタイロが苛立ちを募らせているが、それでも、冷静さがないわけではない。

 (天成獣部隊の多くをリース王国軍の右軍に派遣してしまった以上、予想以上、こちらが苦戦か。さらに、イルターシャの率いる元グルゼンの指揮下にあった者たちの軍団を後方に下げてしまったのが影響しているのか。だが、持ちこたえれば良い。持ちこたえれば、ラウナンの野郎がシエルマスを使って、混乱を起こしてくれるはずだ。今日、混乱が起きなくても良い。リース王国軍の総大将ファルアールトは短気の性格をしており、今、自分が戦績を稼げていないことに焦りを感じているはずだ。ああいうのは、すぐに怒りに任せて、ろくなことをしない。すでに、この場での戦いで十分に証明している。)

と、ファルケンシュタイロは心の中で思う。

 ファルケンシュタイロは、軍人としての能力は十分にある。

 だけど、軍事以外のことが駄目なのだ。

 自分が必要と思うことを憶えるのはできるが、それ以外が中々できない。

 そのため、軍事と関係があると自身が気づかないところを突かれて敗北する可能性が頭の中から完全に抜けきってしまっているのだ。

 だけど、相手の大将の性格は十分に知っている。

 ファルアールトは、短気の性格をしていて、今、自分と敵対している左軍の指揮官が成果を挙げてきており、焦る気持ちを抱いていることは分かる。戦い方や強襲などがそのようなことを例証している。

 (だからこそ、リース王国軍を混乱させることは難しくないが、ラウナンがそのような行動に出ていない。どういうことだ?)

と、ファルケンシュタイロは疑問に感じる。

 ファルケンシュタイロにとって、好機と考えられるのは、リース王国軍の中で大きな軍の内部での混乱が起こり、その隙を突いて勝利することである。そうすれば、リース王国軍は完全に崩れており、ファルアールトというリース王国軍の総大将は、さらにやけっぱちになり、明らかにおかしなこともしてくるはずだ。こちらは油断せずに自分のやるべきことを慎重に、細心の注意を払いながら実行していくことが望ましいということになる。

 そして、ファルケンシュタイロはラウナンの方へと視線を向ける。

 ラウナンは、

 (…………リース王国軍の中央軍を打ち崩すことはいつでも可能だ。だが、リース王国軍の左軍の方は、部下からの報告が一切、返ってこない。というか、向かった部下が帰ってこない。どういうことだ。リース王国軍の左軍を混乱させるには、我が軍に千人以上の死傷者を出させている騎士二人を始末しておく必要があるのに―…。ファルケンシュタイロには秘密にして作戦を進めているが―…。…………考えられることは、あの騎士二人に気づかれて部下が始末されたという可能性だ。十分にあり得る。騎士が暗殺者の暗殺に対抗できる可能性なんて低いはずだ。我々は、シエルマスというこの地域で一番の諜報および謀略組織だぞ。そんなことはさらにあり得ないはず―…。今の時間を考えるとリース王国軍左軍で混乱を起こしたとしても、上手くいく可能性は少ない。夕方も近い。そうなると―…、明日か。)

と、心の中で考える。

 ラウナンとしては、リース王国軍の左軍の中で混乱を起こさせることはミラング共和国軍全体が知っていることであるが、それを起こすために、ランシュとヒルバスを抹殺してから始めようという作戦であった。理由は、強い人間がいるとすぐに混乱を起こしたとしても対処される可能性があり、不発に終わっては意味がないのである。

 だからこそ、ランシュとヒルバスを始末し、作戦成功の可能性を高めてから実行しようとしたのだ。

 現実は、ランシュとヒルバスを抹殺できないどころか、返り討ちに遭い、ラウナンのいる場所へと戻ることが永遠にできなくなってしまっているのだ。要は、ランシュとヒルバスの情報はラウナンにほとんど手に入っていないし、返り討ちに遭ったという可能性しかラウナンには情報として考えられることからもたらされていないのだ。

 結局、ラウナンは、今日中にリース王国軍の左軍で混乱を起こす作戦は実行することができなかった。

 ラウナンにとっては、悔しい結果でしかなかった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(176)~最終章 滅亡戦争(31)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の投稿日は、2023年11月28日頃を予定しています。

では―…。

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