番外編 ミラング共和国滅亡物語(173)~最終章 滅亡戦争(28)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
一方のランシュは、一分に満たない時間、周囲を警戒だけをする。
そして、ヒルバスが一瞬で戻ってくるのだった。
ランシュは、ヒルバスが、尾行していた者達を始末したことをヒルバスが戻ってくることで理解した。
そして、銃音をさせなかったヒルバスの器用さに驚くのだった。
だが、ヒルバスが報告してくるので、ランシュはすぐに真面目な表情になる。
「七人もミラング共和国軍の兵士、裏部隊の人間がいました。シエルマスの―…。本当に油断も隙もあったものではありません。だけど、辺りにはもうシエルマスとミラング共和国軍の偵察部隊はいなくなりました。」
と、ヒルバスは言う。
ヒルバスがこの七人を始末した時、すぐに、彼らの服装からミラング共和国の兵士とシエルマスだということを断定する。
正確に言えば、シエルマスが七名だということだ。
シエルマスの中にも、怪しまれないようにするために、ミラング共和国軍の兵士の格好をしている者が二人いた。
その二人は、元々、ミラング共和国軍を裏切る兵士が出た場合に始末できるようにするために、その監視にあたっていたのだ。
急の別依頼によって、ランシュとヒルバスの後をつけることになった。
そして、ヒルバスも彼らの死体をほとんど注意深く見ていないので、このような判断になるのだった。目的は、周囲にミラング共和国軍の兵士やシエルマスに自身とランシュの動向を探らせないようにするためであり、ミラング共和国軍の上層部およびシエルマスのトップであるラウナンに報告させないためである。
情報が渡ることほど怖いものはないのだから―…。
「そうか、ありがとう。」
と、ランシュは言う。
ランシュは分かっている。
(俺よりもヒルバスの方がこういうのは、武器の特性上、向いていたりする。俺の場合は、どうしても派手になるし―…、昨日みたいに―…。)
と、ランシュは心の中で思う。
ランシュは、空を飛ぶことができるため、隠密に向いているかどうかは相手が鳥であるか、それ以外の敵であるかを区別することができない場合に限られるし、空を飛ぶという情報が漏れていれば、簡単に対処される可能性が高く、いくら実力があったとしても戦いが長引いて、逃げられる可能性を高めることを避けることはできない。
一方で、ヒルバスの武器は二丁拳銃なので、銃音さえ聞こえなくすれば、武器に関する点は解決できるであろうし、忍びのような隠密の技術があれば、簡単に相手に気づかれる可能性を低くすることができるので、こういう素早く相手を片付けることには向いているというわけである。
そのことをランシュはしっかりと理解している。
「どういたしまして―…。それにしても左軍はしっかりと指揮がとれていますね。対峙してから、急に動くのではなく、ミラング共和国軍の様子をしっかりと観察していますね。」
と、ヒルバスは言う。
ランシュの言葉を聞きながらも、すでに始まっているリース王国軍の左軍の戦いを観察していた。
今、リース王国軍の左軍は、急に動くのではなく、ミラング共和国軍がどのような行動しているのか、しっかりと把握しながら、様子を観察して隙を見逃さないようにしていた。
それを一斉にできるというのは、指揮が行き届いているということだ。
「だな、ミラング共和国軍は、いくつかに軍を割りながらも、その動きに左軍が気づいている以上、迂闊に攻められないのだろう。まあ、ミラング共和国軍は、左軍を囲んで一気にって感じだな。そして、ハミルニアさんは、確実に俺らがいないとして油断して攻めてきたミラング共和国軍を俺らが現れ、蹴散らして動揺している隙にたたこうとしているわけだ。何気にえげつないな、ハミルニアさんは―…。」
と、ランシュは言う。
ハミルニアは詳しいこと作戦内容を言わなかった。
その理由は、ランシュが考える、
(ハミルニアさんから実際に、作戦の内容で詳しいことは聞いていない。つまり、俺らなら、ハミルニアさんがやろうとしていることを理解できると判断してのことだろう。あの人の性格的に考えて―…。)
と、心の中で思っていることが一つの理由である。
もう一つ別の理由は、ミラング共和国軍の中にいると思われるシエルマスがランシュとヒルバスだけを狙っているのか、それとも、左軍全体を狙っているのか、ランシュとヒルバスのいない左軍を狙っているのかを判断するためでもある。
そして、答えとしては、左軍全体を狙っているような感じであろう。
ラウナンは、リース王国軍の左軍を混乱に陥れたいのだから―…。
それでも、ランシュとヒルバスを排除したいという気持ちがないわけではなく、彼らを押さえつけることをしようとしている。
ランシュの方も、リース王国軍の左軍の方へと視線を集中的にして、さらに、詳しく観察する。
「でも、このまま膠着状態で居続けていいのでしょうか?」
と、ヒルバスは言う。
ヒルバスはそんなに膠着状態を続けていたら、今、リース王国軍の左軍が対峙しているミラング共和国軍が中央軍の方へと向かって行くのではないかと思っている。
それをランシュは心の中で否定する。
(ヒルバスは、疑問に思うが、中央軍の作戦のことを考えれば、妥当であると思っているのだろう。ここで一番最悪の結果は、今、左軍と対峙しているミラング共和国軍の一部が、こちら側から中央軍のいる方向へと向かうことだ。それが起こる前に、ミラング共和国軍の本陣が潰れて、撤退してくれるとありがたいが―…。中央軍なんで、そう上手くいくとは思えないが―…。じゃあ、俺らが助けに行けば、とか言う人もいるかもしれないが、助けにいけば、何助けにきたんだ、とか言いかねないし、前の戦いで、指揮官の発言にムカついて人が多くいるのだから―…。)
と。
ランシュは、ヒルバスがミラング共和国軍の一部が、ミラング共和国軍の本陣へと向かうのではないかと思っていることに気づいており、その可能性は低いと心の奥底で思っていたりする。言葉にはしないが―…。
そして、そのミラング共和国軍の一部が彼らの軍の本陣へと向かって行った場合、それを阻止するためにランシュとヒルバスが動いて成果を挙げた時、中央軍のトップは、二人を馬鹿にすることは目に見えている。一週間前のことを思えば、確実に、彼の得するようなことは嫌な気持ちになってしまう。
それだけ、侮辱的な言葉を聞いたのだから―…。
「そうなることを願いたいものだ。」
と、ランシュは言う。
(願いたいと思っている時点で、叶いそうにないから嫌なんだよなぁ~。)
と、ランシュは心の中で思う。
ヒルバスの言っている膠着状態であり続けるという疑問が疑問のままに終わってくれることを願いたいけれども、叶わないこともあるとなると、気持ち的には嫌になる。
助けに本当に行かないといけなくなるから―…。
リース王国軍の左軍。
彼らは、ミラング共和国軍の一軍団と対峙していた。
お互いに動こうとはしない。
そんななかでも、陣営の中の伝令は慌ただしく動く。
状況を伝えなければならないのだから―…。
通信機のような遠隔に情報を瞬時で伝える道具はないので、人や馬の力を使わないといけない。
速度という面で物理的制約を受けるのだ。
通信機があったとしても速度という制約を受けるのかどうかは分からないが、人の感覚から判断して瞬時というものなので、伝えるために移動する時間を消費するという面は無きに等しい。
そして、左軍の大将であるハミルニアにも情報が流れるのだった。
「そうですか。相手側が攻めてこないならば、こちらから無理に攻める必要はないと思います。ただし、どこで事態が動くか分かりませんので、警戒態勢は最大限にしておいてください。」
と、ハミルニアは指示する。
「分かりました。」
と、指令を受けた者は各所へと伝えるのだった。
こう忙しく動きながらも、ハミルニアは考える。
(……………私が中央軍の馬鹿の大将から受けているのは、ミラング共和国軍の本陣を中央軍が攻めている間、ここで、ミラング共和国軍の強い軍団と対峙すること。別に戦えと言われているわけではない。無駄に戦って、兵を消費するよりも、今は睨み合いを続け、情勢の変化で動かないといけなくなった時のために、待つの必須。それに、どこかがミラング共和国軍の強い軍団か分かりませんし、相手もそのような動きをしてくれるかは分かりませんから―…。)
と、心の中で言う。
ハミルニアは、中央軍ファルアールトから受けた指令がミラング共和国軍の強い師団と対決することであり、かつ、リース王国の中央軍がミラング共和国軍の本陣を強襲している間のことである。
だけど、ハミルニアは、いくら偵察の兵士を派遣したとしても、どれがミラング共和国軍の中で強い師団やら旅団やら分からないので、兎に角、対峙しておいて、相手が攻めてこなければ、攻めない方が良い。
情勢変化した場合に、多くの兵を必要とする場合があるし、その時に備えておいた方が得だと判断している。リース王国軍の中央軍がミラング共和国軍への強襲に成功するとは思えないからだ。
成功する未来がないということはないであろうが、それでも、可能性としてかなり低いのは分かりきっている。
(ここで、私たちが考えないといけないことが、左軍はランシュとヒルバス以外は戦闘員のほとんどがこの場にいるということ。そうなると、対峙している間に左軍を囲うことを考える作戦をしていてもおかしくはない。そのことを考慮して動かないといけないか。)
と、続ける。
ハミルニアも自身の左軍がミラング共和国軍によって包囲されることも想定済みである。
だからこそ、そのことを含めて動かないといけない。
本当に戦争での指揮というものは難しいものである。
と、同時に、自分の一つの指揮のミスが味方の兵士の大損害、損失に繋がるし、彼らの命や生涯を奪ってしまうかもしれない。それを避けることはできないが、その数を減らすしかない。それが、指揮官としてのトップの務めの一つであるから―…。
そして、左軍の方では、ミラング共和国軍に囲まれようとしていた。
そして、ミラング共和国の一軍団とリース王国の右軍がいる場所。
そこではすでに戦いが始まっていた。
この軍団の中には、半数以上の天成獣部隊のミラング共和国軍兵士がいる。
「俺の早さにはついていけねぇ~。」
一人の人物が、鋭利な刀のような武器を使い、リース王国軍の右軍の兵士、傭兵を斬っていく。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。」
悲鳴。
それがあがるほどの痛みであるが、それは一つではない。
悲鳴、悲鳴、悲鳴。
数、数えきれないほどの悲鳴。
その声がリース王国軍の右軍に大きな損害を与えているとわかっている。
それでも、彼らは動揺しながらも、すぐに守りの態勢に入りながら待つ―…。
(こんな楽勝とは―…。これなら―…。)
と、この一人の人物が思っていると―…。
「ガァ!!!」
斬られた。
それも、この人物は何が起きたのか理解することができなかった。
感触すらなかった。
それだけ斬られるスピードが速かったのだ。
(いつの間に―…。)
心の中で思うことができる時点で、視界は暗くなっていくのだった。
この世の別れ―…。
この一人の人物にとっての―…。
そして、真っ二つにされたこの一人の人物の近くに一人の人物が着地する。
「剣で横に真っ二つ。弱い者が粋がれると思うな。」
と、一人の人物を斬った者が言う。
「アンバイドさん。」
リース王国軍の右軍の兵士の一人が言う。
そう、今、リース王国軍の右軍に斬っていた人物を斬ったのは、アンバイドである。
(この動きから考えて天成獣の宿っている武器の扱うことができるのか。それにしては、動きが単調だし、しっかりとした師のもとで鍛錬を積んでいないようだな。弱すぎる。さて―…。)
と、アンバイドが心の中で思っていると―…。
「こいつを抑えないといけないなぁ~。」
と、目の前にまた、一人の人物が現れるのであった。
そう、アンバイドが彼らにとっての狙いだった。
アンバイドも噂には聞いていた。
そう―…、
「ミラング共和国軍が天成獣の宿っている武器を扱う者で構成される軍隊を作ったと聞いたが、要は、雑魚を寄せ集めただけの弱小軍団。俺一人で、十分だ。」
と、アンバイドが煽るように言う。
その言葉に、さらに、十の影を現した天成獣部隊がアンバイドへと対峙する。
その目には、イラつきを感じさせるものであった。
アンバイドの煽りに乗ってしまったのだ。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(174)~最終章 滅亡戦争(29)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
明日は、『この異世界に救済を』の投稿日です。
こちらの方も読んでいただけると幸いです。
眠くなることが多く、なかなか作業に集中できません。
何とかしていきたいです。
では―…。