表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
518/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(172)~最終章 滅亡戦争(27)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。

 一週間後。

 リース王国軍の中央軍の再編成が完了し、ミラング共和国軍へと攻める日。

 その間、ミラング共和国軍の側も、リース王国軍の作戦に乗るという方針である以上、動くことはなかった。

 ミラング共和国軍の上層部と現場で異なった見解を持っていた。

 上層部の方に関しては、リース王国軍の作戦に乗るという方針によるものであることはさっきも記したことであり、現場は、アンバイドやランシュ、ヒルバスという存在によって、迂闊に攻めれば、自分が殺されるだけとなり、何も成果を挙げることができないということを理解してしまっているからだ。

 ゆえに、ミラング共和国軍の現場にとっては、一週間何も動きがなかったことが唯一の安心感をもたらすこととなった。

 ランシュは、ミラング共和国軍の現場の見解の可能性には気づいていたが―…。

 そして、ランシュとヒルバスは、左軍と同時に移動しながらも、別行動をしていた。

 ハミルニアにより、遊撃という役割を担うことを伝えられて実行しているのだ。

 理由としては、ハミルニアは以下のように今朝、述べた。


 ―そろそろ、ランシュ君やヒルバス君の存在にミラング共和国軍が気づいていると思うんだ。彼ら、ここ数年、戦争をおこなってきて、実戦経験は申し分ないから、経験者の勘というもので―…。だから、君達二人がいる場所での戦いは避けると思うんだよね。だから、敢えて、君達がいないということをミラング共和国軍に示しておきながら、いざという時に備えて、遊撃を頼みたいのだよ。できるよね―


 このように述べたことの凡その趣旨をランシュとヒルバスは理解しており、かつ、ヒルバスはさらにハミルニアの意図を読んでいた。

 (このように、私たちを別で行動させるのは、ハミルニア指揮官の今朝の言っていた意図に加えて、私たちがいないことで、ミラング共和国軍をおびき出そうとしているのか、私たちが狙いなのかを判断するためのものだと考えられます。なかなか考えていますねぇ~、ハミルニア指揮官は―…。)

と。

 ヒルバスは、ハミルニアの意図を理解した上で、ミラング共和国軍がランシュとヒルバスを狙うのか、いない左軍の方を狙うのかを判断しようとしているのだ。

 それを理解しているからこそ、深く考えているとハミルニアのことをヒルバスは称賛するのであった。

 一方でランシュは、左軍と並行しながら、かつ、離れた上でヒルバスとともに行動している、ミラング共和国軍が周囲にいないか警戒することを怠ってはいない。

 (今回、左軍を守るように戦う必要はないと言われているので、思いっきり攻めてことができるし、決着のためにミラング共和国軍の陣地の弱点を攻めることは可能だ。この地域における戦いでは、大将が亡くなったとしても、副官が大将へとすぐに一時的に格上げして対応してくるので、指揮系統全体を混乱させないといけないのだ。戦争において、勝利をしなければ、最悪の場合、指揮官とか上位者たちは自分の命を代償に支払うことさえあるのだから―…。そんなことにはなりたくはないので、すぐに軍勢を立て直して、少しでも自分たちに優位な方向へともっていきたいのだ。)

と、ランシュは心の中で思っている。

 ランシュは、今回の別行動で、ミラング共和国軍の弱点を攻めようと考えている。

 こういう別行動がいつできるか分からないし、ミラング共和国の首都を攻める時は、確実に別行動をしないといけないので、そのために、功績を稼いでおく必要がある。

 この功績を利用することで、ミラング共和国の首都を攻める時に自由に行動できるという取引の材料に使えるというわけだ。

 ランシュはこのように計算しながら、かつ、この地域における戦争のルールの中に大将を討ち取ったとしても、副官が大将に緊急昇格して、戦いを続けることができるというのがある以上、指揮系統全体を混乱させない限り、相手から完全な勝利を得るのは難しい。

 立て直せないようにしておくことの重要性を理解している。

 そして、

 (俺とヒルバスならそれも可能であろう。油断とか、そんなのは関係なく―…。)

と、心の中で思うことができる。

 そのように思わせる原因は、ある人物がミラング共和国軍を辞めていったからであり、その行方が分かってないことにある。

 ヒルバスは、

 「ミラング共和国軍の中で最強と言えば、グルゼン親方ですが、彼は行方不明ですし―…。」

と、言う。

 ヒルバスは、グルゼンが先のリース王国とミラング共和国との戦いの中で行方をくらましたことを、メタグニキアの私設部隊に入る前、騎士団の中での噂で知ることになり、私設部隊に入った以後にそれが本当のことであるのを知った。

 だからこそ、ランシュとヒルバスに対抗できる者は完全にいないとは言えないが、頭の中で思い浮かぶ限りではいないということになる。

 「そうだな、そうなると、誰かはわからないが、戦っていけばわかっていくかもしれない。」

と、ランシュは言う。

 ランシュは、適当なことを言っているなぁ~、と自身で感じることができる。

 (だけど、そうなのだ。ミラング共和国軍の中で指揮官として凄いと思わせる人材は、対外強硬派が握って以降、本当の意味ではいなくなっている。なぜなら、対外強硬派が宣伝してくる将校に関する情報は、リース王国でも調べられているが、戦績はあるように見えるが、どうしてもミラング共和国内の噂からそのように見えないのだ。俺はある仮説を一つ立てている。それは、ミラング共和国軍の内部でも対外強硬派に気に入られた将校の戦績は、別の奴らが挙げたものをその気に入られた将校の戦績に加えられているのではないか。そうなれば、宣伝してくるわりに、将校との質が~、とか言うのも納得ができてしまう。だけど、しっかりと戦果を挙げてきた可能性も捨てきれないので、仮説にとどめておくことにしている。)

と、心の中で言う。

 ランシュは、ミラング共和国に関する情報は、王族護衛などをしていると、自然に耳に入ることがあるし、今回は、ヒルバスとの会話もあるので、そこから得られる情報からも判断することができる。

 今のミラング共和国軍の将校の中に、グルゼン以上の指揮ができる人材はいない。というか、それに近いことができる存在がいたとしても、指揮経験がなかったりする場合もあり、完全に正確な情報か、というと、そうではないかもしれない。

 それでも、過去の実際にあった可能性の高い情報なので、十分参考情報になるというわけだ。

 そして、そこからランシュは、自身の仮説を思い浮かべるが、それは確実に言えるとは限らないので、仮説の域の中に閉じ込めるのであった。

 仮説を信じ切ってしまい、いざ外れていたということになれば、そこから気持ちを切り替えるのはかなり難しいことでしかないのだから―…。

 その切り替える時間すら惜しい場合が存在する。

 実際、ミラング共和国軍は、一部において情報を改竄しており、グルゼンの成果をファルケンシュタイロの成果という形にしているし、ラウナンがおこなったことをミラング共和国軍が実際におこなったことにしている面もある。

 つまり、ランシュの考えていることは、強ち間違いではない。

 そして、ランシュは、予想外の事態は戦争の中で出て来るかもしれないし、出てこないかもしれないと思い、必要以上に考えても無意味だと感じ、それ以上の思考は止めるのだった。

 体力も精神力も、思考する力も温存した方が得だという、判断を下す。

 「そうですね、ランシュ君。適当な言葉かもしれませんが、ある意味で今の私たちの持っている情報ではそのような判断しか下せません。」

と、ヒルバスはランシュの言葉に納得する。

 相手側の情報を完全にすべて、正確に集めるということは時間の都合や、それ以外の諸々の条件により不可能である。

 ゆえに、どこかしら穴があるということは否めない。

 それでも、相手に関する情報をしっかりと把握しておくことは、完全ではないにしろある程度は可能であり、それが当たっていることも十分にあり得るからだ。

 ゆえに、分からない情報は分からないことで仕方ないと割り切るのが、一番無駄なことをしなくて済むと、考えているからだ。

 そして、ランシュとヒルバスは敵陣へと向かって行くのであった。


 左軍の中。

 そこには、ミラング共和国の謀略および諜報機関であるシエルマスの工作員が侵入している。

 (ラウナン様からの指令通り、リース王国軍の左軍を混乱に陥れたいが、騎士団の方の人数がいつもより少ないような感じがするし、ピリピリしている感じだ。)

と、イマニガは心の中で思う。

 イマニガは、ここしばらく、リース王国軍の左軍に潜入している。

 というか、死体であるアウルをコントロールする上で、近い位置にいた方が良いからだ。

 そのため、潜入するしかなかったというのが正しい。

 今のイマニガは、リース王国軍の兵士と同じ格好をしている。

 アウル以外にも、もう一人、リース王国軍の兵士を殺害し、そいつに成りすませているのだ。

 イマニガの天成獣は、死体を操作させたりすることができるだけでなく、このように成りすます技もあったりする。

 だから、気づかれることはない。

 喋り方を気を付けることができれば―…。

 それでも、今は喋ることが許されない進軍の時である以上、何とかなっている。

 (死体の方も気づかれていないようだな。)

と、イマニガは思いながら、作戦の実行の時まで、待つのであった。


 一方、ランシュとヒルバスの近く―…。

 そこには、シエルマスが二人を尾行していた。

 (フン!!! 騎士風情が!!!! 我々に後をつけられていることも知らずに―…。貴様らの情報はすでに漏れてる。ミラング共和国軍の中でリース王国の左軍と最前線で戦って逃げてきた者の情報から、お前たちであることを知っているのだから―…。そして、左軍の指揮官様が自ら彼らに遊撃の役割を担うように指示するとはな!!! 指揮官の方は護衛の中に自身の裏の者を入れており、中々、手を出すことができない感じがしたが、こいつらは完全に油断していやがる!!! いくら活躍しようが、裏をかかれば、シエルマスに属する俺らに勝つことはできない。)

と、シエルマスの工作員の一人は心の中で思う。

 シエルマスの中でも西方担当の工作員であり、数としては七で、これぐらいの数がいれば、誰かがランシュとヒルバスを暗殺することができるだろう。

 シエルマスは、このリース王国やミラング共和国がある地域の中で、一番の諜報および謀略組織として有名であり、実力があるとされているのだから―…。

 そうである以上、失敗することなんてありえないのだ。

 自分は、シエルマスの一員であり、選ばれた人間なのであるから―…。

 そんなことを一人の人物が思いながらいると―…。


 ランシュとヒルバスは左軍の全体が把握できる高い丘に到着する。

 そして、すぐに二人は辺りを警戒する。

 すぐに気づく。

 「いますね。」

と、ヒルバスが言う。

 ここで主語を言う必要はない。

 敵が―…。

 それは、雰囲気から察することができるし、共通ワードとなり、かつ、お互いに同じ理解ができる。

 そして、ヒルバスがすぐに高速移動を開始するのだった。

 ランシュは、それを見ながらも、何もしようとしない。

 分かっている。

 ヒルバス一人でも十分、二人をつけている者達は弱すぎて、すぐに片付くと予想できるからだ。


 ヒルバスは移動する。

 その移動速度は、人の走る限界を越えており、天成獣の力を使っているのは確かだ。

 そして、ヒルバスはすぐに敵を見つける。

 それも敵に気づかれることなく―…。

 すぐに、ヒルバスは敵へと近づいていく。

 静かに、速く―…。

 (いましたか。まずは一人。)

と、心の中で思いながら、すぐに、二丁拳銃の取り出し、すぐに構える。

 (二十秒もかかりません。)

と、心の中で言いながら、シエルマスの工作員の一人に銃を向け、放つ。

 その弾丸は、ヒルバスが銃を向けたシエルマスの工作員の一人の後頭部の下側にあたり、そこには頭蓋骨がないので、直接にその人物の体に大きなダメージを与える。

 その人物の人生を終わらせるためのダメージを―…。

 そして、一人が倒されようとしていることに、気配から残りの六人のシエルマスが気づく。

 いや、気づこうとしている間に、ヒルバスは自身の姿がシエルマスの工作員に見えない場所に移動して、すぐに、片方の二丁拳銃を放つのだった。

 移動の中で、砂利や蔦、草などがあろうとも、そこでバランスを崩すこともなく、正確に移動する。

 それらに引っかかる音をさせないようにしながら―…。

 ヒルバスの集中力はかなりのものである。

 そして、気づくと、すでに、二人目が同様の場所を撃たれ、命を落とす。

 今、自身に起こっていることを思考しようとするシエルマスの生き残っている工作員は、すぐに、その原因を探ろうとした。

 いや、探ることに至る前に、一人がヒルバスに撃たれる。

 パン、という音をさせずに―…。

 また、一人が倒されるのに気づく前に、また一人。

 (後、三人。)

と、ヒルバスが心の中で思っている間に、また一人。

 残り二人になったとしても、そのスピードが衰えることも、正確さがなくなることなく、すぐに、一人を始末する。

 最後の一人も、心の中で思いながら、一言目を発した時―…、ヒルバスの銃撃を受け、命を落とすのだった。

 (二十秒で何とか始末できましたか。見た感じ、ミラング共和国の兵士の格好をしている者とシエルマスですか。)

と、ヒルバスは心の中で思いながら―…。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(173)~最終章 滅亡戦争(28)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


かなり疲れる時が多いです。

後、無理しない程度に頑張ります。

では―…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ