表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
513/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(167)~最終章 滅亡戦争(22)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、エルゲルダがミラング共和国の総統となり、リース王国へと宣戦布告する。一方で、その情報を知ったリース王国では、ラーンドル一派たちによる話し合いがおこなわれ、逆に侵略し返そうということになるのだった。

その情報をリーンウルネは自ら潜入することで仕入れ、ハミルニアとフォルクスを自分の執務室に呼び寄せて、今回の戦争に参加させるのだった。その話し合いで、ランシュとヒルバスの参戦をも促すものであった。

リーンウルネは、一枚の紙をメタグニキアの秘書に渡し、その紙を見たメタグニキアは激怒しながらも、そのメリットのためにヒルバスを今回のミラング共和国とリース王国の戦争に参加させる命令を下すのであった。

その後、ランシュとヒルバスは一時的に騎士団に復帰という形で参戦するのだった。


リース王国は出陣し、ミラング共和国の境までやってきており、作戦会議がおこなわれる。

その作戦の会議の中で、左軍と右軍の大将がそれぞれ決まるのであった。左軍に騎士団が編入されるのだった。

一方で、ミラング共和国軍は、リース王国軍の実力を見るために、軍隊をリース王国と同様に三つに分けるのだった。

最初の戦いは、ランシュとヒルバスの活躍で左軍、右軍はアンバイドの活躍により被害も出ながらも奮闘し、中央軍は散々な目に遭うのだった。

それは、ファルアールトにとってあり得ないことであった。

精神的に摩耗するぐらいに―…。

その一方で、左軍の方では、勝利の宴会が開かれるのだった。

ミラング共和国軍の方でも動きがあるようだ。


次のリース王国の作戦は、とんでもないことが決められ―…。その作戦はミラング共和国本陣に攻めるものであり、ハミルニアはお世辞で言ったことであり、本当に採用されるとは思っていなかった。この作戦だけはやって欲しくないという気持ちで言ったのに、ファルアールトは採用してしまったのだ。残念ながら―…。

それで、左軍の幹部にハミルニアは怒られるのであるが、そのことによって、左軍と右軍は殿のような役目をさせられる可能性が出てくるのであった。


リース王国軍の中央軍によるミラング共和国軍本陣への強襲は、ファルケンシュタイロの肝いりの天成獣部隊の三人の者たちによって、返り討ちにされるのだった。その結果、リース王国軍の中央軍は敗走することになり―…。それをリース王国軍の右軍と左軍が担当することになり、中央軍のトップであるファルアールトに馬鹿にされるが、それを実行するのであった。ファルアールトに対して、頭にきている者が多いのは、当たり前のことであるが―…。


その後の会議では―…。

 リース王国軍の本陣。

 そこでは、中央軍の幹部と右軍、左軍の幹部がいた。

 大事な報告会というわけだ。

 「中央軍は、ミラング共和国軍の本陣へと攻撃を仕掛けた。その攻撃は上手くいきかけたが、ミラング共和国軍の卑怯な手に引っかかってしまい、兵たちの命が大事だと考えて、逃げることにしたのだ。右軍と左軍の偵察を担当した者達の情報に不備があったせいで、ミラング共和国軍の罠に引っかかってしまったではないか!!!」

と、ファルアールトが言う。

 これは言いがかりだ。

 右軍も左軍もちゃんとした情報を提示しているし、さらに、嘘を吐いてはいない。

 だからこそ、両軍の幹部は頭の中で腹を立てるのだった。

 さらに、ファルアールトは言う。

 「俺は、左軍の大将であるハミルニアの素晴らしい案だと賛成して、部下を信頼した上で作戦を実行したというのに、私は大敗北してしまった。つまり、ハミルニアは、俺を陥れるために、俺の地位が欲しいがために、私に大敗北するような作戦を提案したのだな!!!」

と。

 言いがかりではあるが、ハミルニアにとっては呆れると同時に、この人にお世辞は通用しないということを理解させられるのだった。

 ここで、ハミルニアは反論する気もない。

 (どうせ反論したところで、ろくでもない要求をしてくるのは分かっていますよ。そして、私が成功すればするほど、恨みを大きくしていくだけ。人の話を聞くということができないし、相手の意図も読めないのですから、本当にこのような上司とはなるべく関わることを避けるのが良いですね。それが今のところ無理だが―…。)

と、心の中で思いながら、すぐに、このいちゃもんが終わるのを待つのだった。

 時間の無駄だとかいう人がいるが、そういう人は叱る時にそのようなことを言っているが、その時間すら無駄でしかない。結局、自分勝手なのだろう。

 自分が優れていると思っていて、他人はそれよりも劣っているし、自分のようにできて当たり前だと勘違いしているのかもしれない。

 まあ、そのようなことを深く掘り下げたとしても、何かが分かるかどうかは不明だ。

 「何も言わないということは、認めたということだな。」

と、ファルアールトは言う。

 その怒りの表情は、自分の思い通りになっておらず、その腹いせを他人に押し付けているだけに過ぎない。自己責任とか他人に言っている者は、結局、他人に責任を押し付けたいだけなのかもしれない。というか、自分がしないといけない義務というもの、職務というものを放棄したいための方便にしたいだけかもしれない。

 本人がどう思っているのか、その真実を確認するのはかなり難しいことであるが―…。

 そして、ファルアールトの今の雰囲気の中で、ファルアールトに同調する者たちがいる。

 「ファルアールト様の言う通り。このハミルニアとかいう奴は、裏で絶対にファルアールト様の失敗を利用して、ラーンドル一派に取り入るつもりです!!! ファルアールト様のことを邪魔だと思って!!!」

と、クレイミーは言う。

 リース王国軍の中央軍の中の幹部の一人である。

 ファルアールトに媚びを売るために今のようなことをしているのだ。

 それは、媚び売ることによって、自分がリース王国軍の中で出世することができるということが分かっているからだ。

 どんな才能があろうが、人間関係を上手く築くことができない人間が出世していくことは難しかったりする。それに才能というものを人は、完全に理解することができない以上、才能をしっかりと完璧に評価することはできない。

 それでも、ある程度見ることや評価を下すことができるであろう。

 そして、クレイミーは自身に軍事関係の才能および実力がないことはしっかりと分かっている。才能がすべてではないし、環境やら、運やら、いろんな要素を必要とするのであるが、諦めるぐらいに自分が向いていないことを意識の底で理解しているのだ。

 それと同時に、出世することが自らが優位になるためには、確実に必要だとわかっているからこそ、出世に拘るのだ。そうすることで、劣っている自分を慰めることができるのだから―…。そう思っているに過ぎない。

 今、ここに絶好のチャンスが転がってきた。

 そう、ハミルニアの意見を採用したことにより、ファルアールトは今日のミラング共和国軍の本陣への攻撃に向かい、見事に失敗したのだ。

 それに、ファルアールトは、その失敗の原因をハミルニアにすべてを着せようとしているのだから、それに乗らない手はない。

 ファルアールトを一番理解していることをファルアールトにアピールすることによって、次のリース王国軍の元帥の地位を自身にくるようにしているのだ。

 (………怒りたいけど、今は抑えないとねぇ~。人のお世辞すら分からないのだから―…。)

と、ハミルニアは心の中で思いながら、耐える。

 反論しても意味がないことはすでに理解している。

 今は、ファルアールトらに好きに言わせておけば良い。

 ハミルニア自身の評価が下がることは避けられないが、評価が下がることを気にして、そのようにならないように抵抗しても今は無駄だし、結局、大きな評価の減少に繋がる可能性が高いのだ。

 それなら、低い減少になる選択肢を選び、生き残りつつ、最高の機を冷静に辛抱強く待つの正しいあり方のなのだ。

 人は、経済学で言われているような合理的な選択のできる生物ではないし、その最も合理的な選択を選び出すことができるわけではない。そもそも、本当に最も合理的であるかということを評価する基準すら持っていないし、持つことすらできない。すべての事象を知ることが、人類が存在していると思われる期間の中で達成することができないからだ。

 それでも、冷静であるなら、より良い選択をできる可能性はそれなりあったりする。あくまでも、そうならない可能性は存在するであろうが―…。

 「クレイミー、そうだよなぁ~。俺様から元帥の地位を奪おうとしているのだから―…。右軍も共謀しているに違いない。つ・ま・り、俺は、味方だと思っている我が国の軍でさえ、敵だと判断しないといけないのか? なら―…。」

と、ファルアールトは言いながらも考える。

 (ハミルニアと騎士団は数を減らさないといけない。滅亡近くレベルまでに―…。そうすれば、ラーンドル一派は、騎士団に自分の息のかかった者たちを騎士にすることができるし、ミラング共和国を滅ぼせば、俺は王国の英雄と呼ばれることになる。そうすれば、ハミルニアも追放し放題だ。俺を目立たせない奴らなんて、必要がない。)

と、心の中で思うのだった。

 あまりにも自己中と化してしまっているのだ。

 ファルアールトは、自身がリース王国軍のトップの地位にあるにも関わらず、さらに、誰からも尊敬されることを望むのであった。

 ラーンドル一派でも、ファルアールトが制御できるうちなら、それなり優遇をするであろうが、制御できないと判断されるようなことがあれば、排除されるのは簡単に想定することができる。それでも、どこから制御ができないと判断するのか、客観的なものではなく、ラーンドル一派の主観性によるものになろうが―…。

 そのことにファルアールトは残念ながら気づくことはないだろう。

 自分の立場というのは、自分から見て、完全に分かるということはない。

 自分という存在を完全に知ることができる者はいないし、かつ、他人から自分がどう見られているのかを完全に理解することができる者はいない。

 それでも、ある程度理解することは可能である。

 そして、ファルアールトは、ラーンドル一派から課された任務であるリース王国の騎士団の数を減らして、その補充はラーンドル一派の息のかかった者が派遣されることを、さらに、リース王国の騎士団のトップもそのようなラーンドル一派の息のかかった者に代えて、ラーンドル一派のための騎士団にしたいのだ。

 そうすれば、ラーンドル一派に逆らう者はまた、減らすことになり、ラーンドル一派の基盤をさらに強くすることができるのだ。

 ラーンドル一派に逆らう者が出てこないようにし、自分達がリース王国からあがってくる恩恵を受けために―…。

 さらに、そこに、ファルアールトにとっては、自身を陥れようとしたハミルニアをも敵だと認識したのだ。だからこそ、ハミルニアを失脚および戦死させるための作戦も必要になるのだ。

 ミラング共和国軍も敵であるが、ハミルニアも同様に敵であるから、排除しないといけない。

 ファルアールトの心の中には、自分が一番であり、自分を目立たせない人間に何の価値も見出しはしない。そうであるからこそ、どんどん視野が狭くなっていき、ファルアールトに必要な考えを見落としてしまっていくのだ。短気な性格がここで禍しているのだ。本人は気づきもしないが―…。

 「!!!」

と、ファルアールトは閃く。

 顔を歪ませながら―…、

 (これだ。)

と、心の中で思うと、言いだす。

 「次の作戦が決まった。それは、ミラング共和国軍の本陣を中央軍が攻めるから、その間左軍と右軍は、ミラング共和国軍の中で強い軍隊を相手にすることだ。そこで、良い戦果を挙げることができれば、お前らが私を追い落とそうとしていることを、不問しても良い。俺様は寛大だからなぁ~。ハミルニアもそう思うだろ。」

と。

 ファルアールトの目の中には、狂気が宿っていた。

 それを止められる者はいない。

 物理的に可能であったとしても、それを実行した時のリスクを考えると、迂闊に行動に移すことはできない。

 そういうことが理解できてしまっているからこそ、ファルアールトの意見を黙ることで受け入れるしかない。

 上意下達方式の最大のデメリットがここに浮かびあがるのだ。

 上が真面な人間であり、優れている優秀な人間であり、かつ、人格で優れているのであれば、良いように機能するが、その逆になってしまうと、返って、悪い方向に向かい、最悪の場合、組織自体を崩壊させてしまうのだ。そのことをファルアールトは理解できないであろうし、ラーンドル一派の今の状態の中で、その中の幹部や重鎮が気づくことはないだろう。

 己の私欲にしか興味がないのだから―…。

 「ええ。」

と、ハミルニアも表情には出さないが、悔しそうにするのだった。

 (狂ってしまったか、ファルアールトは―…。責任は感じるが、こいつを制御するのはほぼ無理か。)

と、半ば諦めるのだった。

 今のハミルニアは、ファルアールトの言う通りにしながら、その中で成果を挙げていくしかないのだから―…。

 成果を挙げたとしても、ファルアールトから恨まれるのは確実だし、何をしても恨まれ、潰されるその時まで、恨まれ続けるのだろう。

 そして、ハミルニアを潰すことが一つの目標となってしまったファルアールトは、心のねじすらおかしくなってしまい、狂った心を自分では戻せないぐらいに堕ちていくのだった。

 「さあ、俺の言うことを聞け!!! 俺がこの軍のトップだ!!! 逆らう奴は、ぶっ殺してやる!!!」

と、ファルアールトは叫ぶように言う。

 自分に従わない奴らに価値はない。

 自分に従い、失敗しても、ファルアールトの所為(せい)にせず、命令を受けて実行できない者が悪いということを当然のこととしろ。

 それが、今のファルアールトが部下に課す絶対的な規律とかすのだった。

 恐怖は始まる。

 だが、その恐怖によって、自身を苦しめることになるのは世の常なのかもしれない。

 まだ、ファルアールトは気づいていないだろう。

 恐怖でしか支配できない者に本当の意味での繁栄は訪れない。

 その後、会議は有無を言わせずに終わり、それぞれ持ち場へと戻って行くのであった。

番外編 ミラング共和国滅亡物語(168)~最終章 滅亡戦争(23)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


では―…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ