番外編 ミラング共和国滅亡物語(166)~最終章 滅亡戦争(21)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、エルゲルダがミラング共和国の総統となり、リース王国へと宣戦布告する。一方で、その情報を知ったリース王国では、ラーンドル一派たちによる話し合いがおこなわれ、逆に侵略し返そうということになるのだった。
その情報をリーンウルネは自ら潜入することで仕入れ、ハミルニアとフォルクスを自分の執務室に呼び寄せて、今回の戦争に参加させるのだった。その話し合いで、ランシュとヒルバスの参戦をも促すものであった。
リーンウルネは、一枚の紙をメタグニキアの秘書に渡し、その紙を見たメタグニキアは激怒しながらも、そのメリットのためにヒルバスを今回のミラング共和国とリース王国の戦争に参加させる命令を下すのであった。
その後、ランシュとヒルバスは一時的に騎士団に復帰という形で参戦するのだった。
リース王国は出陣し、ミラング共和国の境までやってきており、作戦会議がおこなわれる。
その作戦の会議の中で、左軍と右軍の大将がそれぞれ決まるのであった。左軍に騎士団が編入されるのだった。
一方で、ミラング共和国軍は、リース王国軍の実力を見るために、軍隊をリース王国と同様に三つに分けるのだった。
最初の戦いは、ランシュとヒルバスの活躍で左軍、右軍はアンバイドの活躍により被害も出ながらも奮闘し、中央軍は散々な目に遭うのだった。
それは、ファルアールトにとってあり得ないことであった。
精神的に摩耗するぐらいに―…。
その一方で、左軍の方では、勝利の宴会が開かれるのだった。
ミラング共和国軍の方でも動きがあるようだ。
次のリース王国の作戦は、とんでもないことが決められ―…。その作戦はミラング共和国本陣に攻めるものであり、ハミルニアはお世辞で言ったことであり、本当に採用されるとは思っていなかった。この作戦だけはやって欲しくないという気持ちで言ったのに、ファルアールトは採用してしまったのだ。残念ながら―…。
それで、左軍の幹部にハミルニアは怒られるのであるが、そのことによって、左軍と右軍は殿のような役目をさせられる可能性が出てくるのであった。
リース王国軍の中央軍によるミラング共和国軍本陣への強襲は、ファルケンシュタイロの肝いりの天成獣部隊の三人の者たちによって、返り討ちにされるのだった。その結果、リース王国軍の中央軍は敗走することになり―…。それをリース王国軍の右軍と左軍が担当することになり、中央軍のトップであるファルアールトに馬鹿にされるが、それを実行するのであった。ファルアールトに対して、頭にきている者が多いのは、当たり前のことであるが―…。
その後、リース王国軍は、ランシュの一撃の斬撃の中で生き残った者がいた。
そいつが―…。
「ヒィ――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
と、言いながら逃げていくのだった。
それをランシュは見ながら、ここでの戦闘はもうないとは言えないが、一段落したというのは分かった。
(引き揚げていくな。まあ、これで、俺とヒルバスの今日の役目は一応、果たしたことになるな。)
と、ランシュは心の中で思う。
そう、この一撃は、ランシュやヒルバスの目の前にいる者たちの人生を終わらせてしまったのだから―…。
近くにいて、運良く生き残ることができたミラング共和国軍の兵士の者達にとって、恐怖以外に、何が残るのであろうか。
そして、自分の命が生き残る方にさらにかけるのだ。
目に見えるものとそこで起こって、映された映像のような出来事が現実であることを理解し、逃げないという選択肢をとることしかできない。
その逃げていく姿を見ながら―…、後を追うのではなく、ミラング共和国軍およびリース王国軍のこの場で戦死した者たちの遺体の処理の方を考えるのだった。
(……………後を追うのは危険。中央軍がこんなあっさりと敗北したのは、ミラング共和国軍の中にある天成獣の宿っている部隊の人間があの目の前にいたということになります。情報のないうちに、勢いに乗って攻めていくのは愚策。それに、私たちは逃げてくる中央軍を利用して、追って来るミラング共和国軍を返り討ちにするのが役目です。これ以上は、余計なことになるだけです。)
と、ヒルバスは心の中で思う。
ヒルバスは、リース王国軍の中央軍がこんな簡単に敗北し、逃げて来たのだから、きっと何かあるのは間違いない。
そして、予測でしかないが、リース王国軍の中央軍は、ミラング共和国軍の天成獣が宿っている武器を扱う部隊に敗北した可能性がある。
こんなにも早く逃げる可能性はないのだから―…。
そういうことを想定すれば、今、逃げていくミラング共和国軍の追うの愚策としか言いようがない。そんな馬鹿なことをして、自軍の数を減らすのは愚かなことでしかない。慎重を期すことが今の状況では悪いことではないと理解することができる。
そして、ヒルバスはまだ、戦っている音が聞こえることに気づく。
(向こうは確か、右軍が戦っているはずです。つまり、進むべきではありません。ということになります。)
と、ヒルバスは心の中でさらに思うのだった。
ヒルバスは、自身から見て右側の方で爆音が聞こえることから、まだ戦いが続いていることを理解するのだった。だからこそ、ここから進むべきではないし、ミラング共和国軍を返り討ちにすることができたことに対して、今のところは満足すべきだ。
余計なことをすれば、味方を減らすことになり、ミラング共和国軍の側を勢いづかせてしまうだろうから―…。
一方、ランシュの方は―…、
(まあ~、あの斬撃で、百を超える数の兵士を倒すことができたし、それ以上の結果を得られたのだ。それでも、ミラング共和国軍の数を大量に減らせたわけではなかった。一方で、右軍の方も、大きな衝撃音があり、派手にやっているのがわかる。要は、中央軍の尻拭いを左軍と右軍が上手くやったというわけだ。能力もないのに、欲をかいて手柄を取ろうとするから失敗するのだ。まあ、リース王国の中央で権力を握っている奴らの子飼いに反省という文字はないだろうなぁ~。)
と、心の中で思いながら、辺りを見回す。
ランシュとしては、あくまでもリース王国軍の中央軍の馬鹿な作戦の尻拭いをしているとしか思っていない。
これは正確な状況の把握と言ってもおかしくはない。
そして、ランシュは、リース王国軍の中央軍がこの失態を反省することがない、ということを簡単に予測するのだった。
まあ、リース王国軍の中央軍の動向を考えていれば、すぐに分かってしまうことであるのに間違いはない。
そして、ここに向かって来る者がいた。
敵ではない。
「ランシュ君、追い払うことができましたね。」
と、ヒルバスが言う。
そう、ランシュのいる場所に向かってきたのは、ヒルバスである。
だからこそ、警戒する必要はない。
「そうだな。中央軍の馬鹿どもの失敗の尻拭いはできたけど、この尻拭いさえも中央軍の嫉妬へと繋がるんだろうなぁ~。妙なプライドのせいで―…。少しぐらいは自分が無能であることを素直に受け入れれば成功する可能性も高いのに―…。人を扱う才能があるかもしれないのに、な。」
と、ランシュは返事をする。
ランシュはさらに心の中で、
(戦の才能はなくても、人を適宜、その人が才能を発揮しやすい場所や役職の配置すれば、それだけでも良い結果になったかもしれないのに―…。そういう才能があれば、いや、気づくことができれば、あそこまで悲惨なことにならなかっただろうし、かつ、あのような性格にはならなかったであろう。そういうのができないから、ああいう性格になってしまっているのだろう。まあ、俺の思っていることが正しいかなんて結局のところは、本人から直接聞いて、その本人が正直に答えなければわからないことだけど―…。)
と、思っていたりする。
実際に、人材を適宜、その人の才能に適した役職や場所に配置することができるのであれば、誰も苦労はしない。
人という生き物が、完全にすべての物事を把握することができない以上、どうしても問題が発生するし、良い結果にならないことも起こったりするのだ。
それを完全に防ぐことができない以上、気づいた時に素早く対処するために、元からいくつかの案を用意しておくか、それとも、臨機応変に対応できるように経験を積んでおく必要があるのかもしれない。想像しておくのも大事であろう。完璧に対策できるわけではないが、最悪の結果からの立ち直りの可能性を高めることはできるであろう。
そして、一方で、ランシュの言葉に、ヒルバスは少しだけ考え、反応するかのように言うのだった。
「彼らに今のところ、何を言ったとしても駄目でしょうね。優秀な人なら簡単に逃げて、どこかへと行ってしまうと思います。優秀な人は、どこへ行っても上手くやっていけますから―…。そのことに最後に気づくのか、気づかないのか、見物ではありますが、見たいとは思いませんが―…。」
と、ヒルバスは言う。
優秀な人間の全員が、どこに行ったとしても活躍できるとは限らないが、活躍できる可能性は高いであろう。適応力が高いという点があるかどうかが重要になるとは思うが―…。
それでも、優秀な人間が逃げるという点に関しては、実際に起きやすいことだ。
人がいなければ成り立たない組織というものは、結局、人間関係によって、その出来というものは簡単に左右される。栄えるか駄目になるかは、人間関係の出来に関わってくるということだ。
ヒルバスの言葉を聞いたランシュは、
「だな。」
と、返事をする。
二人はすでに気づいている。
「ということで、戦いが一時的に終わったので、この近くにある死体の処理を昨日に続けてしないといけませんね。」
「これがあるから戦争は嫌になるんだよ。」
と、げんなりとランシュはする。
ランシュとしては、死体処理の作業はかなり面倒だし、そのことによって、戦争なんてこの世から亡くなってしまえば良いのに、と思ってしまうのだ。
この作業はきついものでしかなく、死体には触れないといけないし、燃やさないといけないし、匂いが―…。
そのことを理解していない人達がいるから、戦争を起きるのだと思ってしまうほどなのだ。
ランシュは、そのように思ってしまっていたりする。
だけど、このような光景の一部は自分が作ってしまっているので―…。
(文句をたれても解決されることはないので、地道に死体処理をしますか。これも騎士になった定めか―…。)
と、心の中で思いながら、ランシュは死体処理の作業をこなすのであった。
ヒルバスも、死体処理の作業を好まないが、誰かがやるしかないので、しっかりとするのであった。
右軍。
そこでも、ミラング共和国軍は返り討ちにされていた。
そして、撤退していくのであった。
ミラング共和国軍の指揮官の一人が、アンバイドが前線にいることに気づき、これ以上の追撃は意味がないと判断したのだ。
撤退していくミラング共和国軍に攻撃を加えなかった。
(……………攻撃すれば、余計な犠牲の出る戦闘となっていた可能性があるな。)
と、アンバイドは心の中で思うのだった。
戦いが終わったというのに、アンバイドはその警戒を解くということをしなかった。
アンバイドは気づいているのだ。
(俺を見張っている敵軍の奴らがいるのか。ミラング共和国から考えると、シエルマスか。シエルマスのトップが独断行動をするとかいう情報屋の情報があるが、そのトップのラウナン=アルディエーレなら、かなり厄介なことになるな。俺は、裏の人間の知り合いがいないわけではないが、奇襲に決して強みがあるわけじゃないからな。まずは、誰かということをじっくりと探らないとな!!!)
と、アンバイドは心の中で言いながら、その見張っている人物のいる方へと鋭い目をしながら、視線を向けるのだった。
そこは、一本の木であり、普通に見れば、誰がいるかは分からないものだ。
それでも、アンバイドはそこから感じられる気配というものをしっかりと感じていた。
そして、攻めるのではなく、お前のことはちゃんと分かっているぞ、というアピールをするのだった。
その視線を見たミラング共和国軍の兵士の一人は、
(もう気づかれただと!!! 俺はシエルマスよりは劣るかもしれないが、普通には気づけるはずがないだろ!!! 気づかれた以上、アンバイドを偵察するのはかなり危険だ。アンバイドは伝説の傭兵とも言われるぐらいだ。)
と、心の中で思いながら、機を伺って、アンバイドから離れるのだった。
これ以上、アンバイドを見張っていれば、返って、自分の命が危うくなると判断して―…。
そんななか、アンバイドは、
「さて、追撃はなしだ!!! さっさと死体処理して、飯だ!!!」
と、大きな声で言うのだった。
死体処理はきつい作業なので、嫌なのだが、誰かがやらないといけないので、傭兵やリース王国軍の兵士関係なく、指揮官以外の全員がおこなうのであった。
その後、この日の夕食は少しだけ豪華であったとさ。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(167)~最終章 滅亡戦争(22)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
では―…。