番外編 ミラング共和国滅亡物語(165)~最終章 滅亡戦争(20)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、エルゲルダがミラング共和国の総統となり、リース王国へと宣戦布告する。一方で、その情報を知ったリース王国では、ラーンドル一派たちによる話し合いがおこなわれ、逆に侵略し返そうということになるのだった。
その情報をリーンウルネは自ら潜入することで仕入れ、ハミルニアとフォルクスを自分の執務室に呼び寄せて、今回の戦争に参加させるのだった。その話し合いで、ランシュとヒルバスの参戦をも促すものであった。
リーンウルネは、一枚の紙をメタグニキアの秘書に渡し、その紙を見たメタグニキアは激怒しながらも、そのメリットのためにヒルバスを今回のミラング共和国とリース王国の戦争に参加させる命令を下すのであった。
その後、ランシュとヒルバスは一時的に騎士団に復帰という形で参戦するのだった。
リース王国は出陣し、ミラング共和国の境までやってきており、作戦会議がおこなわれる。
その作戦の会議の中で、左軍と右軍の大将がそれぞれ決まるのであった。左軍に騎士団が編入されるのだった。
一方で、ミラング共和国軍は、リース王国軍の実力を見るために、軍隊をリース王国と同様に三つに分けるのだった。
最初の戦いは、ランシュとヒルバスの活躍で左軍、右軍はアンバイドの活躍により被害も出ながらも奮闘し、中央軍は散々な目に遭うのだった。
それは、ファルアールトにとってあり得ないことであった。
精神的に摩耗するぐらいに―…。
その一方で、左軍の方では、勝利の宴会が開かれるのだった。
ミラング共和国軍の方でも動きがあるようだ。
次のリース王国の作戦は、とんでもないことが決められ―…。その作戦はミラング共和国本陣に攻めるものであり、ハミルニアはお世辞で言ったことであり、本当に採用されるとは思っていなかった。この作戦だけはやって欲しくないという気持ちで言ったのに、ファルアールトは採用してしまったのだ。残念ながら―…。
それで、左軍の幹部にハミルニアは怒られるのであるが、そのことによって、左軍と右軍は殿のような役目をさせられる可能性が出てくるのであった。
リース王国軍の中央軍によるミラング共和国軍本陣への強襲は、ファルケンシュタイロの肝いりの天成獣部隊の三人の者たちによって、返り討ちにされるのだった。その結果、リース王国軍の中央軍は敗走することになり―…。
一方右軍の中では―…。
(ああいうアホがトップだとはなぁ~。軍部は何を考えているんだ。リース王国の―…。他国との対立や戦争がある以上、ああいう役職は実力者を就けるのがセオリーのはずなのだが―…。)
と、アンバイドは心の中で呆れる。
さらに、溜息まで吐くのだった。
ファルアールトというリース王国軍の一番のトップが大失態を犯し、それだけでなく、自らの部下を馬鹿にするような発言したのだ。
対立することはあるかもしれないし、悪口の一つや二つ思ってしまうこともあるだろうし、愚痴ることもあるだろうが、こういう戦いの場で実際に言うことは味方の士気に影響しかねない。
そのことをしっかりと分かっているのだろうか。
疑問だ。
アンバイドは、こういうことを理解しているからこそ、士気を上げることがどれだけ重要であり、下げないことに細心の注意を払わないといけないのかが分かっているからこそ、あのファルアールトの発言は気に食わないし、許されることではない。
それをトップにしているリース王国の権力者層が、思っている以上にろくでもない人間だということを理解してしまう。
なぜなら、このような士気を下げる者をトップにすることは、周囲の仕事や働きをマイナスにするだけでなく、それで得られる成果物を減らし、かつ、自身の首を最後は締めてしまうのだ。長期的な視点では―…。
短期的な視点では気づきにくいことである以上、難しいことではあるが、トップである者に確実に必要な力の一つであることに間違いはない。
そして、アンバイドはここで、リース王国軍を裏切ることはしない。
仕事は完遂する。
それに加えて、大きな要求をするし、報酬をケチらせるようなことはさせない。
すれば、リース王国のラーンドル一派を壊滅するぐらいのことを平然とおこなうこともできる。
権力の笠を着て、調子に乗ったとしても、それは人々の信頼の上、その力の上になければ意味をなさないことが多く、それすら通用しない場合だって十分にあるのだから―…。
人が手に入れるものに完全で、永久のものは存在しない。半永久はあったとしても―…。
(セオリーを無視して成功する奴らではないな。失敗している。人を見る目がない。こんな奴らが上なのでは、報われないよな。だが、俺は俺の目的のために今回は勝利を与えてやろう。)
と、アンバイドは心の中で言う。
そして、アンバイドは自らの武器を展開し、三つのあるあの武器と剣を一つと―…。
遠距離および近距離、双方での戦いをおこない、ミラング共和国軍側を混乱させていく。
近くにミラング共和国兵を斬り、遠くにいるのは、砲撃で始末していく。
倒すのではなく、相手を殺す。
これが戦争なのだから―…。
駒を扱って、駒の気持ちを理解することのできないプレーヤーは、決して、このことをただの数字や文字でしか見ないだろうが、駒を怒らせれば、時に、プレーヤーは自滅してしまうことだってある。
そのことにしっかりと気を付けないといけない。
信頼が重要なのと同じように、築いていかないといけない。
本当の意味での―…。
右軍がミラング共和国軍へ攻撃を開始後。
その戦局は右軍にとって好ましい結果になっている頃。
左軍―…、特にランシュとヒルバスの側では―…。
(今回は、少しぐらい派手でもいいだろう。前回は、奇襲的な方法であったが、今回は殿に近いので、かえって俺とヒルバスが目立つという選択が最高だと思われる。)
と、ランシュは心の中で思いながら、辺りを見回す。
そこからは、逃げ遅れている中央軍が何とかミラング共和国軍の猛追を回避していきながらという状態である。
最悪の場合は、すでに予想できることであろうが、ミラング共和国軍によって殺されて、命を奪われていっているだけだ。
そうなってしまうとランシュのプランが上手くいかなくなる。
(派手にやろうと思ったけど、難しいな。)
と、ランシュは心の中で思う。
ランシュの持っている大剣から天成獣トビマルから借りた力を纏って、強い斬撃を放とうと考えていたのだが、まだ逃げ切れていないリース王国軍の中央軍の兵士がいる以上、無理な話である。
もしも、ランシュが、その一撃を放って、リース王国軍の中央軍の兵士に死者が出ると、中央軍から何か文句を言われて、面倒くさいことになることが分かっているのだ。
そのような輩を相手にしている暇はこちらにはないし、気分がまいってしまうので―…。
「作戦変更だな。」
と、ランシュが言う。
「ですね。」
と、ヒルバスが返事をする。
こうなると、ランシュの出番はほとんどなくなり、こういう場ではヒルバスの方が良かったりする。
ランシュはそのことを理解している。
「ヒルバス、頼んだぞ。」
「お任せを―…。」
ヒルバスがランシュの言葉に答えると、ヒルバス自身の武器である二丁拳銃を両方ともミラング共和国軍の兵士に向かって構える。
(拳銃を二丁使うことは、難しいことであり、天成獣の力でそれを可能にしているとか―…。ヒルバスから聞いたことによると―…。)
と、ランシュは心の中で思う。
そして、ヒルバスは、ほぼ同期の騎士団のメンバーであるし、一緒に天成獣の宿っている武器を使っての戦闘のための修行をおこなっている以上、その戦い方をランシュがしないわけがない。
ゆえに、信頼して任せることができる。
(ふう~、中央軍がとんだ大失態を犯してくれました。それでも、この状況を打開できないほど柔ではありません。それに動く的は何度も何度も、練習してきましたし、メタグニキアの私設部隊でもやってきたことです。いきますか。)
と、ヒルバスは心の中で言う。
ヒルバスは、騎士団の訓練の中で動かない的を標的として撃つ練習をしてきたし、前回のリース王国とミラング共和国との戦争ではミラング共和国軍の兵士に向かって、正確に射撃するということもあった。
それに加えて、メタグニキアの私設部隊に所属している関係で、要人の暗殺の仕事もあった以上、場慣れしており、そこに余計な緊張感を挟む余地はない。
だからこそ―…。
(戦闘開始。)
と、ヒルバスが心の中で言うと、ミラング共和国軍兵士に向かって、一発放つ。
そして、その銃弾は、一人のミラング共和国軍兵士の頭部に命中する。
(次!!! 次!!! 次!!!)
と、まるで、作業でもするかのように動き、銃弾を放つ。
その多くがミラング共和国軍兵士の頭部に命中する。
その銃弾のスピードも半端ないものであり、ミラング共和国軍兵士が気づく前に、その兵士のもとへ銃弾が到達するのだ。
さらに、ミラング共和国軍の兵士の中でヒルバスのターゲットとなった者の動きを、ヒルバスはまるで、そのターゲットの考えでも読んでいるかのように、正確に命中させていく。
そして、リース王国軍の中央軍の兵士に命中していないのだ。
彼らをビビらせることはあったとしても―…。
そして、この状態に気づくミラング共和国軍の兵士がいるが―…、多くの者は気づかない。
「どうなっている!!!」
「狙われているぞ!!!」
「クッ、どこ…。」
言葉を発したとしても、発し終える前にヒルバスの放った銃弾を受けて、倒れるミラング共和国軍の兵士が続出する。
ゆえに、ミラング共和国軍の兵士は恐慌状態になっていく。
当たり前のことだ。
そして、ヒルバスが始末していく間―…、ランシュは警戒はしていても、攻撃を加えることはしていなかった。
なぜなら、する必要がないからだ。
(どれだけの戦死者になるのだろう。死体処理が面倒くさいんだよなぁ~。上の人はそれを理解していないから困るんだよねぇ~。)
と、ランシュは、心の中で思いながらも、ヒルバスの働きを見ているのだった。
まだ、警戒を緩められる状態ではないし、油断することもできない。
そして、ヒルバスの実力から、今の状態なら、ヒルバス一人でこの場は片付くだろうと思っている。
それに加えて―…。
(ヒルバスは天成獣から借りた力を銃の中で、銃弾になるようにしながら、銃を放つのである。そのスピードが尋常じゃない。どういう感覚でやっているのか不思議でならない。)
と、今のヒルバスはどうやって攻撃しているのか理解はできるが、感覚が分からないのだ。
ランシュとしては、ヒルバスの今の感覚を理解できないのだ。
ヒルバスは、
(次!!! 次!!!)
と、言いながら、まるで、簡単な作業を処理するような感じで、淡々と仕事をこなしていく。
そこに、強い感情が割り込むことはない。
そして、ランシュも思考をそこまでして、
(それでも、俺も油断することはできない。なぜなら、ヒルバスがいくら銃撃でミラング共和国軍の兵士を倒していっても、ヒルバス個人である以上、完全にカバーし切れるわけではない。俺もそろそろ参戦した方がいいだろう。ヒルバスの護衛のような感じで今はいるけど、ヒルバスなら簡単対処できるので、俺が護衛に今は必要かというと、そうでもない。)
と、ランシュは心の中で言う。
それと同時に、ヒルバスは、
「中央軍で生きている方々は完全に私たちよりも後ろに行きましたか。」
と、ランシュに尋ねる。
ヒルバスとしても、このように何度も何度も、機械処理のような感じで、銃弾を発射することができても、殺せるミラング共和国軍の兵士は銃弾一つに付き、一人が限度である。
だからこそ、厳密に言うと、今のヒルバスのやり方は効率がかなり悪いのだ。
それに、リース王国軍の逃げ遅れている中央軍の兵士がヒルバスとランシュの前にいる以上、大きな攻撃を放つことができないのだ。
味方を犠牲にすべきではないということを考えると―…。
味方を巻き込んでしまえば、何を言われるのか、責任を押し付けられるのか、そして、罪をきせられるのかが予測できる以上、戦い方も制約されてしまうのだ。
まあ、味方を犠牲にしても良いかというと、そういうことではない。
ランシュやヒルバスだって、無駄に味方側の犠牲を増やしたいわけではないし、逃げている味方を積極的に殺したいわけではない。
むしろ、あくまでも自分が殺される確率を下げることと、同時に、自分がちゃんと生き残れるということを確保した上で、騎士団の騎士や左軍の犠牲を減らすためのことである。
そして、すでに、リース王国軍の中央軍がランシュやヒルバスの通り過ぎることがなくなり、数分が経過した。
今度は、ミラング共和国軍が束になってやってきた。
そうなると、中央軍を逃がすために、左軍に大きな犠牲が出る可能性が生じてきている。
だから―…。
「逃げ切ったとか関係ないか。じゃあ~、行きますか。」
と、ランシュは言う。
言いながら、自らの武器である長剣に、天成獣トビマルから借りた力を纏わせ、ランシュから見て左側に構える。
その間にヒルバスは、
(ランシュ様より後ろに下がらないと―…。)
と、心の中で言いながら、ランシュよりも後ろへと向かう。
ランシュがこれから何をしようとしているのか、理解したからこその行動だ。
そして、ランシュは、すぐに自らの武器である長剣を左側から右側になるように振り、ミラング共和国軍の兵士に向かって、斬撃を放つ。
ズン!!!
その音をさせながら―…。
そして、ランシュやヒルバスの方に向かっていたミラング共和国軍の兵士、その中でも現場指揮官の一人は―…。
(何だ!!! こいつは不味い!!!)
と、心の中で自らの頭の警報が強く鳴り響く。
だからこそ―…、
「逃げろ―――――――――――――――――――――ッ!!!。」
と、叫ぶしかなかった。
その言葉を聞いて、逃げようとするが、それは恐慌状態になる。
この場合、伏せろというのが正しい言葉であろう。
それなら、歩兵の生存率はそれなりあっただろうが、この現場指揮官は天成獣の宿っている武器を扱う者との戦闘経験がなかったことが仇となった。
いや、戦闘経験で生き残ることができればだけど、そういうこと自体が稀である以上、仕方のないことかもしれない。
だけど、その仕方のないことによって、自らの命を散らせていくのだった。
避けることもできずに―…。
斬撃はミラング共和国軍の兵士を襲い、多くの命を奪っていくのだった。
(死体処理は嫌だが、自らが殺されては意味がないので、多くのミラング共和国軍を倒す。まあ、ミラング共和国の総統は、俺の復讐対象だからなぁ~。)
と、ランシュは心の中で思いながら、その様子を見るのであった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(166)~最終章 滅亡戦争(21)~ に続ける。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
では―…。