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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
505/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(159)~最終章 滅亡戦争(14)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、エルゲルダがミラング共和国の総統となり、リース王国へと宣戦布告する。一方で、その情報を知ったリース王国では、ラーンドル一派たちによる話し合いがおこなわれ、逆に侵略し返そうということになるのだった。

その情報をリーンウルネは自ら潜入することで仕入れ、ハミルニアとフォルクスを自分の執務室に呼び寄せて、今回の戦争に参加させるのだった。その話し合いで、ランシュとヒルバスの参戦をも促すものであった。

リーンウルネは、一枚の紙をメタグニキアの秘書に渡し、その紙を見たメタグニキアは激怒しながらも、そのメリットのためにヒルバスを今回のミラング共和国とリース王国の戦争に参加させる命令を下すのであった。

その後、ランシュとヒルバスは一時的に騎士団に復帰という形で参戦するのだった。


リース王国は出陣し、ミラング共和国の境までやってきており、作戦会議がおこなわれる。

その作戦の会議の中で、左軍と右軍の大将がそれぞれ決まるのであった。左軍に騎士団が編入されるのだった。

一方で、ミラング共和国軍は、リース王国軍の実力を見るために、軍隊をリース王国と同様に三つに分けるのだった。

最初の戦いは、ランシュとヒルバスの活躍で左軍、右軍はアンバイドの活躍により被害も出ながらも奮闘し、中央軍は散々な目に遭うのだった。

それは、ファルアールトにとってあり得ないことであった。

精神的に摩耗するぐらいに―…。

その一方で、左軍の方では、勝利の宴会が開かれるのだった。

 ランシュとヒルバスは、二人になる。

 周囲には人がいるが、あくまでも、二人での会話できるような感じになっているということだ。

 そして、二人を酒を飲んでいなかった。

 飲む気にもなれなかった。

 ランシュは、

 (たとえ、俺とヒルバスが編入された三つにわけられた軍の一つが大勝したとしても、ミラング共和国軍の方も態勢を整えてくるだろう。そうなると、俺とヒルバスがやったような奇襲は使えなくなる可能性も存在する。なぜなら、俺とヒルバスのおこなった攻撃方法、天成獣の宿っている武器を扱っている者がいるという情報が伝わっている可能性の方が高いと考えた方が良いからだ。それがまともな軍ということなら、なおさらであろう。ミラング共和国軍がまともかどうかは軍の中の人とその関係次第であろう。ゆえに、次の手を打ちながらも、失敗した場合の保険的な行動をも考えないといけない。)

と、言う感じで、ミラング共和国軍がこれで終わりだと思っていなかった。

 それは誰もが分かっていることだ。

 そして、今日のランシュとヒルバスのような戦い方がこのミラング共和国との戦争の中で、ずっと通じるようなものではないと思っているのだ。

 なぜなら、彼らは本気を出しているようには思えないし、戦いの中で、自分達が天成獣の宿っている武器を使っていることが相手に知られることは間違いないであろう。

 仮に、知られていないのであれば、それはそれでラッキーという感じであると認めることができる。

 ランシュは、次の手が失敗したとしても、それに対応できる方法を見つけないといけないと理解しているのだ。失敗しないということは何においても、保障されることはないのだから―…。

 ランシュは自らの目的の一つであるエルゲルダに対する復讐を果たさないといけないのだ。

 そのためには、リース王国軍が敗北することは避けないといけない。

 一方で、ヒルバスは、

 (ランシュ様は完全に考え込んでいますねぇ~。まあ、考えられるのは、今日の左軍の大勝であったとしても、相手も何かしらの策を講じてくると思っているのでしょう。それに、あれがミラング共和国軍の実力だとは思えない。例の天成獣の宿っている武器を扱う者の軍隊とシエルマスがどこにもいませんでしたから―…。いたとしても、戦う気配すら見せていない。ということは、私たちの情報を探っているということですか。それでも、今、必要以上に考え込んでも相手側が動かないとどう対処すれば良いのか分からないことだと思いますし―…。)

と、心の中で思う。

 だからこそ、ヒルバスはランシュに向かって言う。

 「策はどこまで考えたとしても、できる範囲が変わるわけではありません。今日は、私とランシュ君の左軍は大勝でしたが、右軍はギリギリでの勝利で、中央軍は二割以上の戦死者が出て、大変ですけど―…。」

と、ヒルバスは言う。

 ヒルバスは、今日のリース王国軍がどういう結果になったのかという情報をしっかりと収集していた。それに戦争の情報は、騎士団がしっかりと収集している人たちがおり、そこから仕入れることができる。

 情報の共有は必要なことであり、知っているといないでは、雲泥の差である。

 まあ、戦争である以上、偽情報もしくはプロパガンダということも十分にあるので、しっかりと精査することが必要なのであるが―…。

 そして、そのような情報はランシュも知っている。

 「そうだな。右軍は、傭兵にアンバイドという伝説に近いほどの奴がいて、そいつのおかげでギリギリ勝利したようだ。」

と、ランシュは言う。

 右軍が、ランシュによって、ダメージを受けながらも勝利することができたということは、すでに知らされていた。

 そして、アンバイドのことについても、いくつか噂で知っていた。

 (アンバイドはここ十数年で有名になってきた傭兵であり、天成獣の宿っている武器を扱う人間であり、一昔前のグルゼン親方と同等か、それ以上の実力を有している。アンバイドは、天成獣の宿っている武器を扱って戦う者としての実力があるので、グルゼン親方でも倒すことはできない。このアンバイドが、ミラング共和国軍との戦争において、リース王国軍の傭兵といてくれたことに感謝したいほどだ。)

と、ランシュは心の中で思う。

 噂を聞いた程度に過ぎないが、今日の情報から、実力者であることは分かる。

 さらに、指揮のようなこともできると考えれば、総合的にはグルゼンよりも上かもしれない。

 天成獣の宿っている武器を前回のリース王国とミラング共和国軍との戦争の中で、グルゼンが手に入れたということを知らないので、その時点での判断となってしまうが―…。

 そうであったとしても、グルゼンの実力を認めているし、アンバイドの方が天成獣の宿っている武器の有りの条件で戦えば、アンバイドの方が明らかに強いのは事実だ。グルゼンは、天成獣の宿っている武器を持っていないということで想定しているからだ。

 そして、ランシュにとっては、アンバイドの存在は感謝でしかない。

 アンバイドがいなければ、今回のリース王国とミラング共和国の戦争はかなりの損害を受けているだろうし、ミラング共和国の今の総統であるエルゲルダに対しての復讐が達成されない可能性が高くなる。

 それは、ランシュにとって望ましいことではない。

 やっと、ベルグからエルゲルダを殺害することの許可を貰ったのだから、その機会を活かさない理由がない。

 そういう意味では、ランシュは幸運な方かもしれない。

 だからこそ、心の底から今のアンバイドには感謝しかなかった。

 「アンバイドの噂は聞いているから驚かないが、リース王国の右軍の指揮者は指揮官としての能力がないということになるな。」

と、ランシュは続けて言う。

 アンバイドが指揮官の役割を果たしたのなら、右軍の指揮官は指揮官としての仕事ができていないということになる。

 厳密に言うと、少しだけ違い、アンバイドによって持ち直すことができたのだから、それを邪魔するようなことをせずに、アンバイドに協力した方が得だと判断したからだ。無能ではないが、あくまでも、軍人としては不向きであるということだ。

 まあ、右軍の大将がリース王国軍を辞めることはないだろうし、文官の方に移る可能性は今のところ、可能性は低いであろうが―…。

 ランシュの言葉に対して、

 「ですね。だけど、傭兵ばっかりの軍を指揮されているので、可愛そうという一面はあるのですが―…。それでも、どんな練度や寄せ集めの軍でも指揮をして見せての指揮官なので、無能なのには変わりありません。」

と、ヒルバスは言う。

 右軍の大将であるフォルルークに関して、擁護できる部分もある。

 右軍は、ほとんど傭兵によって構成されており、中央軍が傭兵の存在を嫌ったこともあるし、左軍はリース王国の騎士団を編入させるので、(ちから)バランスで左軍に活躍されて困ると判断して、左軍の数を多くしないようにされたから左軍の傭兵の数は少ない。

 ゆえに、即席で指揮をしないといけない右軍の指揮官に対しては、かなり難しい要求であるし、傭兵の中でコントロールしにくい自分勝手なのもいるので、ある程度の失敗は仕方ないのかもしれない。

 だけど、無能でないということの証明にならないし、言い訳にもできない。

 指揮する者が失敗するということは、その部下達の多くを戦死へと追いやる結果になりかねない。

 自軍の損害を最小限に、敵軍の損害を最大限にすることが目指される戦争においては、失敗は許されることではない。どんな状況であったとしてもとは、完全に言うことはできないが―…。

 そして、ランシュは、失敗を犯した右軍の大将に対して、ちゃんと処分を受けないといけないと心の奥底から思うのだった。

 それでも、右軍よりかなりヤバい失敗をした軍があるのだ。

 そう―…。

 「最悪なのが、中央軍の方か―…。」

と、ランシュが言うと、

 「ええ、中央軍が、ミラング共和国軍の戦った軍勢の戦死者以上に死者を出しているということです。指揮官は、右軍の指揮官より劣っているというか、もしくは戦争中に殺されても文句は言えません。そして、その指揮官がリース王国の中央で権力を握っている奴らの子飼いと言ったところですか。」

と、ヒルバスが説明する。

 中央軍は、右軍よりもかなり酷い損害を被り、さらに、ミラング共和国軍を撃退することもできなかった。

 大失態である。

 そして、その中央軍の大将であるファルアールトは、リース王国軍の総大将である以上、総大将自らが大失態をしてしまったのだ。

 部下に説明のしようがないし、信頼を失ってしまってもおかしくはない。

 さらに、ミラング共和国軍の側は、本気すら出していないのだから―…。

 そして、中央軍は、リース王国の中央で権力を掌握している政権側とされるラーンドル一派の息がかかっているのだ。

 つまり、ラーンドル一派は、人選もできないほどの愚か者であるということをつきつけたことになる。

 「ああ。」

と、ランシュは返事をする。

 ランシュは、中央軍の攻勢が、ラーンドル一派の子飼い達であることはすぐに分かった。

 なぜなら、王族護衛の仕事をしている以上、リース王国における勢力がどのようになっているのか詳しく把握しておく必要があるし、かつ、ラーンドル一派の関係者が誰であるのかを顔まで含めて覚えておかないといけないのだ。

 それは、ランシュにとって、レグニエドへの復讐をする際には、重要になるので、憶えるのに苦しむ気持ちにはならなかった。

 そして、王族護衛の中で、ラーンドル一派たちの言葉はまるで、何も知らないどころか、学んだ上で、責任感を持って、何かを為そうという気持ちではなく、自分のためだけに相手は従うべきだとさせる言い方だと感じるのだった。

 要は、言葉が軽い。言い方も軽い。

 そして、今日の戦い、中央軍はミラング共和国軍に勝てるのか疑問に思ってしまうぐらいの感想をランシュは抱くのだった。

 ランシュは、言葉を続ける。

 「で、結局、ただ突っ込んでいくだけ、数で押し切ろうとするだけで、簡単に倒されていったみたいだな。相手が対応しておこなわれた反撃に対応しきれず―…。」

 だけど、現実は、そのような感じではなく、ミラング共和国軍から奇襲され、対処することもできずに、混乱の中で、一部は突っ込もうとして、逆にミラング共和国軍側から反撃され、対応することができなかったというのが正しい。

 まあ、戦場である以上、情報の混乱や偽造というものは起こる。

 ランシュであったとしても、完全に正確な情報を把握するのは難しいということだ。

 この失敗が、後に、最悪の結果に響くこともあるのだ。

 気を付けないといけない。

 その上で、ランシュは中央軍の今日の戦いのことを、

 (そう、中央軍はただ突っ込んでいくだけで、ミラング共和国軍が態勢を立て直し、横から左右から中央軍を攻撃したのだ。そのせいで、混乱した中央軍は、負けてしまったというわけだ。情けないというよりも、もう少し相手のやることを想像して欲しいものだ。)

と、心の中で結論付ける。

 この結論の後半は正しく、相手側が自分に対して、どのようにしてくるのかを想像する必要があるし、予想できることもあるのだ。

 それをパターンと呼ぶのであり、型であり、型には対処方法が存在しているのである。

 その対処法を探り、相手が自分の弱点の行動をしてきた時に、すぐに対処法を実行するのだ。

 そうすることにより、相手の動揺を誘い、その隙を突くということが大切である。

 まあ、これは、勢力均衡が陥るであろう軍拡競争と同様に似た現象を発生させるようになるのであるが―…。それに気づける者は、良く学んでいる者であることは確かであろう。

 「中央は、完全に俺らの勝利を恨んでいて、余計な暴走をしそうな感じだな。」

と、ランシュは言う。

 結局、今回の左軍の勝利に対して、中央軍は嫉妬することは簡単に想像することができる。

 なぜなら、中央軍の大将は、ラーンドル一派の息のかかった者であり、かつ、ラーンドル一派と距離を置いている者たちや、彼らの思い通りに動いてもらわない者や集団の存在を許すことができないのだ。

 そのことに気づけば、ランシュの今、言っている言葉を想像することは簡単にできるのだ。

 自分達の優位をラーンドル一派の息のかかっている者達が証明するために―…。

 「そうですね。」

と、ヒルバスも同意する。

 (想像される時点で、圧倒的なものを必要とするけど、リース王国の中央で権力を握っている者達の息のかかっている中央軍の大将では、私たちを邪魔することは無理でしょうね。)

と、ヒルバスは心の中で思う。

 そう、ランシュとヒルバスは、懸念が一つ増えることを理解する。

 ヒルバスは、そこまで思ったとしても、自分達で対処することは十分可能であると思った。

 一方で、ランシュは少しだけ悲しくなるのだった。

 どうして、嫉妬して、今、しなければならない目的を見失ってしまうのか、という感じで―…。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(160)~最終章 滅亡戦争(15)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


では―…。

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