番外編 ミラング共和国滅亡物語(158)~最終章 滅亡戦争(13)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、エルゲルダがミラング共和国の総統となり、リース王国へと宣戦布告する。一方で、その情報を知ったリース王国では、ラーンドル一派たちによる話し合いがおこなわれ、逆に侵略し返そうということになるのだった。
その情報をリーンウルネは自ら潜入することで仕入れ、ハミルニアとフォルクスを自分の執務室に呼び寄せて、今回の戦争に参加させるのだった。その話し合いで、ランシュとヒルバスの参戦をも促すものであった。
リーンウルネは、一枚の紙をメタグニキアの秘書に渡し、その紙を見たメタグニキアは激怒しながらも、そのメリットのためにヒルバスを今回のミラング共和国とリース王国の戦争に参加させる命令を下すのであった。
その後、ランシュとヒルバスは一時的に騎士団に復帰という形で参戦するのだった。
リース王国は出陣し、ミラング共和国の境までやってきており、作戦会議がおこなわれる。
その作戦の会議の中で、左軍と右軍の大将がそれぞれ決まるのであった。左軍に騎士団が編入されるのだった。
一方で、ミラング共和国軍は、リース王国軍の実力を見るために、軍隊をリース王国と同様に三つに分けるのだった。
最初の戦いは、ランシュとヒルバスの活躍で左軍、右軍はアンバイドの活躍により被害も出ながらも奮闘し、中央軍は散々な目に遭うのだった。
それは、ファルアールトにとってあり得ないことであった。
精神的に摩耗するぐらいに―…。
一方では―…。
報告終了後。
ハミルニアは、フォルクスを見つけ―…。
「フォルクス騎士団長。少しだけ世間話でもしないかい。僕と君の仲じゃないか。」
と、ハミルニアは言う。
ハミルニアとしては、気軽に声かけをして、自分とフォルクスは仲良しですよと、アピールしようとしているようにしか見えない。
気づく者は分かっている。
二人で重要な何かを話し合うものであると―…。
フォルクスは気づかず、反論しようとするが―…。
「話には付き合うべきだ。それに、ハミルニア様に隠し事はあまりしない方が良い。」
と、耳打ちされるのだ。
耳打ちをしてきたのは、ハミルニアの副官であるリグレーであった。
リグレーは、ハミルニアの意図していることを察しての行動である。
フォルクスは、
(応じるしかないのか。)
と、心の中で思う。
ハミルニアという存在が、不気味に思えてしまったのだが、それでも、応じないといけないことをリグレーの耳打ちで理解してしまうのだった。
仲が良い?
違う。
この状況をはっきりと言えば、ハミルニアとフォルクスの情報合戦がこれから始まるという感じだ。
それも、フォルクスの方は、避けたい気持ちがありまくりであるが、避けられそうにないということだ。
ハミルニアの恐ろしさを感じる。
「わかった。」
と、言う。
フォルクスは敢えて、不機嫌に近い言い方をして、自分は意図していないということ、不満であることを表現するのだった。
このような表現は、この場であまり良くないし、返って、その逆もより駄目としか言いようがない。
なぜなら、ハミルニアとフォルクスがそこまで仲が良いとは思えないぐらいのことは、この場にいる者たちならしっかりと気づいているし、理解している。
だからこそ、仲良しアピールは変に勘繰られやすくなる。
ハミルニアはそのことを承知であるし、ラーンドル一派ども勘繰られたとしても証拠さえ押さえられなければ、大丈夫だと判断している。
それに、ランシュとヒルバスを目立たせても彼らなら上手く誤魔化すことは理解していた。
実際、会ったことはあるので、ハミルニアにとってそれなり性格を読むことができる。
まあ、人に対する観察力が高いということだ。
そして、ハミルニアとフォルクスは人気がない場所に移動する。
数分後。
人気のない場所に到着すると―…。
「一体、用件とは何だ?」
と、フォルクスは言う。
明らかに不満というか、警戒を抱いているという印象を周囲に与える感じである。
ハミルニアのことを信頼することができないと考えているのだから―…。
「用件は、さっきの報告のことなんだけど、リーンウルネ様との話し合いの中であったじゃないか。ランシュとヒルバスを今回の戦争の中で騎士団に一時的に復帰させることにして、実際にそれが実現したのだから、彼らの活躍が気になるじゃないか。」
と、ハミルニアは言う。
ここに嘘はない。
というか、嘘を言うためにフォルクスと話し合いを求めたのではないのだから―…。
ハミルニアが求めているのは、ランシュとヒルバスが今日の戦いの中で、どのような活躍したのか、ということだ。
それを左軍の大将として把握しておく必要があるのだ。
半分ほどの理由であるが―…。
「そのことだろうとは思ったがな。」
と、フォルクスは言う。
フォルクスもランシュとヒルバスの活躍に関して、聞いてくることだろうとは思っていた。
だけど、ここで、ハミルニアに教えるべきかと言えば、教えたいという気持ちにならない。
二人の活躍を知れば、余計に危ない戦地へと二人を派遣することは分かりきっているのだから―…。
ハミルニアがラーンドル一派の息がかかっていなかったとしても、人の繋がりとはどうなっているのかは分からないのは、事実だ。
だからこそ、言わないように、適当にはぐらかそうとするのだが―…。
「正直に言ってくれると助かるかな。私が、ランシュとヒルバスを危険な戦地へと派遣することは心配しているかもしれないが、彼らにとって、今回の戦争で危険な戦地ってむしろ、ほとんどないと思うんだけど―…。ちなみに言わなくても、こっちでちゃんと調べるし、人の口に戸は立てられないから―…。だから―…。」
と、ハミルニアは言う。
ハミルニアの情報を甘く見ていたのだ、フォルクスは―…。
ハミルニアは、ランシュとヒルバスがどれだけ活躍しているのかを、フォルクスから直接聞くことなく調べることは可能である。
なぜなら、その戦いには、リース王国の騎士団だけでなく、リース王国軍の兵士もいるのだから、探りようはいくらでもある、ということだ。
それに、ハミルニアにとって、ランシュとヒルバスを死なせるようなことは一切しない。
なぜなら、そのようなことをすれば、リース王国軍の戦力が下がってしまう可能性が高まるという勘というか、予感がしているのだ。
フォルクスの方は、僅かばかり動揺する。
(こいつぅ~。)
と、苦虫を噛んでしまっている。
だけど、表情に出さないようにする。
ハミルニアとこのような場で話しているからこそ分かってしまうのだ。
ハミルニアは、頭の回転が速く、良い方だということを―…。
ゆえに、隠しきれないと判断するのに、そう時間はかからなかった。
「言えば良いのか。」
と、フォルクスが言うと、
「ありがとう。助かるよ。」
と、ハミルニアが答える。
その会話は、まるで、気軽な人とハミルニアという人物の性格を判断してしまうぐらいだ。
だけど、ハミルニアは計算している。
(……さて、ランシュとヒルバスの活躍次第で、この戦局はより有利に動かすことができる。)
と。
ハミルニアにとって、今回のリース王国とミラング共和国との戦争では、なるべく自軍の被害を最小限にして、相手側であるミラング共和国軍の兵士の損害を最大限にしないといけない。
そうなってくると、今日の戦局の状況をしっかりと把握しておく必要がある。
フォルクスにとっても、利益になるのであるが、フォルクスはそのことに気づいていない。
(フォルクスは、情報通り、頭が固い人ですね。まあ、そういう人には、少しだけしつこいキャラになりますか。)
と、ハミルニアはさらに、心の中で思うのだった。
そして、フォルクスは答える。
「ランシュとヒルバスの二人によって、ミラング共和国軍の中で奇襲してきた者たちを撃退し、千人近くの死傷者を出した。相手側のな!! そして、ランシュは空中を飛べるから空中で、ヒルバスは銃撃で、二人は別々に行動させた方が上手くいく。……これで良いのか。」
と。
フォルクスは、イラつきを感じていたが、正直に答えたつもりだ。
後は、ハミルニアがどう判断するかということになる。
そんななかハミルニアは、
「ありがとう。たぶんだけど、ランシュとヒルバスの二人は、二人で遊撃を担当させた方が良い結果が生まれそうだね。それと、私は、なるべく、今の味方の軍の戦死者はなるべく少なくしたい。戦争がどこで終わるか完全には分からないからねぇ~。温存できる時に、温存しておかないと~。それに、これから宴会だから、少しぐらいは羽目を外した方が良い。息抜きは大事だから―…。」
と、言うと、本陣の方へと戻って行かず、宴会の方へと向かうのだった。
その様子を見ながらフォルクスは―…、
(こいつ……素人か?)
と、思ってしまうのだった。
戦場において、羽目を外すことは、油断をするということと同意義である。
油断イコール相手に攻められることになった場合、自軍の大敗北および自軍の大損失を意味する。
そのことを理解できないとは―…。
ハミルニアには、指揮官としての能力がないのではないか、と疑ってしまっているし、ハミルニアの軍の中に入ったことが不幸なのではないかと思ってしまったのだ。
だけど、頭の回転が速いということが理解できている以上、別の可能性というのも頭の中を過ぎらないことはない。
そんななか、フォルクスは重要な勘違いをしている。
ハミルニアも全員で宴会のようなことをしようとは思っていない。
警戒は怠らないし、今回の勝利による宴会は、自軍の士気を上昇させるためである。
そして、ハミルニアが一番警戒しているのは、ミラング共和国軍と同時に一番なのは、シエルマスという組織である。
ランシュとヒルバスの実力がかなりの者であるのなら、シエルマスが彼ら二人を重点的に狙ってくると思っているからだ。
二人を排除しないとミラング共和国軍の勝利は無くなってしまうのだから―…。
そう、考えれば、二人に目一杯活躍して欲しいし、シエルマスに勝利して欲しいぐらいだ。
だからこそ、ランシュとヒルバスをハミルニアは重要なこの軍のピースだと考えている。
その後、フォルクスは、宴会には参加せず、本陣の中でじっくりと警戒しながら、体を休めるのだった。
左軍本陣近く。
そこでは、宴会がすでに開かれていた。
その宴会で―…。
「さ~て、今回のミラング共和国との戦争。我がリース王国軍の左軍が、奴らの汚い奇襲を見事に撃退し、逆に、ミラング共和国軍の野郎どもにダメージを食らわせてやった。だから、勝ったの宴会じゃ。戦いに勝つぞ――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
と、宴会の音頭をとっている者が言う。
この人物は、リース王国軍の中でかなりのお調子者であり、こういう場には自分から首を突っ込んでくるので、皆、宴会の音頭はこいつの仕事だと思っているぐらいだ。
それでも、実力がないわけではないので、リース王国軍から追い出されることがない。
そんな感じ、この者が続けて、
「乾杯。」
と、言う。
その声とともに、カン、カン、カン、とコップやら、グラスやらが触れる音がする。
皆、今日のミラング共和国軍の奇襲を撃退したことに、かなりの喜びを感じているのだろう。
気持ちがかなり高揚している。
各々に今日の勝利の余韻に浸る。
「お~、今日は三人もミラング共和国軍の兵士の首を取ってやったわ。」
「俺は五人!!!」
このように戦果自慢をする者達がいるなかで―…。
「何とか生き残ることができたぁ~。」
「ああ。」
と、生き残ったことに安心をする者もいる。
そう、ミラング共和国軍を撃退できたからと言って、左軍に犠牲者がいなかったわけではない。僅かばかりではあるが戦死者は出ている。
そんななかでも、ミラング共和国軍を撃退することができたのだからと言って、喜べる者もいるが、同時に、仲間が死んだことに対して、悲しむ者達もいる。
それぞれであるが、それでも、宴会に対する恨みはない。
勝つということができたからこそ、気持ちとしての恨みが和らいでいるのだろう。
負けていたのなら、こんなことできるはずもない。
ハミルニアはそのことを計算していたりする。
それに、ハミルニアは、自軍の戦死者に対して、丁重な言葉と埋葬をおこなうことを約束し、それを実行する。
死者を労わることも、士気に関係していることを知っているからである。
厳密に言えば、死者ではない。死者との関係者において、彼らの不満を抱かせないように―…。
上に立つ者の人間として、下の者たちの不満ほど後々、これほどに怖いものがないことを十分に知っているからだ。
そんななか、この場には、リース王国軍の兵士だけでなく、騎士団の者たちもいた。
「がは~ぁ。勝利した後の一杯は最高だぜ~。ランシュ先輩、ヒルバス先輩、ありがとうございます!! 今日の最高の一杯は二人のおかげです。」
と、騎士団の格好をした男が言う。
この人物は、性格がサバサバしていて、腕っぷしもあり、今から二年ほど前に騎士団の入団試験に合格して、正式に騎士になったのである。
ランシュとヒルバスの元後輩であり、名前はアウルという。
二人もアウルのことは可愛がっているわけではないが、嫌いにはなっていないし、普通に良い奴だと思っている。
アウルの方は、ランシュとヒルバスの実力を表向きのことを知っているので、彼らの活躍は当たり前のことだと思っている節がある。
そして、この宴会に酒が振舞われているのだ。
勿論、この酒は、最初からハミルニアが用意させていたのだ。
戦意向上に役立つ可能性は十分あると判断して―…。
そして、アウルは酒を僅かばかり飲んでいた。
グラスから少しだけ減っていると分かるのだから―…。
(……相変わらず、調子が良いですねぇ~。)
と、ヒルバスは、心の中でアウルを評する。
ヒルバスは、油断しすぎではないかと思えるぐらいになっている。
心配していると言っても良い。
そんな後輩であるアウルだが、ランシュとヒルバスの目的は言っていない。
あくまでも、騎士であった時の後輩であるが、それだけという感じである。
「そうか、飲んでもいいが、相手がどう行動してくるかわからない以上、酒はほどほどにしておけよ。」
と、ランシュは返事をするように言う。
そして、ランシュは、今が戦争状態であり、ここが戦場のど真ん中であることを知っている。
だからこそ、油断してはいけないということだ。
ゆえに、アウルに忠告する。
まだ、アウルは騎士団に入って、二年ぐらいなのだから、戦いに慣れていないだろうし、こういう勝利の時は、どうしても勝利の余韻に浸ってしまい、油断しやすくなるからだ。
それでも、必要以上に言わないのは、あくまでも、ちゃんと距離感を保つためでもあるし、ランシュの目的を知られないようにするためでもある。
ランシュはアウルを見ながら、
(アウルは、サバサバしているが、酒に関しては駄目な方かもしれない。だけど、今が戦争状態であるので、飲みすぎるということはないと思う。)
と、心の中で思う。
アウルとて、油断しすぎることはないだろうし、戦争が終わったわけじゃないことを理解しているはずだ。お調子者であったとしても、それぐらいは理解できるはずだ。
そのように、ランシュは感じながら、これ以上は、アウルに酒に関して、忠告しないようにする。
「アウル、君は状況における分別はできるほうだから気にしないけど、他の人を酔い潰さないように―…。」
と、ヒルバスは注意する。
そして、ランシュもヒルバスの言葉を聞いたから、これ以上、言わないようにしたのだから―…。
ヒルバスの方が、的確に言ってくれるだろうという、思いがあるからだ。
「あいさ~。」
と、アウルは返事をする。
その後、アウルは、他の騎士たちと酒を飲み交わしていくのだった。
そう、アウルは離れて行くのだった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(159)~最終章 滅亡戦争(14)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
いろいろと追加していたりもします。第129話の分を―…。
さて、『水晶』も500部分を超え、第一編だけでどれぐらいの量になるか―…。想像していたよりも数倍はかかりそうな気がします。というか、第一編だけで、1000部分を超えないだろうか。不安になってきました。生きているうちにちゃんと最後まで書けるかなぁ~。
ということで、では―…。