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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
503/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(157)~最終章 滅亡戦争(12)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、エルゲルダがミラング共和国の総統となり、リース王国へと宣戦布告する。一方で、その情報を知ったリース王国では、ラーンドル一派たちによる話し合いがおこなわれ、逆に侵略し返そうということになるのだった。

その情報をリーンウルネは自ら潜入することで仕入れ、ハミルニアとフォルクスを自分の執務室に呼び寄せて、今回の戦争に参加させるのだった。その話し合いで、ランシュとヒルバスの参戦をも促すものであった。

リーンウルネは、一枚の紙をメタグニキアの秘書に渡し、その紙を見たメタグニキアは激怒しながらも、そのメリットのためにヒルバスを今回のミラング共和国とリース王国の戦争に参加させる命令を下すのであった。

その後、ランシュとヒルバスは一時的に騎士団に復帰という形で参戦するのだった。


リース王国は出陣し、ミラング共和国の境までやってきており、作戦会議がおこなわれる。

その作戦の会議の中で、左軍と右軍の大将がそれぞれ決まるのであった。左軍に騎士団が編入されるのだった。

一方で、ミラング共和国軍は、リース王国軍の実力を見るために、軍隊をリース王国と同様に三つに分けるのだった。

最初の戦いは、ランシュとヒルバスの活躍で左軍、右軍はアンバイドの活躍により被害も出ながらも奮闘し、中央軍は散々な目に遭うのだった。

それは、ファルアールトにとってあり得ないことであった。

 夕方。

 場所は、リース王国軍の中央軍。

 そこでは、一人の人物の表情が歪んでいた。

 「どういう………こと…………………だ。」

と、ファルアールトは言う。

 その言葉はやっとの思いで出したのが、明らかである。

 ファルアールトにとっては、どういうことだ。

 あり得ない結果なのだ。

 「なぜ、俺の軍がこんなに無様に負ける。」

と、さらに言う。

 そう、中央軍は、兵士の全体の三割を戦闘不能にされ、兵士全体の四分の一を遺体と化してしまった。

 奇襲を仕掛けてきたミラング共和国軍に対処することができずに―…。

 相手側の死者は、ほとんどいないのではないだろうか、というぐらいに―…。

 そして、ファルアールトの目の前には傷病兵が沢山であり、その介護や医療に関わる者たちがせわしく動いている。

 その者たちからしたら、ファルアールトは邪魔なので、どこかに行って欲しい。

 だけど、そのようなことを言えば、自分がどんな酷い目に遭うのか想像してしまうと、言うことに対して躊躇してしまう。

 だからこそ、ファルアールトの方が空気を読め、ということになるのだ。

 そんななか、ファルアールトは動揺を起こしてしまっており、動くことができなかった。

 かなり酷い損害を受けたことによって―…。

 「ファルアールト様。今は、医者たちの邪魔になります。話と作戦に関しては、本陣の中で―…。」

と、ファルアールトの部下の一人が言う。

 この部下は、今の医療や介護をおこなっている者たちの空気を感じたのだろうか、ファルアールトに向かって、強い口調ではなく、優しい口調で諭すように―…。

 この部下にとって、ファルアールトに逆らうことはできないが、自分の部下から白い目で見られるのも危険だと感じ、その狭間で揺れ動いていることもあったからだ。

 そして、ファルアールトはその声が聞こえたのかはすぐには分からなかったが―…。

 何となく、ここにいたくないという気持ちがあったのか―…。

 「本陣へ戻ろう。」

と、ファルアールトは言う。

 その言葉は、部下の言葉が通じたからではなく、自らの気持ちを一刻も早く落ち着かせたいと考えたからである。

 その部下の方は、自分の話を聞いてくれたのだと思い、安堵の表情を浮かべるのだった。

 その後、ファルアールトは本陣の方へと戻るのだった。


 右軍。

 その本陣には、アンバイドがおり、大将のフォルルークがいた。

 そして、アンバイドは面倒くさそうな表情をしていたが、フォルルークの方は感謝の気持ちしかなかった。

 「アンバイド殿。本当にありがたい。私たちがミラング共和国軍の奇襲に動揺している間に、素晴らしい指揮をしていただき、感謝しかありません。報酬の方を契約以上に増やせるかは分かりませんが、私としては、活躍した者に報酬を追加しないというのはどう考えてもおかしいと思っておりますし、交渉は最大限させていただきます。」

と、フォルルークは頭を下げながら言う。

 フォルルークとしては、アンバイドの活躍がなければ、大きな敗北をしていたのは事実だ。

 だからこそ、フォルルークは、アンバイドには感謝してもしきれない。

 それに、ミラング共和国軍に右軍が勝つためには、アンバイドが必要であることは確かだ。

 アンバイドに纏めてもらった方が、右軍全体の士気が向上する可能性が高いと踏んでいるからだ。

 フォルルークも頭の中で計算が働かないわけではない。

 アンバイドは、その言葉を聞きながらも面倒くさそうにしていた。

 (……頭にきたから、指揮官の真似事をしてやったが、ここまで感謝されるとはなぁ~。慣れないんだよなぁ~。こういう一番上の指揮官は珍しいからな。というか、リース王国の指揮官って、中央で権力を握っているどっかの商会の野郎どもの息がかかっていて、上から目線だし、報酬をケチろうとしてくる。まあ、そういう奴らは、ケチらせないように言うことを聞かせるまでだがな。)

と、心の中で言う。

 アンバイドは、フォルルークのようなリース王国の兵士は珍しいと感じたのだ。指揮官として、ここまでお礼を言い、かつ、報酬を引き上げようとしているのだ。

 その中で、アンバイドは過去にリース王国での戦における傭兵の募集に集まった時のことを思い出した。

 もう、これは二十年近く前のことであった。

 まだまだ若造であり、天成獣の扱い方を完全に学び終えた後のことである。

 そんななか、リース王国の西側の国との戦争になった時、小競り合いの中で、リース王国の兵士の損耗を減らすために、傭兵を集めており、その傭兵としてアンバイドは戦ったのだ。

 勿論、大活躍であり、敵国の幹部の一人を討ち取ることに成功したが、その報酬を当時の指揮官がケチってこようとしてきたのだ。

 それを、アンバイドは契約書を読めるぐらいの読みができ、書くこともそれなりできていたので、すぐにその指揮官に文句を言ったが、「そんな契約をした覚えがない」と反論してきたのだ。

 その言葉に頭がきたアンバイドは、その指揮官を天成獣の力を使って、制圧し、脅して、しっかりと報酬を支払わせたのだ。

 その成功体験によって、アンバイドへの報酬をケチるとその指揮官のようになるという噂が広がり、アンバイドに対する報酬をケチろうとする奴はほとんどいなくなった。

 アンバイドは、フォルルークも自分への報酬をケチるのであれば、その指揮官のようにしてしまえば良いと思っている。

 それに、アンバイドは目立ちたいから戦っているわけではない。

 戦場の中で、ベルグの居場所に関する情報を集めたいだけなのだ。

 報酬は、自分が食つなぐために必要なことだからこそ、厳しくしっかりとした額を支払ってもらうようにしているだけだ。

 まあ、そのような事情をアンバイド以外は知らないであろうが―…。

 「そうか、それはありがたい………。だが、指揮官の真似事は二度とやりたくない。」

と、アンバイドは言う。

 アンバイドとしては、指揮官の真似事はしたくないし、あくまでも一傭兵として戦うほうが性に合っているのだ。

 アンバイドの実力から考えると、一人で戦った方が周囲の中で戦うよりも実力を十分に発揮することができるのだ。

 連携が必要ないとは思っていないが、アンバイドの連携についてこれる可能性があるのがほとんどいないし、無理だろうと思っているのだ。

 実力がありすぎるのも、大変だということだ。

 そして、アンバイドは指揮官の役目がこないことを祈るのだった。

 そんななか、フォルルークはただ―…。

 (う~ん、無理だと思うけど~。)

と、心の中で思うのだった。

 すでに、アンバイドという人物によって士気というものが発揮されてしまっており、かつ、アンバイドに指揮されたい、ともに戦いたいと思っている者たちが多いと分かりきっている以上、指揮官のようなことをしなくてもよいという保障はどこにもない。

 そのように、フォルルークは感じていたのだ。

 その言葉を言うことができなかったが―…。


 左軍。

 そこには、ハミルニアがいた。

 副官のリグレーとともに、冷静な気持ちでいた。

 心の中では、最初の戦いで良い具合に大勝を挙げることができたのだ。

 喜んでいても良い。

 だけど―…。

 「右軍は、二割の損失となったけど、何とか勝利と言えるでしょうが、中央軍は大敗北。三割も兵士を減らしてしまい、全滅と言ってもおかしくない。」

と、リグレーは言う。

 すでに、今日の戦いの結果の報告会がおこなわれていた。

 それは、重苦しい雰囲気であった。

 中央軍には、ラーンドル一派の息のかかった者が指揮官をしており、彼らが負け、自分達が勝ったということは、ハミルニアへの嫉妬がかなり広がり、より生き残るのが大変な場所での戦いが強いられる可能性があるのだ。

 そう思うと、この先のことが何となく予想できてしまい、気持ちが暗くなってしまうのだ。

 そんななかで―…。

 「良く頑張ってくれました、皆さん。それに左軍にいる者たちは、かなり連携が取れ、かつ、より強い兵士もいるようですし、これからどんな大変な戦場を押し付けられたとしても何とかなると思いますよ。暗い表情をしても、良いことはありません。絶望している顔ができるのなら、希望に満ちている表情をすることができるでしょ。なら、希望に縋りましょう。指揮官は同時に、最悪の想定もしないといけませんが―…。」

と、ハミルニアは言う。

 ハミルニアは、暗い表情をしても、意味がないことを理解している。

 最悪のことを想定するのは指揮官であり、総大将である、自分だけで良い。

 むしろ、多くの左軍の兵士には、今日のミラング共和国軍との戦いでの圧倒的な勝利に対して、喜び合った方が気分として良い。

 暗いことばかり考えると気分が暗くなり、運気を逃してしまうかもしれないと思ったからだ。

 こういうのは迷信めいたものかもしれないが、それでも、勝てる要因が僅かばかりでもあるのなら、縋った方が良いと判断しているのだ。

 ある意味で、ハミルニアはモチベーターかもしれない。

 そして、ハミルニアは言葉を続ける。

 「それに、今日の戦いがどうだったかを報告していきましょうか。自分の戦いの中にも反省しないといけないものもあるかもしれませんから―…。それに相手側の動向をしっかりと把握しておかないと―…。細やかなことが重要になる場合が存在するのですから―…。」

と。

 ハミルニアは、細心の注意を払う。

 なぜなら、僅かばかりでも負ける可能性があるのなら、それはしっかりと埋めておくことが必要である。できるだけ。

 すべての負ける要素を埋めることはできないが、それでも、埋めることができるのであれば、埋めておくに限る。

 そして、勝てる要素はさっきも述べたように、利用していく。たとえ、迷信であったとしても―…。

 これから、報告がおこなわれていくのであった。

 「まずは、私から、ミラング共和国軍を追撃できた距離はそこまでではありませんが、ミラング共和国軍の方も三軍に分けて戦っており、本気だとは思えなかった。この最初の戦い自体、我々の実力を把握しようという意図が感じられました。武器や装備もあまり良いものではありませんでした。ハミルニア様の言う通り、これからが本番の可能性も十分にあります。」

と、ハミルニアの部下の一人が言う。

 ハミルニアは、ミラング共和国軍がリース王国軍の実力を把握しようとしている可能性に関して、十分に可能性があるとして考えることができた。

 なぜなら、相手の装備がそこまで良いものではなかったし、天成獣の宿っている武器を扱っている部隊がいなかったからである。それを見破るための情報収集をしっかりとおこなっていたからだ。

 そして、ハミルニアの左軍の幹部たちは、全員、この情報をしっかりと把握しているのだ。情報共有は重要なことである。

 そして、リース王国軍側の実力を把握し終えたミラング共和国軍は、次の戦いからそのデータを基にして、作戦を構築してくるし、そこからリース王国軍の弱点を攻めてくるかもしれないからだ。

 それも、リース王国軍の幹部が気づいていない弱点を突いてくる可能性は十分にあるのだから―…。

 「そうか、次。」

と、ハミルニアは言う。

 そして、今度はフォルクスの番になる。

 フォルクスは立ち上がり報告する。

 「報告させていただきます。リース王国騎士団の方は、天成獣の宿っている武器を扱っている者達によって、ミラング共和国軍の奇襲を迎えうち、かつ、撃退し、相手側に千近くの損害を与えることができました。」

と、報告する。

 そこにランシュとヒルバスの名前はない。

 二人の活躍がなければ、騎士団としてもこのような成果を無傷で挙げることはできなかったであろう。

 そして、フォルクスは、ハミルニアを完全に信じることができない以上、ランシュとヒルバスの活躍であったことを伏せるのだった。

 そうすることで、ハミルニア側に情報を渡さないという牽制をおこなうことができると判断した。

 だけど、それは無意味でしかなかった。

 それでも―…。

 「わかった。」

と、ハミルニアは、この場で素っ気なく答えるのだった。

 ハミルニアには、わかっている。

 リース王国騎士団が、ミラング共和国軍に対して、千近くの戦死者という損害を与えたのは、ランシュとヒルバスが関係していることを―…。

 それでも、左軍にいるのは、全員がハミルニアの味方であるとは限らない。

 ファルアールトの関係者も幹部にはいるのだから、迂闊にランシュとヒルバスの名前を挙げることはできない。

 活躍したことは報告すれば良いが、その詳しい内容まで知らせてあげる必要などない。

 適当にでっち上げても良いぐらいだ。

 彼らが裏の人間を使ったとしても、分からないようにすれば良いのだから―…。

 そして、何人かの報告が終わると、報告会が終わり、しばらくしてから、宴会のような状態になるのだった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(158)~最終章 滅亡戦争(13)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の投稿日は、2023年10月31日頃を予定しています。

では―…。

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