番外編 ミラング共和国滅亡物語(156)~最終章 滅亡戦争(11)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、エルゲルダがミラング共和国の総統となり、リース王国へと宣戦布告する。一方で、その情報を知ったリース王国では、ラーンドル一派たちによる話し合いがおこなわれ、逆に侵略し返そうということになるのだった。
その情報をリーンウルネは自ら潜入することで仕入れ、ハミルニアとフォルクスを自分の執務室に呼び寄せて、今回の戦争に参加させるのだった。その話し合いで、ランシュとヒルバスの参戦をも促すものであった。
リーンウルネは、一枚の紙をメタグニキアの秘書に渡し、その紙を見たメタグニキアは激怒しながらも、そのメリットのためにヒルバスを今回のミラング共和国とリース王国の戦争に参加させる命令を下すのであった。
その後、ランシュとヒルバスは一時的に騎士団に復帰という形で参戦するのだった。
リース王国は出陣し、ミラング共和国の境までやってきており、作戦会議がおこなわれる。
その作戦の会議の中で、左軍と右軍の大将がそれぞれ決まるのであった。左軍に騎士団が編入されるのだった。
一方で、ミラング共和国軍は、リース王国軍の実力を見るために、軍隊をリース王国と同様に三つに分けるのだった。
そして―…、開戦するのだった。
ヒルバスは、二丁拳銃を構えながら、撃つのを止める。
すでに、ミラング共和国軍はどこかへと逃げ去ってしまったようだ。
ここにいる理由はなくなっているわけではないが、これ以上、追いかける必要もない。
(後は、騎士団とこの軍の指揮官が上手くやってくれることでしょ。)
と、ヒルバスは心の中で思うのだった。
ヒルバスとしては、事前に調べた情報で、今回の左軍は大当たりであることを理解していた。
その指揮官がメルフェルドの知り合いであり、メルフェルドの指揮官としての能力があると見出した人物であるからだ。
そんな人物も、指揮能力に関しては、まだ分からないところがあるが、才のある人を見つけられるので、周囲にそのような才のある人を上手く活用していく可能性が高いと感じている。
だからこそ、ランシュ以上に、今回の戦争で左軍に関しては心配していない。
(むしろ―…、残りの二方向の軍が私たちの足を引っ張らないと良いですけど―…。)
と、ヒルバスは心の中で不安に思うのだった。
その不安の基になっているのは、リース王国軍の右軍と中央軍である。
右軍は、傭兵達が良ければ、リース王国軍の質が良ければ、大将がそこまでの人物であったとしても、何とかすることはできそうである。
一方で、中央軍は、指揮する大将がファルアールト元帥であり、軍人としての知能は高いかどうかというとそこまでという感じであるが、短気的な性格のため、変なところでミスしそうで怖いし、左軍と右軍に比べて、多くの戦死者を出しそうな予感がしてならない。
ヒルバスは、このようなことに頭をはたらかせながら、それと同時に、なるべく多くのミラング共和国軍の数を減らすことにする。無理強いはしない程度の範囲であるが―…。
ゆえに、退却するミラング共和国軍を追ったりはしていない。
そんななか、ヒルバスはある人物が戻ってくることに気づく。
その人物が戻ってくると―…。
「おつかれさま、ランシュ君。」
と、ヒルバスは労いの言葉を言う。
ランシュとしては、ヒルバスは追撃のために、この場にいるとは思えなかった。
だけど、現実にはそうなっているのだ。
それでも、ランシュは、なぜいるのかということは聞かないようにした。
そして、ランシュは辺り一面を見ながら、ミラング共和国軍の兵士のたくさんの遺体があるのに気づく。数として数えるには多いので、そのようなことはしないが、その数において、理解するのだった。
「ああ、ヒルバス、射撃の腕、大分上がっているな。それに、メルフェルドがいれば、指揮させる経験を積ませられたのにな。」
と、ランシュは言う。
ランシュは、ヒルバスの射撃の腕というものは、同じ騎士団に属していたことがあるし、同期みたいなものである以上、知っていてもおかしくはないし、良く知っている。
そこから見たヒルバスの射撃の腕が一回前のものよりも、かなり上手くなっており、精度も上がっていることから、実力がさらについたのだと確信することができた。
部下の成長は、微笑ましいことであり、家臣として、重臣として、これほどありがたい存在はない。
そして、今回のリース王国とミラング共和国の戦争では、軍隊の指揮官としての、騎士としての才能があると思われているメルフェルドは同行していない。メルフェルドはランシュの部下ではないが、それなりに親しい騎士である。
彼女は、女性であるということもあり、さらに指揮官としての才能があることがわかっているのか、リース王国軍の上層部からあまり良い目で見られてはいないということだ。
だからこそ、メルフェルドの才能が開花してしまうと危険と判断して、今回も従軍されることはなかった。
ランシュがこのメルフェルドを同行させたかったのは、ランシュの部下ではないが、指揮経験を積ませることができれば、ランシュ側としても目標であり、ミラング共和国の現総統であるエルゲルダに対して、復讐するのが容易になるという打算もある。
そして、優秀な者であれば、性別に関係なく、その適材において活用するということをしないリース王国の中央で覇権を握っているラーンドル一派に対して、馬鹿げているとランシュは思っている。
現に、心の中では―…。
(指揮の優秀さに男も女も関係ないと思う。重要なのは、策を練る力、相手の実力と行動を正確に予測する力、人間関係をしっかりと良好に築ける人であるか、どうかだ。戦や戦争は、味方の命がかかっている以上、それに大きな役目を果たす指揮官は優秀な人間でないといけない、優秀じゃなくてもその部下が優秀である必要があるのだ。 そのことを理解せずに戦争なんて言っている奴らは、味方の兵士を悲惨な目に合わせるし、さらに、自分の属している国を守ることなどできるはずもない。優秀という概念に男女なんてものはあまり関係ないし、軍事では一ミリも関係と思った方がいい。)
と、いう具合に―…。
現実に、指揮官としての能力が、性別によって差がでるかどうかは分からないが、ラーンドル一派が思っている理由とは異なる可能性の方が高いと考えられるし、女性の中でも有能な指揮官となりうる人は確実にいる。
才ある者を、その才に似合った場所に適用することも大事なことである。
ランシュは、そのことを十分に理解していた。
一方、ヒルバスは、ランシュが考え始めているなということを理解し、少しだけ話しかけるのを躊躇ったが、今は戦場にいることに変わりないので、すぐに、会話を再開した。
周囲を警戒しながら―…。
「ランシュ君、また少しだけ考えているのですか? まあ、メルフェルドさんは優秀な指揮官になるとは思いますが、経験を積ませてもらえないのであれば、優秀な指揮官にもなりようはありません。それでも、メルフェルドさんの性格を考えると、こういう場には出したくはありませんが―…。」
と、ヒルバスは言う。
ヒルバスとしては、メルフェルドが指揮官としての素質があることは知っていたが、性格はかなり優しく、時に残酷な選択をしないといけない場面がある戦争での経験は彼女にとって辛いことを経験させるのではないか、と、一種の不安を抱く。
精神が崩壊してしまったり、おかしくなってしまうのではないか。
まあ、それは、メルフェルドにとって、あり得ないことであろうが―…。
そのことにランシュとヒルバスが今のところ、気づくことはない。
そして、そのように思わせているのは、裏組織の抗争を鎮圧した時である。
その時、関係のない住民を巻き込まないようにしていたのだ。ランシュとヒルバスもそうであるが、メルフェルドは一般人を巻き込むことによる損害が出ることを恐れているのではないか。そのように感じられたからである。
だけど、今にして思えばランシュは、
(メルフェルドは、人として優しすぎるところがあるので、こういう人を殺す場にはあまり関わらせたくないのだ。まあ、人を殺せないというわけではないので、必要以上に過保護になるのもなぁ~。そう、メルフェルドは、暴動ではないが、裏組織の構想を鎮圧している際、関係のない住民を巻き込もうとした裏組織の人間を実際に殺している。その時も、完全はないが平然としていたし、気持ちの整理ができるとわかっていたので、戦場でも大丈夫という気持ちなるが、普段の人に優しく、敬うように接するのを知っているので、戦場へと連れていくべきではないという気持ちが強くなってしまうのだが―…。)
と、心の中で思ってしまうのだった。
メルフェルドが良い人すぎるし、戦争という残虐な行為がおこなわれるなかで、良い人を巻き込んではいけないという気持ちがランシュの中にも出ているし、ヒルバスの中にもある。
そういう気持ちのせいで、戦場に連れていくべきではないことに賛成してしまうのだった。
「そうだな。ここでは、リース王国の中央で権力を握っている奴らと悔しいけど、同じになってしまうか。」
と、ランシュは言う。
結局、ラーンドル一派と同じであることに悔しいけど、認めざるをえない。
そういうことだ。
その後、二人は、ここら辺で、動くことはせずに、周囲に敵が来た場合に、いつでも動けるようにしておくのであった。
右軍。
その中でも最前線。
一人の人間が、自らの武器を用いながら、長距離へと攻撃しながら、もう一種類の別の武器である剣を用いながら、相手を斬りつけていっていた。
長距離攻撃できる武器は、水晶のような感じであり、中央に玉みたいなものがあり、それを円にするようにして円柱の形とその中央から反対の先端が尖っているのが五つあり、砲撃で攻撃することができる。
そう、一人の人間とはアンバイドのことである。
アンバイドは、ミラング共和国軍に奇襲をされながらも、自らの実力で、このミラング共和国の軍勢を葬りながら、相手を動揺させることに成功し、それを利用して、指揮官のような真似事をしているのだ。
長距離攻撃によって、ミラング共和国軍は後ろにいたとしても、攻撃を受けるのだから、逃げることも難しいし、対応することはほぼ不可能だ。密集してしまっているがために―…。
それを理解しているからこそ、アンバイドはそこを狙っているし、そこに指揮官がいるのではないかという勘をはたらかせて―…。
(このままいけば、勝利することができるが、最初の戦いで多くの数の兵士と傭兵を失うとは―…。ここの指揮官は馬鹿なのか。いや、奇襲されることを予測させなかったミラング共和国軍が優れているのか。まあ、それは後で確かめれば良い。今、徹底的な倒すまでだ!!!)
と、アンバイドは心の中で思う。
右軍は、この時点で、全体の二割近い兵士および傭兵の死者を出しており、その原因は奇襲によるものであった。その奇襲で混乱してしまい、良いようにやられていったのだが、ここにはアンバイドがおり、アンバイドの力の前に、ミラング共和国軍の兵士は動揺し、その一瞬を利用して、長距離攻撃と剣での攻撃でミラング共和国軍の兵士を葬っていったのだ。
そのことによる、ミラング共和国軍の右軍は、何とか形勢を立て直す時間を稼ぐことができ、さらに、右軍の大将がアンバイドの邪魔にならないようにしながら、協力するように、という命令を出したことで、上手く機能したのである。
そういう意味では、右軍の大将であるフォルルーク=インゼディアは、機を利用することには長けているというわけだ。
それでも、軍人よりも別の職業の方が力を発揮できそうであるが―…。
そんななかで、アンバイドは、
「相手は動揺してる。討ち取れ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
と、叫ぶ。
指揮官の真似事ではあるが、過去にそのようなことをしたことがあるし、現場の指揮官クラスの軍人から教えてもらったことがある。
必要だとは思わなかったが、ここで役に立つとは思わなかった。
ゆえに、アンバイドは今、自分が使える方法を使って、兎に角、勝利を手に入れようとするのだった。
そして、アンバイドの声を聴いた者たちは、すぐに、ミラング共和国軍へと向かって行き、混乱しているミラング共和国軍兵士を討ち取っていく。
逆のパターンもあるが、割合にすれば、明らかにミラング共和国軍の方が討ち取られている状況だ。
そして、それが夕方近くまで続くのであった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(157)~最終章 滅亡戦争(12)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
では―…。