番外編 ミラング共和国滅亡物語(155)~最終章 滅亡戦争(10)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、エルゲルダがミラング共和国の総統となり、リース王国へと宣戦布告する。一方で、その情報を知ったリース王国では、ラーンドル一派たちによる話し合いがおこなわれ、逆に侵略し返そうということになるのだった。
その情報をリーンウルネは自ら潜入することで仕入れ、ハミルニアとフォルクスを自分の執務室に呼び寄せて、今回の戦争に参加させるのだった。その話し合いで、ランシュとヒルバスの参戦をも促すものであった。
リーンウルネは、一枚の紙をメタグニキアの秘書に渡し、その紙を見たメタグニキアは激怒しながらも、そのメリットのためにヒルバスを今回のミラング共和国とリース王国の戦争に参加させる命令を下すのであった。
その後、ランシュとヒルバスは一時的に騎士団に復帰という形で参戦するのだった。
リース王国は出陣し、ミラング共和国の境までやってきており、作戦会議がおこなわれる。
その作戦の会議の中で、左軍と右軍の大将がそれぞれ決まるのであった。左軍に騎士団が編入されるのだった。
一方で、ミラング共和国軍は、リース王国軍の実力を見るために、軍隊をリース王国と同様に三つに分けるのだった。
そして―…、開戦するのだった。
リース王国軍の左軍。
そこでは、すでにミラング共和国軍が攻めてくるのが予測されているのが分かっていたかのように、待ち構えていた。
そして、ミラング共和国軍を殲滅しながらも、積極的に攻めていくことはしなかった。
まずは、実力把握であり、必要以上にミラング共和国軍を追い詰める気もないし、ミラング共和国軍が本気になって、何も準備せずに戦うわけにはいかないと判断しているからだ。
慎重さも重要なのである。
そして、この戦いの中で連携が取れていることを確認することができている。
左軍の大将のいる場所では―…。
「順調に対処できているよりで、何より。」
と、ハミルニアは少しだけ気持ちを安堵させる。
だけど、完全に戦いが終わったわけではない以上、油断することは一切できない。
どこで、戦況が変わるのか分からないのだから―…。
「はい!! 連携も上手くとれており、こちらが優勢です。相手側の士気があるけど―…。」
と、報告する者は濁すように言う。
その言葉にハミルニアは、疑問に思いながら尋ねる。
「どういうことだ。」
と。
「それは―…。」
と、報告する者は付け加えて言うのだった。
その内容は―…。
左軍の中でもリース王国の騎士団が配置されている場所。
そこから、少し離れた場所では、ランシュとヒルバスがいた。
そして、ヒルバスの方は、自らの武器である二丁拳銃を持っており、いつでも戦闘を開始することができる。
一方で、ランシュは、まだ、天成獣の力を借りていない状態であった。
ランシュの天成獣の宿っている武器は、かつて、リース王国の創設者となる人物が使ったとされる物で、その中に宿っている天成獣はトビマルという。
その力をバレないようにするために、空で飛んで戦うという以外の能力を有していないと思わせないといけないのだ。敵だけでなく、味方においてさえも―…。
それでも、部下であるヒルバスは知っているのであるが―…。
ランシュの天成獣の属性は、複数属性であり、かなり強さを誇っていることを―…。
そして、ヒルバスとランシュは、左軍の中でもリース王国軍から少し離れているのと同時に、歩いていた。
二人が強い実力を有していることは、リース王国の騎士団なら誰でも知っている。
だからこそ、ある程度の別行動をさせた方が上手くいくと、フォルクスは判断しているのだ。
そして、奇襲を狙ったものでもある。
相手が攻めてくるなら、逆のことに、今は弱い状況なのではないかということを―…。
まあ、これは、ハミルニアの意向ではなく、フォルクス自身の考えでもあるし、ランシュとヒルバスは奇襲の方が有効に働いてくれるという打算もあった。
さらに、この二人がミラング共和国軍の中で殺されてしまう可能性は低いと考えられたこそ、このような大胆なことができるのだ。
そして―…。
「俺は空から攻撃する。ヒルバスは―…。」
と、ランシュは言う。
ランシュは、空中から奇襲して、相手をランシュの方へと釘付けにする。
勿論、矢が届かない高度まで飛ぶつもりである。
そこからでも十分にミラング共和国軍に大打撃を与えることができるほどの攻撃ができるのだから―…。
そして、空中に飛んでいる以上、ヒルバスとは別行動になる。
「わかっていますよ。楽しみにしていてください。」
と、ヒルバスは言う。
そして、ランシュは、自らの土でできた羽を創り出し、空へと飛んでいった。
(空を飛べるなんて―…、天成獣とは不思議なものです。)
と、ヒルバスは心の中で思う。
そんななか、ヒルバスも近づいてきているミラング共和国軍に対処するのだった。
二丁拳銃を構えて―…。
「あそこにリース王国の騎士団の兵士がいるぞ――――――――――!!!」
と、先頭にいる歩兵が告げると、周囲のミラング共和国軍の兵士が目の色を変える。
それは、まるで、自分達に殺されるためにのこのこと一人になっているからである。
いくらリース王国の騎士団の者であったとしても、これだけの数を一人で相手にすることはできない。
そう、思うこと自体は悪いことではないし、普段であれば間違いではない。
だが、なぜ、ここに一人でいるのに、逃げようとしないのか。
そのことに目を向けるべきであろう。
目を向けることさえ、できれば、早めに逃げることさえできれば、助かった可能性はあるだろう。
だけど、そのようなことを考えることはしない。
一人でいるという情報がまるで、汚染する有害物質のように、彼らを蝕んでいく。そのことに気づくことなく―…。
ヒルバスはすでに二丁拳銃の片方を構えており、そこから球状のものが出現しており、いつ、発射されてもおかしくはない状況だ。
それに気づくのであるが、一人しかないことが決定打となり、より早く向かっていく。
一方で、少しだけ離れた場所から、弓兵がヒルバスが何かをしようとしているので、その前に始末しようとして弓をつがえ、矢をヒルバスに向けて、攻撃の準備をする。
そして、ヒルバスは、
「じゃ、先手はこっちから打たせてもらいます。」
と、言う。
言い終えると同時に、銃口の目の前に展開されている球状から直線上に、光線を放つ。
ドンッ!!!
その音をさせながら―…。
そして、その銃撃は、先頭の兵士に向けられている者であり、その兵士で歩兵のものを貫通していく。
その時、その歩兵の上半身は消し炭と化し、その後ろの者も同様の結果となり、前の攻撃を命令している指揮官にまで達しようとする。
(何だ。これは!!!)
と、その指揮官は考える暇もなく、ヒルバスの攻撃を受け、命を落としてしまうのだった。
そして、左右にいた者たちは、一瞬、動きを止めてしまう。
その威力に一瞬で、ビビってしまったのだ。
ミラング共和国軍の兵士の一人は、
(一体、何が起こったんだ。あれは、武器なのか!!! あの武器から向けられて、その放たれた場所の真っ直ぐにいると、今のように―……、なるのか。ヒィ!!!)
と、心の中で思う。
この兵士だけでなく、多くの兵士が今、ヒルバスが放った攻撃の結果を目の当たりにして、心の中で恐怖を感じてしまう。
向けられ、放たれ、直線上にいたら、最後、自分の命がこの場で終わってしまうのだから―…。
恐怖でしかない。
そして、その一瞬の動きを止めるという行動、もしくは選択は決して良い選択とは言えず、むしろ、最悪の選択肢だった。
そう、すでに、空中にもう一人のリース王国の騎士団の騎士がいるのだから―…。
ランシュが―…。
ランシュは、土の羽根を羽ばたかせながら、風属性の攻撃をミラング共和国軍の兵士達のいる場所に放たれる。
その風は、かまいたちと呼んだ方が正しい。
その風の攻撃を受けた者達は、運が良ければ、軽傷で済むかもしれないが、場合によって重症、即死している者さえ出ているのだ。
ランシュとしては、ヒルバスの攻撃で相手側の動揺を誘ったのだ。
その理由は、銃という武器はかなり珍しい物であり、それがどういう物であるかを知っている者はかなり少ないし、十数年前のことだから、ほとんど忘れられていてもおかしくはないのだ。
そして、現に、ミラング共和国軍の兵士の動揺が発生したのだ。
ゆえに、作戦が成功して、ヒルバスの方に視線を向けてしまった以上、ランシュのいる空中へと視線を向ける者はいない。
だからこそ、その隙を突いて、羽によるかまいたちの攻撃を発したのだ。
これで、この場にいるミラング共和国軍は、恐慌状態になり、真面に動くことすらできなくなる。
ヒルバスによって指揮官が殺されてしまっているのだから、尚更だ。
そして、ミラング共和国軍は―…。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。」
と、一人の兵士が混乱し、動揺すると、それに続き―…。
「がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。」
と、別の兵士が叫び出し、この場にいるミラング共和国軍は逃げようとするのだった。
それを、ヒルバスは、二丁拳銃の中で銃弾を形成し、銃撃していって、ミラング共和国軍の兵士の腹部、胸部、頭部を狙って撃ちながら、始末していく。
ここまでくると作業でしかない。
一方で、ランシュは、ミラング共和国軍の兵士が倒れているのかを空中から確認することができなかった。理由は、高度がそれなりに高いことによる。
だからこそ、のんびりと空中にいながら、思考する。
(まあ、最初の戦いだからこそ奇襲という戦法を使って、味方の戦死者の数を少なくしておく必要がある。数は重要な面を持っている。だけど、ここで勘違いして欲しくないのは、一人や二人とかそういう差ではなく、大きな意味での数の差のことであり、かつ、練度、技術力などの諸々の要素を含めて考える必要があるということを認識したうえで言っている。ただ数が多ければいいというわけでもない。それ以外の部分が重要な役割を占めているのも事実だ。それを総合的に検討して初めて、判断を下すことが可能だ。その具体性を提示したうえでの比較をなさない上で、総合的に判断するとか言う奴らがいるのなら、そいつらの言葉は信憑性は皆無と言った方が良い。俺は、軍事について勉強していくなかで、特に軍史においては、運の要素、相手の行動による要素も存在するが、負けるのは大抵は周囲の言う冷静な言葉を無視して、自分の見たいものしか見ていなくて、気合いで何とかなるとか、神が我々についているのだから負けないとか、そんなことを平然と言う上官やトップのいる場所だ。そんなで勝てるなら、誰も苦労はしない、参謀も必要はないだろ。だから、俺は、上に立つことは目指していないが、少しでも自分の戦いの中で生き残る必要があるために軍事や戦争についても勉強した。一番良い作戦は、戦わずして勝つ。)
と、数分の間、心の中で思うのだった。
ランシュとしては、このような奇襲戦法はかなり有効だと思っている。
ヒルバスの飛び道具は知られていないということと、ランシュのような空中で戦闘ができる者と戦った経験などこの地域で存在するかのどうかも不思議なぐらいないということだ。
ならば、奇襲して、ミラング共和国軍を動揺させてしまえば、それが相手側の印象に深く刻み込まれるということだ。
それに、最初の戦いで、味方の犠牲を減らすことができれば、それだけ、後々の戦いが楽になることを知っているからだ。練度ある者が生き残ることが重要なのだから―…。
そして、ランシュは、勉強も怠ってはいないので、軍史についてもそれなりの知識を有していたりする。そこから学んだのだ。戦わずして勝つというのが、一番の作戦であることを―…。
ランシュは、自らの役割であるミラング共和国軍が何らかの罠を仕掛けていないのか、空から見ておくことだ。それは、空中から俯瞰するからこそ、分かる場合もあるのだ。
数分間、ランシュは、それを探しながら、罠がないと分かり、ヒルバスのいる方へ戻っていくのだった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(156)~最終章 滅亡戦争(11)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
では―…。