番外編 ミラング共和国滅亡物語(154)~最終章 滅亡戦争(9)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、エルゲルダがミラング共和国の総統となり、リース王国へと宣戦布告する。一方で、その情報を知ったリース王国では、ラーンドル一派たちによる話し合いがおこなわれ、逆に侵略し返そうということになるのだった。
その情報をリーンウルネは自ら潜入することで仕入れ、ハミルニアとフォルクスを自分の執務室に呼び寄せて、今回の戦争に参加させるのだった。その話し合いで、ランシュとヒルバスの参戦をも促すものであった。
リーンウルネは、一枚の紙をメタグニキアの秘書に渡し、その紙を見たメタグニキアは激怒しながらも、そのメリットのためにヒルバスを今回のミラング共和国とリース王国の戦争に参加させる命令を下すのであった。
その後、ランシュとヒルバスは一時的に騎士団に復帰という形で参戦するのだった。
リース王国は出陣し、ミラング共和国の境までやってきており、作戦会議がおこなわれる。
その作戦の会議の中で、左軍と右軍の大将がそれぞれ決まるのであった。左軍に騎士団が編入されるのだった。
一方で、ミラング共和国軍は、リース王国軍の実力を見るために、軍隊をリース王国と同様に三つに分けるのだった。
そして―…。
ついに、今日(2023年10月19日)で『水晶』500回目の投稿となります。
頑張ったよ!!!
ありがとうございます。
二日後。
リース王国軍側。
朝早めの時間。
そこに眺めている人物がいる。
何人もの護衛を引き連れて―…。
「あ~、向こうも軍を三分割しているんだよねぇ~。」
と、ハミルニアが言う。
ハミルニアは、今回のリース王国とミラング共和国との戦争におけるリース王国側の左軍の大将である。
左軍のトップ指揮官と言った方が正しい。
「どう思う。リグレー。」
と、ハミルニアは自身の副官に問う。
まるで、何かしらの答えを期待するかのように―…。
「私の考えを言わせてもらいますと、今回、我々の側の作戦はミラング共和国に漏れている可能性が高いと思います。ミラング共和国には、シエルマスという組織があり、その組織は謀略および諜報を得意とし、ここらでは一番のその分野における実力を有しているとか。そうなりますと、リース王国軍の作戦は簡単に漏れていてもおかしくない。ならば、考えられるのは、こちらの動向の様子見ではなく、実力把握が中心だと思います。ミラング共和国軍に潜り込んでいるこちら側のスパイによりますと、今回前線に立っているミラング共和国軍の者は、全然練度というものがございません。要は、そういうことです。」
と、リグレーは言う。
リグレーの容姿は、美青年というわけではないが、ハミルニアとは対照的に威圧感を持った厳ついものであり、三白眼であることもそれに付け加えており、不機嫌だと周囲に思わせるには十分だ。
だからこそ、リース王国軍の中ではあまり良い扱いを受けていなかったが、ハミルニアは武力と同時に、交渉で優位に立たせることができることが分かると判断し、側用人という感じの気持ちで近くに置いたのだが、なかなかに優秀だったので、副官にしたまでだ。
人の能力は、見た目からでは分からないことがあるのだということを、ハミルニアはそこで学んだ。
人がより良い成果を手に入れるためには、新たな可能性を提示する出会いというものや、それに気づき、学んでいくことが重要だということは言うまでもない。
だけど、それをおこなうのはかなり難しいことである以上、なかなかにできるものではないということだ。
リグレーはその不機嫌だと思われる雰囲気から、面倒くさいと周囲の思わせるような表情で真面目に言ったのだ。
そして、リグレーは、真面目に言いながらも、自分の言っていることぐらいハミルニアがとっくに気づいていることを理解しているからこそ、最後の結論の方は敢えて言わなかったのだ。
ハミルニアを試すかのようにして―…。
だけど、リグレーはハミルニアの答えは分かっている。
予測できる。
「リグレー、結論を言ってくれよぉ~。自身の―…。だけど、私に言わせようとしていることは分かっているんだ。結論から言わせてもらうと、我々の軍隊の練度を把握した上で、本軍で反撃を加えようとしているということだ。天成獣の宿っている武器を扱う部隊が最初の戦いに登場することはない。ほぼ確実に……。さて、こちらも本気は出さないが、予想外というものを入れておかないと、舐められるから、本気は出してもらうけど、全軍を出さずという感じにしておこう。うちの中央軍の方が、馬鹿に本気を出して、戦果を挙げようとするから、彼らに任せることにするよ。それに、こちらの軍の実力も把握しておかないといけないからねぇ~。」
と、ハミルニアは言う。
ハミルニアとしては、左軍が本気を出し過ぎるのは相手に実力の底が知られるので、良いとはいえない。
だけど、同時に、左軍が弱いと相手側に思わせるわけにはいかない。
それに、左軍の実力を把握しておかないといけない。
そうしないと、今後の作戦をどうするかにも影響する。
中央軍のファルアールトは、自分勝手にミラング共和国軍に攻めていくか、攻められるかしながら、大きな犠牲を出すことになるだろう。そのような予感がハミルニアにはした。
そして、実際の戦争である以上、実力のなかには幸運の要素も含まれるようになり、相手の弱点を偶然であったとしても、突く必要がある。そうすることで、自らの勝利の可能性を高めることができる。
ハミルニアの方は、ミラング共和国軍を見ながら、より注意深く観察する。
「それがハミルニア様の意見だということが分かりました。ということで、そのような方針で進めさせていただきます。」
と、リグレーが言うと、ハミルニアの方針に沿って、作戦を実行していくのである。
リグレーとしては、上官の意向に沿うことは当たり前であるが、細かい調整などで一部変更されることは仕方ないと認識している。
上官の真意を大事にながらも、状況によっては別の可能性に変更することも重要であることを認識している。
「わかった。」
と、ハミルニアは言う。
(さて、ミラング共和国軍の実力はほとんど把握できないが、シエルマスがどのようなことをしてくるか。それに対処できる兵士がいるのか、どうかだねぇ~。)
と、ハミルニアは心の中で思う。
ハミルニアにとって、ミラング共和国との戦争で一番気になるのは、シエルマスである。シエルマスが何かを仕掛けてくる可能性は間違いなくある。だけど、どのようなことをしてくるのか分からない以上、対処のしようもない。情報さえあれば良いが、意図的に流された偽情報の可能性も考えられる以上、先手で動くことはできない。どうしても後手に回らざるを得ない。
そして、シエルマスに対応できる者が左軍の中にいるのか分からない状況である。
いればラッキーという感じでしかない。
ハミルニアは、悩みを抱えながらも、立派な指揮官のように振舞うしかない。
弱さを晒すことが時に、弱点になる場合があるのだから―…。
その翌日。
ミラング共和国軍。
その中でもリース王国と睨み合っている場所では、兵士たちが武装を完了させていた。
装備からは粗末なものでしかないが、それでも、今回の戦いで手柄を挙げることができれば、それなりの報酬が手に入るし、待遇も良くなるという約束がなされている。
だからこそ、兵士の士気というものは高いものである。
実力が伴っているわけのない今回徴兵された者達なのだ。
戦闘の訓練はほとんど受けておらず、実力はほとんどないと言っても良い。
それを補う士気があるから、どうなるか分からないが―…。
そして、その中にいる指揮官は、まだ、指揮官としての経験がない者であるが、こういう指揮に関する本は読んでいる。
後は実戦のみ。
そして―…。
「攻めよ!!! リース王国を攻めよ!!! すでに宣戦布告済みだ!!!」
と、この指揮官が言う。
その声はこの部隊の兵士達に伝わるほどだ。
そして、兵士たちは一気に戦闘態勢になり、リース王国軍の中の中央軍へと攻めるのであった。
『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』
その叫び声は、地響きになってもおかしくはない。
それほどに大きく、強いものであり、相手を威圧するものである。
リース王国の中央軍の方は―…。
「何だ!!!」
「おい、あっちを見ろ!!!」
と、兵士の一声で、リース王国軍の中央軍の先頭にいる兵士達は見る。
そこには、ミラング共和国軍がいた。
それも、攻めているかのように―…。
いや、本当に攻めているのだ!!!
「ありゃぁ~、ミラング共和国軍だ!!!」
その言葉に一瞬で、この場にいるリース王国軍は一瞬で怯んでしまうのだ。
その一瞬に怯みが仇となる。
「俺らの恨みを知れ――――――――――――――――――――!!!」
と、ミラング共和国軍の兵士の一人が言いながら、リース王国軍中央軍の兵士の一人を真っ二つにするかのように剣で斬る。
その後、リース王国の中央軍がミラング共和国軍の入り乱れた乱戦となるが、一瞬の混乱によって、最初の攻撃で数百のリース王国軍兵士が命を落とすことになる。
一方、右軍と左軍もミラング共和国軍との戦闘となっていた。
そのなかの右軍。
右軍も混乱の中にいた。
その大将フォルルーク=インゼディアは、側近からの報告に混乱の極みに達していた。
「え―――――――――――――――――――――、もう!!!」
と、驚きの言葉を発しながらも、頭の中でどうしようかと考える。
だけど、冷静になることができない。
そのせいで―…。
(どうしよう、どうしよう。兎に角、態勢を建て直さねば!!!)
と、心の中で思いながら、具体的な報告も頭の中に入ることなく―…。
「兎に角、態勢を建て直そう!!!」
と、フォルルークは言う。
丸々とした体形でありながらも、兎に角、自分達ができることをどうにかしようと必死に考える。ラーンドル一派からは少しだけ冷遇されているが、決して、あまりにも扱いが悪いというわけではない。
適度に、ラーンドル一派には媚びているが、それでも、彼らのことが好きになれるかというとそうではない。
そして、慌てなければ、愚将とは違う顔を見せるが、そのような場面になればその顔を見せるしかない。
だけど、フォルルークは幸運であった。
「フォルルーク大将。ミラング共和国軍が攻めてきましたが、何とか、態勢を建て直すことができました。」
と、今、新たな報告をしに来た部下が息をきらしながら、言う。
その言葉は、まさに幸運の知らせだ。
今、自分が命令したことがすぐに、実行されたのだから―…。
それでも、フォルルークはしっかりと理解している。
自分の命令が実行されたからではなく、自分のやろうとしたことに早く気づき、実行してくれた者がいることだ。
「それは、一体誰だ。」
と、ファルルークは尋ねる。
場合によって、その人材は使えるのだから―…。
今回のミラング共和国との戦争で、役に立つリース王国側の存在かもしれないのだ。
そんな人間の名を知らない方が、一軍のトップとして恥であり、かつ、無視してはいけないのだから―…。
自分達が勝利していくためには―…。
そして、フォルルークの質問に、さっき報告してきた者が息を切らし終えていないが、答える。
今、大事な状況なのだから―…。
「アンバイドです。」
と。
その言葉を聞いたフォルルークは驚くしかなかった。
そりゃそうだろ。
(アンバイド。確か聞いたことがある。この地域では有名な傭兵であり、天成獣の宿っている武器を扱っているという。そいつの実力は、この地域でナンバーワンと言ってもおかしくはない。奴一人、戦局が変わると言われるほどだ。そんな者が我が軍の中の傭兵の一人として混じっているとは―…。この幸運を悪いように利用してはいけない。)
と、フォルルークは心の中で言う。
フォルルークは、決して悪人ではない。
人を大切にすることができる上司であるし、部下をぞんざいな扱いをすることはない。
部下の働きによって、自分達は成果を挙げることができるのだと思っており、感謝さえしているのだ。
言葉にすることもあるが、なかなかそういう感謝の言葉が言えない自分に対して、嫌悪感を感じたりすることもあるが―…。
そして、フォルルークは、アンバイドが右軍の態勢を建て直してくれたのだから、感謝こそするが、馬鹿にしたり侮辱したりすることはない。しっかりとした報酬を渡したいという気持ちもあるし、アンバイドの働きには期待する。
そして、アンバイドが何者であるかをしっかりと噂や、情報を収集していたりする。どういう傭兵がおり、活躍しているのかが重要だからだ。まあ、こういう有名な個人傭兵は、戦争の場合、偽名を使うことも十分にあるので、分からなかったりすることもある。
それでも、フォルルークは幸運だ。
アンバイドが自軍に中にいるのだから―…。
だからこそ―…。
「わかった。だからこそ、命じる。アンバイドに協力すること。そして、アンバイドの邪魔をしないこと。全員で勝利を取るぞ!!!」
と、フォルルークは言う。
そして、この場にいる全員が―…。
『はい!!!』
と、返事をする。
その返事は、強いものであり、士気を上昇してもおかしくない。
そして、彼らはそれぞれにフォルルークの指令を伝えに行くのだった。
その後、右軍は、何とかアンバイドの力で態勢を建て直したし、フォルルークの命令により、アンバイドに協力したことで、ミラング共和国軍を何とか犠牲を全軍の二割ほどを出すが、撤退させることができるのであった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(155)~最終章 滅亡戦争(10)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
『水晶』も500回目の投稿となるとは―…。
『ウィザーズ コンダクター』も今年で500回を超えたので、どんだけ投稿頻度が高いのかと思ってしまいます。
『ウィザーズ コンダクター』は、第8部の途中で、『水晶』は番外編の途中で、きりは余り良くないですが、ここまで投稿することができたのは、読んでくださった方々のおかげだと思います。
この二つの作品は、それぞれ1000回を超えそうな感じです。まあ、実際、どうなるかは分かりませんが―…。
『水晶』は、第一編だけで、ここまでの文章量になるとは、投稿を開始した当時は一切、思っていませんでした。『水晶』全体なら、十分にあると思っていたのですが―…。いやはや、第一編だけで―…。
今後の目標は、まず、番外編を完成させ、サンバリアへと向かう瑠璃たちの行動を執筆していくことになるでしょう。当初のネームからの変更もある可能性が高いと思いますし、サンバリアはネームで書けなかった面をかなり掘り下げていくと思います。第6編との関係もにおわせられたら、られたで―…。
ということで、今後とも『水晶』を読んでいただけると幸いです。
PV数が10万超えることを祈りながら―…。
では―…。