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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
499/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(153)~最終章 滅亡戦争(8)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、エルゲルダがミラング共和国の総統となり、リース王国へと宣戦布告する。一方で、その情報を知ったリース王国では、ラーンドル一派たちによる話し合いがおこなわれ、逆に侵略し返そうということになるのだった。

その情報をリーンウルネは自ら潜入することで仕入れ、ハミルニアとフォルクスを自分の執務室に呼び寄せて、今回の戦争に参加させるのだった。その話し合いで、ランシュとヒルバスの参戦をも促すものであった。

リーンウルネは、一枚の紙をメタグニキアの秘書に渡し、その紙を見たメタグニキアは激怒しながらも、そのメリットのためにヒルバスを今回のミラング共和国とリース王国の戦争に参加させる命令を下すのであった。

その後、ランシュとヒルバスは一時的に騎士団に復帰という形で参戦するのだった。


リース王国は出陣し、ミラング共和国の境までやってきており、作戦会議がおこなわれる。

その作戦の会議の中で、左軍と右軍の大将がそれぞれ決まるのであった。左軍に騎士団が編入されるのだった。

 会議の後で、伝えられたことを再度、二人に伝令の者が伝えてくる。

 「今回の作戦は、リース王国の兵士を三分割して、それぞれをミラング共和国軍にあてることにする予定です。」

と。

 理由は、フォルクスが久々の一時的な騎士団の復帰だから、騎士団の指揮系統を忘れているのかもしくはランシュとヒルバスを教えた直接の先輩のように話を聞いていない可能性があると考慮して、フォルクスが二人に確実に今回のリース王国軍の作戦が伝わるようにするために、伝令の者を送ったのだ。

 その作戦を聞いたランシュは、

 (単純であり、難しいことを言っているわけではない。だけど、作戦にしては杜撰すぎるものだし、これを考えた奴は馬鹿だと思う。作戦通りになんて上手くことはほとんどないのが、世の常とか言えばいいのだろう。人の考えるところに完璧というものがないために、欠陥が生じるし、それを補うこともまた可能なのだ。)

と、心の中で思う。

 ランシュとしては、今回の場合、単純な方法で良いかもしれないが、ミラング共和国側が何かを仕掛けてくるかもしれない以上、その情報を込みにした上で考えないといけないはずなのに、作戦を聞く限り、自分達の責任で行動しろという感じなのだ。

 無責任としか思えないのだが―…。

 まあ、自由に動けるという面では、ランシュとしてはラッキーかもしれない。

 そして、伝令の兵士は去って行く。

 その様子を見ながら、ヒルバスがランシュのところで言い始める。

 「三分割ですか。まあ、妥当な作戦ではありますが―…。その分割方法は、やっぱり―…。」

と、ヒルバスは不安そうな表情になる。

 だけど、ヒルバスにとってのここでの不安は、自分や自分に関係する者たちが敗北するということではなく、その三分割の軍団の編成内容が予想できてしまうものであるからだ。

 それも私欲塗れな感じの―…。

 「だな。均等というよりか、リース王国の騎士団の中で、リース王国の中央で権力を握っている奴らの息のかかった者たちと一般の将校の中でリース王国の中央で権力を握っている奴らの子飼いの軍とそれ以外という感じになりそうだな。そして、それ以外というのに、ミラング共和国軍の強いところをあて、苦戦している間に、リース王国の中央で権力を握っている奴らの言いなりになっている軍隊で勝利を手に入れようというわけか。本当に、こんな場でも私欲まみれかよ。」

と、ランシュは言いながら、呆れるのだった。

 まあ、そのような感じなのであるが、少しだけ違っている。

 ラーンドル一派にとって、今回の軍隊の仕分けは同時に、自分達にとって都合が悪い存在に危険だと思われる場所での戦いをさせ、より多く消耗させ、かつ、自分達は簡単なところで大戦果を挙げ、自分達の手柄を多く手に入れ、ラーンドル一派の基盤を強くさせようとしている。

 戦果は分かりやすいのだから―…。

 だけど、同時に、ラーンドル一派の仕分けに、ハミルニアは平然と賛成することができた。

 理由は、自分達の戦いは厳しいものになるかもしれないが、自分達の思い通りに好き勝手に戦うことができるし、ラーンドル一派がいないことにより、変なことをされる可能性が激減するというわけだ。

 後は、ハミルニアに戦を指揮する実力があり、かつ、運があるかということだ。

 そうであるからこそ、ハミルニアはそのことに対する重みを感じてしまっているのだ。

 そして、ランシュは、このような軍分けである以上、不満を漏らしながら、リース王国の未来が暗いなと感じさせてしまうのだ。

 そして、口にしてしまうのだった。

 「ランシュ君、そういうのは、あまり表立って言うことではないですが、気持ちとしてはわかりますし、賛成します。」

と、ヒルバスは注意を込めるように言う。

 さっきのランシュの発言は、周囲に聞かれるとあまり良い印象を与えるようなことにならないし、ランシュは王族護衛である以上、王族護衛の者がラーンドル一派の者達に批判をしていたら、どこかで聞いているラーンドル一派がランシュのことを敵対視してくるかもしれない。

 ランシュがレグニエドへの復讐を果たすために、変に目立つのは危険なことでしかないのだから―…。目立たないからこそ、復讐ができるという機会もあるのだから―…。

 「そうだな。まあ、王族さえも鳥籠に閉じ込めるような奴らだし―…。これ以上は言う気もない。俺たちにできることはただ一つ。どんな馬鹿で、理不尽な命令も達成するしかない。僕が考えた最高の軍事作戦とやらに―…。」

と、ランシュは言う。

 皮肉はちゃんと込めながら―…。

 ランシュとしては、自らの目的がエルゲルダおよびレグニエドへの復讐であるため、どんな理不尽な馬鹿な上司による命令だとしても、達成するしかないと考えるし、それだけのことができる自信はある。

 ランシュは、この数年で天成獣の宿っている武器の扱い方もかなりのものにすることができるようになったのだから―…。

 そして、表情に悪態をついたとは思えるような表情を出さず―…。

 声の方もヒルバスにしか聞こえない程度の声で言っている。

 それぐらいはちゃんと注意していたりする。

 「そうですね。」

と、ヒルバスは返事をする。

 (周囲に私たちのことを偵察している者はいないようですねぇ~。)

と、心の中で思うのだった。

 ヒルバスは、周囲への警戒を怠っていなかった。

 メタグニキアの私設部隊に配属されて生き残っているからこそ、周囲への警戒がどれだけ必要かが分かっている。隠密行動をおこなう以上、気配か感じたり、消したりすることがどれだけ重要かを実践の中で学ばされた。

 だからこそ、癖というものになってしまっているけど、役立つので続けているという感じだし、必要とされている。

 その後、二日の間、ランシュとヒルバスを含め、リース王国軍の兵士はゆっくりと休むことができた。

 まあ、警戒を怠らなかったわけではないが―…。


 一方、ミラング共和国軍の本陣。

 そこでは、何人もの部隊、師団のトップの者たちがいる。

 彼らは、それだけ軍の中でも地位が高い者である。

 そしてのトップには、今回はファルケンシュタイロではなく、エルゲルダがいる。

 実際の作戦は、ファルケンシュタイロがおこなう者であり、そこにはラウナンも参加していた。

 「では、リース王国にどう対応するんだ。」

と、エルゲルダが言い始める。

 エルゲルダとしては、細かい作戦なんて考える気もないし、味方が挙げた手柄を自分が指揮した手柄にする気だ。その方が、確実に手柄が手に入ると思っているし、そのような面倒くさいことをしたいとは思っていない。

 この数年の間で、エルゲルダは女遊びの快楽の日々がどれだけ凄いのかを憶えてしまったのだ。それが当たり前になるように―…。そして、複数の女性との関係の素晴らしさを知ってしまったのだ。今まで、無理矢理言うことを聞かせていたからこそ、征服感というものしか感じられなかったが、イルカルの差し出す女はまるで従順であり、エルゲルダが気持ち良いと思う場所を理解していたのだ。

 心も体も、満たされてしまっているのだ。

 それがしばらくの間ないのは、寂しいものであるし、最高のものから切り離されてしまっているので、イラつきの態度も凄いことになっている。

 同時に、エルゲルダは、リース王国に対する恨みも強いものであった。レグニエドは殺すべき相手であり、そして、リース王国を征服した暁には、自分の好みの女を徴兵という形で徴収しようではないかと考えてさえいた。

 それぐらいに女に飢えてしまっているのだ。見た目は完全に、ぼよぼよになってしまっているのに―…。これは間違った表現かもしれないが、体力自体はすでにないに等しいということなのだ。

 エルゲルダは、欲望だらけの思考となりながらも、ラウナンという楔がいるので、大人しくなっているのだが―…。

 ゆえに、ラウナンはエルゲルダから離れられなくなってしまったのだ。エルゲルダの暴走を抑えるために―…。

 「それなら、シエルマスが集めた情報がございます。それによると、リース王国は、軍を三つに分け、それぞれで戦い、首都のラルネを目指すというな感じです。」

と、ラウナンは言う。

 細かい作戦は、軍人に任せた方が良い。

 餅は餅屋。

 軍事を専門している者に任せた方が、彼らの方が知識や経験があり、その知識および経験によって今、取るべき行動を正確に示してくる可能性が高いのだ。

 そして、一瞬、静まることがあったが、すぐに、ファルケンシュタイロが言い始める。

 「今回の作戦は、最初様子見も想定しての作戦となる。そのため、前線に立つのはそこまで練度の高くない徴収したばかりの兵を中心としたものにした方が良い。リース王国は、ラフェラル王国から撤退した我が軍の情報を知っている可能性が高い。その戦いで得られたデータを参考に、本格的な作戦をとるし、未熟な兵たちが勝利を挙げられるようにするために、もしも勝った時の報酬を臨時で高くしておく必要があります。エルゲルダ様のために手柄を挙げた者であるからこそ、報酬をはずむことによって、エルゲルダ様の威容がより強くなり、ミラング共和国は発展することになりましょう。」

と。

 (フン、ラウナンもこんな馬鹿をトップにするとはなぁ~。まあ良い。おかげで、こちらが自由に作戦を組み立てることができるし、ラウナンの居場所が分かれば、いつでもこちらの状況を報告し、こいつの意図を探ることができる。エルゲルダなんて、煽ててやればすぐに機嫌が良くなる単調な奴だろ。)

と、心の中で思う。

 ファルケンシュタイロは、エルゲルダがミラング共和国の総統になることに対して、別にどうでも良かった。馬鹿であろうが、ミラング共和国軍が活躍できる戦争ができるのであれば―…。

 だからこそ、エルゲルダを煽てるだけで、自分の思い通りに軍を動かせるのなら、都合が良いと思っているのだ。

 そして、ファルケンシュタイロは、エルゲルダの表情を確認し、煽てれば機嫌が良くなる人物であることがエルゲルダの表情から窺うことができる。

 「そうか、勝った者に報酬をほんのわずかにはずむことで、俺の権威がそいつらに見せられるのか。ガハハハハハハハハハハハハハハハハハ、そうしろ!!!」

と、エルゲルダは気分よく言う。

 というか、ファルケンシュタイロのご機嫌取りに満足してしまっているようで、相手の思考を深く探ろうとしているわけではなかった。そんなこと、もう数年もしていないと思われるので、退化してしまったのかもしれない。

 「ハッハァ。」

と、ファルケンシュタイロは言う。

 一方で、ラウナンは、

 (ファルケンシュタイロは最初、リース王国の実力を見ようとしているわけですね。怖気づいているように見えて、実際は、相手の実力を観察した上で、どう対処するのかを考えているということですか。私のシエルマスのすべても動員している。シエルマスがいれば、裏からの工作はお手の者だ。私に従うようにちゃんと(きょういく)しているのだから―…。今回のリース王国との戦争、シエルマスの動きでリース王国軍に勝利し、征服することができよう。)

と、心の中で思うのだった。

 ラウナンには自信がある。

 自らが威圧することによって、逆らうようにできないようにして、従順して、育て上げた謀略および諜報機関としてのシエルマスがある。

 その組織は、リース王国や周辺諸国では最も、その分野で強い実力を持つことで恐れられているということで知られているのだから―…。

 ゆえに、リース王国もシエルマスの工作によって、簡単に捻りつぶせると思ってしまったのだ。

 結局、知ってしまうことになる。

 謀略も通じない相手がこの世にいることを―…。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(154)~最終章 滅亡戦争(9)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


遅くなって申し訳ございません。

夜になって、投稿できる時間ができたので投稿します。

では―…。

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