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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
498/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(152)~最終章 滅亡戦争(7)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、エルゲルダがミラング共和国の総統となり、リース王国へと宣戦布告する。一方で、その情報を知ったリース王国では、ラーンドル一派たちによる話し合いがおこなわれ、逆に侵略し返そうということになるのだった。

その情報をリーンウルネは自ら潜入することで仕入れ、ハミルニアとフォルクスを自分の執務室に呼び寄せて、今回の戦争に参加させるのだった。その話し合いで、ランシュとヒルバスの参戦をも促すものであった。

リーンウルネは、一枚の紙をメタグニキアの秘書に渡し、その紙を見たメタグニキアは激怒しながらも、そのメリットのためにヒルバスを今回のミラング共和国とリース王国の戦争に参加させる命令を下すのであった。

その後、ランシュとヒルバスは一時的に騎士団に復帰という形で参戦するのだった。


リース王国は出陣し、ミラング共和国の境までやってきており、作戦会議がおこなわれる。

その作戦の会議の中で、左軍と右軍の大将がそれぞれ決まるのであった。左軍に騎士団が編入されるのだった。

 会議終了後。

 それぞれの所属する場所へと戻っていく。

 そんななか、ハミルニアとフォルクスは一緒に移動していた。

 「はあ~、リーンウルネ様の思惑通りになりましたかぁ~。まあ、後は私の指揮官としての実力がどこまであるかということになるでしょうが―…。大変だぁ~。」

と、ハミルニアは、一つ溜息を吐きながら言う。

 大変なことは分かっている。

 だけど、やらなければならないことだというのは分かっている。

 だからこそ、責任感というものがのしかかっており、気持ちとしては少しだけまいってしまうのだ。

 それでも、頑張るけど―…。やれることをやるのだが―…。

 「自分からやると言っていたことを―…。」

と、フォルクスは皮肉めいたことを言う。

 フォルクスとしては、このような何を考えているのか分からない人物は怪しいものと感じてしまうのだ。

 警戒しない理由はない。

 そして、同じ方向に向かっているのは、リース王国騎士団は、ハミルニアが指揮する軍に編入されることになった。

 だからこそ、一緒に方向に向かうしかない。

 「それを言われてしまうとショックだなぁ~。だけど、私としてはねぇ~、騎士団を自らの軍の中に編入できたことはプラスだと思っているんですよ。それにフォルクスさん。前回の戦争で、前の騎士団の騎士団長が亡くなった原因は私も知っています。」

と、ハミルニアは言う。

 その時、フォルクスは一瞬、表情に出すほど動揺するが、すぐに元に戻す。一瞬、動揺してしまったことをハミルニアに悟らせないようにするためだ。

 それをハミルニアは見破りながら―…。

 「リーンウルネ王妃が言ってくれた言葉通りですね。だけど、別にそれで騎士団を脅そうとか、見下そうとか考えているわけではありません。そのことは信頼していただけるとこちらとしては助かります。………って言っても無理でしょうが―…。それでも、私は、騎士団のことは信頼していますから―…。と、言うことで、私の軍に編入されたことですから、扱き使いますよ。覚悟しておいてください。」

と、ハミルニアは言う。

 それと同時に―…。

 (フォルクスさんは警戒心が強いですねぇ~。悪用なんてしないのに―…。それに私、ラーンドル一派に属す気持ちは一切ないのですが―…。だって、彼らのような勢力を野放しにしても、良いことなんて一個もありませんし―…。)

と、心の中で思う。

 ハミルニアは、フォルクスの警戒心というものが自分に対して、向けられるのは意味のないことなのに、どうしてそこまで向けてくるのか、残念に思いながら、ラーンドル一派は嫌だという気持ちを持っている。

 ラーンドル一派は、自分の得のためなら、平然と他者を不幸にしてしまうのだから―…。

 そのようなことをしてしまえば、不幸にされた者から恨みを抱かせるし、数が増えていくから、返って、自分達を不利にしてしまうのに―…。どうして気づかないのだろうか、疑問しか感じられない。

 未来への想像というか、先に起こりそうなことを考える上で、他者を慮って考えることが完全に欠けてしまっているのではないかと思える。

 普段から他人のことなんて考えないからであろうか。

 まあ、そのことは、他者の視点と同時に、自身の視点という二つをしっかりと整合性のとれるようなことをしないといけないのだから、簡単なことではないだろう。その方法も違っている可能性が存在する。

 そう思うと、本当の答えはどこにあるのだろうか。

 ハミルニアは、ラーンドル一派に関わったとしても、何一つ得することはないと感じ、協力関係を築く気もないし、属す気もない。たとえ、出世を容易にするということがあったとしても―…。

 ハミルニアの今の言葉を受けて、フォルクスは―…。

 (騎士団を潰されないように扱き使われる程度なら問題はない。大事なのは、この戦いで生き残りながら、騎士団の実戦経験を積ませていくことだ。先の戦争のような轍はもう踏まない。)

と、フォルクスは心の中で思う。

 それは強い決意だ。

 フォルクスは、前回のリース王国とミラング共和国の戦争の中で、ラーンドル一派に嵌められたことに気づいていたとしても対処することができず、多くの当時の騎士団の騎士の命を奪われてしまったのだ。いや、奪ってしまったのだ。だからこそ、今度こそは、そのようなことがないようにしないといけない。

 絶対に……だ。

 だからこそ、フォルクスはハミルニアに向かって言う。

 「扱き使うことに対して、一々文句言う気はない。ただし、騎士団を騙すような真似をすれば、王国に反抗しててでも、騙した奴の命を奪いに行くからな。ラーンドル一派でも、お前でも関係はない。」

と。

 フォルクスの言葉に恐怖をハミルニアは感じたが、それでも、感情に出すことはなかった。

 そして、冷静になりながら、フォルクスがそのように思う原因をすぐに理解するのだった。

 (そうですよね。騙されたのだから―…。)

と、ハミルニアは心の中で思いながら、言葉として言う。

 「何度も言いますが安心してください。騎士団の騎士の数を減らして、誰が王国の治安を守るのですか。軍隊で圧倒的な力による弾圧という方法を採用するのが正しいとは私には思えません。しないといけない時もありますが―…。だけど、多くの問題は、何かしらの原因があるのですから、それを探って、そこからどうすれば双方にとって良い解決策なのかを考えた上で、それを問題の解決のために提示し、実行し、試行錯誤しないといけない。そういうのは、騎士団の方が得意でしょ。自分達の言うことを聞かないからと言って潰すのではなく、妥協できるところを探って協力できるのであれば、協力しておくべきなのだよ。まあ、それが上手くできるのであれば、苦労はしないのかなぁ~。」

と、最後の方は、ハミルニアの愚痴でしかない。

 要は、騎士団の方が人々の中で問題が起こった場合に、上手く対処できるということだ。

 ハミルニアのような軍人が威圧感を持って、問題に対処したとしても、決して、上手くいくことはないと思っているのだ。

 まあ、軍隊を使って、武力的な鎮圧をしないといけない時はあるが、問題が起こるのは、何かしらの原因があり、その問題が深刻化したからこそ発生しているのだ。だから、その問題を解決することが大切なのだということ。

 そして、今のリース王国軍の中では、問題を起こしている理由に関係なく、自分達に歯向かうことが悪いと判断して、問答無用に潰そうとしてくるはずだ。そうしないといけないことはあるが、すべての場面でそういうことではないのだから―…。

 そういう問題に対する理解が一辺倒になってしまうラーンドル一派およびその息のかかった者が多いリース王国軍に問題の対処は無理だからこそ、騎士団がいてくれないと困るし、騎士団を騙して減らしたりするのは愚策でしかないということだ。

 ハミルニアにとって、騎士団は生き残ってくれた方が良いし、騎士団の矜持通りに動いてくれるのが良いことを理解している。

 「そうか。」

と、フォルクスは言う。

 その後、二人から会話が続くことがなく、無言となってしまうのだ。

 ハミルニアは気まずそうにするが、フォルクスは堂々としていた。


 リース王国とミラング共和国の国境。

 その中でも、ランシュとヒルバスのいる騎士団の陣営では―…。

 すでに、少し高い場所から眺めると、目の前にミラング共和国軍を見ることができ、その数は数万、数十万にも見えるぐらいだ。

 そして、ランシュはそれを見ながら、ミラング共和国軍がリース王国への侵入の準備をしているのではないかと思う。

 さらに、ミラング共和国軍の数を旗の数と同時に、人の数、正確に言えば、軍隊の小隊と大隊の規模を区別しながら、数えていくことによって理解しているのだ。

 「すごい数だな。」

と、ランシュが言う。

 その隣にヒルバスもいた。

 「そうですね。」

と、ヒルバスが答える。

 ランシュとヒルバスは、ミラング共和国軍の数に驚きはするが、その軍勢に自身が負けることはないと思っているのだ。敗れるという発想が一切ない。

 そこにあるのは、自信であり、先のリース王国とミラング共和国との戦争から今までに天成獣の宿っている武器の扱い方をしっかりと学んだし、いろいろなことを勉強したし、王族護衛となってからもしっかりと訓練や修行をしっかりと欠かすことなくおこなっていた。

 自らの復讐を果たすことを思いながら―…。

 そして、ランシュとヒルバスは懸念がないわけではなく、ミラング共和国軍の中にも天成獣の宿っている武器を扱う者がいるし、傭兵でそのような者が雇われており、軍勢の中でどれだけいるのかが分かっていない以上、その面では不安があるし、しっかりと受け入れていた。

 そして、ランシュは気持ちが高ぶっているのに気づき、心を落ち着かせて、視野を広げようとする。視野を狭めるようなことをすれば、勝利はないし、ほんのわずかなものが勝敗を決定することがあることを知っている。

 そして、一方でヒルバスは―…。

 (確かに数が多いですが―…。不安とする面は、天成獣の宿っている武器を扱う者の数と同時に、他にも何かを仕掛けてくることですかね。ミラング共和国軍には必ずシエルマスも従軍しているはずです。)

と、心の中で思う。

 ランシュ以上に、リース王国とその周辺地域における裏の組織に関して、詳しかったりする。

 メタグニキアの私設部隊に入った以上、そういう情報を収集させられたり、謀略のような役目を担わされる。

 だからこそ、こういう裏組織の情報からの何をしそうかというのを考えてしまうのだ。

 そして―…。

 「ランシュ君、君が敗れるようなことは―…。」

と、ヒルバスが声をかけようとすると、

 「俺に関してはない。まあ、強い奴がいればわからんが、それでもグルゼン親方がいないということは前の戦いで本人の口から実際に言っていたからな。」

と、ランシュは答える。

 ランシュに、油断という感情や、傲慢という驕りはない。

 常に、冷静に物事を判断することができている。

 そして、グルゼンはミラング共和国軍からいなくなっていることを知っている。どこへ行ったのか分かっていないようだが―…。

 ベルグがグルゼンの居場所が自身のところにあることを教えていないし、ベルグの居場所にいることが少なかったのだ。グルゼンの側に一緒についてきた者たちを養わないといけないので、傭兵としてリース王国から離れた山の向こう側で活動しており、かなり有名であるが、その名は知られていない。

 そして、そのグルゼンにランシュは先のリース王国とミラング共和国軍との戦いの中で敗北しており、もう出会うことはないと思っている。

 同時に、何となくグルゼンの行方を推測することはできる。ベルグの場所であろうと―…。

 そして、グルゼンと同じ実力者がミラング共和国にはいるかもしれないという可能性もランシュはしっかりと考えながら、警戒を怠らない。

 そして、ヒルバスが言う。

 「グルゼン親方!! あの伝説に近いほどの最強兵士で将軍のことですよね。ランシュ君、戦ったことがあるんですか?」

と。

 実際、ヒルバスも姿を見ているだろうが、どういう人物かは分からない。

 だけど、ランシュが先のリース王国とミラング共和国との戦争で、倒されたのは事実だ。

 そういう意味では簡単に、あの時のランシュが倒されたのを理解してしまうのだ。

 「ああ、リース王国の騎士団の兵士が四割ほど亡くなったあの戦いでな。リーウォルゲ元騎士団長が亡くなった―…。」

と、ランシュは言う。

 表情は平然としていた。

 「良く生き残れましたね。」

と、ヒルバスは驚きながら感想のようなコメントをする。

 グルゼンの強さは、この地域の周囲で知らない者はいないからだ。

 グルゼンに出会ったら、即逃げるか、命を諦めるしかないと言われているほどだ。

 実際は、グルゼンは必要以上に殺生をする気はないし、軍人であると同時に、勉学もしっかりとする文武両道の人間である。

 「ああ、まあな。」

と、ランシュは返事をする。

 だけど、悔しさがないと言ったら嘘になるが、それでも、出会わない以上、強さの基準にする以外に方法はないのだ。

 そういう意味で、ランシュは、割り切ることができているのだ。

 その後、騎士団の本陣で、今回のリース王国とミラング共和国軍でのリース王国の作戦が伝えられるのだった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(153)~最終章 滅亡戦争(8)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


明日(2023年10月18日)の投稿に関しては、夜になると思います。

いつもの時間に投稿できるかどうか分からないので―…。

では―…。

『水晶』を読んでいただきありがとうございます。


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