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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
496/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(150)~最終章 滅亡戦争(5)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、エルゲルダがミラング共和国の総統となり、リース王国へと宣戦布告する。一方で、その情報を知ったリース王国では、ラーンドル一派たちによる話し合いがおこなわれ、逆に侵略し返そうということになるのだった。

その情報をリーンウルネは自ら潜入することで仕入れ、ハミルニアとフォルクスを自分の執務室に呼び寄せて、今回の戦争に参加させるのだった。その話し合いで、ランシュとヒルバスの参戦をも促すものであった。

リーンウルネは、一枚の紙をメタグニキアの秘書に渡し、その紙を見たメタグニキアは激怒しながらも、そのメリットのためにヒルバスを今回のミラング共和国とリース王国の戦争に参加させる命令を下すのであった。

 リース王国。

 ミラング共和国が出征パレードをしてから二日後。

 リース王国の側も戦場へと向かいための編成を完了させていた。

 そして、リース王国の方でも式典はないが、兵たちが出征していた。

 先頭は、リース王国軍の総大将であるファルアールトがおり、彼の威厳を周囲の人々に見せつけようとしているのだ。

 リース王国が勝利すれば、その功績は総大将であるファルアールトのものになるし、それを指名したラーンドル一派のものにもなる。

 これで、リース王国における実権をより強く掌握することができる。

 そのような夢と希望に満ちた感じの出征となっていた。

 (………………前の戦争ではアールトンのせいで負けることになったが、まあ、そのアールトンも負けたことに対する責任を取らされたというわけだ。命を持って―…。だけど、今度は、ミラング共和国を逆に征服し返してよいということになっている。ならば、俺の独壇場だ。さあ、俺の明るい未来のために―…。ガハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。)

と、ファルアールトは心の中で笑いをあげる。

 自らの表情に出さないようにしながら、心の中で笑いをこみ上げる。

 ファルアールトにとって、この遠征で勝利することしか考えていない。

 相手に敗北する可能性などこれっぽちも考えてはいない。

 負けるために戦争をするなんて、どれだけ馬鹿げているのか。

 前回のリース王国とミラング共和国との戦争におけるリース王国がまさにそのようなものであったのだ。

 アールトンによって軍人としてのプライドを馬鹿にされたかのように感じ、戦後において、アールトンが処刑されたことを聞いて、ファルアールトは少しだけ溜飲を下げることができたが、完全ではないし、恨みというものがなくなったことはない。

 だからこそ、今回のリース王国とミラング共和国との戦争で、自分が如何に軍人として優れているのかということを証明する機会にもなるし、功績を挙げれば、ミラング共和国軍の英雄とされているファルケンシュタイロのように、自身も英雄の扱いをリース王国民から受けられるのではないかと思っているのだ。

 そこに負ける要素を含めることもなく、ただ、自らの勝利を願うという楽観的なものに過ぎない。

 結局、未来のある地点という結果は、今からではほとんど予測することなどできないだろうに―…。

 そのことに気づきもしないファルアールトであった。

 そして、ファルアールトは、悠然とした表情で、リースの外へと繋がる場所へと向かって行くのであった。


 一方、リース王国の騎士団の本部。

 そこでは、フォルクスによる出征のための挨拶がおこなわれようとしていた。

 そこには、勿論、ランシュとヒルバスがいた。

 二人は一か月ぶりの再会となる。

 ランシュは、長年望んでいた王族護衛の方へと実力が認められて、そっちの方へと配属となり、レグニエドとリーンウルネの娘であるセルティーの護衛の任務に就いていた。

 一方で、ヒルバスは、メタグニキアの私設部隊から誘いがあり、そっちの方へと移籍していた。

 二人はそれぞれの上司の命令により、こうやって、今回のリース王国とミラング共和国との戦争で従軍することになった。

 そこにリーンウルネとハミルニアの策謀があり、彼らは二人の実力を完全ではないが、見破っていた節があると思われる。本人たちも口に出して言わないので、真意は不明である。

 「ランシュ君、久しぶり。護衛の方はどう?」

と、ヒルバスは言う。

 ヒルバスとしては、久々にランシュとの再会なので、騎士団のよしみというだけでなく、仲が良いことをアピールしておく必要がある。

 ただし、ヒルバスがランシュの部下であることを周囲に知らせないようにしておく必要があるので、親しい感じで話しかける。

 「うん、悪くはない。いろんな情報が仕入れられたし、天成獣に関する本を読むことができたから―…。」

と、ランシュは素直に言う。

 ランシュは王族護衛になってから、セルティーの護衛をするようになって、たまたまセルティーが読んでいた天成獣の宿っている武器に関する本があり、それをセルティーから借りて読んでいた。

 そのおかげで、天成獣に関する知識を増やすことができた。

 ランシュが王族護衛しているのは、レグニエドへの復讐であり、十数年前のクルバト町で家族を殺されたことによる復讐である。

 そのようなことをリース王国側に気づかれないように、振舞っていた。

 ヒルバスは、そのことを知っているし、ヒルバスはランシュの部下である。

 ランシュの目的を知った上で―…。

 そして、ヒルバスはランシュの今の言葉を聞いて、天成獣に関する本に興味を持ったのか、会話を続ける。

 「ほお~、セルティー王女は読書家でもありますし、天成獣の宿っている武器を扱うことができるのだとか―…。」

 そして、ヒルバスは、セルティーが天成獣の宿っている武器を扱うことができることを知っていた。 

 メタグニキアの私設部隊の者であるからこそ、王族に関する情報を知っていたりする。監視までしていないが、王族が反乱しないようにしておく必要があるからだ。

 王族の武器把握と武力のそれは、絶対に必要なことである。

 そして、セルティーが扱う天成獣の宿っている武器は大剣であり、その大剣はリース王国の創始者の伴侶が使っていたとされる物で、かなり強力な力を宿しているという。

 だけど、セルティーはその力を扱いこなしきれているわけではない。

 そして、ヒルバス言葉に―…、

 (ヒルバス…、さすがに耳が早いなぁ~。)

と、心の中で言う。

 ランシュは、ヒルバスが所属しているメタグニキアの私設部隊に関しての情報は少しだけ知っている。

 だけど、今、現在、過剰にそのことに関する情報を知ってしまうと、ランシュは自身の身に何が起こるかわからないので、必要以上に知らないようにした。

 時を待っているような感じであり、メタグニキアの私設部隊の情報収集能力に関心を持つのだった。

 そして、情報交換をする。

 「ああ、大剣の方で、武器倉庫の一室に厳重保管されていた方だ。」

と、ランシュは言う。

 セルティーの武器のことは、かつて、騎士試しの時に、武器倉庫の中で保管されているのを見たことがある。

 そして、ランシュの扱う天成獣の宿っている武器は、リース王国の創始者が扱ったとされる武器であり、大剣ではない。

 その武器の中に宿っている天成獣は、トビマルであり、いくつもの属性を扱うことができるかなり希少な存在である。

 「ああ~、あれですか。かつて、リース王国の建国者の妻が持っていたと言われる大剣で、太さもかなりある剣ですか―…。幻を操るとされる、武器の見た目とはギャップのある―…。」

と、ヒルバスは言う。

 ヒルバスもセルティーが扱っている武器に関しては、勿論、ある程度の情報は知っている。

 それも、少し詳しく調べればわかることを、口にしているのだ。そうでない部分は、口にすることは一切しないが―…。

 まあ、口にしたことしか分かっていないのだが―…。

 「そうだな。」

と、ランシュは答える。

 ランシュは、三週間前のセルティーの騎士試しにも護衛として参加している。

 なぜ、セルティーにそのようなことをさせたのか、ランシュの知っている理由はこのようなものである。

 (俺は、セルティーの騎士試しにも護衛として参加している。この騎士試しは、三週間前におこなわれた。そして、セルティーが扱うことができる武器は、リース王国の建国者のパートナーであるライナウナが実際に使っていたとされる大剣だ。文献にも詳細に記されており、天成獣としての属性は幻という武器の見た目からは考えられないような属性である。その武器を扱うことができたため、セルティーは騎士としても前から心構えだけでも訓練をしていたが、より騎士として強くすべきだろうということになって、本格的な訓練がなされている。リース王国の中央で権力を握っている奴らによって、セルティーの強さに笠を着て、周辺諸国に圧力をかけて、自らの利益を拡大しようとしている。それも、周辺諸国が嫌うやり方で―…。どこまで最低なんだか―…。まあ、周辺諸国は張り合っていく以上、ある程度は仕方のないことであるが、やりすぎるのは良くない。)

と、ランシュは心の中で思っていたりする。

 ランシュの思っていることと、ほとんどラーンドル一派の目論見は同じである。

 違うことだとすれば、何かしらの天成獣の宿っている武器に選ばれることになれば、それでプラスというぐらいの浅い気持ちであった。

 それが偶然にもリース王国の創始者の伴侶が扱っていたとされる大剣の中に宿っている天成獣に選ばれたのだから、この時、ラーンドル一派の多くの者が歓喜し、これを利用しない手はないと考えたのだ。

 偶然という要素は時にとんでもない幸運をもたらすというわけだ。

 だからこそ、ランシュとヒルバスは、ある可能性があることに想像できてしまうのだ。

 「ということは、セルティー王女とも、いずれは―…。」

と、ヒルバスは言う。

 「だろうなぁ~。」

と、ランシュは返事をする。

 そう、レグニエドへと復讐するということになると、セルティーとどっかで戦う可能性が存在するということだ。そうなると、本気での戦いになり、どちらかが命を落とす可能性もあるということだ。

 だけど、ランシュは、

 (殺しはしないが―…。それでも、俺の目的のためには、不幸を背負ってもらうがな。)

と、心の中で思うのだった。

 ランシュとしては、復讐対象以外になるべく被害を与えないようにしようと考えている。余計なことをすれば、返って、復讐の連鎖が繋がることは分かっている。

 だけど、同時に、復讐される覚悟も持っている。

 だからこそ、ランシュとしては、自らの復讐という目的のために、復讐対象以外の被害でも、出さないとできないと感じる場合は、そのような被害を与える行動をとることになることを決定している。

 そして、ヒルバスは、フォルクス騎士団長が壇上に上がるのに気づく。

 「じゃあ、そろそろ始まりますか。団長の演説が―…。」

と、ヒルバスが言う。

 そういうと、ランシュとヒルバスは言葉を発するのを止め、すぐに、騎士団の隊列へと戻っていくのだった。

 そして、フォルクスは、演説を始める。

 「皆の者、揃ったな。今回、我々騎士団の任務は、宣戦布告をしてきたミラング共和国を撃退することだ。その過程でミラング共和国の領土を併合しても構わない。むしろ、そうして欲しいとレグニエド王の命が下っている。だから、存分に戦うが良い。前のアルデルダ領の境での大きな屈辱を今回こそ晴らすのだ!!!」

 フォルクスは、最後に叫ぶように言う。

 これは、前のリース王国とミラング共和国で、リース王国の騎士団はラーンドル一派の策謀によって、大きな被害を食らい、多くの死者を出す結果となり、その後、前の団長が何者かによって殺されるという最悪の事態も発生してしまったのだ。

 そう思うと、今回の戦争で、リース王国騎士団が受けた不名誉を挽回したいと思っているのだ。

 それだけに、フォルクスの気持ちは強いものであった。

 そして、それを知っている者からしたら、だからこそ、気持ちが大きな面で一致するのだった。

 『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。』

と、騎士団員が叫ぶ。

 その叫びは、今回の戦争への強い意気込みを感じさせるものだ。

 今度こそは―…。

 過去を乗り越えるための―…。

 だからこそ、ランシュもヒルバスも叫ぶ。

 (久々だ。このような感覚は―…。)

と、ランシュは心の中で思う。

 ランシュは同時に、昨日の夜のことを思い出す。

 それは、昨日の夜、ランシュはその時王族護衛の仕事が休みであり、城の外から郊外へと偶々、散策していたのだ。

 リースの街の景観を見る回数が少ない以上、店の位置が変わったのではないということを確かめるために―…。

 そして、そこにランシュが知っている人物が現れる。

 そう、ベルグである。


 ―ランシュ君、久しぶり。元気そうで何よりだ―


 ベルグは、まるで、友人に声をかけるように言ってくる。

 そして、同時に、ベルグは偶然を装ってやってきたのではないかと、ランシュは思った。

 ランシュとしては、何かしらの用があるから自分の前にベルグが姿を現したのだと思った。

 そうでなければベルグが、このような場所にやってくることはないからだ。


 ―ベルグの方こそ、久しぶりだ。用は何だ―


 ―それはねぇ~、ランシュ君。リース王国とミラング共和国が戦争状態になるんだよねぇ~。それにランシュ君も騎士として派遣されるようだし、だから、あることを許可しようと思っているんだ。レグニエドを殺すことは駄目だけど、ミラング共和国の総統、元アルデルダ領の領主エルゲルダを殺すことを許可するよ。ランシュ君の復讐相手の一人を―…。それぐらいはできる実力はあるようだし―


 ランシュは、心の中で歓喜する。

 レグニエドへの復讐をすることはできないのであるが、それでも、もう一方の元アルデルダ領の領主で、今のミラング共和国総統であるエルゲルダを殺すことができる許可を得られたのだから―…。

 だけど、それを表情に出すことはしなかった。

 ランシュとしても、どこに人がいるか分かったものではないからだ。

 だから―…。


 ―そうか、ありがとう、ベルグ―


 と、感謝の言葉を伝える。

 それのみとした。


 ―どういたしまして、では、ランシュ君の活躍に期待しているよ―


 そう言うと、ベルグはどこかへと消えていくのだった。

 その後、ランシュは、朝から引き継ぎの仕事があるので、城の方へと戻って行くのだった。

 このようなことが昨日あったのだ。

 だからこそ、ランシュは、今回のリース王国とミラング共和国との戦争でのやる気は十分であった。むしろ、このような場を提供していただいた者たちには、感謝しかない。

 そして、心の中で―…。

 (俺は、確実にやることができた。できるようになった。ミラング共和国の総統のエルゲルダに対して、復讐することを―…。俺の生まれ育ったクルバト町で虐殺を主導し、俺の妹のヒーナと母さんを殺した相手だ。)

と。

 このような喜ばしいことができるようになったせいか、僅かばかりか、表情が緩んでしまったようだ。

 「ランシュ君、顔を綻ばせていますが、良いことでもあったのですか?」

と、ヒルバスが聞いてぐらいには―…。

 「ああ、一つのことが許可されたのだから―…。」

 「そうですか。」

 その会話の中で、ヒルバスは何となく理解することができた。

 (レグニエド王ではないと思いますね。つまり、状況から考えてエルゲルダということですね。)

と、ヒルバスは心の中で、ランシュが喜ばしい理由を理解してしまうのだった。

 その後、フォルクスの演説が終わり、騎士団もリース王国とミラング共和国の境界沿いまで遠征していくのだった。



番外編 ミラング共和国滅亡物語(151)~最終章 滅亡戦争(6)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


今日は、『この異世界に救済を』の投稿日であります。

では―…。

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