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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
493/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(147)~最終章 滅亡戦争(2)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、エルゲルダがミラング共和国の総統に就任し、そして、リース王国への戦争を宣言するのだった。征服戦争を―…。

 数日後。

 リース王国では―…。

 場所はリースであり、城の中で、ラーンドル一派が使用している小会議室。

 そこでは、ブレグリアから代替わりをして、アングリアが座っていた。

 アングリアは、一年前にラーンドル商会のトップの地位に就き、ラーンドル一派のトップにもなっていた。

 そして、彼は、政治の仕方も分からない素人であり、かつ、我が儘である以上、ろくな結果になりそうにもないと感じさせる。

 さらに、主要メンバーも完全に変更されており、新世代と呼んでも良い。

 その中で生き残っているのは、メタグニキアとハルギアぐらいであろう。

 そして、数年の間、ラーンドル一派はリース王国での政権を握り続け、自らのしたいような政治を多くの面でおこなってきたが、リーンウルネを中心とする派閥の力の上昇に警戒感を抱いていた。

 今回の議題はそういうこととは関係ないが、重要なことであるのは確かだ。

 副宰相であるハルギアが司会進行する。

 「今回、緊急に集まっていただいたのは、隣国ミラング共和国が、我が国に対して、戦争すると宣言してきました。」

と、苦々しい表情をしながら言う。

 その理由は、ここにいる者たちの誰もが分かっている。

 今回、ミラング共和国で、リース王国に対する戦争を宣言したのが、エルゲルダだからである。

 「あの野郎。自分で馬鹿な政策をしておきながら、ミラング共和国で生き永らえ、トップになった途端に、俺の国に対して戦争宣言か。ふざけるな!!!」

と、アングリアが怒号を発する。

 そりゃそうだろう。

 先のミラング共和国とリース王国の戦争の原因となったのは、エルゲルダがおこなった商品税の増税と通過税の新設が原因である。

 それでも、リース王国側のラーンドル一派なら止めることはできたが、これを利用してミラング共和国を焚きつけて、戦争を起こし、アルデルダ領をミラング共和国に割譲しようと目論んだのだ。結果として、その政策を提案したアールトンは戦争後に、その責任で処刑されてしまったのであるが―…。

 でも、結局、アルデルダ領をミラング共和国に割譲したことにより、リース王国の財政は好転するようになったが、それがリース王国に住んでいる人々に行き渡ることはほとんどなく、むしろ、ラーンドル一派の繁栄のための費用に使われてしまっただけなのであるが―…。

 このように、ミラング共和国が再度戦争を仕掛けてきて、それもミラング共和国のトップがエルゲルダときたのだから、まさか、自分達がやったことがバレたのかと思ったのではなく、ただ単に、逆恨みをして、復讐しようと思っているのではないかとアングリアは感じたのだ。

 アルデルダ領の負債をどれだけ援助してやったと思っているのかさえ、アングリアは思っているだろうし、今までの恩を仇で返されようとしていることに我慢ならないのだった。

 本当に、アングリアは自分の都合の良い解釈をしているだけだ。

 冷静に物事を見れているわけではないだろうし、ラーンドル一派も劣化が激しく、そのアングリアの考えに―…。

 「そうだ、そうだ!!!」

 「エルゲルダの野郎、ふざけるな!!!」

 と、アングリアの言葉にのってくる者さえいる。

 このような能力に劣った者が中央にいたとしても、状況や場合では、戦争を有利に動かすことができてしまう場合があるので、絶対的な基準というのは能力で計ることはできないであろうが、すべてにおいてそうではないとも言える。

 曖昧が、正しい答えということも十分にあり得るのだ。

 「そうだな、俺はとにかく方針は決まっている。ミラング共和国を逆に征服仕返せ!!! そして、俺の面前にエルゲルダの首を捧げろ!!!」

と、アングリアは宣言すると、部屋を出て行くのだった。

 アングリアは、自分が細かいことを指揮する気はなかった。

 ただ単に、エルゲルダのような奴が頭にくるので、ミラング共和国がリース王国を征服しようとしているのだから、返り討ちにさせて、リース王国がミラング共和国を征服すれば良いと思っているのだ。

 いや、絶対にそのようにしてやる、と―…。

 細かいことは政治をしている奴らに任せて、戦争による功績を自分のものとして貪れば良いと考えている。味方の手柄は自分の手柄という感じにして―…。

 それでも、一部の手柄ぐらいは実際に手にした奴に与える気満々であるが―…。

 エルゲルダが部屋を出て行くと詳しい会議がおこなわれるのだった。

 方針が決まったのだから、それに沿って作戦を考えていけば良いのだから―…。

 「では、作戦について考えていきましょう。ここからは、王国軍の元帥のファルアールト=フォンマエル殿にも参加していただき、よりミラング共和国を逆に滅ぼすことができることを祈りながら―…。」

と、ハルギアは言う。

 方針が決まっているので、その方針に沿うだけである。それでも、難しいことに変わりはないが―…。

 ファルアールトが席に座るのだった。

 ファルアールトは、この会議の最初、外で待機させられて、頭にきているが、それでも、ラーンドル一派の力がなければ、ここまで出世することができなかった以上、どうしてもラーンドル一派のメンバーには頭が上がらないのだ。

 そして、席に座ると同時に―…。

 「今回の作戦は、オーソドックスでも構わないだろ。三方に軍を割って、ミラング共和国軍にあたれば、こちらが勝利できるでしょう。ミラング共和国軍は数カ月前まで、ラフェラル王国と戦争しており、その時、ラフェラル王国の領土内に入ることができなかったぐらいだ。まあ、シュバリテの死亡もあって、どういう状態かは分からないが、その戦いで、天成獣の宿っている武器を扱う部隊が全滅したとか―…。ならば、こちらとしても、負ける要素はない。私の指揮下にあれば―…。」

と、ファルアールトは言う。

 ファルアールトも軍人である以上、情報の重要性は分かっている。

 だからこそ、最近のミラング共和国軍とラフェラル王国軍の戦いについての情報を収集していた。そのなかで、ミラング共和国の総統であったシュバリテが病死しており、その後で、ミラング共和国軍を撤退させている以上、どこまでミラング共和国軍にダメージがあるのかをはっきりとさせることができていない。

 それでも、損害があることは確かであろう。

 ゆえに、ファルアールトはリース王国軍の中で典型的におこなわれる三軍分割包囲戦略で良いだろうと判断するのだった。

 この三軍分割包囲戦略とは、軍を三つに分け、それぞれが進軍をおこないながら、敵のアジトもしくは敵国の首都で三包囲から攻撃して、相手を一方に逃げれるように見せかけて、そこに遊撃隊が襲撃して、相手側を混乱させ、大損害を与える戦略である。

 このような戦略を採用した理由は、ミラング共和国軍の消耗と同時に、天成獣の宿っている部隊がミラング共和国軍とラフェラル王国軍の戦いの中で全滅したことにより、少数で形成を逆転できる要素がなくなったとファルアールトが判断したからだ。

 ファルアールトは、これで十分、リース王国に勝てると判断しているのだ。

 「これは頼もしいなぁ~。ファルアールト。で、騎士団はいるか。」

と、メタグニキアは言う。

 リース王国の騎士団は、この数年で、先のリース王国とミラング共和国との戦争によって受けた被害分を取り戻すことに成功していた。

 そして、同時に、ラーンドル一派の者たちは情報として手に入れることができてはいないが、リース王国の騎士団は天成獣の宿っている武器を扱う者の中に、一人や二人だけで形成を優位に持ち込むことができる人材が育っているのだ。

 だけど、そのような者のうち、二人は、所属を騎士団から変えている。

 そのうちの一人であるランシュは、王族護衛の方へとまわり、リース王国の王レグニエドの一人娘であるセルティの護衛の任務に就いている。

 もう一人、ヒルバスは、メタグニキアの私設の裏部隊の一員となっている。すでに、メタグニキアの近辺を守っていたりする。それぐらいの実力者であった。

 だけど、二人とも完全にラーンドル一派や騎士団に対して、実力を見せているわけではなく、気づかれないように上手く隠している。

 特にランシュは、飛べる以外の戦い方をすることも、さらに、リース王国の創始者が使っていたとされる武器を使っていることも―…。

 まあ、リース王国の創始者が使っていたとされる武器に関しては、騎士団の一部の者は知っているのであるが―…。

 そして、騎士団の強化がラーンドル一派にとって都合が良いことであれば、この場で、このような発言をすることはない。要は、騎士団がラーンドル一派にとって都合が悪いように強化されている。騎士団の中には、ラーンドル一派の息がかかった者もいるが、それ以上に、騎士団長(もしくは単に団長)を中心とする勢力もしっかりと築かれているのだ。

 そういう意味では、ラーンドル一派の息のかかったものが騎士団のトップになるように、邪魔者は排除しないといけない。表立ってすることができない以上、こういう戦争を利用するしかない。

 「騎士団はいるな。保険にはなる。それと、リース王国の中で確認されている天成獣の宿っている武器を扱う者の中で多くを動員したい。所属場所関係なく―…。ミラング共和国を征服することを確実にするために―…。さらに、傭兵の募集もかけて欲しい。報酬は後でケチっても大丈夫だろ。」

と、ファルアールトは言う。

 ファルアールトとしては、確実な勝利と征服を実現するために、動員できる戦力を動員すべきだと判断するのだった。

 そうすることで、負ける可能性があったとしても、彼らに責任を押し付けることもできるし、彼らが活躍すれば、その活躍を自分のものとして報告することもでき、一石二鳥というわけだ。

 ファルアールトは、ここ数年でかなり狡賢くなっており、戦果を自分のものにしてしまえば、こういう輩からの評価は高いものとなることを経験してしまっているのだ。結局、軍人としての実力は身に付くよりも、衰えてしまっているのであるが―…。指揮官としての能力においても―…。

 さらに、ファルアールトは傭兵をも募集して、動員しようと考えていた。戦争において数が重要な意味をもつことは明らかなので、ミラング共和国軍より数を多くしておく必要があるし、傭兵は場合によっては、遊撃に使うこともできるからだ。

 そういう意味では、軍人としてファルアールトは優れているように見えるかもしれないが、実際の指揮では―…。ということを想像していただけると分かると思う。

 さらに、傭兵の報酬をケチろうと考えているのだ。まあ、仕方ないことである。傭兵を用いることになれば、それだけ一般の軍人よりも多くの金銭を支払わないといけない場合がある。特に、有名な傭兵を雇った場合は―…。

 まあ、それでも、勝利によって得られる者があれば、ケチる必要もなくなるのであるが―…。

 「それは、できないな。リース王国が傭兵の報酬をケチるようなことをすれば、周辺諸国から悪い噂がたってしまう。それは避けないといけない。それに、ファルアールト、貴様の戦略で何とかなりそうなので、それを採用する。ミラング共和国を征服しろ。」

と、メタグニキアは言う。

 メタグニキアもこのような専門用語が出そうな会議を続けるのは、頭が痛くなるなら嫌なのだ。だからこそ、ファルアールトが言ってくれた案を採用するのだ。ラーンドル一派の重鎮達からも反論は出ていないのだから―…。

 「ハッ、畏まりました。」

と、ファルアールトは言い、頭を下げながら、頬を緩ませるのだった。

 その理由は、ファルアールトの思い通りにリース王国軍を動かすことができるからだ。

 そして、ファルアールトにとっては自らの評判を上げることに表向きはなる戦争が始まろうとしていた。

 その後、ラーンドル一派およびファルアールトは小会議室から出て行き、自分達の持ち場へと戻っていくのだった。

 そんな中―…。

 (ふむ、こうなったかの~う。そろそろ、戦功の一つでも稼ぐしますかの~う。)

と、こっそりとラーンドル一派の会議を聞いていた者がいた。

 その人物は、リーンウルネであった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(148)~最終章 滅亡戦争(3)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


では―…。

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