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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
492/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(146)~最終章 滅亡戦争(1)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、シュバリテを暗殺したラウナンは新たに、エルゲルダをミラング共和国の総統にするのであった。そして、この番外編は最終章に突入する。


お久しぶりです。

 二カ月後。

 場所は、ミラング共和国の首都ラルネ。

 そこでは、これから新たな総統であるエルゲルダが式典と同時にある宣言をするそうだ。

 ラルネに住む人々はそれを楽しみにしている。

 すでに、ラフェラル王国での失敗は、シュバリテのせいにされてしまっているし、ファルケンシュタイロの功績にマイナスをほとんど与えることがなかった。

 十分な兵力をシュバリテが与えていないのだ。

 そのことに対する同情をかっているのだ。ファルケンシュタイロは―…。

 ファルケンシュタイロは、そのことに対して、満足しているわけではないが、ラウナンに文句を言えないので、教練とかでストレスを解消しているのだった。

 そして―…。

 「定刻となりました。」

と、司会をする者が言う。

 この者は、遠征の時の式典でも司会していた者である。

 そして、この場に多くの者が集まっていた。

 「では、今回、我が国の新総統となられましたエルゲルダ様より、重要な話があります。」

と、司会の者が言うと、壇上にエルゲルダが向かう。

 エルゲルダを見ながら、皆が歓喜をあげる。

 彼らはある程度まで、イルカルによって操られており、エルゲルダに対する蔑みの視線を向けることはない。

 まるで可哀想な人であり、それを反省した立派な人物のように見えるのだ。

 エルゲルダが壇上に到着すると、自らの言うべきことを話し始める。

 「え~…、私がミラング共和国の新たな総統となったエルゲルダだ。皆は、私の話を聞いて欲しい。私は昔、リース王国のために一つの領土の領主をしていたのだが、リース王国は私を騙して領主の地位から失脚させるために、先の戦争の原因となった商品税の増税と通過税の新設をさせられた。その時、リース王国の国王やそれを取り巻く連中に脅され、家族や領民を人質に取られてしまったのだ。そのせいで、このような愚かな政策を実施しないといけなくなった。その後は、皆が知っているように我が国とリース王国で戦争となり、我が国が勝利したのだ。その戦争の中で、軍に助けられたことは今でも、昨日のように思い出せる。感謝しかない。だが、私を騙す、領主の地位から陥れたリース王国の連中は、私の家族を殺し、そして、領民に対して不埒なおこないもしたという。だけど―…、我が国に割譲されてから、領民の生活は向上し、我が国の教えに徐々にではあるが忠実になっていった。その姿を見ながら、我が国の支配は素晴らしいとしか思えなかった。それに私は、イルカル様に出会い、私を認めてくださいました。そして、私は偉大な支配になると言っていただけました。だからこそ、今度こそ、私の家族を殺し、かつての領民に不幸を背負わせていたリース王国に復讐しなければならない。リース王国は再度、我らの国に、先の戦争の原因となる悪夢の政策を実施しようとしている!! これは許されざることだ!!! リース王国という巨悪を征服して、我らの国の教えでしっかりと正しき道に導かなければならない!!! そうだ!!! そうだろ、賢きミラングの民よ!!!」

と、最後の方の口調は、はっきりと強くなるのだたった。

 これは、エルゲルダが口に出した言葉ではなく、エルゲルダの影武者が出している言葉だ。

 エルゲルダは、そこに立っていて、口パクで言っているだけに過ぎない。

 そのようなことができる機械を五年と半年の間で、サンバリアから輸入することができたのだ。

 ラウナンにとって操りやすいということが重視されるので、どうしても馬鹿な失言をする可能性が存在するので、そういう人物への対策として用いられたものだ。

 ラウナンもそのことに関しては、きっちりと準備をしているというわけだ。

 ちなみに、エルゲルダの声真似が得意な人は探せばいるので、何人かを確保し、彼らを起用するのだ。さらに、エルゲルダに声を発させることはしないので、エルゲルダの地声がバレる可能性は低いと思われる。

 そして、エルゲルダの影武者が言っていることの大元は、ラウナンやその部下であるシエルマスの者たちが考えたシナリオを基にしている。

 なぜなら、エルゲルダはすぐに失言をしてしまう可能性がある以上、ラウナンは常に睨みきかせている。

 だけど、同時に、女性と常時遊べるようにしていたりするので、完全にエルゲルダはラウナンに逆らうことを自発的にすることはできなくなっていた。

 ラウナンは、決して力という抑圧だけでなく、必要とあれば、快楽というものも平然と使えるというわけである。女性の人権を蹂躙したとしても、ミラング共和国の男尊女卑の考えで無視することができる。知らないのかと思われてもおかしくないであろう。

 そして、エルゲルダの影武者が言っていることは、要約すれば、リース王国への宣戦布告である。そのことに間違いない。

 この演説ような宣戦布告を言い終えると、ここに集まってきた者たちは喝采の拍手をおくる。

 数年前の先のミラング共和国とリース王国との戦争で、ミラング共和国の国民は物価高騰に苦しんだのだ。それが原因で戦争が起こったのだ。

 だからこそ、リース王国に勝利したとしても、恨みがなくなるわけではないし、勝利したことがより自分達はリース王国と戦っても勝てるという根拠のない気持ちを増幅させるのだ。

 自分達はリース王国に勝ったのだから、今度も。

 それに加えて、リース王国の征服ぐらい簡単なことだ。

 そんな気持ちに一切、根拠というものがないわけではないが、それでも、どこか不安の要素ではなく、驕りの要素が絡んでいたりする。

 そこに油断というものは潜む、彼らの国という体を蝕む。

 そのことに彼らは気づきもしない。

 哀れ。

 エルゲルダは、驚きの表情を浮かべる。

 『そうだ!! そうだ!!』

 「リース王国は我らの支配下に入るべきだ!!!」

 「先の戦争での恨みは終わっていない!!!」

 観客の声はまるで、津波だ。

 大きな津波であり、すべてを飲み込んでしまい、感情を恨み一色に変えて、後には何も残さないような感じだ。これに乗れなければ、その運命が待ち受けるかのように―…。

 エルゲルダは、

 (こんなにも―…。)

と、心の中で驚く。

 商品税の増税と通過税の創設は、エルゲルダとアルデルダ領の家臣とともにおこなった政策であることを知っている。

 だからこそ、この政策がここまで、自らがこれから支配する国の中で恨まれているとは露も知らなかった。それを現実に見せつけられているのだ。

 驚きと同時に、恐怖を感じてしまう。

 その恐怖で、尻餅をついてもおかしくはないほどの威力を浴びてしまうが、情けない姿を見せるわけにはいかないという気持ちで、何とか踏みとどまるのだった。

 そして、エルゲルダは体を動かすのも難しくなってしまうのだ。ミラング共和国の国民が抱くリース王国への恨みの強さに耐えることにすべての神経を使ってしまっている感じなのだ。

 しばらくの間、動けなくなるが、歓声が止むと、エルゲルダは、自らの話を終えて総統府の方へと戻っていくのであった。


 「エルゲルダ様、ありがとうございました。」

と、司会の者が言う。

 何人かの大臣の話が続いた後、リース王国への宣戦布告を終える。

 これをリース王国の者で、ミラング共和国に潜入している者たちは聞いている。

 だからこそ、驚きの表情をするだろうし、すぐに、リース王国へと知らせないという気持ちになる。

 そのことに気づくこともなく、式典を終え、司会の者も報酬を受け取って、帰路につくのだった。

 そんななかで、一人だけは、見逃すことはなかった。

 (リース王国の方も、エルゲルダが我が国の総統に就任するという情報を聞きつけて、ここまでやってきたというわけか。ふん、貴様らを殺す気はない。我が軍は、数々の戦争で勝利をおさめてきており、数年もの間、戦争することがなかったリース王国軍に負けるわけもない。それに、ラフェラル王国の件は、リース王国の件が片付き次第、再度、遠征すれば良い。国民など、操ること容易い。彼らの情報を少しだけ、私たちの意図しか流さないだけで、すぐに、我々の意図通りに考え、行動してくれるのだから―…。)

と、ラウナンは心の中で思う。

 ラウナンは、リース王国からの密偵を見逃すことはないし、場合によっては彼らを始末するのは簡単なものだ。

 だけど、ここでは始末しない。

 なぜなら、リース王国への宣戦布告を伝えてもらう役目があるのだから―…。ここで殺してしまっては意味がないし、正式な戦争であることを相手側に伝える必要があるのだ。

 複雑なルールのあるものであるが、それでも、宣戦布告している以上、奇襲を仕掛けたとしても、リース王国側から文句を言われる筋合いはない。ちゃんと、戦争するぞ、と言っているのだ。

 そして、ラフェラル王国よりもリース王国への遠征を優先する理由は、エルゲルダが領主として統治していた国を征服することで、エルゲルダの威光が増すことになるし、リース王国を支配することで、ミラング共和国の国民が抱いている恨みを拭い去ることもでき、かつ、ミラング共和国をより強化することができる。

 そのような意図を含めた上で、ラフェラル王国からリース王国へと遠征する場所を変更するのだった。

 (さて、そろそろ仕事に戻ることにしよう。今回、私は、エルゲルダの側にいることになりましょう。エルゲルダ自身が指揮しているように見せないといけませんから―…。新指導者は政治以外にも軍事でも優れているところを―…。そうしないと納得しない者たちもいますから―…。)

と、ラウナンは、心の中で続ける。

 ラウナンも分かっている。

 エルゲルダは、元々、リース王国における一つの領の領主をしていた人物であり、悪政で有名であり、かつ、一つの領主をミラング共和国に支配される愚を犯しているのだ。

 だからこそ、名誉挽回しないといけないのだ。

 特に、軍事面では、有能な軍事指揮をとることができるというところを証明しないといけない。まあ、実体は、ファルケンシュタイロを中心とするミラング共和国軍が指揮をとっていくのであるが―…。

 それでも、戦場で誰が指揮をとっているのかをミラング共和国の国民の多くが理解できるわけではないし、気づくこともない。関心がないわけではないが、指揮の実情を観察することはできないだろうし、軍の誰かから聞くことでしか分からないのだから―…。

 そういう意味で、情報統制がしやすかったりするものだ。

 数が限られるというのがここでは重要なミソとなっている。

 さて、ラウナンは、仕事のために、シエルマスの本部へと戻っていくのだった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(147)~最終章 滅亡戦争(2)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


番外編 ミラング共和国滅亡物語の最終章が始まりました。

予想以上に長くなることが避けては通れない最終章です。

第129話をさらに拡大して、ランシュ視点ではなく、第三者視点で、あの戦争を描かないといけないのです。100部分は優に超えそうな気がします。

そんな予感しかしません。

執筆状況に関しては、勿論、最終章です。

ネームの方は、第290話を超えて、第一編の最終章を進めているような感じです。

2023年度中に、どこまで番外編の最終章を進めることができるのか。

いろいろと付け加えてしまったことに反省しないといけません。


ということで、では―…。

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