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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第29話-1 一回戦

前回までのあらすじは、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、アンバイド、それに加えセルティーが一つのチームとして、ランシュの企画したゲームで戦うことになった。

第29話も分割していきます。第28話よりも分割数は少ないと思いますが―…。

 ランシュは言う、

 「ふん、俺が、神の求めに応じた人の偉大な騎士などではなく、王で、罰を受けるべき人間だと……、フッ……アハハハハハハハハハハハハ――――。何を言っているのかわからないぞ、セルティー。」

と、笑いながら―…。

 「わからなくても構いません。しかし、それは訪れることでしょうから―…。」

と、セルティーは少し小さな怒りのマークを浮かべながらも、冷静にランシュに言った。

 その言い方に対して、ランシュは、

 「セルティー、お前が言っていることなんて、訪れることはない。残念ながらなぁ~。」

と、自信いっぱいにして言う。

 こうして、ランシュの企画したゲームは、開幕していくのであった。


 【第29話 一回戦】


 時は、すでに夜になろうとしていた。

 場所は、リースにある城。そこは、セルティーなどの王族の住む所であった。

 瑠璃、李章、礼奈、クローナ、アンバイドは、そこで今日からランシュの企画したゲームが終わるまでの間の宿泊場所であり、修行場所となった。

 「ふう~…、久々のお風呂はよかったぁ~。」

と、瑠璃は言う。そう、瑠璃は、異世界に来てから初めて湯舟に浸かることができたのだ。

 それは、礼奈も同様であった。

 ちなみに、今の場所はリースの城の中にある大浴場がある場所から少し近くにある廊下であった。

 「そうね。ここしばらくは布製のタオルで体を拭いたりすることのほうが多かったから、久しぶりの入浴は気分がいいわ~。体中が不潔にならなくて。」

と、礼奈は言う。

 「そうですか。気に入っていただけてなによりです。で、瑠璃さん、礼奈さん、今回のゲーム、よろしくお願いいたします。」

と、セルティーは改めて、瑠璃と礼奈に向かって礼をするのであった。

 「いえいえ、別にそんなことをしなくても一緒のチームですから。」

と、礼奈は言う。

 そう言われてしまうと、顔を上げざるをえなかった。そう、瑠璃と礼奈に対して、あまり気を使わせたくないと思ったからである。

 「それで、お二人はランシュに招待されたのですか。アンバイドは招待された言っていましたが…。」

と、セルティーは瑠璃と礼奈に尋ねる。

 「ええ、ルーゼル=ロッヘの近郊で急に現れて、招待状を渡してきました。」

と、礼奈は言う。

 瑠璃は、礼奈とセルティーの会話を聞きながら、考えていた。

 (たぶん、ゲームの中で確実にランシュという人も出てくると思う。しかし、今の私では対抗できないし、勝つこともできない。アンバイドさんの修行でどこまで強くなれるかわからない。それに、石化された人たちは、大丈夫だろうか―…。お父さんや、お母さん、お兄ちゃん。)

と、瑠璃は自らの育った世界のこと、家族のことを心配する。それは、リースの城の中で現実世界でも毎日に入っていた風呂にやっと浸かれることができたことによって気持ちをリラックスすることができたことによる気持ちの余裕が生じたゆえであった。だから、自らの状況を考え、心配することもできているのだ。

 そして、瑠璃がこれからしなければならないことが、今の自身に本当に可能なのかを悩んでしまうのであった。それは不安だったが、少しだけ自らの状況を見つめなおす機会が提供され、

 (うん、今はとにかくやれることをやろう。)

と、瑠璃は意思を強くするのであった。そう、右手をグーにして、ガッツポーズに近いことをしながら―…。

 一方で、話を戻して、礼奈とセルティーの会話は、

 「そういうことですか。」

と、セルティーが納得する。そう、礼奈は、セルティーにランシュが瑠璃たちに渡した招待状の経緯について説明したことに対してであった。

 「私たちは、とにかくランシュという人を倒して、ベルグの居場所を突き止めたいのです。私たちの―…。」

と、礼奈は言う。しかし、途中で言うのを止める。礼奈は自分が生まれ育った現実世界について言うべきではないと思ったからだ。異世界のセルティーに現実世界のことを言うのは、セルティー自身の理解を得られず、怪しまれるという結果を生み出すことになる。

 ゆえに、

 「これ以上の理由に関しては、言えない事情があります。」

と、礼奈は正直にベルグの居場所を突き止める理由を言えないことを言った。

 「礼奈殿。あなたにも言えない事情がありましょう。ここでは必要以上に問いません。」

と、セルティーは言う。礼奈が何か言えない理由があるのではないかということは、礼奈の言い方からわかっていた。ゆえに、必要に聞くというのは、礼奈を傷つける可能性、不愉快にさせると思い、あえてここでは聞くような真似はしなかった。

 「そうしていただけると助かります。」

と、礼奈は言う。

 そして、瑠璃、礼奈、セルティーはリースの城の廊下を進んでいった。


 一方で、女子たちが浸かった大浴場とは別に、小規模ではあるが、現実世界の一般家庭世帯の2倍に相当する広さのお風呂に入り、あがった李章とアンバイドは、今、アンバイドが泊ることとなっている部屋にいた。

 李章とアンバイドの双方に会話はなかった。

 いや、双方とも会話する必要がなかったのだ。

 それに、アンバイドは、革製のリュックの中にある自らの所持品を確認していた。

 李章は、ずっと考えていた。そう、自らの武器である抜いていない刀を見ながら―…。

 その刀を使うべきどうかを―…。

 声のしない静寂が支配している中に、ドアの音がなる。

 李章とアンバイドは、その音に気づき、その方向へと顔を向ける。

 ドアは開かれた。セルティーによって―、部屋の中に向かうように―…。

 「おう、お前らか。」

と、アンバイドは言う。そして、瑠璃、礼奈、セルティーを見ながら。

 李章は立ち上がり、

 「あの~、すみません。こんな豪華な場所に宿泊させてもらって。」

と、セルティーに向かって、お辞儀をする。そう、このようなリースの城に泊まらせていただき、かつ、無料で食事や修行場所まで提供してもらったことに対して、申し訳なく思ったのだ。

 「いえ、それに関しては、別に構いません。むしろ、こちらがあなたがたを巻き込んでしまって申し訳ないぐらいです。それに、この場所を宿泊に提供することぐらい、安いものです。」

と、セルティーは言う。

 セルティー自身も気持ちが落ち着いたのか、冷静に考えられるようになったのか、そのために、ランシュに巻き込まれた瑠璃、李章、礼奈、クローナ、アンバイドに対する申し訳ないという気持ちが沸き起こったのだ。

 ゆえに、李章の宿泊の困惑に対して、相手が不快にならないようにするために、自らの非という面を出して、それを打ち消そうとしたのである。

 しかし、李章にはかえって逆効果になり、

 「いえ、こちらこそ、セルティー王女を巻き込んでしまったので―…。」

と、より申し訳なそうになったのであった。

 それを見たアンバイドは、

 「いちいち、面倒くさいほど申し訳なそうにするな。そんなことしていたら、すぐに夜が明けてしまう。だったら、これからのことについて話し合ったほうがよっぽど有意義だ。で、クローナはどうした?」

と、アンバイドは言う。それは、セルティーと李章の申し訳ないのやり取りが繰り返されるのは、結局、決着のつかない泥沼になってしまうので、さっさと止めさせたほうがいいと判断したためであった。そのために、別の話題を提供する必要があった。そう、これからランシュの企画したゲームを戦っていくためのチームの方針を―…。

 そして、チームの方針を決めるための話し合いをするために必要なクローナがいないことをアンバイドは疑問に思いながら指摘したのだ。

 「クローナですか。クローナならもう少しお風呂に浸かっていると言っていましたよ。」

と、瑠璃が言う。

 「そうか。」

と、アンバイドは答える。

 (長風呂するタイプか。こりゃ~どうしてくれんだ。李章とセルティー(あいつら)がまた申し訳ない合戦が始まってしまったら―…。)

と、苦虫を噛み潰したような表情をするアンバイドであった。

 アンバイドの李章とセルティーによる申し訳ない合戦は、起こることはなかった。

 瑠璃と礼奈の後ろから、アンバイドがさっき尋ねた人物が現れたのだ。

 「おまたせ。」

と、クローナは言う。上機嫌での表情で―…。理由は、人生で初の大浴場によるお風呂だったのだ。わくわくして、少しでも長く入っていたいと思ったからだ。さらに、クローナは、お風呂という言えば、水風呂が基本であったし、暖かいお風呂というものにも驚いたのだ。そのために、ふにゃ~あとしかけたのだ。つまり、のぼせかけたので、そろそろお風呂をあがった方がいいのではないかと思い、瑠璃たちがあがってから少しの時間を経った後にそうしたのだ。

 クローナが来たのを確認したアンバイドは、

 「揃ったことだしな。始めるとするか。」

と、言う。

 そして、アンバイドの部屋で、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドでのランシュの企画したゲームでの方針を決めていくことになった。


 その話し合いを開始してすぐに、

 「で、どうやって対抗していくつもりだ。ランシュとその近くにいる人物は、確実にお前らよりも強いが―…。俺が修行したしても、そこまで追いつくには時間があっても、1回戦までに10000回中1回ランシュに勝てるようにするので精一杯だぜ。」

と、アンバイドが言う。そう、現状、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、それに含めてセルティーを修行させたとしても、1週間で修行を行ってよくても、ほとんど奇跡でも起きない限り瑠璃たちがランシュに勝てないことを告げる。

 (しかし、もし、ランシュやその近くにいる人物が最終戦、10週間後の最終ゲームで参加してくるのならば、五分のところまでもっているかもしれない。)

と、アンバイドは心の中で思考する。そう、ランシュが最終ゲームである第10回戦に登場することを希望しながら―…。

 「それは―…、……………どうしましょう。」

と、セルティーが気分を悩ませながら言う。

 それに反応して、アンバイド以外はどんよりした気持ちになるのであった。

 それがしばらく続くことになった。

 ここで、現在のアンバイドの宿泊部屋の状況についてみると、円を囲うように6人が座っていた。その円は、部屋の入口の扉に近い方にクローナ、部屋の入口を見て右側から、セルティー、アンバイド、李章、礼奈、瑠璃のように円になっていた。アンバイドが部屋の入口から最も遠い位置にいた。

 そのどんよりとなる雰囲気は、何となくではあるが、アンバイドは予測することができた。

 ゆえに、

 「しょうがない。ある程度、俺の見立てを言うことにするか。まず、今回10回戦分を戦うことになる。そうなってくると、希望的観測ではあるが、ランシュが出てくるのは最終戦となる。ランシュ(あいつ)を見た印象から考えて、こういうゲームを盛り上げる方向にもっていこうとするし、つまらないままで終わらせるとは考えにくい。だが、1回戦からあまりにも雑魚を出してくるとは考えられない。つまり、そこそこの実力の者を出してくるだろう。なら、1回戦の最初の試合は、それなりに天成獣の戦いに慣れている者を出したほうがいい。」

と、アンバイドはこの部屋にいる全員に述べる。

 そして、

 「それに、1回戦の相手チームが1人だった場合、その勝敗がチーム勝敗に直結する可能性がある。そう考えると最初の試合は、結果としてそうなる。」

と、アンバイドは言い、そして、考えをだした。

 その意見に対して、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、セルティーは、ある一人の人物に視線を向ける。

 その視線に向けられているある人物であるアンバイドは、

 「何だよ。」

と、イラっとしながら言う。

 そして、しばらくの沈黙がアンバイドの宿泊部屋に訪れることになった。

 そんななかで、この状態をやぶったのが、

 「俺は残念ながら1回戦は後ろの方で参加する。一番後ろの順番でな!! 俺よりも他に適当な奴がいるだろう。」

と、アンバイドは第1回戦の最初の試合には出ないと言った。それは、アンバイドは相手側に、特にランシュの上司であるベルグに自らの実力を必要以上に知られたくないということと、相手の実力がどれほどかわかっていない段階で戦う気はなかった。アンバイドはもう一つの自身の武器を使って戦うことをなるかどうかを見極める必要があったのだ。これが、今後の瑠璃、李章、礼奈、クローナの修行のレベルをどれぐらいにするかの判断の材料となるからだ。

 「でも、アンバイドは、ルーゼル=ロッヘででかい闇の竜を倒しているし―…。」

と、クローナは言う。

 それに反応して、

 「ええ~!! 竜を倒したのですか。それならば、かなり、お強いのですね、アンバイドさんは。」

と、セルティーは驚きながら言う。

 この異世界における竜は、伝説上の生き物であるが、現実にその存在は確認されている。竜は強く、天災をもたらす生き物であり、竜を倒すことができる人間は、この異世界のなかでもそんなにはいないといわれる。むしろ、両手の指で数えることができるぐらいのことである。

 「あのなぁ~、ありゃ~、召喚された竜で、あの黒フードの奴の実力以上だとしても、限度があって、あいつの力のせいぜい10倍までしか発揮できない。本当の竜だったのなら、そんなレベルじゃない。あんなのなってくると、ローのババアのような魔術師くらいの実力じゃないと無理なんだよ。」

と、アンバイドはクローナに向かって怒りながら言う。

 そう、アンバイドが本物の竜に出会ったとしても、かすり傷を負わせる程度で倒すことすらできないのだ。これだけは、天成獣を宿っている武器での戦いに関係なく、どれくらい力を引き出せるかにかかっているからだ。

 「ロー…ですか。それって魔術師ローですか?」

と、セルティーは尋ねる。

 アンバイドが、

 「そうだが。それが何だ。」

と、言う。

 セルティーは、

 「もしかして、ローさんに会ったことがあるのですか?」

と、尋ねる。

 アンバイドは、

 「ああ、あるにはあるなぁ~。だが、あのババアとは二度と会いたくないし、話題にもしないでほしい。」

と、苦々しそうな表情で言う。その気持ちは、心の中でそう思っているほどであった。

 「私は、ローさんと一緒にいたよ。」

と、クローナは言う。

 そして、セルティーは、

 「私も数日前にローさんに会いました。彼女が言っていた、()()()()()()()()()()について何か知りませんか。」

と、言った。そう、セルティーは、ローは探していたのだ、異世界から来た瑠璃、李章、礼奈を―…。

 そして、セルティーのさっきの言葉を聞いた瑠璃、李章、礼奈は、驚かずにはいられなかった。


第29話-2 一回戦 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次の更新ぐらいで、一回戦を開始できると思います。予定ですが―…。

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