番外編 ミラング共和国滅亡物語(136)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(44)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ラフェラル王国を併合しようとするミラング共和国。ミラング共和国でラフェラル王国で活動している商人達は、ミラング共和国からラフェラル王国に流れる商品の関税の撤廃を要求する。
ラフェラル王国の王族と貴族の多くは、その関税の撤廃に賛成するが、王族の一人であるリーガライドは反対する。そのせいで、冷や飯を食わされるのであった。リーガライドは―…。
リーガライドはそんななか、妹であるフィルスーナとともに傭兵隊「緑色の槍」のトップのアルスラードに会う。かつて、リーガライドは傭兵隊「緑色の槍」に所属したこともある。
その中で、三者の話し合いとなり、フィルスーナによって、クーデターを起こすことが決定されるのだった。計画へと移行する。
そのようなことを起こすことが都合が良いと思っているのは、ミラング共和国と繋がっている貴族達や第一王妃の勢力であった。そんななかで、シエルマスも活動をおこなっており、「緑色の槍」に派遣しているシエルマスのスパイから情報を得るのだったが、フィルスーナやアルスラードに気づかれており、スパイらは粛清されていくのだった。
その後、そのスパイが関係していたラフェラルアート(ラフェラル王国の首都)のスラム街にあるアマティック教の教会で、教会の主要な信者とシエルマスのスパイをすべてフィルスーナとラフェラル王国の裏の者達によって始末されるのだった。そのことにより、情報が遮断されることになる。
ラフェラル王国から情報が届かなくなったことに対して、シエルマスの西方担当首席がラウナンに報告し意見をもらおうとするが、その頃、ラフェラル王国ではリーガライドらのクーデターは成功するのだった。
それはどのような過程であったのだろうか?
ラフェラル王国におけるクーデター発生後、まず、宰相を中心とする貴族政力がフィルスーナとラフェラル王国の裏の者により、気絶された後、拘束される。さらに、ファングラーデはリーガライドによって捕まることになった。
第一王妃であるヒールの方は―…、クーデターを把握し、誰が起こしているのかを妄想という感じで突き止める。失敗した人間を処分しようとするが、その時、フィルスーナが現れ、ヒールが個人で雇っている裏の者で始末しようとするが失敗し、裏の者を失うという結果となった。その時のヒールの悲鳴によって、衛兵が駆けつけて、逃げたフィルスーナが狂気をはらんだ人間であることを言うのであった。
その後、ヒールは自らの執事長を軍部の拠点へと向かわせる。自らの指示をファングラーデ王の指示としてクーデター側を鎮圧するように、という命令を―…。だけど、軍事貴族もすでにクーデター側に捕らわれており、軍部もたたき上げが指揮するような状態となっており、ヒールの執事長は捕まるのであった。
フィルスーナは、再度、ヒールのもとへと向かい、少しの会話の後、ヒールを殺し、ラフェラル王国のクーデターは、リーガライド側が勝利することになるのだった。
その後、リーガライドは、ラフェラル王国の支配をフィルスーナとともにしていくことを宣言するのだった。フィルスーナにとっては、迷惑なことでしかないが―…。
一方、フィッガーバードの方は、ミラング共和国の首都ラルネへはあともう少しの距離まで近づくのであった。
そんななか、シエルマスの本部では、東西南北と国内担当の首席、報告官、統領による会議がおこなわれる。その会議の間に、報告官の見習いからラフェラル王国の第一王子であるフィッガーバードがミラング共和国の首都ラルネにやってくるのだった。ミラング共和国の総統であるシュバリテと会見するために―…。ラウナンにとっては好機だった。
ミラング共和国の首都ラルネに到着したフィッガーバードは、これからミラング共和国総統シュバリテとの会見を楽しみにするのであった。そして、フィッガーバードとシュバリテの会見が開かれ、シュバリテはラフェラル王国でクーデターが起きたことをフィッガーバードに伝えるのだった。この会見は、フィッガーバードの要請を受け入れ、ミラング共和国軍がラフェラル王国に派遣されることが決まるのであった。
その後、フィッガーバードは、アマティック教の教団本部に向かうのだった。そこで、イルカルと面会することになる。その場で、イルカルはフィッガーバードを洗脳するのだった。これがシュバリテの狙いであり、ラウナンにとって都合が良い行動だと認識しての行動であった。だが、シュバリテの方にも何かしらの意図があるようだ。
時間が経過し、ラフェラル王国軍の方はミラング共和国との国境方面に軍を出征させる。
一方、ミラング共和国では、ラフェラル王国への遠征のための式典が開催されるのだった。そこでのシュバリテの言葉は短いものであり、彼はこの遠征に対して、何かしらの思いがある。それはまだ、明かされることはなく、フィッガーバードの話へとプログラムは進んでいくのであった。最後は、ファルケンシュタイロの話となり、その自信満々さと一部の嘘が吐かれるのであった。
そして、少し時間が経ち、ラフェラル王国軍の方も国境に軍を配置するのだった。
その後、リーガライドとフィッガーバードは対面する。戦いは火ぶたをきるのであった。
フィッガーバードは矢を放つ。
シュッ!!!
フィッガーバードの弓の腕は、そこまで良いというわけではない。
それでも、他の武器より上手くを扱うことができる。
適性があったかという判断はしない方が良い。
今度は、リーガライドから見て、右側に逸れていく。
リーガライドは、すぐにフィッガーバードを分析する。
(……フィッガーバードの弓の腕前は決して良いとは言えない。今の矢は、確実の右側に逸れるはずだ。それに、天成獣の宿っている武器を扱えるようになっているわけじゃない。フィッガーバードには今まで、適性があったわけじゃない。)
と、リーガライドは心の中で思う。
その間に、リーガライドは、フィッガーバードの元へと向かい、すぐに攻撃できるような状態にする。
リーガライドの天成獣の宿っている武器は剣であり、属性は鉄である。
鉄であるが周囲に影響を及ぼすことも十分に可能である。
そのような自らの天成獣のことを理解しながら、どのような攻撃の可能性があるかを何度も探る。
練習や修行は、毎日している。
天成獣の宿っている武器を扱うことに対して、学ぶことの終わりというものは存在しないのだから―…。
日々修練。
そういうことだ。
リーガライドは、すぐにフィッガーバードの元に接近し、剣の一振りで完全にフィッガーバードを真っ二つにすることができるような場所まで近づいてきた。
(周囲の気配を感じない。ならば、斬るのみ!!!)
と、リーガライドはすぐに、心の中で思い、左から右へと横に一閃を、剣を振るう。
ズン。
そのような空気が張り裂けるような音がする。
決して大きな音ではないが、その剣撃の強さを理解することは十分に可能である。
だが―…。
(チッ!!!)
リーガライドの剣撃は、フィッガーバードに触れるその手前で、誰かが持っているであろう武器によって阻まれるのだった。
その武器とは槍であり、かなり長く伸びているのだ。
リーガライドは自分が刺されることがないように、すぐに、距離を取りながら、防御の態勢をとる。
そのことが正解だったのかリーガライドは、思考の中で理解することはできなかったが、勘によってすぐに体を反応させて動かし、槍を持っていると思われる相手の次の攻撃をさせないようにすることには成功したようだ。
と、同時に―…。
(気配を消せるのか。かなり厄介だ。)
そう、リーガライドが最も危険だと感じた要素は、気配を消せるということだ。
気配を消せるということは、どこから攻撃をしてくるのか分かりずらいということだ。
そうなってしまうと、一瞬でも気を抜くことはできない。
「私を殺そうとしたな。だが、無理だ。私は神によって守られている。このようにな。」
と、フィッガーバードが言う。
フィッガーバードの言葉を聞く者は誰一人としていないし、聞いたとしても、今はそれどころではないからだ。
真剣な場で、一人だけ空気が読めないことを言ってしまっているのは、フィッガーバードである。
そのことに気づかないのは、フィッガーバードのみである。
他者からの指摘がなければ気づくことすらできないであろう。
可哀想な人間だと思うことは簡単であるが、気づくというのは冷静に自分を第三者として見ることができ、かつ、現実逃避していない場合に限られるのだろう。
そのための条件をすべてにおいて当て嵌まるとは限らないが―…。
フィッガーバードの高らかな言い方とは裏腹に、リーガライドは警戒の目をする。
「フィッガーバードの近くに誰かいる。姿と気配を消しているから気をつけろ!!!」
と、リーガライドは周囲に向かって言う。
これは、相手のことを知っているぞ、ということを言いながら、味方に対して、正確な情報を伝えるという一面も持ち合わせている。
戦闘経験がある以上、どういうことが今、自分達に求められているのかをしっかりと理解しているのだ。
(…………………さあ、どうやって、槍の奴の存在を白日の下に晒すべきか……だな。)
リーガライドのすべきことは決まっている。
まず、槍を持っていると思われる者で、気配を消せるものを探し出すことが重要になる。
そいつをどうにかしないと、リーガライドを始末することなどできやしない。
それに、リーガライドの言葉を聞いた者で、リーガライド側の人間はすぐに、自らの武器を構える。
彼らも軍事訓練を受けた軍人である以上、今が警戒しないといけない時であることを理解している。
そのように理解できていないのであれば、戦場では、その命を失うことをもって、理解させられるだけであろう。いや、それでも理解できないのかもしれない。
そのような対峙の中、槍を持って隠れている者も、フィッガーバードの近くで、相手に気づかれない場所に静かに移動し、双方の動向を探るのだった。
それに加えて、隙を窺うことも忘れない。
そんななか場の空気を読めていないのか、フィッガーバードは怒りの感情をあらわにする。
「何、私の話を無視している!!! 次期、ラフェラル王国の国王にして、繁栄の主となるラフェ=フィッガーバードが言葉を発したのだ。無視するのはおかしいだろ!!! 何か返事をしろ!!!」
と。
フィッガーバードの言葉をここにいる者たちは無視する。
そんな馬鹿なことに構っている暇はない。
すでに、戦争は開始されたのだ。
周囲も衝突し、激しい殺し合いがおこなわれている。
そんな場に、自分に注目しろとか言っている馬鹿の相手をしている気はない。
フィッガーバードは、戦闘経験はない。
初陣は、後方で大人しく優雅に飲み物を飲みながら、重臣たちに向かって、暇だと不満をもらしてばかりいたのだ。
だからこそ、本物の戦闘経験というものがない。
一方で、リーガライドはその経験がある以上、戦争とはどういうものかを肌身で理解しており、一瞬の気の緩みが最悪の結果に繋がることを理解しているのだ。
その差の中にあったとしても、フィッガーバードは幸運かのように生き残っている。
その間―…、
(……………これ以上、フィッガーバードをこのような場におらせるわけにはいかないな。まあ、戦争を開始した以上、フィッガーバードが死んだとしても、征服戦争に切り替えれば十分だ。ラウナン様もラフェラル王国の征服を望まれているのだ。王族なんて、最後は全員あの世行きなのは確定なのだからなぁ~。)
と、槍を持っている者は心の中で思う。
声を聴いた感じでは、シエルマスの属する者であり、東方担当首席のダウラーリ=フィックバーンである。フィックバーンは、大事なラフェラル王国から要人であるフィッガーバードを直接を守っていた。戦争が開始される前に、殺害されてしまえば、ミラング共和国軍がラフェラル王国を攻めるための口実がなくなってしまうし、自らが大失態を犯したことになり、今回の場合は確実に粛清されてしまうのだ。そうである以上、自身がやった方が得であると判断しているのだ。
フィックバーンは、大人しく裏でフィッガーバードの命を守りながらも、今、戦争が開始したことにより、フィッガーバードの命などほとんどどうでも良くなった。
というか、なるべくはフィッガーバードの命を守るであろうが、それでも、危険だと判断した時は、フィッガーバードが殺されても良いと思っている。
すでに、戦争は開始されており、ラフェラル王国の王族は結局、全員始末することになるのだから、ここで殺して問題はない。
だけど、なるべく始末せず、生かしつつ、上手くことを運ぶのが重要というわけだ。
一方で、無視され続けているフィッガーバードは、
「無視をするのも良い加減にしろよ!!! 俺を誰だと思っていやがる!!! 俺様はラフェ=フィッガーバードだ!!! ラフェラル王国の次期国王の!!! ここまで無視するなら、殺してやる!!!」
と、フィッガーバードは言う。
言いながら、弓を用い、矢を射る。
勿論、リーガライドに向かって―…。
そのことにリーガライドは気づいているし、隙を見せる気もなかった。
そして―…。
(動くか。)
と、リーガライドが心の中で思うと、動き始め、フィッガーバードの矢を避ける。
避けられたことに対して、フィッガーバードは、
(避けられた!!! クソッ!!!)
と、心の中で思う。
そんななかで、リーガライドはすでに準備を完了させていた。
すでに、フィッガーバードへの始末することができる方法を―…。
槍を持って、隠れている奴に気づかれずにやる方法を―…。
リーガライドは、フィッガーバードに近づくことなく、遠距離からの攻撃をするのではなく―…。
(よし、気づかれずに到達したようだな。)
と、リーガライドが目で見ながら確認すると、剣を持っていない手を横にわずかだけど振る。
同時に―…。
ザン!!!
「なっ!!!」
と、フィッガーバードは驚くが同時に、自分が何をされたのか理解することができなかった。
リーガライドがフィッガーバードにしたことは簡単で、フィッガーバードの周囲に自分がこっそりと展開した鉄を操作して伸ばし、リーガライドが横に振ると同時に、フィッガーバードの喉部分を切り裂いたのだ。
これで、フィッガーバードは助かることはないし、言葉を発することはもうできないであろう。
だけど、やっと、「なっ!!!」という言葉を息をすれすれにしながら、何とか吐き出すことができたが、もうできない。
ゆっくりと倒れていくのだった。フィッガーバードは―…。
(どういうことだ。私の意識が―…。言葉も発することができないなんて―…。ふざけるな、ふざけるな、私は神の加護があるんだ。神の加護があれば、私は何度でもこの肉体は生き返……………………。)
バタン。
フィッガーバードは倒れる。
意識はすでに失われているし、もう数分後もしないうちに、フィッガーバードは自らの人生を終えることだろう。
そして、この場に、ミラング共和国軍の側に、回復させることができる者はいない。
フィッガーバードが開戦を宣言すると同時に、後方の方へと真っ先に向かって行ったのだから―…。
そして、ラフェラル王国軍の側は、フィッガーバードを助ける気はなかった。
この人物があまり宜しくない人物であることを知っているからだ。
さらに、敵方である以上、助ければ、自らを不利にさせてしまうのだ。
(……フィッガーバードがもうやられたのか。まあ、仕方ない。リーガライドに隙ができた。そこを狙うだけだ。)
と、判断したフィックバーンは槍で、リーガライドを攻撃しようとする。
その攻撃にすぐにリーガライドは気づき、避けようと考えるが―…。
「餅は餅屋だな。」
と、リーガライドは言う。
リーガライドは、この刹那の間に気づくのだった。
やっぱり来たのか、という感じで―…。
そして、フィックバーンはその人物が今の、リーガライドを狙った攻撃を―…。
キーン。
と、短剣で防ぎかつ黒い装束で身を包まれた女であることを―…。
(なぜ、女がここにいる!!!)
と、フィックバーンは心の中で驚く。
感情に出すことはしないように最大限配慮する。
そうしないと、感情が気づかれてしまえば、相手に自らの目的を読まれてしまう可能性を高めてしまうからだ。
(間に合った。)
と、今、かけつけてきた者が心の中で言う。
この人物が女性であることは、フィックバーンが心の中で思っていることから、分かる。体のラインとかそういうので―…。
(来たのか、ならば―…。)
と、リーガライドは心の中で思いながら、
「任せた。」
と、女の方に向かって言う。
女の方は、頷くだけだった。
リーガライドも分かっている。
女が今、仕事をしている状態であることを―…。
だからこそ、リーガライドは、女と自身の関係というものを何も言わず、「任せた」という単語だけを言い、その場から去り、自らの作戦の方へと向かうのだった。
これ以上、ここにいたとしても、自分はあまり意味がないのだから―…。
リーガライドは、アルスラードと合流するために、この場からいなくなるのだった。
それを追おうとしたフィックバーンであったが、
「私が相手。」
と、女が言い、リーガライドの方に向かわせないようにする。
リーガライドも、フィックバーンの武器を知っていたのか、素早くできるだけ遠くに離れるのだった。
そのせいで、フィックバーンは、リーガライドへと攻撃することができなくなった。
(チッ!!!)
と、心の中で思いながら―…。
フィックバーンは同時に、フィッガーバードの周りにいたお付き者たちに声をかけようとしたが―…。
「すでに始末している。」
と、女は言う。
そして、フィックバーンは辺りを素早く見回すと、そこにはフィッガーバードのお付きの者の遺体があった。その全員の―…。
(いつの間に!!!)
と、フィックバーンは驚くのだった。
これをなしたのは二人だ。
一人は女であり、音がない領域を作り出し、そこから素早く短剣で、対象の首を斬り裂いたのだ。
そして、もう一人は、リーガライドであり、フィッガーバードを殺す時に同時に、展開したのだ。
生きている限り、この場の情報が敵に漏れる可能性が高いと判断して―…。
女は―…、
(兄様は、作戦に向かわれましたか。)
と、心の中で思う。
女の正体は、リーガライドの妹であるフィルスーナ。
この戦場の場所に二日でラフェラルアートから向かったということになる。
ここで、一つの戦いが始まるのだった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(137)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(45)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
では―…。