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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
477/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(131)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(39)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ラフェラル王国を併合しようとするミラング共和国。ミラング共和国でラフェラル王国で活動している商人達は、ミラング共和国からラフェラル王国に流れる商品の関税の撤廃を要求する。

ラフェラル王国の王族と貴族の多くは、その関税の撤廃に賛成するが、王族の一人であるリーガライドは反対する。そのせいで、冷や飯を食わされるのであった。リーガライドは―…。

リーガライドはそんななか、妹であるフィルスーナとともに傭兵隊「緑色の槍」のトップのアルスラードに会う。かつて、リーガライドは傭兵隊「緑色の槍」に所属したこともある。

その中で、三者の話し合いとなり、フィルスーナによって、クーデターを起こすことが決定されるのだった。計画へと移行する。

そのようなことを起こすことが都合が良いと思っているのは、ミラング共和国と繋がっている貴族達や第一王妃の勢力であった。そんななかで、シエルマスも活動をおこなっており、「緑色の槍」に派遣しているシエルマスのスパイから情報を得るのだったが、フィルスーナやアルスラードに気づかれており、スパイらは粛清されていくのだった。

その後、そのスパイが関係していたラフェラルアート(ラフェラル王国の首都)のスラム街にあるアマティック教の教会で、教会の主要な信者とシエルマスのスパイをすべてフィルスーナとラフェラル王国の裏の者達によって始末されるのだった。そのことにより、情報が遮断されることになる。

ラフェラル王国から情報が届かなくなったことに対して、シエルマスの西方担当首席がラウナンに報告し意見をもらおうとするが、その頃、ラフェラル王国ではリーガライドらのクーデターは成功するのだった。

それはどのような過程であったのだろうか?


ラフェラル王国におけるクーデター発生後、まず、宰相を中心とする貴族政力がフィルスーナとラフェラル王国の裏の者により、気絶された後、拘束される。さらに、ファングラーデはリーガライドによって捕まることになった。

第一王妃であるヒールの方は―…、クーデターを把握し、誰が起こしているのかを妄想という感じで突き止める。失敗した人間を処分しようとするが、その時、フィルスーナが現れ、ヒールが個人で雇っている裏の者で始末しようとするが失敗し、裏の者を失うという結果となった。その時のヒールの悲鳴によって、衛兵が駆けつけて、逃げたフィルスーナが狂気をはらんだ人間であることを言うのであった。

その後、ヒールは自らの執事長を軍部の拠点へと向かわせる。自らの指示をファングラーデ王の指示としてクーデター側を鎮圧するように、という命令を―…。だけど、軍事貴族もすでにクーデター側に捕らわれており、軍部もたたき上げが指揮するような状態となっており、ヒールの執事長は捕まるのであった。

フィルスーナは、再度、ヒールのもとへと向かい、少しの会話の後、ヒールを殺し、ラフェラル王国のクーデターは、リーガライド側が勝利することになるのだった。

その後、リーガライドは、ラフェラル王国の支配をフィルスーナとともにしていくことを宣言するのだった。フィルスーナにとっては、迷惑なことでしかないが―…。

一方、フィッガーバードの方は、ミラング共和国の首都ラルネへはあともう少しの距離まで近づくのであった。

そんななか、シエルマスの本部では、東西南北と国内担当の首席、報告官、統領による会議がおこなわれる。その会議の間に、報告官の見習いからラフェラル王国の第一王子であるフィッガーバードがミラング共和国の首都ラルネにやってくるのだった。ミラング共和国の総統であるシュバリテと会見するために―…。ラウナンにとっては好機だった。

ミラング共和国の首都ラルネに到着したフィッガーバードは、これからミラング共和国総統シュバリテとの会見を楽しみにするのであった。そして、フィッガーバードとシュバリテの会見が開かれ、シュバリテはラフェラル王国でクーデターが起きたことをフィッガーバードに伝えるのだった。この会見は、フィッガーバードの要請を受け入れ、ミラング共和国軍がラフェラル王国に派遣されることが決まるのであった。

その後、フィッガーバードは、アマティック教の教団本部に向かうのだった。そこで、イルカルと面会することになる。その場で、イルカルはフィッガーバードを洗脳するのだった。これがシュバリテの狙いであり、ラウナンにとって都合が良い行動だと認識しての行動であった。だが、シュバリテの方にも何かしらの意図があるようだ。

時間が経過し、ラフェラル王国軍の方はミラング共和国との国境方面に軍を出征させる。

一方、ミラング共和国では、ラフェラル王国への遠征のための式典が開催されるのだった。そこでのシュバリテの言葉は短いものであり、彼はこの遠征に対して、何かしらの思いがある。それはまだ、明かされることはなく、フィッガーバードの話へとプログラムは進んでいくのであった。

 フィッガーバードが壇上に上がる。

 観衆は、フィッガーバードのことを静かに見守る。

 心の中で嘲笑しながら―…。

 そのことにフィッガーバードは気づくこともなく―…。

 「初めまして。私はラフェラル王国の第一王子であり次期国王となるラフェ=フィッガーバードである。」

と。

 このフィッガーバードの言い方は、傲慢さというものがわずかばかりに感じられるものである。

 だけど、その傲慢さすら受け入れてしまうのだ。多くの観衆は―…。

 それは寛容な気持ちからそのようなことになるのではなく―…。

 「フフフフフフフフフ、何、威張っているの、こいつ。馬鹿じゃないの。」

 「馬鹿だからラフェラル王国の王子は―…。」

 「やっぱり、王子には、我々の素晴らしい教育が必要なのよ。」

 そう、侮蔑する感情によってなされているのだ。

 馬鹿にするということも含めて―…。

 すでに、彼らは自分が属している国が一番偉く、立派であり、高貴であると思っていて、それ以外の国は劣っていて、馬鹿で、愚かであるとさえ思っている。

 そして、ミラング共和国に属している自分は、国と同様に一番偉く、立派であり、高貴な人物であると思っているし、そのような存在であると認識している。

 だけど、決して、彼らがそのような人物になるために、どのような行動が良いのかを具体的に考えたり、実行したりしたわけではない。彼らはミラング共和国の活躍に便乗しただけの、何も変わることができなかったただの人なのだ。

 いや、むしろ、ミラング共和国の活躍のせいで、心がどんどん荒んでいってしまったというのが良い表現であろう。

 そして、自分が偉い人物であると思うために、他者を見下すことで、自分が優位であると思うことが正しいと勘違いしており、現実もそうだと思っているのだ。

 だけど、本当の意味での現実は、そのようなことを容認した覚えはないし、認可したわけでもない。

 そんな彼らの妄想は、結局、ミラング共和国が滅びるのをその目で見るまでは気づきもしないだろう。いや、ミラング共和国が滅んだとしても、気づかないどころかより悪化してしまうことだってあり得る。それだけ、今の彼らの心の中というものは危険なものでしかない。本当の意味で、対処法がない不治の病みたいなものかもしれない。

 物事の全てを把握することができない人という生き物の定めなのかもしれない。

 そして、彼らもまたフィッガーバードから出てくれるであろう愚かな言葉に注視する。

 「私はラフェラル王国の現国王ラフェ=ファングラーデの長男として生まれ、母親はリース王国の王家の一族であるラフェ=ヒールという高貴な血を継いでいるのだ。だからこそ、私はラフェラル王国の国王になるのに相応しい。血統が良いのだから―…。そんな私にも今、大きな危機を迎えることになった。それは、数日前、私がミラング共和国の総統シュバリテ様との会見へと向かっている途中、ラフェラル王国でクーデターが発生しました。そのクーデターの首謀者は、私の弟で、愚弟とされ、ミラング共和国の商人で、我が国で商売している者たちにとってはお馴染みの、ミラング共和国からラフェラル王国へ流れる商品の関税撤廃に反対している憎き存在だ。その憎き存在であるリーガライドはクーデターで我が国の政権を王ラフェ=ファングラーデが不法にも奪いやがった。それを私はミラング共和国の総統シュバリテ様から聞くことになった。これは許されないことだ。リーガライドのせいで、我が国は衰退の気運にある。そして、私はそんな気運から繁栄の気運へと戻すために、シュバリテ総統に恥を忍んでラフェラル王国からクーデター派を絶滅させるために力を貸して欲しいとお願いした。シュバリテ総統は、我々に、ミラング共和国軍というこの地域で最強の軍団を派遣してくれることを約束してくれました。そして、今、この日を迎えています。ミラング共和国の皆様、どうか、私に力を貸してください。クーデター派を滅ぼした後は、必ずやミラング共和国からラフェラル王国に流れる商品の関税を撤廃させることを実現させよう。私は、約束を違えることのない人物である。私の話はここまでだ。」

と、フィッガーバードは自分の言いたいことを言い終える。

 フィッガーバードは、壇上を下りながら―…。

 (私はミラング共和国軍の力を借りることができる。さらに、アマティック教も私の味方である以上、リーガライドは手も足も出ずに敗北するしかない。降伏で命を繋げようなんてこともさせやしない。それに、母が憎んでいたフィルスーナも頭が良くても、力の前には無力でしかない。裏で絡んでいることは分かっているが、意味などない。私が奴らを排除して、我が国を繁栄の起動に戻すのだ。そう、これは神から与えられし試練なのだ。私が繁栄を築けるかどうかを試す―…。)

と、心の中で思うのだった。

 決して、表情に出すことはなく―…。

 フィッガーバードは、自らの勝利を確信しているし、それを思えるだけの根拠がある。

 フィッガーバードの軍勢のほとんどがミラング共和国軍であり、事実上の指揮はミラング共和国軍のトップであるファルケンシュタイロが執ることになる。フィッガーバードはただ、ぽか~んと口を開いて惚けていたとしても、何も問題はないだろう。

 フィッガーバードが軍勢を指揮したという経験はないし、指揮官の勉強など一切受けたことはないのだから―…。

 フィッガーバードが受けた教育のほとんどは、内政と国を支配するために、貴族の弱点を知る教育であり、かつ、冷酷な支配者こそが偉いという内容であったのだから―…。国民を慮るというものは一切ない。

 ゆえに、フィッガーバードは、軍事経験もなく、武器を持って戦った実戦経験もない。

 それでも、ミラング共和国軍という周辺諸国でも強いとされる軍隊が一緒に行動してくれるのだから、強気にならない方がおかしいし、勝てるという見込みをもつことも間違ったことではなく、そう思い込んでも仕方ないと言えるのだ。

 そして、勝者になれるということを思っているからこそ、フィッガーバードは自らが勝利した後のことを頭の中で浮かべていくのであった。

 フィッガーバードの話を終えた後、クロニードル、ディマンドの話が続き、最後のプログラムとなる。

 「最後は、お待たせいたしました。ついに、あの方のお話となります。ミラング共和国軍のトップであり、五年と半年前のリース王国との戦争で勝利をもたらし、ファブラなどの小国を征服することに最も多大に貢献したヌマディア=ファルケンシュタイロ様の登場です。お願いいたします。」

と、司会の者が言うと、総統府からファルケンシュタイロが出てくる。

 ファルケンシュタイロは堂々と、自身満ち溢れた表情をしながら歩いて、壇上に向かう。

 その間に、声というか、歓声があがる。

 その歓声は、まるで、皆が待ち望んだヒーローの登場、そのものである。もしくは、大人気の役者やアイドルが登場するようだ。

 ファルケンシュタイロの見た目からそのような感じは思われないであろうが、それでも、ミラング共和国の英雄と持て囃されているのなら、このような歓声が起こったとしても不思議ではない。

 英雄というものは、敵国におけるその国に属している人々の血を積み上げることによって成り立つものである。いや、広義で言うのであれば、味方に祝福をもたらし、敵のものを奪いもしくは破壊することを忠実におこなうことができた者を言う。

 ゆえに、英雄という称賛を受ける者は、別の点で見れば、敵から見れば、ただの危険人物でしかない。その別の視点というものを味方の側が抱くことはない。

 自分に幸福をもたらしているのに、なぜ、敵である者の視点に立つ必要があるのだろうか、いや、ない。こんな幸福に包まれているのに、なぜ、マイナスなことをわざわざ考えないといけないのか。そんなことをするのは、卑屈な性格の者でしかない。そんな陰の者の考えを受け入れるのは馬鹿げている。

 だけど、奪われた敵が滅べばそのようなことを言えるだろうが、完全に敵を滅ぼすこともできないし、滅ぼしたとしても、結局、新たな敵というものを作ってしまうものなのだ。行動するということは人にとって、自分にとって主観的なものである善悪というものをどうしても発生させてしまうのだから―…。ずっと、自分にとっての悪を潰し続けることなどできやしない。そういうものだ。

 さて、話が逸れ過ぎてしまったので、話を戻すのであれば、ファルケンシュタイロは、壇上に一歩、一歩、向かって進んでいくたびに歓声は大きくなり、その歓声はファルケンシュタイロの人気を物語る。いや、示すのに十分だ。

 そして、壇上に到着したファルケンシュタイロは、周囲に手を振りながら、

 (ここまでの歓声を俺に向かってあげるとは―…。戦争に勝つということは何と素晴らしいことだ。反戦派どもは、俺がこのように称賛されることに嫉妬しているからこそ、あのように戦争に反対をするのだろう。まあ、弱虫どもだからな。ガハハハハハハハハハハハハハハ、見るが良い。誰も戦争に反対していないではないか。むしろ、次の戦争の勝利を望んでいるのだ。)

と、心の中で言う。

 ファルケンシュタイロは、この五年と半年の間に、反戦派による活動を何度も潰してきたし、拷問もたくさんおこなってきた。時には、その者たちをも始末してきた。命を奪うという結果を伴わせて―…。

 ファルケンシュタイロにとって、今、征服や戦争による勝利が美酒のような美味しさとなっている。戦争に勝つことができれば、征服することに成功すれば、ミラング共和国の国民はファルケンシュタイロのことを称賛するし、英雄のように特別に扱ってくれるのだから―…。

 そのような名誉なことを否定してくる反戦派の者たちは、只々、今のファルケンシュタイロへの称賛を嫉妬して、それが嬉しくないから言ってきているのだ。そう、ファルケンシュタイロは思ってしまっている。

 実際は、反戦派は、ミラング共和国が他国へと戦争すれば、他国から恨まれることになるし、もし、ミラング共和国が僅かにでも衰退するようなことがあれば、敵国となっている国は確実に、ミラング共和国へと復讐をしてくることになる。

 その復讐によって、一番に被害を受けるのは、ミラング共和国に住んでいる人々であり、戦争に賛成していることも、反対していることも関係がないのだから―…。

 酷い話であろうが、現実、人の復讐行動なんて、復讐をする者の基準によって、加害を加えて良いか悪いかが判断されるのだから、復讐される側に住んでいるだけでも復讐される対象に簡単になってしまうのだ。悲しい事に―…。

 このように、人の心としては、戦争を望まない心を持ち合わせながらも、戦争から得られる勝利の利益を自分に与りたいという気持ちがないわけではない。その主観によってなされる比較衡量によって、彼らの気持ちが決まるように思われるが、実際は、強い者について、自分の命を守ってもらいながら、そこから利益を得ようとしているからだ。

 強い者に賛成することによって、利益を手に入れることによって、自らの安全を保障するというわけだ。

 現実にはその可能性が高いというだけであり、その逆の可能性も十分に存在する。一つの結果にならない場合の方が多いのかもしれない。正確なデータというものがない以上、判断することはできないが―…。

 結局、人という生き物は、自分の命が可愛いものであるし、自分の命を守ってこそ、他者の命が守れるのだから―…。

 だけど、人は完全で、完璧な存在になることができないから、自らの選択が完全な意味で正解であることなど有り得ないし、それを確かめる方法など存在しない。だからこそ、自分という存在の概念を変えることができるのであるが―…。

 ファルケンシュタイロは、壇上に上がると、少しの間、沈黙を守った後、自らの言葉を発する。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(132)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(40)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していきたいと思います。


では―…。

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