番外編 ミラング共和国滅亡物語(130)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(38)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ラフェラル王国を併合しようとするミラング共和国。ミラング共和国でラフェラル王国で活動している商人達は、ミラング共和国からラフェラル王国に流れる商品の関税の撤廃を要求する。
ラフェラル王国の王族と貴族の多くは、その関税の撤廃に賛成するが、王族の一人であるリーガライドは反対する。そのせいで、冷や飯を食わされるのであった。リーガライドは―…。
リーガライドはそんななか、妹であるフィルスーナとともに傭兵隊「緑色の槍」のトップのアルスラードに会う。かつて、リーガライドは傭兵隊「緑色の槍」に所属したこともある。
その中で、三者の話し合いとなり、フィルスーナによって、クーデターを起こすことが決定されるのだった。計画へと移行する。
そのようなことを起こすことが都合が良いと思っているのは、ミラング共和国と繋がっている貴族達や第一王妃の勢力であった。そんななかで、シエルマスも活動をおこなっており、「緑色の槍」に派遣しているシエルマスのスパイから情報を得るのだったが、フィルスーナやアルスラードに気づかれており、スパイらは粛清されていくのだった。
その後、そのスパイが関係していたラフェラルアート(ラフェラル王国の首都)のスラム街にあるアマティック教の教会で、教会の主要な信者とシエルマスのスパイをすべてフィルスーナとラフェラル王国の裏の者達によって始末されるのだった。そのことにより、情報が遮断されることになる。
ラフェラル王国から情報が届かなくなったことに対して、シエルマスの西方担当首席がラウナンに報告し意見をもらおうとするが、その頃、ラフェラル王国ではリーガライドらのクーデターは成功するのだった。
それはどのような過程であったのだろうか?
ラフェラル王国におけるクーデター発生後、まず、宰相を中心とする貴族政力がフィルスーナとラフェラル王国の裏の者により、気絶された後、拘束される。さらに、ファングラーデはリーガライドによって捕まることになった。
第一王妃であるヒールの方は―…、クーデターを把握し、誰が起こしているのかを妄想という感じで突き止める。失敗した人間を処分しようとするが、その時、フィルスーナが現れ、ヒールが個人で雇っている裏の者で始末しようとするが失敗し、裏の者を失うという結果となった。その時のヒールの悲鳴によって、衛兵が駆けつけて、逃げたフィルスーナが狂気をはらんだ人間であることを言うのであった。
その後、ヒールは自らの執事長を軍部の拠点へと向かわせる。自らの指示をファングラーデ王の指示としてクーデター側を鎮圧するように、という命令を―…。だけど、軍事貴族もすでにクーデター側に捕らわれており、軍部もたたき上げが指揮するような状態となっており、ヒールの執事長は捕まるのであった。
フィルスーナは、再度、ヒールのもとへと向かい、少しの会話の後、ヒールを殺し、ラフェラル王国のクーデターは、リーガライド側が勝利することになるのだった。
その後、リーガライドは、ラフェラル王国の支配をフィルスーナとともにしていくことを宣言するのだった。フィルスーナにとっては、迷惑なことでしかないが―…。
一方、フィッガーバードの方は、ミラング共和国の首都ラルネへはあともう少しの距離まで近づくのであった。
そんななか、シエルマスの本部では、東西南北と国内担当の首席、報告官、統領による会議がおこなわれる。その会議の間に、報告官の見習いからラフェラル王国の第一王子であるフィッガーバードがミラング共和国の首都ラルネにやってくるのだった。ミラング共和国の総統であるシュバリテと会見するために―…。ラウナンにとっては好機だった。
ミラング共和国の首都ラルネに到着したフィッガーバードは、これからミラング共和国総統シュバリテとの会見を楽しみにするのであった。そして、フィッガーバードとシュバリテの会見が開かれ、シュバリテはラフェラル王国でクーデターが起きたことをフィッガーバードに伝えるのだった。この会見は、フィッガーバードの要請を受け入れ、ミラング共和国軍がラフェラル王国に派遣されることが決まるのであった。
その後、フィッガーバードは、アマティック教の教団本部に向かうのだった。そこで、イルカルと面会することになる。その場で、イルカルはフィッガーバードを洗脳するのだった。これがシュバリテの狙いであり、ラウナンにとって都合が良い行動だと認識しての行動であった。だが、シュバリテの方にも何かしらの意図があるようだ。
時間が経過し、ラフェラル王国軍の方はミラング共和国との国境方面に軍を出征させる。
一方、ミラング共和国では―…。
ミラング共和国首都ラルネ。
さらに、二日後の時が経ち、今日、ラルネは歓声に包まれていた。
「ついに、ラフェラル王国征服のために、ミラング共和国軍が出発するんだって―…。」
「アハハハハハハハハハハ、そういうことを言うんじゃない。私たちは、ラフェラル王国を不当に支配している輩をラフェラル王国の王子とともに倒した後、我が国の正しい支配者としての組織とそのあり方をラフェラル王国の者たちに教えるのだ。それこそ、アマティック教教主イルカル様が言っている使命だ。」
「おいおい、最近、アマティック教に鞍替えするのが増えてきたとか言うが、お前、そうしたのか。」
「だって、素晴らしいだろ。」
「え~、イルカル様から声をかけられたの~。すごいじゃない。」
「凄いでしょう。自慢しよ。」
このような会話が繰り広げられる。
その中で重要なこととそうでないことものがある。
重要なものは、ミラング共和国軍がラフェラル王国で起こったクーデターによって、政権を掌握した者達を倒すために介入することだ。
その軍事介入に関して、ミラング共和国の国民から聞こえる声からは、ミラング共和国軍がラフェラル王国のクーデター側に勝利するとしか思えないほどの思い込みに近いものがあった。
それは、記事やら地方のオピニオン達によるミラング共和国軍最高という評価である。
現実にリース王国との先の戦争での勝利、ファブラの征服などによって、その勝利の積み重ねがミラング共和国軍の強さというものを証明していったのだ。
そこに、嘘情報を追加して塗り固めてしまえば、わずかの者たちが不審に思ったとしても、反対できる空気ではなくなってしまう。
まさに、反対する者達は沈黙を貫かないといけなくなった。
それが、ミラング共和国にとって、対外強硬派にとっての成功というもの、栄華というものをより遠ざけていくのであった。
決して、人は完全に正しくすべてを把握することができない生き物であるのに―…。
そして、ミラング共和国軍の中では、今回、ラフェラル王国への出兵に関して、大賛成であり、かつ、久々の略奪などの行為が他国でできるとあり、喜ぶ軍人が多かったし、大国への遠征である以上、より多くを自分の戦利品できるという気持ちになるのだった。
どんな戦争の中にルールというものが存在しようが、彼らにとっては、戦利品を得るためなら、隠れてルールを破ることが平然とすることができる。
なぜなら、そのようなルール違反を訴えることのできる者などいるわけがないと思っているからだ。勝者を裁くなどできるはずもない。勝者が征服者である以上、勝者にとって都合の良いルールの運用がなされるのだから―…。
ミラング共和国軍の戦争でのルール違反を訴えるぐらいの力があり、それを受け入れさせるぐらいの実力があるのは、周辺諸国ではリース王国とラフェラル王国ぐらいであろう。
だが、リース王国がミラング共和国とラフェラル王国での戦いに関して、戦争でのルール違反者を訴えることはしない。そもそも、政治的利権や利害というものがなければ、訴えたところで何の得というものがあるのだろうか。
むしろ、損しかないのだ。
だからこそ、戦争におけるルールというものは都合の良い時に使われる便利アイテムと化してしまっているのだ。そういう意味では、使い勝手が良いと国々の上層部にいる者達からは解釈されているのであるが―…。
さて、話を戻し、ミラング共和国の人々、特に、ラルネの人々が今回のラフェラル王国への軍事介入に湧き上がる中、着実にミラング共和国の中にアマティック教が浸透し始めていた。
イルカルという人間が表立っての権力というか、実力というものを握っていると人々は判断するようになってしまっているが、実際は、アマティック教はミラング共和国の中にある諜報及び謀略組織であるシエルマスが工作をおこなっていく上での道具でしかない。
そう、シエルマスの統領であるラウナン=アルディエーレのために動く、宗教でしかない。
政治と宗教が結びつくことは歴史の中では良くあることであり、宗教と政治が離れるというのは表立ってのことでは見られるかもしれないが、裏というか、実体においては見られるケースは極端に少ないのではないか。
この異世界においては、宗教と政治が離れているという例は、探す方が難しいかもしれない。文明が誕生していく過程の中でも政治と宗教との繋がりは現実世界の歴史においても存在したように―…。
そして、宗教を使うことによって、人々を効率よく支配することができる。宗教に共通性を持たせることによって、人々における一体性を持たせることに成功させることによって―…。
会話の中でも、アマティック教の権威は上昇し、イルカルの存在はもうミラング共和国の中で知らないのは、田舎の村ぐらいなのではないか、と思えるぐらいに―…。
「おい、ミラング共和国軍の出征パレードが始まるぞ。」
「誰が通るのかな。」
今回もワクワクと期待に満ちたが人々が出征パレードの舞台へと向かって行くのであった。
総統府前。
そこには、大勢の人々が群衆という形になっていた。
そのなかに、一筋の大きな道ができており、その道に人々が入り込まないようにするために、ミラング共和国の治安警備を担当する保安署という組織の人々が駆り出されている。
保安署の権力は、ミラング共和国の中では決して高いものではなく、総統府やシエルマスにとっては、使いやすい道具という認識であり、そのことに対する保安署の職員の恨みは強いが、シエルマスに逆らった者達が保安署の署内で惨たらしい殺された方をしたので、恐れをなして、大人しく従っているという感じである。
保安署の職員の訓練では、到底、シエルマスに対抗することなどはできないし、政治家たちの汚職を大量に揉み消しをしている以上、ミラング共和国の国民からの信頼も厚くはない。まあ、これらは、上からの指示に従って、自らのミラング共和国内での出世を望んだためであるが―…。
そして、出世と関係のない保安署の職員は、今日も怠いパレードの道に人々が侵入しないようにするために駆り出され、その手当は一切なし。給料の中に含まれているのだから、やる気もあるはずがない。
やる気がある者と言えば、ミラング共和国軍のトップであるファルケンシュタイロを一目見ることぐらいであろう。それぐらいしか楽しみは一切ないのだから―…。
そして、式典の会場の方では、多くの人々が集まっているのと同時に、壇上が総統府の入り口前に設置され、ここから今のミラング共和国の要人が登場するのを待つのみだ。
そこに、式典の司会をするものと思われる人物が登場し、はっきりとした声で言い始める。
「定刻となりました。式典を開始させていただきます。」
と、司会の者が言う。
そして、波紋を式典の中央から外に向かって広がるようにして、時差をつけながら、観客は歓声を上げ始まるのだった。
今回の式典では、このようなことが何度も、何度も続くことであろう。
これから登場してくるのは、ミラング共和国にとって、誰もが知っているほどの有名人なのだから―…。
「今回のラフェラル王国への軍事介入に関して、最初に、ミラング共和国総統フォルマン=シュバリテ様より、敬意の説明があります。シュバリテ総統、どうぞ。」
と、司会の者が続けて言う。
その言葉を聞いていたのか、総統府からフォンマン=シュバリテが姿を現し、壇上に向かって行く。
(……………今日もこれだけの数の人々が来たものだ。このような式典をして、ミラング共和国がラフェラル王国に負けることがあるのであれば、ラウナンも終わりだろうな。そうなったら、私が本当の意味で権力を握ってやることにしよう。シエルマスも俺にとって都合が良いようにしておいた方が良いな。)
と、シュバリテは心の中で思いながら―…。
シュバリテは、歩きながら、その歩くという行為で靴からコツコツという音をさせる。
その音が集まった観客のほとんどに聞こえることはなく、歓声がシュバリテの登場の時にあったものが鳴り止み、今は静かにシュバリテが壇上に上がるのを見守る。
これからシュバリテが言う言葉を気にしながら―…。
そして、シュバリテは、壇上に到達する。
壇上に上がって、少しだけ、呼吸を整えた後、冷静な表情になって言い始める。
緊張というものは一切、存在することが許されることもなく―…。
「今日は、こんなに多くの国民が集まっていただき感謝いたします。我が国の国民にとっては、この出征パレード前の式典はすでに恒例行事のようになったと思われます。それは真に素晴らしきことです。それも、この後に登場することになろうミラング共和国軍のトップであらせられるヌマディア=ファルケンシュタイロと軍人たちのおかげであり、行政職員の方々の日々の努力によるものであります。だからこそ、今回のラフェラル王国への軍事介入は、我が国における新たな一歩であり、世界は我が国の範とし、崇拝することになり、世界の支配者となる日もそう遠くはないでしょう。これ以上、私が長く話したとしても、意味のないことでしょう。だから、多くの時間は、後に登場される人々に譲りたいと思う。では―…。」
と、シュバリテが言うと、壇上から下りていくのであった。
シュバリテの気持ちとしては、このような馬鹿らしい遠征のために大きなことを言う気にはなれなかった。それに対するせめてもの抵抗として、なるべく当たり障りのないことを言って、素早く終わらせるのだった。
それでも、一分から二分ほど、壇上で話していたことになるのであるが―…。
そして、司会の者も次のプログラムへと移行するのだった。
「シュバリテ総統ありがとうございました。次は、ラフェラル王国の第一王子ラフェ=フィッガーバード様です。」
と、司会の者は次に登場する人物を言うのであった。
シュバリテは総統府に戻る途中で、フィッガーバードとすれ違い、総統府の中に入る。
総統府の中では、
「シュバリテ総統。今回は、短めだったのだな。喋る時間が―…。」
と、ファルケンシュタイロが言う。
ファルケンシュタイロは、シュバリテがこういう場での話が長いということを知っている。長く話すというか、自らの成果を大量に言うことによって、自分はこれだけのことをしたのだということを自慢する必要があるのだ。
要は、見栄の張り合い、時には、誇張も、嘘も含まれるものがなされるということである。
彼らにとっては、目立ってなんぼであり、名前を憶えられてこそ意味があるのだ。
人々は、ほとんどこの人物が政治の中でどんなことをしたのか、裏ではどうなのかということをずっと覚えられることはできない。
なぜなら、日々の生活に追われているし、メモをするわけではなく、あくまでも、このような話ということで聞き流すものであり、しばらくすると、重要度が低いので、忘れてしまうのだ。人々は、自らの生活が一番に大事なのだから―…。関係が薄いものを探ったり、覚えたりする時間などありはしない。
それでも、本当は政治が、人々の生活から切り離すことができないのは明らかな事実であるし、時に、人々の生活にも大きな影響を与える。
ミラング共和国では、五年と半年ほど前の商品の物価の高騰などが良い例であろう。そういう場合になって初めて、政治と生活が関係があることに気づくことになる。だが、そのような嵐が過ぎ去れば、結局は忘れ去られてしまうのだ。
本当は忘れてはいけないことなのであるが―…。
まあ、このような人々の態度に付け込んで、私欲だけの政治家は、自らの私欲を満たすために、行動を人々に気づかないように動くのであるが―…。そこに、人々にとって本当の利益は何であるかという考えは一切なく、人々は彼らの私欲のための搾取の対象でしかない。
これ以上、話が逸れてしまうのは良くないので、話を戻す。
「ファルケンシュタイロ。時にはそういうのも良いんじゃないか。国民は、お前の雄姿を見たいのだから、私の話は添え物程度にしておかないと思っただけだ。」
と、シュバリテは言いながら、自らの執務室の方へと向かって行くのだった。
その様子に、ファルケンシュタイロは怪しい視線を送るのであった。
それでも、ほんの少しの時間のことであり、興味をなくしたのか、自分の出番を待つのであった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(131)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(39)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していきたいと思います。
また、パレードとか式典とかをやっているのですが、ミラング共和国はそういう国になってしまったので―…。対外強硬派によって―…。
そういう感じで、パレードと式典が少しだけ続いた後に、双方の軍の動きへと入っていくと思います。
では―…。