番外編 ミラング共和国滅亡物語(129)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(37)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ラフェラル王国を併合しようとするミラング共和国。ミラング共和国でラフェラル王国で活動している商人達は、ミラング共和国からラフェラル王国に流れる商品の関税の撤廃を要求する。
ラフェラル王国の王族と貴族の多くは、その関税の撤廃に賛成するが、王族の一人であるリーガライドは反対する。そのせいで、冷や飯を食わされるのであった。リーガライドは―…。
リーガライドはそんななか、妹であるフィルスーナとともに傭兵隊「緑色の槍」のトップのアルスラードに会う。かつて、リーガライドは傭兵隊「緑色の槍」に所属したこともある。
その中で、三者の話し合いとなり、フィルスーナによって、クーデターを起こすことが決定されるのだった。計画へと移行する。
そのようなことを起こすことが都合が良いと思っているのは、ミラング共和国と繋がっている貴族達や第一王妃の勢力であった。そんななかで、シエルマスも活動をおこなっており、「緑色の槍」に派遣しているシエルマスのスパイから情報を得るのだったが、フィルスーナやアルスラードに気づかれており、スパイらは粛清されていくのだった。
その後、そのスパイが関係していたラフェラルアート(ラフェラル王国の首都)のスラム街にあるアマティック教の教会で、教会の主要な信者とシエルマスのスパイをすべてフィルスーナとラフェラル王国の裏の者達によって始末されるのだった。そのことにより、情報が遮断されることになる。
ラフェラル王国から情報が届かなくなったことに対して、シエルマスの西方担当首席がラウナンに報告し意見をもらおうとするが、その頃、ラフェラル王国ではリーガライドらのクーデターは成功するのだった。
それはどのような過程であったのだろうか?
ラフェラル王国におけるクーデター発生後、まず、宰相を中心とする貴族政力がフィルスーナとラフェラル王国の裏の者により、気絶された後、拘束される。さらに、ファングラーデはリーガライドによって捕まることになった。
第一王妃であるヒールの方は―…、クーデターを把握し、誰が起こしているのかを妄想という感じで突き止める。失敗した人間を処分しようとするが、その時、フィルスーナが現れ、ヒールが個人で雇っている裏の者で始末しようとするが失敗し、裏の者を失うという結果となった。その時のヒールの悲鳴によって、衛兵が駆けつけて、逃げたフィルスーナが狂気をはらんだ人間であることを言うのであった。
その後、ヒールは自らの執事長を軍部の拠点へと向かわせる。自らの指示をファングラーデ王の指示としてクーデター側を鎮圧するように、という命令を―…。だけど、軍事貴族もすでにクーデター側に捕らわれており、軍部もたたき上げが指揮するような状態となっており、ヒールの執事長は捕まるのであった。
フィルスーナは、再度、ヒールのもとへと向かい、少しの会話の後、ヒールを殺し、ラフェラル王国のクーデターは、リーガライド側が勝利することになるのだった。
その後、リーガライドは、ラフェラル王国の支配をフィルスーナとともにしていくことを宣言するのだった。フィルスーナにとっては、迷惑なことでしかないが―…。
一方、フィッガーバードの方は、ミラング共和国の首都ラルネへはあともう少しの距離まで近づくのであった。
そんななか、シエルマスの本部では、東西南北と国内担当の首席、報告官、統領による会議がおこなわれる。その会議の間に、報告官の見習いからラフェラル王国の第一王子であるフィッガーバードがミラング共和国の首都ラルネにやってくるのだった。ミラング共和国の総統であるシュバリテと会見するために―…。ラウナンにとっては好機だった。
ミラング共和国の首都ラルネに到着したフィッガーバードは、これからミラング共和国総統シュバリテとの会見を楽しみにするのであった。そして、フィッガーバードとシュバリテの会見が開かれ、シュバリテはラフェラル王国でクーデターが起きたことをフィッガーバードに伝えるのだった。この会見は、フィッガーバードの要請を受け入れ、ミラング共和国軍がラフェラル王国に派遣されることが決まるのであった。
その後、フィッガーバードは、アマティック教の教団本部に向かうのだった。そこで、イルカルと面会することになる。その場で、イルカルはフィッガーバードを洗脳するのだった。これがシュバリテの狙いであり、ラウナンにとって都合が良い行動だと認識しての行動であった。だが、シュバリテの方にも何かしらの意図があるようだ。
記者たちは、シュバリテの方へと視線を向ける。
シュバリテは手を振りながら、愛想の良い表情をしながら、フィッガーバードのもとへと移動する。
その移動速度は決して早いものではないので、記者が視線を追うことができる。
さらに、二人の会談の場の絵というものを描いている者がいる。
リース王国とその周辺地域においては、写真というものはかなり珍しいものでしかなく、記者たちが買えるようなものではないほどに高価だ。
そうなってくると、人の絵をリアリティをもって描ける人物が諜報されるというわけだ。
正確性も重要であるが、記事が売れるようにするために、脚色してくれるのを―…。
イメージとして浮かべて欲しいのは、現実世界における裁判上で裁判の絵を描く法廷画家というものである。彼らが取材の場にいると思ってくれると分かりやすいであろう。
そして、シュバリテは、フィッガーバードのいる位置に辿り着くのであった。
「記者の皆さん、今日はこのような場に集まっていただき感謝いたします。」
と、シュバリテは言いながら頭を下げる。
その間―…、
(アマティック教の教主イルカルの洗脳が効いているという感じだな。完全に、ラフェラル王国をクーデター側から取り戻す気満々ということか。そして、俺を責任者にしたいというわけだな。まあ、良い。だけど、失敗すれば、ラウナン、お前を処分するだけだ。)
と、フィッガーバードは心の中で思う。
決して、表情に出すことはない。
表情に出すような愚かなことはしない。
政治家として、自らの目的を達成するためには、作られた表情を作り上げ、どんな状況にも応じた表情をできるようにしないといけないのだ。
そうすることで、相手を出す抜くまで、一切、相手に悟らせないようにしないといけない。
それぐらい出来て当然であるし、それができなければ、政治家として大成することなんてできやしない。
シュバリテは、頭を上げると―…。
「さっき、フィッガーバード第一王子が言っていたように、我が国は、隣国でラフェラル王国で起こったクーデターを鎮圧するために、フィッガーバード第一王子の要請を受けて、軍事干渉を行使することにいたします。我が国は、ファブラ、ヒッパーダ、アルセルダでの成功があり、今回は大国であるラフェラル王国であるが、ここに素晴らしい能力をお持ちになっているフィッガーバード第一王子がいる以上、かなり有利に進められる可能性は十分にあります。恐れないでください。我が国は、勝利を手に入れられるだけの戦力は十分にありますから―…。フィッガーバード第一王子、ともに、ラフェラル王国を救おうではないか。」
と、シュバリテは言う。
これは、あくまでも形式ばったような感じのものであり、シュバリテ自身が望んでいることではないし、ラフェラル王国を征服する可能性は低いと見積もっている。
だけど、ラフェラル王国征服は失敗すると考えている。
それでも、今のシュバリテの状況では、反対することはできないし、ラウナンというシエルマスの統領の実力を知っている以上、彼に逆らうことはできない。逆らえない以上、ラウナンの人形として演じなければならない。ラウナンという人形師の演じる題目を―…。
表情に出すこともなく、ラフェラル王国征服をおこなうことに賛成している側だと周囲に思わせないといけない、として―…。
「ええ。」
と、フィッガーバードが言うと、シュバリテとフィッガーバードは握手するのだった。
これは形だ。
まるで、形式ばったものである。
こうやって、形式を作ることによって、周囲にアピールするという―…。
細かい中身など、人々は気にもしないし、形さえ整っているのであれば、知った気になることさえあるのだ。人々は―…。
まあ、全員が同じかというと、そうではない。
中身というか、その本質が何であるかを見ようとする人はいる。
だけど、そのような本質を本当の意味で知ろうとする者は、数が少ないし、本質に気づける者もかなり少なかったりする。時と場合で、本質を本当の意味で知ろうとする人も変わってくる。
そうである以上、多くのものを味方につけることが重要であると考えられる政治体制であるならば、本質を本当の意味で知ろうとする者よりも、形ばかりを気にするものにアプローチをすれば、多数の味方を得ることは可能だ。
そうすれば、自分の思った通りのことが簡単にできるのだから―…。
その結果、望んだ通りになったとしても、最悪の結果になることは往々にしてあり得る。
人という生き物が、世界のあらゆることを完全に把握することができない以上、どこかしら想定外の領域というものが発生するし、その想定外の領域が時に、最悪の結果を導くことがあるのだ。リスクをいくら考えようとしてもだ。
そのことを理解した上で、行動をして欲しいものだ。
そして、フィッガーバードとシュバリテの握手している姿を素早いスピードで絵描きたちは仕上げていく。
この絵とともに、記事にして、ラルネ中、いや、ミラング共和国の中を含め、周辺諸国にも流すのだ。
自分のしようとしていることを―…。
ただし、重要な細かい所は隠した上で―…。
その後、この会談は、決まりきった言葉のみだけであり、それを記者たちは胸躍らせながら聞いて、メモしていくのだった。
それから一カ月の時が過ぎる。
その間、ミラング共和国とラフェラル王国の双方ともに軍事力を整えるのだった。
動きはラフェラル王国が早く、ミラング共和国との国境の間にすでに、軍隊を派遣していた。
今回の戦争がミラング共和国からの防衛であり、フィッガーバードの母親であるヒールの悪事が漏れたことにより、リーガライドの評価が高くなり、リーガライドを大将として出陣したのだ。
フィルスーナが城の中で留守して、国内の統治を任せるという形にして―…。
そのラフェラル王国の首都ラフェラルアートの城の中―…。
「なぜ、あの人まで出陣してしまうんですか。」
と、フィルスーナは文句を言い始める。
フィルスーナとしては、最近、ほとんどアルスラードと一緒の時を過ごせなかったので、それがストレスとなってしまっているのだ。
「それは仕方ないかと思います。フィルスーナ様は、しっかりと内政に関しての仕事を進めて行ってください。それに書類はたくさんありますから―…。」
と、秘書と思われる女性が言う。
彼女は、クーデター側についたラフェラル王国の北に大領地を持つ貴族の一人イルハード家の前当主の未亡人である。すでに、しわもでてくるような歳となっているが、前当主との間に生まれた子どもが幼い時に前当主がなくなったので、領内の統治にあたらなければならなかった人物である。
その領地の統治の中で、内政を上手く動かす才能があったのか、人を使うのが上手かったのか、彼女の手腕により、イルハード家の領土はここ十数年でラフェラル王国の中でかなり栄えるようになった。そして、すでに領の政治に関しては、今の当主がしっかりと受け継ぎ、家臣とともにしっかりとおこなっており、七年前から秘書と思われる女性は引退し、家庭菜園やら地域へのボランティア活動をしていた。
が、なぜか、今回のクーデターにより、政権の中枢であるフィルスーナのサポートをして欲しいということで、急遽、秘書の役目になったというわけだ。
彼女本人は、家庭菜園や地域へのボランティア活動でのびのびとした余生を過ごしたかったそうだ。政治のことは分かるが、ドロドロした世界に身を浸したいかと言われると、嫌だとすぐに返事するぐらいには関わりたいとは思っていなかった。
「え~。」
と、フィルスーナは言う。
「え~、と言いたいのは私の方です。折角、のんびり余生を過ごして、寿命がきたらピンピンコロリをする予定だったのに―…。あなた方のせいで、息子のラウードラが、私をフィルスーナ様の秘書長に勝手に推薦して、リーガライド様によって、決まってしまい、断ることもできず―…。私の幸せな余生を返してください。」
と、秘書長と思われる女性は不満を言う。
あまり、王族の前で、不満を口にするのは良いとはされない。
なぜなら、不敬罪と王族の側から言われてしまう可能性があり、処罰を下されるのだ。出世を望む者達によっては、嫌なことでしかなく、マイナスを被るようなことをしたいとは思わないのだ。
で、この秘書長の女性は、別に不敬罪と言われて、罪に問われたとしても、のんびりとして余生を過ごすことに戻ることができるのであれば、むしろ、願ったり叶ったりである。
「いや、私も幸せなこれから恋人といる楽しい生活を返して欲しいぐらいですよ。もしかして、ナナーアさんと同じなのでは―…。」
と、フィルスーナは言う。
フィルスーナの言っていることはある面は合っている。
それは、イルハード=ナナーラという女性がのんびりとした余生を望むように、ラフェ=フィルスーナも恋人であるアルスラードと一緒に過ごす日々を望むのである。
だけど―…。
「同じではありますが、違いますね。私は巻き込まれた側で、フィルスーナ様は巻き込んだ側です。それに、クーデターを最初に発案したのは、フィルスーナ様だとお聞きになっています。」
と、ナナーアは言う。
ナナーアも領内を統治した経験があり、繁栄させることに成功している以上、裏の情報にも精通している。そうでなければ、統治なんて上手くいかないし、領地を経営するにしても、上には王国の存在がある以上、王国からの印象を悪くするわけにはいかないのだから―…。それでいて、上手く立ち回り、かつ、上の存在に自身を脅威だと思わせないようにしないといけない。ナナーアの功績の大半は、家臣がなしたものとしてかなり誤魔化したのだから―…。
ナナーアは、政治が上手くても自身にとって嬉しいことではないし、それよりものんびり家庭菜園とかボランティア活動している方が良いと思っているぐらいだ。だからこそ、政治の手柄なんて平然と家臣のものにさせることができた。
まあ、一部の人からは、彼女の政治手腕はかなり評価されており、裏の者にもそれを知っている者がいたので、今回の招聘ということになったのだ。
「確かにそうだけど~…。私は、クーデターの後に、兄さまに国王になってもらって、ゆっくりと過ごしたかっただけなのに―…。」
と、フィルスーナは泣き言を言う。
その泣き言を聞いたとしても、何も甘やかすことなく、さらに、思い一撃を与える。
「だけど、ミラング共和国がクーデターの中で生き残った国王側というか、ヒール元王妃側の実の息子であるフィッガーバード様はミラング共和国でこちらへと宣戦布告の宣言をしてきました。そのようになることぐらいフィルスーナ様の頭の中では分かっていたことでしょう。恋人とのいちゃらぶ生活をしようとして、それから離れていくだけなのでは―…。」
と、ナナーアは言う。
その言葉があまりにも的を得ていたので、ガックリとしてしまうのだった。フィルスーナは―…。
フィルスーナは、クーデターが成功すれば、ミラング共和国が軍事干渉をしてくる可能性が十分に存在していたことを理解している。
そして、フィッガーバードがミラング共和国に到達し、総統であるシュバリテと会談した以上、ミラング共和国が軍隊を率いて、クーデター側を潰そうとすることは予想することができ、かつ、そのせいで、フィルスーナの目的はどんどんと遠いものへとなっていくことも理解できるであろうに―…。
まあ、望んだことが叶うとは限らないのが、世の中というものなのだから―…。
ナナーアは続ける。
「ならば、しっかりと仕事を片付ければ良いのではないでしょうか。」
と。
そのナナーアの言葉に対して、フィルスーナは元気が出たのか。
「終わらせたら、あの人のもとへ行くんだぁ~。」
と、やる気を出して、仕事を片付けていくのだった。
(それでも、今回のミラング共和国との戦争は、こちらもそれなり犠牲が出ることを覚悟しないといけません。領地と国を率いるでは規模が違いますが、それでも、何の犠牲もなく、成功するなんてことが叶うことはほとんどありませんから―…。いや、確実にないのかもしれません。その犠牲が小さいものであれば良いのですが―…。)
と、ナナーアは心の中で思う。
ナナーアもフィルスーナの秘書長となるということで、いろいろな情報を手にすることになったが、すぐにあることに気づいた。
ミラング共和国という国が征服した国に対して、どのような支配をしているのか、反抗した者に対してどのような方法で鎮圧しているのか、その方法を知って、自分の甘さに気づかされるのだった。
ミラング共和国の最近の状況には良い印象はなかったが、ここまで酷いものだと思ってもいなかった。だからこそ、今回の戦争は、犠牲が出ることが避けられないと理解してしまうのだった。
せめて、その犠牲が小さいものであることを願いながら―…。
ここで言う犠牲とは、人の生命がなくなることだけでなく、負傷を負ったり、建物や土地が荒廃することも含めてのことを言っている。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(130)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(38)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していきたいと思います。
『水晶』の第三章の大きな盛り上がりの場かもしれないところに突入していっているような気がします。第四章は短くなると思いますが、その後の最終章はかなり長くなる予定です。ランシュ視点のものを第三者視点して、さらに、他の戦いも動向も追加しないといけないので―…。
執筆しているところは、まだ第三章なので、クライマックスが見えてきたような気がするところです。
さて、『水晶』の番外編の一つがここまで長くなってしまうとは―…、長くなるとは思っていたけど、100回以上も投稿することになろうとは思いませんでした。どうしてこうなった。
反省が必要だということを認識させられます。執筆意欲を回復したい。
さて、『水晶』のネームの方も、第288話を書き終えており、第1編の最終章も盛り上がっているような感じです。まあ、そこまで追いつくのには、数年ぐらいかかりそうな感じです。
『水晶』は大長編になりそうです。
ということで、久々に長く後書きを書いたなぁ~と思います。
PV数が増えますように―…。
では―…。