番外編 ミラング共和国滅亡物語(127)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(35)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ラフェラル王国を併合しようとするミラング共和国。ミラング共和国でラフェラル王国で活動している商人達は、ミラング共和国からラフェラル王国に流れる商品の関税の撤廃を要求する。
ラフェラル王国の王族と貴族の多くは、その関税の撤廃に賛成するが、王族の一人であるリーガライドは反対する。そのせいで、冷や飯を食わされるのであった。リーガライドは―…。
リーガライドはそんななか、妹であるフィルスーナとともに傭兵隊「緑色の槍」のトップのアルスラードに会う。かつて、リーガライドは傭兵隊「緑色の槍」に所属したこともある。
その中で、三者の話し合いとなり、フィルスーナによって、クーデターを起こすことが決定されるのだった。計画へと移行する。
そのようなことを起こすことが都合が良いと思っているのは、ミラング共和国と繋がっている貴族達や第一王妃の勢力であった。そんななかで、シエルマスも活動をおこなっており、「緑色の槍」に派遣しているシエルマスのスパイから情報を得るのだったが、フィルスーナやアルスラードに気づかれており、スパイらは粛清されていくのだった。
その後、そのスパイが関係していたラフェラルアート(ラフェラル王国の首都)のスラム街にあるアマティック教の教会で、教会の主要な信者とシエルマスのスパイをすべてフィルスーナとラフェラル王国の裏の者達によって始末されるのだった。そのことにより、情報が遮断されることになる。
ラフェラル王国から情報が届かなくなったことに対して、シエルマスの西方担当首席がラウナンに報告し意見をもらおうとするが、その頃、ラフェラル王国ではリーガライドらのクーデターは成功するのだった。
それはどのような過程であったのだろうか?
ラフェラル王国におけるクーデター発生後、まず、宰相を中心とする貴族政力がフィルスーナとラフェラル王国の裏の者により、気絶された後、拘束される。さらに、ファングラーデはリーガライドによって捕まることになった。
第一王妃であるヒールの方は―…、クーデターを把握し、誰が起こしているのかを妄想という感じで突き止める。失敗した人間を処分しようとするが、その時、フィルスーナが現れ、ヒールが個人で雇っている裏の者で始末しようとするが失敗し、裏の者を失うという結果となった。その時のヒールの悲鳴によって、衛兵が駆けつけて、逃げたフィルスーナが狂気をはらんだ人間であることを言うのであった。
その後、ヒールは自らの執事長を軍部の拠点へと向かわせる。自らの指示をファングラーデ王の指示としてクーデター側を鎮圧するように、という命令を―…。だけど、軍事貴族もすでにクーデター側に捕らわれており、軍部もたたき上げが指揮するような状態となっており、ヒールの執事長は捕まるのであった。
フィルスーナは、再度、ヒールのもとへと向かい、少しの会話の後、ヒールを殺し、ラフェラル王国のクーデターは、リーガライド側が勝利することになるのだった。
その後、リーガライドは、ラフェラル王国の支配をフィルスーナとともにしていくことを宣言するのだった。フィルスーナにとっては、迷惑なことでしかないが―…。
一方、フィッガーバードの方は、ミラング共和国の首都ラルネへはあともう少しの距離まで近づくのであった。
そんななか、シエルマスの本部では、東西南北と国内担当の首席、報告官、統領による会議がおこなわれる。その会議の間に、報告官の見習いからラフェラル王国の第一王子であるフィッガーバードがミラング共和国の首都ラルネにやってくるのだった。ミラング共和国の総統であるシュバリテと会見するために―…。ラウナンにとっては好機だった。
ミラング共和国の首都ラルネに到着したフィッガーバードは、これからミラング共和国総統シュバリテとの会見を楽しみにするのであった。そして、フィッガーバードとシュバリテの会見が開かれ、シュバリテはラフェラル王国でクーデターが起きたことをフィッガーバードに伝えるのだった。この会見は、フィッガーバードの要請を受け入れ、ミラング共和国軍がラフェラル王国に派遣されることが決まるのであった。
その後、フィッガーバードは、アマティック教の教団本部に向かうのだった。そこで、イルカルと面会することになる。
秘密応接間。
ここに案内された後、数分の時を待つ。
その間、緊張の面持ちもあったがすぐに慣れ、イルカルの登場を待つのだった。
そして、イルカルが登場すると―…。
「今日は、アマティック教教団本部にお越しいただき感謝いたします。ラフェラル王国第一王子ラフェ=フィッガーバード様。」
と、お辞儀をイルカルはするのだった。
礼儀正しくしておく必要があるのは、分かっている。
傲慢な態度は相手に不快な気持ちを抱かせるには十分である。
そのオーラを完全に誤魔化すことはできないが―…。
「私は、アマティック教の教主をさせていただいているフォンミラ=デ=ファンタレーシア=イルカル=フォンドと申します。このような素晴らしい御仁が来ていただこうとは―…。私としても、事前に知っていれば、いろいろともてなしを準備いたしましたのに―…。」
と、イルカルは言う。
皮肉もいくつか混じっていた。
(こいつが、ラフェ=フィッガーバードか―…。見た目から俺とは正反対のような人物に感じるが、俺と同じ匂いも感じる。こいつはクズだ。俺と同じになってしまったのか。まあ、そんなことは関係ないが…な。というより、俺様の楽しみを邪魔してくれて、俺様と話すなら前日までに予約して、俺様にとって都合の良い時に来やがれってんだ。)
と、心の中でイルカルは思う。
イルカルは、自分が偉いと完全に思ってしまっている。
イルカルの友達、というか親友と呼べる人物はいるし、そいつとは、時たま、遊んだりする。まあ、ここでは言えないことであるが―…。
イルカルがクズであることは、シエルマスに所属していれば確実に知れることであるし、対外強硬派の一部は完全に把握されていたりする。
イルカルという存在は、自分が目立つというよりも、自分が何もすることなく、勝手に他者から尊敬されることと、自らの欲望をすぐにでも叶えられることを望む。
世界とはそうあるべきだし、そうじゃないといけないと思っている。
だけど、今のイルカルでも、完全にそのようになっているわけではない。
イルカルは、シエルマスの統領であるラウナンに逆らうことができない以上、シエルマスの言うことはちゃんと聞かないといけないし、聞かなければ、最悪の場合、イルカルの命は踏みつぶされてしまうのだ。闇の中に消えるという表現の方が最も良いであろう。
イルカルは、フィッガーバードを見ながら、その性格を観察しながら、正反対であり同じであることを嗅ぎ分けるのだった。
その嗅ぎ分けというものは、決して、正確性の高いものではないが、大雑把なフィッガーバードの性格を理解しており、自らの数々の悪行をしていくなかで、必要だった能力が生かされているというわけだ。悲しいことに、物事が行動するということに関して、そこに人の主観性が入った善悪というものの基準が介在することはなく、行動した結果に対して、個人の側で経験と知識に基づいて善悪というものを判断しているに過ぎない。
つまり、その善悪は、自分という存在によって下された善悪の基準による判断にすぎないというわけだ。
さて、話を戻して、嗅ぎ分けることによって、同じだということをイルカルは発見する。
ゆえに、フィッガーバードのことをクズだと評し、同じになったことを軽蔑するのだった。そこに、自らの矛盾があることに気づかずに―…。
そして、イルカルは気づく。
自分が、今、楽しんでいたのに、それをフィッガーバードの訪問で中断され、邪魔されたということを―…。
だからこそ、イルカルは心の中で怒りの感情を強め、心の中で暴言を吐くのだった。
感情を顔や動き、言葉に出すことは決してしない。
この場において、自分がどういう振る舞いをすれば良いのかというのを理解できているからこそ、そういうふうに振舞うことが自分にとって得であることを知っているために、そのようにするのだ。
自分にとって得が何であるかを、十分に学習し、理解できるからこそだ。
だけど、それは完全なものではなく、欠陥を抱えているものであることを、イルカル本人は気づきもしないのであるが―…。
「こちらこそ、本当に申し訳ございません。私は、ラフェラル王国から外に出ることはなかなかできませんし、外国に行ったとしても、その国の許可がないとなかなかこういう場所には来れないのです。そして、お忙しい中、私との間で会談の場を設けていただき感謝します。」
と、フィッガーバードは言う。
フィッガーバードは、イルカルのことを敬意ある眼差しで見ながらも、この場での礼儀があるということもあるし、急に来たので申し訳なく思ったのか、謝罪するのだった。
そのフィッガーバードの言葉を聞いたイルカルは、
(………自覚しているのなら、翌日にしろってんだ。)
と、イラつきの感情を心の中で閉じ込める。
本音というものを出すことなく、上手く演じる。
イルカルは、なるべく早めにこの会談を終わらせようと考える。
イルカルにとっては、このような一国の王子程度クラスの会談よりも、女性に囲まれて遊んでいる方がよっぽど好きなのだ。
だけど、イルカルは自分がフィッガーバードに向かってしないといけないことをしなければ、返って、シエルマスによってイルカル自身が葬られてしまうことになってしまうであろうが―…。
「いえいえ。では、フィッガーバード第一王子もミラング共和国までの道のりはかなり大変なものであったでしょう。だから、会談に関しては、なるべく早めに済ませて、お体をゆっくりと休まれることが良いことでしょう。」
と、イルカルは言う。
イルカルの中には、早めに会談を終わらせたいが、馬鹿正直に言うと角が立ってしまうので、こうやって婉曲的に相手の気持ちを慮っているのだということを示す理由を言葉にしておく必要があるのだ。
本当に、こういうことに気を遣わないといけないので、あまりこういう会談は好きになれない。
イルカルは楽して、自分が一番だという地位を得たいのだ。
そういう意味で、苦労というものをしたくない人間であることが分かるし、他者の気持ちなんて本当は考えていないということが分かる。
「いえいえ。こういうことでもないとフォンミラ=デ=ファンタレーシア=イルカル=フォンド様には会えませんから―…。私の方は体力がありますから、大丈夫ですよ。何時間でも―…。それに、私の母親がアマティック教の信者ですので―…。母からは、アマティック教の教主様の教えに従っていれば、人々は幸せになれるのだと―…。だからこそ、教主様には、私が憎きクーデター側を倒すためには何をすれば良いのか、ということをご教示していただけると―…。」
と、フィッガーバードは恐る恐る言う。
こういうイルカルが一つも得がないのではないかと思っているので、こうやって申し訳なさそうにして言う。
ここにフィッガーバードの打算というものがないわけではないが、それでも、純粋な気持ちで言っているのは確かである。
純粋と打算、一見交わりそうにないものであるが、これは簡単に混じり合ってしまうものである。人は行動するということに欲を使うので、純粋と打算というものが欲から派生している可能性があるのだから―…。まだ、確定的に言えることではないので、断定するのは危険であるが―…。
そして、イルカルは、考え込み始めるのだった。
(……いきなり、俺からラフェラル王国の政権を掌握したクーデター側を倒す方法を教えろだと―…。何、難しい注文していやがる。俺が軍事の専門家じゃねぇ~んだよ。そんなものは専門家にでも聞きやがれ!!! だが、こういう相談をしてくる奴は、利用しやすい。俺の(天成獣の宿っている)武器を使えば、完全に俺の言葉を信じ込んでしまうのだからなぁ~。さあ、発動だ。)
と、イルカルは心の中で言う。
イルカルの天成獣の宿っている武器は、イアリングである。
そのイアリングを発動させて、能力を使える状態にする。
(さて、言葉は簡単だ。いつものように…な。)
と、イルカルは心の中で思うと―…。
「ガァッ………、アァ………………ァ……………。」
と、イルカルの様子がおかしくなる。
それを見たフィッガーバードは声をかけようとしたが―…。
「ラフェ=フィッガーバード様。今、イルカル様は神からのお言葉をいただいている状態です。この場合、今のような感じで様子がおかしくなりますが、心配はなさらないでください。」
と、イルカルのお付きの全身が黒の服で覆われている者がいきなり現れて、そう言うのだ。
その言葉に威圧感というものがあったせいか、フィッガーバードは簡単に大人しくなるのだった。
(……………………………………。)
と、フィッガーバードは心の中でさえも、今の状況を言葉にすることができないほどだ。
一方のイルカルは、
(神の声なんて、俺に聞こえるわけがないだろ。演出だよ、演出。馬鹿が!!!)
と、心の中で言う。
イルカルの様子がおかしくなっているのは、演技であり、神の声など聞こえるはずもない。
イルカルの言葉に信憑性を持たせるために、こうやって、さも自分は特別な存在から言葉を受け取ることができるということをアピールしているだけに過ぎない。だって、神の声を聞いたか、聞いていないかなんて言う証明は、現実にはできないのだから―…。
「ァ…………………………。」
そして―…。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。」
と、イルカルが叫ぶのだった。
その叫び声に、フィッガーバードは驚き、つい、イルカルの様子を見てしまうのだった。
そうやって数十秒の間、叫び声を上げた後、イルカルは―…。
「はあ…………はあ………………………はあ……………神の………………………………声を………聞きまし……た。」
イルカルの演技であり、勿論、こうやって叫んでいる間、フィッガーバードに言うべき言葉、洗脳すべき時に刷り込ませる言葉を考える。
それを神から聞いた言葉として、相手に刷り込ませるのだ。
そんなことをしなくても、洗脳することができるが、それでも、演出によって洗脳する相手に信じ込ませることの方が効果が良いからだ。
その間に、天成獣の宿っている武器の力を完全に発動させ、言い始める。
「ラフェ=フィッガーバード。お前は、ミラング共和国軍およびシエルマスの言うことを聞けばよい。二つの間で迷った場合は、シエルマス。特に、シエルマスのトップであるラウナン=アルディエーレの言葉を優先しろ。そうすれば、お前が憎むクーデター派を完全に潰すことができ、ラフェ=フィッガーバードの権力は安定し、ラフェラル王国も繁栄を迎えることになろう。これはフォンミラ=デ=ファンタレーシア=イルカル=フォンドの言葉であり、また、神の言葉である。」
と。
(……………なぜだろう。この言葉は本当に―…、私が神から与えられた言葉………なのかもしれない。聞かなければ―…。逆らっては駄目だ。)
と、フィッガーバードは洗脳されるのだった。
イルカルの天成獣の宿っている武器の洗脳から逃れるためには、特殊な能力をもった天成獣の宿っている武器を扱うか、すぐに危機を感じて、声の聞こえない方に距離を取るかをしないといけない。思い浮かべる方法を挙げるとすれば―…。
そして、イルカルはその後―…、
「どうでしたか?」
と、尋ねるように言う。
いつものことだ。
イルカルは、フィッガーバードが洗脳されたか、確認をしようとしているのだ。
思い込みというのが、危険であるとイルカルは知っている。だからこその確認だ。
「ええ、素晴らしい神からの言葉でした。教主フォンミラ=デ=ファンタレーシア=イルカル=フォンド様のお言葉で確信することができました。さっそく、実行していきたいます。」
と、フィッガーバードは言う。
イルカルに洗脳された者は、このように、イルカルの本名を呼び、イルカルの言葉を絶対的に信じるのである。
その言葉をフィッガーバードから聞くことができたので、イルカルは安心するのだった。洗脳できたと―…。
「そうか、良かった。これで、会談は終わりだな。」
と、イルカルは言う。
こんな会談なんて、長くするよりも、女性に囲まれて遊びたいのだから―…。
そして、イルカルとフィッガーバードの会見は終わるのだった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(128)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(36)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していきたいと思います。
『この異世界に救済を』の投稿日で、投稿します。
では―…。