表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
470/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(124)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(32)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ラフェラル王国を併合しようとするミラング共和国。ミラング共和国でラフェラル王国で活動している商人達は、ミラング共和国からラフェラル王国に流れる商品の関税の撤廃を要求する。

ラフェラル王国の王族と貴族の多くは、その関税の撤廃に賛成するが、王族の一人であるリーガライドは反対する。そのせいで、冷や飯を食わされるのであった。リーガライドは―…。

リーガライドはそんななか、妹であるフィルスーナとともに傭兵隊「緑色の槍」のトップのアルスラードに会う。かつて、リーガライドは傭兵隊「緑色の槍」に所属したこともある。

その中で、三者の話し合いとなり、フィルスーナによって、クーデターを起こすことが決定されるのだった。計画へと移行する。

そのようなことを起こすことが都合が良いと思っているのは、ミラング共和国と繋がっている貴族達や第一王妃の勢力であった。そんななかで、シエルマスも活動をおこなっており、「緑色の槍」に派遣しているシエルマスのスパイから情報を得るのだったが、フィルスーナやアルスラードに気づかれており、スパイらは粛清されていくのだった。

その後、そのスパイが関係していたラフェラルアート(ラフェラル王国の首都)のスラム街にあるアマティック教の教会で、教会の主要な信者とシエルマスのスパイをすべてフィルスーナとラフェラル王国の裏の者達によって始末されるのだった。そのことにより、情報が遮断されることになる。

ラフェラル王国から情報が届かなくなったことに対して、シエルマスの西方担当首席がラウナンに報告し意見をもらおうとするが、その頃、ラフェラル王国ではリーガライドらのクーデターは成功するのだった。

それはどのような過程であったのだろうか?


ラフェラル王国におけるクーデター発生後、まず、宰相を中心とする貴族政力がフィルスーナとラフェラル王国の裏の者により、気絶された後、拘束される。さらに、ファングラーデはリーガライドによって捕まることになった。

第一王妃であるヒールの方は―…、クーデターを把握し、誰が起こしているのかを妄想という感じで突き止める。失敗した人間を処分しようとするが、その時、フィルスーナが現れ、ヒールが個人で雇っている裏の者で始末しようとするが失敗し、裏の者を失うという結果となった。その時のヒールの悲鳴によって、衛兵が駆けつけて、逃げたフィルスーナが狂気をはらんだ人間であることを言うのであった。

その後、ヒールは自らの執事長を軍部の拠点へと向かわせる。自らの指示をファングラーデ王の指示としてクーデター側を鎮圧するように、という命令を―…。だけど、軍事貴族もすでにクーデター側に捕らわれており、軍部もたたき上げが指揮するような状態となっており、ヒールの執事長は捕まるのであった。

フィルスーナは、再度、ヒールのもとへと向かい、少しの会話の後、ヒールを殺し、ラフェラル王国のクーデターは、リーガライド側が勝利することになるのだった。

その後、リーガライドは、ラフェラル王国の支配をフィルスーナとともにしていくことを宣言するのだった。フィルスーナにとっては、迷惑なことでしかないが―…。

一方、フィッガーバードの方は、ミラング共和国の首都ラルネへはあともう少しの距離まで近づくのであった。

そんななか、シエルマスの本部では、東西南北と国内担当の首席、報告官、統領による会議がおこなわれる。その会議の間に、報告官の見習いからラフェラル王国の第一王子であるフィッガーバードがミラング共和国の首都ラルネにやってくるのだった。ミラング共和国の総統であるシュバリテと会見するために―…。ラウナンにとっては好機だった。

ミラング共和国の首都ラルネに到着したフィッガーバードは、これからミラング共和国総統シュバリテとの会見を楽しみにするのであった。そして、フィッガーバードとシュバリテの会見が開かれ、シュバリテはラフェラル王国でクーデターが起きたことをフィッガーバードに伝えるのだった。

 「そんな……馬鹿……………な………………………………。」

と、フィッガーバードは言う。

 フィッガーバードの中では、動揺しかなかった。

 それは強く、フィッガーバードの心の中を支配する。

 溢れんばかりの感情を伴うことにもなって―…。

 その間、シュバリテはただ沈黙し、じっとしている。

 場の雰囲気を変えないようにしながら―…。

 話しかける必要はない。

 フィッガーバードの言葉に答えていれば良い。

 真実という名の言葉で―…。

 だからこそ、待つ姿勢をしながら―…。

 (どうなっている。何で、クーデターが発生して―…。それで、リーガライドの奴が勝利するだと!!! あり得ない、あり得ない、あり得ない!!!)

と、フィッガーバードの感情は、荒れに荒れまくっている。

 そんな状態であったとしても、会談相手に失礼がないようにするために、感情を表に出さないようにしている。すでに、シュバリテには筒抜けであるが―…。

 (動揺しているようだな。ラフェラル王国の後継者と目されており、本人もそのように思っていて、かつ、今回の私との会見でラフェラル王国での王位後継者としての地位を盤石にしようとした。だが、私から言われたのは、ラフェラル王国でクーデターが起き、クーデター側が勝利し、自身の地位は一気に失ってしまったのだ。当たり前のことだ。)

と、シュバリテは心の中でこのように思う。

 シュバリテは、少し考えれば、気づくことをただ、素直に受け取っているだけに過ぎないし、余計な思考というものを排除しているだけだ。

 相手の立場に立って考える。

 まさに、そのことをシュバリテはしているからこそ、ミラング共和国の議員の中でも生き残ることができているのだ。要因の一つにしか過ぎないが、それでも、大きな要因となっていることを否定することはできない。

 そんななかで、さらに続ける。

 (しばらく感情が戻ることはないだろう。会見の時間を長めに設定しておいて良かった。フィッガーバード第一王子は、必ずラウナンの思い通りに動くことになろう。たとえ、自らの地位を不運な要因で失ったとしても、過去の地位を取り戻すチャンスが存在する限りな。彼は、ラフェラル王国国王の地位を望んでいるし、それが完全な目的と化している。まあ、それが本当に手に入るかは分からぬがな。リーガライド王子は、シエルマスを出し抜きクーデターを成功させたのだから、かなりの実力者と人心掌握能力を持っているということだ。そういう奴は、失敗しようとも、それ以上の成功を掴んでくるからな。)

と、動揺しているフィッガーバードを見ながら、暇のあまり考え始めてしまうのだった。

 シュバリテは―…。

 シュバリテとしては、さっさと会談が終わるのなら、それでも良いが、今回の場合はそのように事が運ばれるはないと、気づいている。

 だからこそ、頭の中で考えながら、時間を潰しかできなかった。

 ここで、忙しいので、溜まっている仕事を片付けも良いですか、ということは聞けないし、さらに、それをフィッガーバードに何も言わずにすることは失礼にあたる。

 外交というものは、相手国との間の礼儀が時には、細かいものであったりするし、些細なことで大問題になることが十分にある。そういう意味で、シュバリテは細心の注意を払わないといけないのだ。

 そんななか―…。

 (あり得ない!!! あり得ない!!! あり得ない!!! 俺がラフェラル王国の後継者としての地位は―…。いや、父上や母上がどこかに逃げて反撃のチャンスを窺っているはずだ!!!)

と、フィッガーバードは冷静になれないながらも、ある事に気づくのだった。

 そう、シュバリテの言葉を聞いた感じでは、あくまでも、ラフェラル王国はクーデター側が政権を掌握したというだけで、ファングラーデやヒールがまだ、クーデター側に捕まっているとは限らないのだから―…。

 そして、二人は重臣とともに逃げだすことに成功しており、密かに反撃の機会を窺っているはずだ。

 そのように、シュバリテは思考するのだ。

 予想外の出来事であり、かつ、自分の地位を奪われることが起こっており、それが確実であったとしても、僅かばかりの可能性に賭けようとするのが人の性というものであろう。全員がそういう選択をするわけではないが―…。

 シュバリテは、その選択に縋りつくことで、自らが失敗した時、その僅かばかりの希望が存在しないという可能性を排除したのだ。そうすれば、希望を抱き続けられるし、自らの地位を取り戻し、失うという結果をなくすことができるからだ。

 人という生き物は、自らが生まれつき持っているもの、それから、人生の中で手に入れた経験と知識という情報のなかから判断するのだ。組み合わせとか、新たな可能性の思考というものもできないわけではないが、多くはないであろう。影響力というか、反響に関しては、考慮に入れないとするとであるが―…。

 「シュバリテ総統。我が父親であるファングラーデ王とヒール王妃の行方に関してはどうなっていますか?」

と、フィッガーバードは尋ねる。

 フィッガーバードは二人の行方に関して、知らないし、ラフェラル王国に人を派遣して聞くということはかなり難しいだろうと考え、目の前で情報を持っている可能性が高いシュバリテに聞くのだった。

 シュバリテは―…、

 (ラウナンからほとんどラフェラル王国の状況を聞いているわけではない。ファングラーデ王に関しても、ヒール王妃に関しても、分かっていることはない。それに行方が分かっていた場合でも、ラウナンの考えだと、フィッガーバード第一王子の士気を削がないために、あやふやにしておくのがベストであろう。フィッガーバード第一王子は、ラウナンによる扱いやすい手駒程度の存在にしかならないのだから―…。)

と、心の中で思う。

 シュバリテも、ファングラーデとヒールの行方に関しては分からない。ミラング共和国の諜報および謀略組織であるシエルマスの諜報員で、ラフェラル王国に派遣された者は誰一人として戻ってきていないのだから、情報収集能力にはかなりの限度というものが存在する。

 ラフェラル王国で商売をおこなっているミラング共和国の商人に聞かれて、集められた情報からシエルマスが判断しているものとシュバリテに報告されているものから判断すると、クーデター側が勝利したということだけである。

 これから、続々とラフェラル王国に関する情報がある程度集まってくることであろう。シエルマスの諜報員が実際に目にした情報ではないので、鮮度という点ではかなり落ちてしまってしまうのであるが―…。

 そういう情報の中で、フィッガーバードの士気を削がないために、敢えて、有耶無耶なままにしておいた方が良いとシュバリテは判断する。

 その理由は、フィッガーバードが希望に縋っていることと、その希望によって復讐にはしることができるだろうと推測できるからである。

 シュバリテは、政治の世界の中で総統という最高の地位に上り詰めることができたし、実力も伴っていることから、こういう相手の機微というものを敏感に察知することができるし、その利用方法も心得ているというわけだ。

 「私から言えることはただ一つだ。ファングラーデ王とヒール王妃の行方は分かっていない。生きているかどうかを保証することはできない。」

と、シュバリテは言う。

 シュバリテとしては、正直に言った上で、かつ、自分達はファングラーデとヒールの生死は分からないし、保証することはできないと言う。

 そういうことで、これが言質となり、ファングラーデとヒールがクーデター側に捕まるか、殺されるかということがあったとしても、その責任を負う必要がなくなる。

 あくまでも、ファングラーデとヒールが生きているとは言っていないのだから―…。

 そういう言葉一つとってみても、隙というものを見せないようにしている。確定的でないことは余程のことがなければ言わないようにする。

 責任問題に発展しないようにするために―…。

 争いになった時に、負けないということを達成するために―…。

 フィッガーバードは、

 (……大丈夫。クーデター側にラフェラル王国を奪われたかもしれないが、肝心の父上と母上が捕まっているかどうか分からない以上、希望はある。いや、父上と母上は、醜きクーデター側を潰すための好機を待っているに違いない。だからこそ、私がこのクーデターどもを、ミラング共和国から借りてきた軍勢で潰し、その成果をもって父上から王位の位を譲り受ける。そうすれば、ラフェラル王国はもっと良き王国となるはずだ。私は生まれが尊く、選ばれたものなのだから―…。)

と、心の中で思いながら、口にするのだった。

 決して失礼のないようにしながら―…。

 「シュバリテ総統。お願いがあります。」

と。

 まず、用件を言うのではなく、お願いということを言って、シュバリテの注意を向ける。こうすることで、聞いてもらえるとフィッガーバードは思っているのだ。

 まあ、今回は、シュバリテにしても聞くことであろうし、ある言葉がフィッガーバードから出るのを待っている。

 (そろそろあの言葉が出るか―…。)

と、シュバリテは、心の中で思いながら、

 「お願いとは?」

と。

 シュバリテとしても、フィッガーバードの表情から察することができる。

 だけど、言葉にして、言質に変えないと証拠にはならないし、公文書としての記録に残ることもない。こうやって、口約束ではなく、正式な約束であることを示すために―…。

 政治とは、時に裏切りが発生することがある以上、謂れのないことを言われることがあったり、その罪を着せられようとすることがある以上、証拠を残すことは当たり前のことである。

 この会談もちゃんと公文書に残されることだろう。公文書は公文書として管理されることになる。

 そんな当たり前のことだと思われることも、決して完全な普遍性を帯びることはない。

 さて、シュバリテの言葉に対して、意気揚々として、言葉を落ち着けながら、お願いをフィッガーバードは言い始める。

 「本当は他国に頼ることがあってはならないのですが、ミラング共和国のシュバリテ総統なら大丈夫でしょう。私はシュバリテ総統を信じています。我が王国がクーデター側に奪われてしまった以上、他国の軍勢を借りてでも、忌まわしきクーデターを潰さないといけない。我が王国に秩序と素晴らしき繁栄を取り戻すために!!! だからこそ、そのために、ミラング共和国の軍勢をお貸しいただきたい。クーデターを潰した暁は、ミラング共和国から我が国に流れる商品の関税を撤廃するだけでなく、商業をおこなう上での特別の地位を与えようと思っています。」

と、フィッガーバードは言う。

 ミラング共和国にとって都合の良いことであるが、クーデター側を潰すためには仕方ないことだと割り切ることにする。

 なぜなら、クーデターを潰さないことには、フィッガーバードがラフェラル王国で権力を握ることさえできないのだから―…。そのために、他国の協力を得ようとすることは背に腹は代えられぬことであり、クーデター側が一番の敵であると認識しているからであり、ミラング共和国にラフェラル王国に利権を与えてしまうのは良くないことであるという認識はあるのだが―…。

 (……これだけ好条件をだせば、ミラング共和国軍を派遣してくれることだろう。それに、ラフェラル王国を支配することはできないし、しようとすれば、ラフェラル王国の住民が抵抗するからだ。)

と、フィッガーバードは心の中で思う。

 これは矛盾しているとしか言いようがない。

 普通かどうか分からないが、ラフェラル王国を征服しようとしているミラング共和国軍を入れる場合を考えてみる。

 ミラング共和国は、ラフェラル王国の領土内に軍を進めた時点で、クーデターを鎮圧しながら、ラフェラル王国内を荒し回るだろうし、過去にもそのようなおこないをしているので、確実というのは避けないといけないが、荒し回るという可能性は十分にあると思われる。

 それから、荒し回る過程で、略奪や虐殺などの行為をミラング共和国軍が働くということも可能性として高く存在するので、被害に遭ったラフェラル王国民の多くはミラング共和国軍に対する心象はかなり悪くなるだろうし、その噂はラフェラル王国中に広まることは避けられることではない。

 だけど、それはミラング共和国軍がラフェラル王国民の抵抗に対して、次第に不利になっていくことが前提としてなければ意味のないことであり、圧倒的な力でラフェラル王国民の抵抗を押さえつける可能性もあるということだ。

 そうなってしまえば、ラフェラル王国が支配されないと考えるフィッガーバードの考えに矛盾が発生するだろう。別の観点から言えば、ミラング共和国に支配されたとしても苛烈な支配であれば、住民は散発的であろうが、反抗してくるかもしれない。そうなれば、ミラング共和国軍もそれに忙殺されて、ラフェラル王国内を上手く統治できず、国力をダウンさせるかもしれない。そこを突いて、ミラング共和国の支配から脱却することも十分に可能である。

 可能性はいろいろと存在するので、フィッガーバードの考えていることには矛盾が発生する結果になることだって十分に存在する。

 だからこそ、妄想だけで動いてはならないし、相手の意図というものを知らないといけないわけだ。

 そして、シュバリテはただ、頷くのだ。

 「わかった。」

と。

番外編 ミラング共和国滅亡物語(125)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(33)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


第三章の内容がどんどん増えていって、30回を超え、40回を超える感じです。

増えすぎだろ。

そのようなツッコミを入れてしまいそうになる感じです。

PV数が増えますように―…。

では―…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ