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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第28話-5 神と王は対立する

前回までのあらすじは、セルティーがヒルバスに投げられた武器が瑠璃の形成した空間の裂け目みたいなものを通って、腹部に直撃し気絶した。その後、セルティーは目覚めた中央の舞台へ向かう廊下を地獄と勘違いし、発狂したのかもしれないほどに声をあげるのであった。その後、セルティーは中央の舞台へと向かって行くのであった。

 リースの競技場にある中央の舞台。

 そこでは、ランシュがヒルバスを叱りつけるのを終えていた。

 「くっ…、ヒルバス。お前は俺の味方なのか、敵なのかどっちなんだよ。」

と、ランシュはヒルバスに尋ねる。そう、俺の命令した行動の大抵には従うが、時々変な方向で命令を違反する。それがどうしてなのかランシュは気になっていた。

 「えっ、決まっているではないですかぁ~。私は、ランシュ様の味方であり、ランシュ様がおもしろくなるためだったら、たとえ火の中、水の中、命令違反だってする、妨害をする味方ではないですかぁ~。」

と、ヒルバスは言う。ふざけているように思われるかもしれないが、ヒルバスはいたって真剣であった。それは、ランシュがカッコよく尊敬されるだけでなく、実に面白いことをする人物であることによって、周りからの恨みを減らそうとしたためでもある。これは、ヒルバスがランシュに対する無駄に多くの敵をつくらせないための、ヒルバスなりの思いがあったからである。それに関して、ランシュはいまだに気づいていないのであるが―…。

 「妨害するのは味方じゃねぇ~んだよ。味方で、俺の部下なら、命令には従えよ。」

と、ランシュは怒気をはらませながら言う。

 「アハハハハハ。すみません、すみません、ランシュ様。」

と、ヒルバスは言い、軽くランシュに対して謝るのであった。

 「くぅ~。これで、俺のカッコよさは誰にも伝わりもしねぇ~、なぁ~。」

と、残念そうにランシュは言葉にして呟いたのだった。

 このようなやり取りに、リースの競技場に来ていた観客は、

 (これが革命をしようとしている人なのか。大丈夫か。)

と、ヒルバスの考えが別の意味で的中しているのかもしれないと思われる結果となっていた。そう、観客は、革命が成功するのか不安そうに見ていた。観客は、実際に、革命の成功するか失敗するのかはどうでもよかったのだ。むしろ、騎士同士の対決という娯楽を中止して、その代わりにしようとしているゲームがどんなものであり、それは、騎士同士の対決よりも面白いものであるかの方を、多くの観客にいる人は気にしていた。


 中央の舞台に入り口に一人の人物が姿を現わす。

 それは、一人の少女である。

 この人物は、リース王国の王女であるセルティー=リースだった。

 「ヒルバス!! よくも私に蹴りを喰らわせたなっ!!! 女性は丁重に扱うべきではないのか、男であるヒルバス(お前)としては。」

と、セルティーは、中央の舞台の中央付近にいるヒルバスやランシュに聞こえるように言った。

 セルティーが姿を現したときに、ランシュとヒルバスはそれに気づいていた。

 「いえ、セルティー様はお強い方ですし、それになるべく腹部を痛めつけないように回復技を施しながら蹴ったつもりです。私、ヒルバスは、女性を傷つけることはあまり好みではなく、女性にやさしく弄られるのが好みなんです。それに、セルティー様の腹部へのダメージは実際、ほとんどないはずですが…。ちなみに、痛みに関しては残しておきました。」

と、ヒルバスは言う。ヒルバスは、セルティーを蹴るとき痛みの感覚だけはそのまま残して、実際のダメージに関しては、ほとんどないように配慮して、回復技をセルティーにかけながら蹴ったのである。

 「しかし、ヒルバスよ、私はあの後、私の武器を何者かに使われて不意打ちを受けた。」

と、セルティーは言う。虚偽を混ぜながら―…。

 「それは、ランシュ、お前がヒルバスに命じてやらせたのか。」

と、セルティーは続ける。

 「はあ、俺がヒルバスに命じて、命を奪うような不意打ちをするか。もし、するんだったら、もうちょっとうまくやるだろう。仮に俺は騎士でもあるんだ。セルティー、お前が仮に命を奪うことを目的とした不意打ちを受けたならば、お前がここにいるわけがないだろう。それに、今回の俺は、セルティー、お前を不意打ちにして殺すことではないからな。」

と、ランシュは否定する。実際に、ランシュはセルティーを不意打ちで亡き者にしたいとは考えていなかった。そうしてしまえば、リース王国を乗っ取ったとしてもリースに住む人々にとってのランシュに対する印象は最悪となる。つまり、ランシュはリースに住む人々の反乱や革命に自らも遭遇してしまうことになり、都合が悪いのだ。別に、リースに住む人々を殺したいとは思っていないし、無駄な殺生は百害あって一利なしのように、ランシュにとっても利益にならないとランシュ自身が十分に理解していたのである。

 一方で、セルティーの言葉がいくつか嘘ではないかと考えていた人物が一人いた。

 (ああ、なるほど。そういうことですか。)

と、ヒルバスはセルティーが言おうとしていることの真の意味を推理した。

 「セルティー様。それは、たぶん、私がセルティー(あなた)様の武器を侍従から奪い(受け取り)、セルティー様に向けて投げたのですね。そして、それがセルティー様に当たったということでしょうか。」

と、ヒルバスは言う。これは、大幅に正解の推理であった。

 言い当てられたと感じたセルティーは、

 「……、いや不意打ちです。あれは―……、絶対に―……。」

と、意地をはりながら言った。すでに、言っていることが、嘘をついて親に叱られた子どもが、それでも嘘を真実であると言い張るものであった。まさに、意地を張る子どものようにセルティーはなっていたのだ。それは、観客に自分のついたのが嘘だと言われて、信頼をなくすことと、それがリース中に広められることを恐れたからである。そうなると、リース王国における王族の信頼の低下と、馬鹿にされるのではないかと思ったからである。つまり、最初から正直に言っていれば、嘘をつきとおすことなんてしなくてもよかったということだ。

 (ああ~、これは、セルティー様意地になっても嘘を真実として突き通そうとしますね。ここは、私が―…。)

と、ヒルバスは心の中で呟く。そう、ヒルバスはセルティーの嘘を事実にしようとした。

 しかし、

 「うわぁ~、王族とあろうものが在りもしないことを、それもしょうもないことで嘘をつこうとするとは―…、がっかりだよ。」

と、中央の舞台に向かってくる声がした。

 そのため、ヒルバスは自らが言おうとしたことを止めた。

 「お前は―…、さっき、礼奈殿が言っていた空気の読めないおっさんだな。」

と、セルティーは、自らの近くに現れたアンバイドに向かって言う。そう、アンバイドがセルティーのさっきの不意打ちをうけたという嘘を、嘘であると正直に言ったのである。そのアンバイドの行動は、セルティーを驚かせるには十分であった。

 そして、アンバイドは、セルティーのさっきの不意打ち発言が嘘であり、真実を知っているので、何も自分にやましい気持ちはないという表情で堂々としていた。

 しかし、アンバイドに本当にやましい気持ちがないと言えば嘘であるが、決して、私欲だけのためというわけではなかった。

 ゆえに、アンバイドはセルティーにしか聞こえない声で、

 「さっき、俺が条件あると言ったな。」

と、言う。

 「さっきのあれは、……言わないと空気の読めないおっさんであるあなた自身が誓ったではないか。」

と、セルティーは言う。そう、さっき礼奈の圧によって、セルティーが自らの武器によって気絶したことなどを言わないことを誓っていた。

 しかし、アンバイドにとっては、

 「それは、あれだろ。セルティー王女が自らの武器に当たって気絶したことや、地獄と勘違いしたことに対してだろう。ランシュやヒルバス(あいつら)に対する嘘発言は含まれないのでは…。」

と、言う。つまり、今のセルティーの嘘発言は、誓約の中には含まれないということを主張したのだ。そして、アンバイドの表情は、意地悪いものにもなっていた。

 それを見たセルティーは、

 (ぐっ!! 私が…あそこで…あんなことをしなければ……。)

と、心の中で悔しそうに後悔するのであった。そう、ヒルバスに蹴られて以後の自らの行動と言動を悔やんでいたのである。あそこで、冷静になって状況を確認して、冷静な対処をしていれば、今のようにアンバイドに脅されることはなかったのに、と思ってしまったのだ。

 セルティーは歯をきしりとさせながら、

 「で、条件とは何ですか、空気の読めないクソおっさん。」

と、普段ならば絶対にしないほどに口が悪くなって、言うのであった。

 「空気の読めないおっさん、とさっきから言われているが、今の俺はとても機嫌がいいので、そのことについて気にしてないさ。俺の心はセルティー王女よりもとても広いのだからさ。まあ―…。」

と、調子に乗りながらも冷静さを保ちながら言うアンバイドであった。そして、「まあ―…。」の後に、少しの間をあけ、声自体も調子乗った生きのいいような声ではなく、トーンの低い冷静さを感じさせる声で、

 「俺らは、ランシュという奴が仕組んだゲームに招待されてなぁ~。そのためには、どこか広い訓練できる場所がリースに必要というわけだ。だから、セルティー王女(あんた)の住んでいるところならば、敷地も広く、俺らの訓練に使用できるし、ゲームの間、衣食住に困ることはなくなる。そうすれば、ランシュのゲームも優位に進められるかもしれない。ゲームがどんなものかは知らないが、な。つまり、セルティー王女(あんた)の住んでいる城を俺らの宿泊および訓練場所として提供してくれないか。」

と、アンバイドは条件をいう。そう、アンバイドは、セルティーに対して、リースにある城を瑠璃、李章、礼奈、クローナ、アンバイドの宿泊や訓練をする場所として提唱してほしいと言ったのだ。

 それに対して、セルティーは、

 「そんなことですか? アンバイド(あなた)はランシュの企画したゲームの関係者ですか。ならば、その間について別に構いませんよ。提供しましょう。アンバイド(あなた)に訓練場と宿泊場所と食事を―…。」

と、セルティーはアンバイドのリースの城の宿泊などを了承した。

 「わかった。では、」

と、こそこそ声だったアンバイドは、ランシュやヒルバスに聞こえるように、

 「すまない。これは俺の勘違いだった。セルティー王女は、実際に不意打ちにあったようだ。」

と、言った。いや、嘘発言に加担したのだ。理由はとても簡単だ、寝床と訓練所の確保できたので、その主であるセルティーの信頼を獲得しておく必要があるからだった。

 (お金か何かでも積まれたのでしょうか。アンバイド(あの人)は…。)

と、怪しい目になりながらヒルバスは、アンバイドとセルティーのいる方向を向いた。

 (でも、まあ、これでやりやすくなりました。)

と、ヒルバスは決心をして、言う。

 「ええ、不意打ちするように、ランシュ様より命じられました。それも、空間の裂け目をつくり、その中へ閉じ込めるよう―…。」

と、ヒルバスが言う。ヒルバス自身、セルティーの一部嘘の含まれた発言に対する、その嘘に加担した。

 「俺は、奇襲するようには命じた。それは―…。」

と、ランシュは言いかけたところで、ヒルバスはランシュの口を塞いだ。

 口を塞がれたランシュは、もごもごさせながら、発言させろ―、と言おうとしたが、できなかった。あまりにもヒルバスが、ランシュの口を塞ぐのうまく、抵抗しても逃れることができなかったのだ。

 「ランシュ様はこうおしゃっています。俺の仕組んだ罠をよく切り抜けた。すばらしい。ゆえに、セルティー、お前には俺の企画したゲームに参加する資格がある、と。」

と、ヒルバスは言う。そう、ランシュがこれ以上リースの人々から恨まれないようにしようとしたヒルバスの機転であったのだ。

 実際は、競技場にいる観客は何が起こっているのかぜんぜん理解できなかったという。

 そして、ヒルバスはランシュの口を塞ぐのをやめ、解放した。

 「ぷはぁ。ヒルバス、てめぇ~、後で覚えていろよ。が、感謝もする。これでやっとゲームの説明をすることができる。」

と、ランシュは言う。ランシュはゲームというものを競技場にいる観客に意義のあるものと理解してもらうために、革命を宣言したり、ヒルバスにセルティーを舞台の中央の上空に蹴らせて、瑠璃に水晶を展開させて、ゲームが観客の満足いくものであると示そうとしたのだ。

 しかし、いろんな意味で脱線してしまっていて、どうゲームを始めたらいいのかランシュ自身さえわからなかったのだ。ゆえに、ヒルバスの機転に感謝しているが、口を塞ぐのはランシュにとってかなり頭にきていた。

 「では、ゲームの説明しようではないか。」

と、ランシュは言う。

 アンバイドが出てきてからしばらくした後、アンバイドとセルティーの会話中に中央の舞台には、瑠璃、李章、礼奈、クローナが姿を現していた。四人は、セルティーと中央の舞台方へその後に向かってアンバイドがどうなったのか心配してきたのだ。それに、アンバイドがセルティーに何か要求するのではないかと、李章以外の三人の女子の勘がそう感じたので、アンバイドの変な要求を阻止しようとしたのである。結果は、阻止する前に、アンバイドとセルティーの両者の間で何か決着がついていたので、失敗したのだった。

 ランシュは、瑠璃、李章、礼奈、クローナの方を向き、

 「お前らに言おう。俺もここに来たからといって、俺の企画したゲームに参加するとは限らない。ゆえに、問おう。俺の企画したゲームに参加するか?」

と、自らの企画したゲームに参加するのか、しないのかを問う。

 瑠璃、李章、礼奈、クローナの中の一人は、すでに答えが決まったように、

 「参加します。私たちは、ランシュ(あなた)が企画したゲームに!!!!!」

と、言う。その一人とは、瑠璃であった。その声は、決心をすでに決めた心の強い人間を思わせるものであった。


第28話-6 神と王は対立する に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


第28話が長引いています。後はゲームについてのルール説明とセルティーのある宣言だけですが…。

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