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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
469/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(123)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(31)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ラフェラル王国を併合しようとするミラング共和国。ミラング共和国でラフェラル王国で活動している商人達は、ミラング共和国からラフェラル王国に流れる商品の関税の撤廃を要求する。

ラフェラル王国の王族と貴族の多くは、その関税の撤廃に賛成するが、王族の一人であるリーガライドは反対する。そのせいで、冷や飯を食わされるのであった。リーガライドは―…。

リーガライドはそんななか、妹であるフィルスーナとともに傭兵隊「緑色の槍」のトップのアルスラードに会う。かつて、リーガライドは傭兵隊「緑色の槍」に所属したこともある。

その中で、三者の話し合いとなり、フィルスーナによって、クーデターを起こすことが決定されるのだった。計画へと移行する。

そのようなことを起こすことが都合が良いと思っているのは、ミラング共和国と繋がっている貴族達や第一王妃の勢力であった。そんななかで、シエルマスも活動をおこなっており、「緑色の槍」に派遣しているシエルマスのスパイから情報を得るのだったが、フィルスーナやアルスラードに気づかれており、スパイらは粛清されていくのだった。

その後、そのスパイが関係していたラフェラルアート(ラフェラル王国の首都)のスラム街にあるアマティック教の教会で、教会の主要な信者とシエルマスのスパイをすべてフィルスーナとラフェラル王国の裏の者達によって始末されるのだった。そのことにより、情報が遮断されることになる。

ラフェラル王国から情報が届かなくなったことに対して、シエルマスの西方担当首席がラウナンに報告し意見をもらおうとするが、その頃、ラフェラル王国ではリーガライドらのクーデターは成功するのだった。

それはどのような過程であったのだろうか?


ラフェラル王国におけるクーデター発生後、まず、宰相を中心とする貴族政力がフィルスーナとラフェラル王国の裏の者により、気絶された後、拘束される。さらに、ファングラーデはリーガライドによって捕まることになった。

第一王妃であるヒールの方は―…、クーデターを把握し、誰が起こしているのかを妄想という感じで突き止める。失敗した人間を処分しようとするが、その時、フィルスーナが現れ、ヒールが個人で雇っている裏の者で始末しようとするが失敗し、裏の者を失うという結果となった。その時のヒールの悲鳴によって、衛兵が駆けつけて、逃げたフィルスーナが狂気をはらんだ人間であることを言うのであった。

その後、ヒールは自らの執事長を軍部の拠点へと向かわせる。自らの指示をファングラーデ王の指示としてクーデター側を鎮圧するように、という命令を―…。だけど、軍事貴族もすでにクーデター側に捕らわれており、軍部もたたき上げが指揮するような状態となっており、ヒールの執事長は捕まるのであった。

フィルスーナは、再度、ヒールのもとへと向かい、少しの会話の後、ヒールを殺し、ラフェラル王国のクーデターは、リーガライド側が勝利することになるのだった。

その後、リーガライドは、ラフェラル王国の支配をフィルスーナとともにしていくことを宣言するのだった。フィルスーナにとっては、迷惑なことでしかないが―…。

一方、フィッガーバードの方は、ミラング共和国の首都ラルネへはあともう少しの距離まで近づくのであった。

そんななか、シエルマスの本部では、東西南北と国内担当の首席、報告官、統領による会議がおこなわれる。その会議の間に、報告官の見習いからラフェラル王国の第一王子であるフィッガーバードがミラング共和国の首都ラルネにやってくるのだった。ミラング共和国の総統であるシュバリテと会見するために―…。ラウナンにとっては好機だった。

ミラング共和国の首都ラルネに到着したフィッガーバードは、これからミラング共和国総統シュバリテとの会見を楽しみにするのであった。

 会見の場。

 そこでは、緊張した面持ちでフィッガーバードは待っていた。

 (さっきまでは、緊張していなかったが、急に緊張し出してきた。だが、大丈夫だ。シュバリテ総統と会見を終えれば、私はラフェラル王(わが)国の次期国王として確定だ。)

と、フィッガーバードは心の中で思う。

 思った後に、自らの気持ちを奮い立たせる。

 自らがラフェラル王国の次期国王になることを確定させるんだ。

 そのような気持ちの強さが、今、目的が達成されるんだということが現実に実感できるところまできていることを感じてしまっているので、フィッガーバードはそのことを達成できるのかという矛盾した感情が相互に重なって、より緊張した面持ちとなりながらも、気持ちを奮い立たせることができ、心臓が強くバクバクとさせるのである。

 運命は決まっている。

 フィッガーバードは、ラフェラル王国における次期国王になることを―…。

 そのように解釈しているフィッガーバードは、ラフェラル王国でクーデターが起き、クーデターを仕掛けた側が勝利したことを知らない。

 ゆえに、運命というものが我が手中に握られていると思い続けることができている。運命はフィッガーバードからすでに離れていこうとしているにも関わらず―…。

 そんななか、会見の場のドアからノックがなる。

 トントントン。

 「フィッガーバード第一王子様。我が国の総統であらせられるフォルマン=シュバリテ様がお付きになられました。では―…。」

と、案内してきた者がドアの外から部屋の中にいる者に聞こえるように言う。

 そして、言われると同時に、ドアが開けられる。

 この時、フィッガーバードとそのお付きの人の心臓は激しく鼓動をならし、緊張という気持ちを目一杯にそれぞれの心から飛び出そうとしている。

 その緊張という気持ちが同時に、フィッガーバードにおける興奮と呼ばれる感情を激しく、強くさせていくのだった。

 そのような緊張感と興奮、いや、高揚感がはしっている時に、ドアは完全に開けられ、案内が先に入ったすぐ後に、ミラング共和国総統であるフォルマン=シュバリテが会見の場に入ってくる。

 その体の姿勢はしっかりとしたものであり、情けなさというものを一切伝えず、その姿勢の素晴らしさは、凛々しいと表現した方が良いのではないかと思わせる。

 フィッガーバードは興奮と高揚の中におり、自分がどのような姿勢なのかを理解することができておらず、時が止まったかのような感覚さえ抱いていた。

 (ミラング共和国の総統―……、何という立派な姿勢し、かつ、凛々しさというものを感じさせられるのだ。)

と、フィッガーバードは心の中で思いながら、口の溜まっている唾を飲み込む。

 その時の音をたてているのかさえ分からないが、現実はシュバリテには聞こえることはないぐらいのものであり、かつ、フィッガーバードのお付きの者は、緊張からその音にさえ気づくもなかった。

 そんななか、シュバリテは、

 (……彼がラフェラル王国の次期後継者の中で有力視されていたラフェ=フィッガーバード第一王子か。見た目の感じからは、優しいそうな第一印象を抱くが、どこか危険な感情を持っているのではないか、と思える匂いがする。まあ、ラウナンを出し抜けるほどの実力はなさそうだが―…。)

と、心の中で冷静に考える。

 シュバリテは、凛々しい表情をしながらも、敵を見ているような表情をするのではなく、冷静に、友好を作ろうとしているような、にこやかな表情を見せるのだった。

 シュバリテは、政治家になるための姿勢やら、どういう場でどういうような動きが素晴らしいかという作法に関する教育はしっかりと受けてきているし、現場経験もあるので、完全に慣れという名の経験をしっかりと持っている。

 老練さも兼ね備えているので、フィッガーバードが見とれていたとしても、興奮に包まれていたとしても、すぐに相手のことを見た目から集められた情報から分析し、会談を始める前にどういう切り口で言うかを判断することができるし、実力をも理解してしまうのだ。

 シュバリテによれば、フィッガーバードがラウナンを出し抜いて行動できるほどの実力はなく、性格は元来優しいものであるが、同時に、ヒールらによって性格を歪められたことによって、危険な部分というものをはらんでいるのではないかと思ったのだ。

 その分析力は、シュバリテの心の中の言葉を聞くことができる者であれば、素晴らしいというか、恐ろしいと思っていることであろう。

 そんななか、シュバリテは、テーブルの位置に辿り着くと、そこにあるミラング共和国の総統のみが座ることができる椅子に座り、対面になるような位置で会談することになる。テーブルの長さは一メートル五十センチぐらいであろう。

 それぐらいに離れた対面に二つほど椅子がある。

 シュバリテは言う。

 「先に座って申し訳ないが、私も執務とか体を痛めておりまして―…。では、そちらの椅子にお座りください。フィッガーバード、ラフェラル王国第一王子。」

と。

 シュバリテとしては、自分がこの部屋の中では地位が一番上であり、先に座ったとしても、文句を言われる筋合いはないと思っている。だけど、一応、相手を不愉快な思いにさせないという配慮のために、敢えて、先に座ってしまったことを詫び、その理由を説明するのだった。

 その理由自体は、強ち完全に嘘というわけではないが、すぐに座らないといけないほど、酷い痛みというのがあるわけではない。

 シュバリテに言われて―…。

 「いいえ、お体は大事にしてください。では、失礼して―…。」

と、フィッガーバードは言いながら、シュバリテの対面にある椅子に座るのだった。

 フィッガーバードの腹心の一人は敢えて、フィッガーバードから見て、左後ろに少しだけ椅子を下げてから座るのだった。

 彼は、自らがフィッガーバードの部下であることを理解しているので、フィッガーバードと同じ位置に座ってはならないというラフェラル王国の礼儀に則って―…。

 フィッガーバードはそのような指摘するはずもない。これがラフェラル王国が外交交渉をして上で、当たり前のことであるのだから―…。

 一方、シュバリテは、

 (ラフェラル王国には、あのような自ら上下関係を示すような座る位置に関する作法がありましたか。文献ぐらいでしか読んでいないし、王の場合はそのようなことがあるのは見たことがありますが、王子のような場合でも同様であるとは―…。まあ、他国の作法のことなんて、一々指摘したところで険悪なムードになるだけだ。ラフェラル王国を征服した後に、ラウナンやクロニードル、ディマンド辺りはこういう作法を平然と導入してくるだろうなぁ。まあ、私も、ラフェラル王国を征服することができるのであれば、その風習を残すという感じで使うことができるだろう。だが、ラフェラル王国を支配することができれば、という話だがな。)

と、心の中で思う。

 他国の礼儀作法を指摘したとしても意味はないし、最悪の場合は、仲を悪くするかもしれない。だからこそ、指摘しない方が無難であり、上手く事が運ぶ可能性が十分にあるのだから―…。

 そういう意味で、シュバリテはフィッガーバードに指摘することはないし、ここは仲良くすることが望ましいのだから―…。

 そう思いながら、ラフェラル王国を征服した時には、その考えという礼儀作法を利用したいと心の中で思うのだった。だけど、ミラング共和国がラフェラル王国を支配できる可能性に関しては、そこまで高いとは思ってもいない。

 理由としては、ラフェラル王国に一杯食わされている以上、これから本格的な征服活動をおこなったとしても、勝てる見込みは低いということだ。

 それでも、ラフェラル王国を弱らせることができるのであれば、今、目の前にいるフィッガーバードというラフェラル王国の第一王子を利用することは(やぶさ)かではない。

 フィッガーバードが戦いの中で、彼の生命を終わらせるような結果となったとしても―…。

 シュバリテが重要だと思っていることは、自分の手駒をどれだけ最小限の犠牲に留めるかということであり、自分の完全な配下になっている者以外をどれだけ減らし、自分にとって危険な存在を矢面に立たせるか、ということだ。

 政治とは、そんな簡単なことではないし、苦労することが多いし、思い通りになったとしても、その結末が自分にとって望まぬということは普通に起こりうることだからだ。

 理想とは、その悲惨な結末を忘れさせることのできる薬のようなものであるが―…。

 さて、内容を戻す。

 「そう言っていただけると助かる。優しさは、時に支配する者にとっては必要なことでありましょう。私もフィッガーバード第一王子のような人がいれば、後継者に関しては困ることがないのですが―…。それで、私との会見である以上、どのような用件でこられたのかな。」

と、シュバリテは言う。

 心の中では、シュバリテの方がフィッガーバードに対して、気をつかっているような感じだ。

 シュバリテ本人は、特に、そのように思っていたりする。

 理由として考えられるのは、シュバリテは自己中的な人間であることは間違いないが、このような場でその性格を露わにすることがないぐらいに、自分をコントロールすることに長けている。そのようにしなければ、簡単に虚を突かれる可能性のある政治の世界で生き残ってきたのだから―…。家柄だけでなく、実力も兼ね備えているからこそ、本物の実力者として対外強硬派のトップになることができたのだから―…。

 それだからこそ、青二才でしかないフィッガーバードぐらいで感情を乱すことはない。

 乱されるのは、フィッガーバードの方だからだ。

 シュバリテの今の言葉を聞いたフィッガーバードは、少しだけ考えて言い始める。

 「ええ、今回は、正直なことを言えば、ラフェラル王国の中では、ミラング共和国から流れてくる商品の関税撤廃の政策の中で反対する王子がおり、その王子を排除するためには、こうやってフォルマン=シュバリテ総統との会見を開いて、私の権威というものを固めておく必要があるのです。それに、シュバリテ総統の後ろ盾があれば、総統も関税撤廃の政策を実行しやすくなるでしょうし、反対派の王子も排除しやすくなります。どうか、協力をしていただけると―…。」

と、フィッガーバードは言う。

 フィッガーバードとしては、言葉としてはおかしくなったかもしれないが、それでも、シュバリテにはしっかりと伝わったのではないかと不安になりながらも、確信することができた。

 (ミラング共和国にとっては、都合が良い政策なのだ。しっかりと協力をしてくれるはずだ。)

と、心の中でも、確信しながら、不安はありながらも、未来は決まり切っていると思っている。

 だからこそ、次のシュバリテの言葉には、呆然とせざるを得なくなるのだろう。

 そう―…。

 「フィッガーバード、ラフェラル王国第一王子。あなたはまだ、この情報を知らされていないか。もしくは、知っていたとして、我が国に軍事的な協力を要請しに来たのだろうか。」

と、シュバリテは言う。

 そこで、一つ、シュバリテは間をあける。

 これはわざとだ。

 間をあけながら、フィッガーバードの表情がどういうものであるのかを見ようとする。

 その表情は唖然としたのものだ。

 (一体、何を言おうとしている―…。)

と、いうふうにフィッガーバードは心の中で―…。

 それを感じ取ったのかシュバリテは、

 (聞かされていないようだな。)

と、心の中で結論付ける。

 少しだけフィッガーバードの今の表情を見れば、何となくだけど、推察することがシュバリテにはできてしまう。これまで、政治の世界にいたからこそ、実力で出世したからこそ、その経験がこの場で生きているのだ。

 だからこそ―…。

 「直接言おう。今、ラフェラル王国は、クーデターが発生し、クーデターを起こしたリーガライドが勝利し、ラフェラル王国の政権を掌握している。」

と、シュバリテは、今のラフェラル王国の情報を伝える。

 嘘ではなく、真実を―…。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(124)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(32)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していきたいと思います。


『水晶』の投稿再開です。

いつものペースで無理しない程度に頑張ります。

夏で暑すぎて、執筆ペースがかなり落ちてますが―…。

ここからは、第三章の重要な場面へと突入していきます。

お楽しみください。

では―…。

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