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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
468/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(122)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(30)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ラフェラル王国を併合しようとするミラング共和国。ミラング共和国でラフェラル王国で活動している商人達は、ミラング共和国からラフェラル王国に流れる商品の関税の撤廃を要求する。

ラフェラル王国の王族と貴族の多くは、その関税の撤廃に賛成するが、王族の一人であるリーガライドは反対する。そのせいで、冷や飯を食わされるのであった。リーガライドは―…。

リーガライドはそんななか、妹であるフィルスーナとともに傭兵隊「緑色の槍」のトップのアルスラードに会う。かつて、リーガライドは傭兵隊「緑色の槍」に所属したこともある。

その中で、三者の話し合いとなり、フィルスーナによって、クーデターを起こすことが決定されるのだった。計画へと移行する。

そのようなことを起こすことが都合が良いと思っているのは、ミラング共和国と繋がっている貴族達や第一王妃の勢力であった。そんななかで、シエルマスも活動をおこなっており、「緑色の槍」に派遣しているシエルマスのスパイから情報を得るのだったが、フィルスーナやアルスラードに気づかれており、スパイらは粛清されていくのだった。

その後、そのスパイが関係していたラフェラルアート(ラフェラル王国の首都)のスラム街にあるアマティック教の教会で、教会の主要な信者とシエルマスのスパイをすべてフィルスーナとラフェラル王国の裏の者達によって始末されるのだった。そのことにより、情報が遮断されることになる。

ラフェラル王国から情報が届かなくなったことに対して、シエルマスの西方担当首席がラウナンに報告し意見をもらおうとするが、その頃、ラフェラル王国ではリーガライドらのクーデターは成功するのだった。

それはどのような過程であったのだろうか?


ラフェラル王国におけるクーデター発生後、まず、宰相を中心とする貴族政力がフィルスーナとラフェラル王国の裏の者により、気絶された後、拘束される。さらに、ファングラーデはリーガライドによって捕まることになった。

第一王妃であるヒールの方は―…、クーデターを把握し、誰が起こしているのかを妄想という感じで突き止める。失敗した人間を処分しようとするが、その時、フィルスーナが現れ、ヒールが個人で雇っている裏の者で始末しようとするが失敗し、裏の者を失うという結果となった。その時のヒールの悲鳴によって、衛兵が駆けつけて、逃げたフィルスーナが狂気をはらんだ人間であることを言うのであった。

その後、ヒールは自らの執事長を軍部の拠点へと向かわせる。自らの指示をファングラーデ王の指示としてクーデター側を鎮圧するように、という命令を―…。だけど、軍事貴族もすでにクーデター側に捕らわれており、軍部もたたき上げが指揮するような状態となっており、ヒールの執事長は捕まるのであった。

フィルスーナは、再度、ヒールのもとへと向かい、少しの会話の後、ヒールを殺し、ラフェラル王国のクーデターは、リーガライド側が勝利することになるのだった。

その後、リーガライドは、ラフェラル王国の支配をフィルスーナとともにしていくことを宣言するのだった。フィルスーナにとっては、迷惑なことでしかないが―…。

一方、フィッガーバードの方は、ミラング共和国の首都ラルネへはあともう少しの距離まで近づくのであった。

そんななか、シエルマスの本部では、東西南北と国内担当の首席、報告官、統領による会議がおこなわれる。その会議の間に、報告官の見習いからラフェラル王国の第一王子であるフィッガーバードがミラング共和国の首都ラルネにやってくるのだった。ミラング共和国の総統であるシュバリテと会見するために―…。ラウナンにとっては好機だった。

 場所は、ラルネにある行政庁舎。

 その中にある総統府という場所。

 ここは、総統が常時勤務している場所であり、五年と半年の間に新たに建てられた建物であり、その庁舎は豪華絢爛なものであった。

 ここに投入された資金は、旧ファブラの領土から産出される鉱物資源による収入とその税金があてられており、街の中心部に城のような形をしている。

 城と言ってもおかしくはないし、ラルネの人々はミラング城と言っていたりもする。

 このような城の建設のために、多くの人々が動員されたし、アルデルダ領の者達が酷使されたのも言うまでもない。

 そのような人々の犠牲の上に成り立っているこの総統府という庁舎で、一人の人物が総統に会見するために待っていた。

 「ここがミラング共和国の新たな総統府、という建物か。城と一切、変わらないなぁ~。素晴らしい。我が国にもこのような建物を作らないとな。」

と、フィッガーバードは言う。

 フィッガーバードは、この総統府という城のような形をした庁舎が、どのようにして建設されたかという歴史に関して、案内をしていただいた職員から聞いている。

 それによれば、ミラング共和国の行政府は、穏健派の時代に建物の改修をしようと考えていたが、リース王国の国内における通過税と商品税(アルデルダ領におけるエルゲルダの政策)のせいで、リース王国の経済は悪化し、そのせいで、財政悪化も同時に発生してしまい、改修計画はお流れになってしまったが、ファブラを支配することに成功して、その資金を手に入れたのだった。

 そして、穏健派が元々考えていた改修というのは、穏健派と同じ意見になってしまうので、それよりも上の案だと対外強硬派が認識したのが、新たな建物を庁舎として作ることであった。

 その時、穏健派の改修費用よりも多額にして、豪華絢爛にすることによって、穏健派の時代よりも自分達対外強硬派の時代の方が一番栄えていることを誰もが理解できるようにしたのだ。

 そのせいで、さっきも述べたが、旧ファブラにおける人々が納めるべき税金が増税したのは当然のことであった。それが原因で、旧ファブラでも我慢できなくなったものが、少数ではあるが反乱を起こしたが、失敗し、より酷い結果となってしまったのだ。

 反乱を起こした者たちは、市中晒しの上に処刑されてしまったという。

 文章にすると味気のないものとなってしまうが、それが残酷なものであったことは、もし、その現場を見たものであれば、思うことだろう。そして、旧ファブラの者は、ミラング共和国の狂気に恐れをなしたのである。

 世界は彼らによって残酷であり、報いのないものであることを示すかのように―…。

 そして、その暗い部分に関する説明を省かれたフィッガーバードは、ただ、今の建物を称賛するだけということになった。知らない情報も含めて、物事を述べろと言ったとしても述べることはできない。その情報について知らなければ、その情報における判断を下すことはできやしないのだから―…。

 だからこそ、本当に必要な情報を与えずに、自分達にとって都合の良い情報を与えて、同じような答えにすることを望むのだ。それが破滅の道であることを知らせずに―…。いや、彼ら自身もそのことを知らないのかもしれない。情報における視野狭窄に陥れることで―…。

 「ええ、そうですね。だけど、このような建物を作るとなると、かなりの費用がかかってしまいそうですね。」

と、フィッガーバードの腹心の一人は言う。

 今、総統府という建物の外および中にいるからこそ、目で見ているからこそ、この建物にどれだけの費用が必要かは予想できなくても、高いだろうなぁ~、かなりの費用がするんだろうなぁ~、という想像がつくのだ。

 ゆえに、このような建物を建てようとすれば、ラフェラル王国の主要勢力から賛成が得られるのかということに関して、不安になるのだった。

 こういう建物を実際に建築するとなると、増税をしないといけない場合があるのだから―…。

 この腹心の予想では、貴族らがこのような意見を受け入れるとは思えないし、住民に関しては、メリットがなければ、賛成してくれることはないだろう。住民も税金を増やされるのなら、簡単に反対に回るのは予想しやすい。

 そのことに気づかないのは、フィッガーバードであり、ヒールの教育が行き届いているという感じだ。ヒールは、王族である以上、誰もから称賛されないといけないし、王族のすることは称賛されることなのだから―…。人々は王や王族の徳に従う、というふうに教えられているのだから―…。

 だが、現実はそのようになるとは限らないし、力だけで屈服させることに成功したとしても、ずっとそのように屈服させ続けられるわけでもない。力だけでなくてもそうだ。常にそのようにし続けるように細心の注意を払って、選択および行動していかないといけないのだから―…。

 ヒールにもフィッガーバードにも、そのような持続的におこなうために必要な学びや、考えがあるわけではない。自分が言っていることイコール正しいものだと認識している以上、他者の良き意見をも排除してしまい、結局は、完璧な存在でないからこそ、陥る罠に見事に嵌って、抜け出すことができなくなるのは目に見えている。

 「そうか、大丈夫だ。私は次期ラフェラル王国の王となる人間だ。誰もがしっかりと言うことを聞いてくれるだろう。聞かない人物がいれば、この世からその貴族ごと葬り去ってしまえば良い。私にはそれだけのことをおこなったとしても、誰も反旗を翻されることもない実力がこれからつくのだからなぁ~。」

と、フィッガーバードは言う。

 彼の言葉には、狂気がきちんと孕まされていた。

 人格を歪められた影響が着実に現れており、自分が一番であるという気持ちが当たり前にあり、自分の言っている言葉は、すべての者が聞くのだと思えるぐらいに―…。ラフェラル王国では―…。

 そんな言葉に対して、フィッガーバードの腹心の一人は心の中で恐れるのだった。

 この人は危険であると―…。

 だけど、すでにその沼に片足を突っ込ませており、誰かの助けがなければ、脱出することなど不可能であるし、沼にはまっていることで得られる利益を捨てたいという気持ちにはなれなかった。その利益は、途轍もないお宝であることは十分に分かっているのだ。

 だからこそ、恐れながらも、得られる利益を得続けたいという気持ちで、離れることもできずにいる。

 (この方の思考は恐ろしい。だからこそ、王に相応しいのだろうか。)

と、無理矢理に心の中でフィッガーバードの腹心の一人は納得するのだった。

 その納得は、後に、危険なものであることを理解させられるのであるが―…。

 (さあ、会見はいつ頃かな。)

と、フィッガーバードは心の中で思っていると―…。

 「ラフェラル王国の第一王子のラフェ=フィッガーバード様。総統より会見の準備ができたとのことです。」

と、案内をしてくれた人物が、総統執務室から戻って言うのだった。

 このフィッガーバードがいる待機室にはドアはなく、防備の観点では疎かだと思うかもしれないが、ここにはシエルマスの人間が何人か常駐していて、隠れているので、いざという時にはすぐにでも対処ができるようになっている。フィッガーバードやその腹心の誰もがシエルマスの存在に気づくこともなく、こうやって、会話できている以上、シエルマスの実力がかなりのものであることに間違いはない。

 フィッガーバードは、

 「分かった。……では、参ろう。」

と、立ち上がって言うのだった。

 その後、腹心らを連れて、総統執務室ではなく、謁見室へと向かうのであった。

 案内した人物が再度案内しながら―…。


 それから少し前。

 総統執務室では―…。

 「ラフェラル王国からフィッガーバード第一王子が私に会見するために来たようだ。隠れているのだろ、ラウナン。」

と、シュバリテは言う。

 シュバリテは、あまりにもバレバレな感じで隠れているラウナンがいることを指摘するのだった。

 今、ここで用があるのは、シエルマスの統領であるラウナン=アルディエーレ以外にいるはずがない。

 ラフェラル王国では、クーデターを起こし、起こした側が勝利したとなると、ラウナンが考えている作戦に狂いが生じることは避けられない。

 そうなると、ラウナンはシュバリテに脅しという名の作戦計画の立案にやってくることは十分に考えられるというわけだ。

 シュバリテとしては、報告もなしに、勝手に進められるのは怒りの感情しか湧かないが、それでも、ラウナンはちゃんと計画の変更に関しての根回しはしっかりとおこなうし、シュバリテに伺いを一応は立てるのだ。

 そういう意味で、いやらしい人間であることを理解させられるが、同時に、シュバリテにもラウナンの作戦が把握した上で、行動ができるという利点には気づいている。

 だけど、今回は、わざと気づかれるようにしていたのが、シュバリテには引っかかるが―…。

 「お見事です。シュバリテ様、私もまだまだ、修行が足りないようです。」

と、ラウナンは白々しく言う。

 ラウナンとしては、シュバリテに気づけるようにわざと気配を分かりやすくした。今回は、シュバリテを始末することが目的というわけではなく、気づかせることで話す機会をわざと作り出すことだ。

 同時に、ラウナンにとっては、今の好機を逃す気はない。

 「そうか。その修行に良い機会じゃないか。ラフェラル王国のクーデターで政権を奪ったリーガライドをシエルマスの力を使って倒すことができれば、それだけで功績に加え、力をしっかりとつけることができるではないか。それに、お前も加わって進めている以上、どのようなことをフィッガーバード第一王子へと伝えれば良いのか。」

と、シュバリテは言う。

 シュバリテは、ラウナンが言う事に関して、ある程度、予測することができる。

 (ラウナンが考えていることは、フィッガーバード第一王子を使ってのラフェラル王国へのミラング共和国の介入だろう。フィッガーバード第一王子は必ずと言っていいほどに、ラフェラル王国への介入を要請してくるはずだ。あくまでも、ラフェラル王国でクーデターが発生していたかという情報を知っているかによるかだな。ラフェラルアートからラルネに向かうのには、最低でも一週間ぐらいはかかるだろう。そうなると、情報が伝わっていない可能性も存在するからな。それでも、結局は、フィッガーバードはラフェラル王国のクーデター政権を倒そうと、我が軍とシエルマスに援軍を要請するだろう。これからおこなわれる会見の場で―…。ということは、ラウナンは、フィッガーバードから援軍の要請をとってきてこい、と言ったところか。)

と、心の中で思うのだった。

 シュバリテの予想は、かなり状況を読んだものであり、優秀な人間であることに間違いはない。

 だからこそ、これから、フィッガーバードとの会見の場というのは、事実上、ラフェラル王国への宣戦布告になるというわけだ。

 シュバリテでは、シエルマスの動きを止められない以上、ラフェラル王国との戦争は避けられなくなるし、ミラング共和国軍も、天成獣の宿っている武器を扱う者が本当の意味で、実力を試すことができる場となる。それができるのだから、戦争したくてたまらない気持ちでいるだろう。

 シュバリテとしては、成すがままにしかならないということだ。

 ラウナンは、

 (分かっているくせに―…。言葉にして言わないといけませんか。)

と、心の中で思うと、決まりきった言葉を言う。

 「シュバリテ様。今回、ラフェラル王国への軍事的介入が可能になる条件が揃いました。なので、ラフェ=フィッガーバード第一王子に、援軍を送るようなことを言って、その後、ラフェ=フィッガーバード第一王子がミラング共和国に援軍を要請することの言質をとってください。そうしていただけると、私の部下の方で、何とかいたしましょう。この数年で、シエルマスは拡大し、力も増大いたしましたから―…。」

と、ラウナンは言う。

 ラウナンは、過信まではしていないが、シエルマスが強化されたことはこの五年と半年の期間で、実感することができる。

 それに、その強化されたシエルマスが、ラフェラル王国の件で一杯食わされたのだ。その仕返しをしっかりとしないといけない。

 シエルマスに危害を加える勢力や組織は、どういうことになるのかを教えてやらないと、シエルマスの沽券に係わってくる。

 ゆえに、ラウナンは、今回のラフェラル王国への征服に関しては、何が何でも成功させる気になっている。ここまで、ラフェラル王国への征服で苦戦させられることになったのだから―…。

 一方で、シュバリテが答えることができる言葉は決まっていた。

 「承認しよう。」

と、その言葉のみであった。

 このミラング共和国の実質のナンバーワンは、シエルマスの統領であるラウナン=アルディエーレなのだから―…。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(123)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(31)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の投稿日に関しては、2023年8月下旬頃を予定しています。

詳しい投稿日に関しては、活動報告で2023年8月中旬の頃に報告すると思います。

では―…。

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