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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
466/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(120)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(28)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ラフェラル王国を併合しようとするミラング共和国。ミラング共和国でラフェラル王国で活動している商人達は、ミラング共和国からラフェラル王国に流れる商品の関税の撤廃を要求する。

ラフェラル王国の王族と貴族の多くは、その関税の撤廃に賛成するが、王族の一人であるリーガライドは反対する。そのせいで、冷や飯を食わされるのであった。リーガライドは―…。

リーガライドはそんななか、妹であるフィルスーナとともに傭兵隊「緑色の槍」のトップのアルスラードに会う。かつて、リーガライドは傭兵隊「緑色の槍」に所属したこともある。

その中で、三者の話し合いとなり、フィルスーナによって、クーデターを起こすことが決定されるのだった。計画へと移行する。

そのようなことを起こすことが都合が良いと思っているのは、ミラング共和国と繋がっている貴族達や第一王妃の勢力であった。そんななかで、シエルマスも活動をおこなっており、「緑色の槍」に派遣しているシエルマスのスパイから情報を得るのだったが、フィルスーナやアルスラードに気づかれており、スパイらは粛清されていくのだった。

その後、そのスパイが関係していたラフェラルアート(ラフェラル王国の首都)のスラム街にあるアマティック教の教会で、教会の主要な信者とシエルマスのスパイをすべてフィルスーナとラフェラル王国の裏の者達によって始末されるのだった。そのことにより、情報が遮断されることになる。

ラフェラル王国から情報が届かなくなったことに対して、シエルマスの西方担当首席がラウナンに報告し意見をもらおうとするが、その頃、ラフェラル王国ではリーガライドらのクーデターは成功するのだった。

それはどのような過程であったのだろうか?


ラフェラル王国におけるクーデター発生後、まず、宰相を中心とする貴族政力がフィルスーナとラフェラル王国の裏の者により、気絶された後、拘束される。さらに、ファングラーデはリーガライドによって捕まることになった。

第一王妃であるヒールの方は―…、クーデターを把握し、誰が起こしているのかを妄想という感じで突き止める。失敗した人間を処分しようとするが、その時、フィルスーナが現れ、ヒールが個人で雇っている裏の者で始末しようとするが失敗し、裏の者を失うという結果となった。その時のヒールの悲鳴によって、衛兵が駆けつけて、逃げたフィルスーナが狂気をはらんだ人間であることを言うのであった。

その後、ヒールは自らの執事長を軍部の拠点へと向かわせる。自らの指示をファングラーデ王の指示としてクーデター側を鎮圧するように、という命令を―…。だけど、軍事貴族もすでにクーデター側に捕らわれており、軍部もたたき上げが指揮するような状態となっており、ヒールの執事長は捕まるのであった。

フィルスーナは、再度、ヒールのもとへと向かい、少しの会話の後、ヒールを殺し、ラフェラル王国のクーデターは、リーガライド側が勝利することになるのだった。

その後、リーガライドは、ラフェラル王国の支配をフィルスーナとともにしていくことを宣言するのだった。フィルスーナにとっては、迷惑なことでしかないが―…。

一方、フィッガーバードの方は、ミラング共和国の首都ラルネへはあともう少しの距離まで近づくのであった。

そんななか、シエルマスの本部では、東西南北と国内担当の首席、報告官、統領による会議がおこなわれる。


前回までのあらすじが長くなっているような―…。

 「…………………。」

 意見は出ない。

 意見が出るはずもないだろ。

 というか、この場で、ラウナンに逆らうようなことは言えない。

 言ってしまえば、ラウナンによって粛清される可能性も十分にあるのだから―…。

 実力があるがゆえに、何でもかんでも自分の言うことが優先されてしまったせいで、周囲からの貴重な意見を手に入れるという機会を喪失してしまったのだ。

 そのことにラウナンは気づかないだろうし、気づくこともしない。

 なぜなら、他者は、ラウナンの掌の上で踊っていることが理想なのだから―…。

 「ふむ、意見はないようだな。まあ、今回は困ったことにラフェラル王国は許されざることをした。ラフェラル王国のクーデターに成功し、現体制を崩壊させたリーガライドは厄介な敵だ。彼を倒すことができれば、始末することに成功すれば、我々、ミラング共和国の勝利は確定したものだ。そのためには、リーガライドをどうやって始末するかが重要になる。」

と、ラウナンは言いながらも考える。

 リーガライドがどういう立場の人間であるかを理解している。

 ラフェラル王国の王族の中で、力自体はそこまでないが、聡明であるということを―…。

 そして、リーガライドの妹であるフィルスーナの情報に関しては、女性だからという理由で、何も探ってはいない。彼女の功績も大いにあるのに―…。

 そういう意味では、ミラング共和国の典型的な人間の性格をもった一人であろう。ラウナンは―…。

 見逃してはいけない要素というものに気づかないのだから―…。

 まあ、人という生き物がすべてのことを把握し、理解することなどできない以上、見落としてしまう領域というものは発生する。それを知らないことによって、最悪の結果となるか、それとも、結果に影響しないのか。それは未来のある地点において、過去になっていることの今の状況を見なければ分からないことであるが―…。

 一連の流れは川のごとくであり、元に戻ることができない以上、過去をどうすることもできない。

 だからこそ、最悪の結果にならないように、後悔しないようにしないといけない。

 まあ、それは無理としか言いようがないが―…。

 そんななかで、ラウナンは自らの考えというか方針というものをここで示す。

 「リーガライドって―…。ラフェラル王国でクーデターに成功した王子で、ラフェラル王国の裏の者を取りまとめているトップとか―…。だけど、裏の者だけでは、このような政権転覆は不可能だろ。そのようなことができるのは、ラウナンさん率いるシエルマスにしかできないでしょ。そうなると別の勢力とリーガライドは手を結んでいるんじゃないの。「緑色の槍」以外にも―…。」

と、北方担当の首席であるキールバは言う。

 キールバとしては、ここでラウナンの言っていることを否定するわけにはいかない。

 ラウナンという人間が、自ら以外の存在を自分の掌の上で踊ることが絶対だと信じすぎているところがあるので、絶対に掌の上で踊っている者が否定するような言葉を言ってはいけない。言えば、粛清されることだって十分にあり得る。

 だからこそ、シエルマスとラウナンは他とは違うということを付け加えるように言うのだった。

 ラウナンに悪い印象を与えないようにするために―…。

 キールバは、すぐにリーガライドが率いる裏の者や、昔所属していた「緑色の槍」という傭兵組織以外にも手を結んでいる勢力がいるのではないか。リーガライドと―…。

 その勢力が実際は、今回のラフェラル王国におけるクーデターによる成功に大変な役割を果たしているのかもしれない。そう睨んでしまう。

 (さらに、口では言えないけど、リーガライドの妹も怪しいんだけど―…。一番は彼女の功績かもしれない。ラウナンの言うリーガライドが厄介なのではなくて、リーガライドの妹であるフィルスーナが一番の危険かもしれない。)

と、心の中で思う。

 キールバは、ミラング共和国の考えに染まっていない以上、このようにフィルスーナのことをシエルマスにとって最も危険の可能性がある存在ないではないかということに辿り着くことができる。

 それでも、どれだけの脅威かという面までには至っていない。

 情報が少なすぎる以上、簡単に決めつけるような判断をするのは、かなり危険だ。

 情報量がどれだけ必要かと見極めることはできないが、今は、情報が足りず、集めないといけないことだけは十分に理解できる。

 勘を無視することなく、尊重しながら―…。

 キールバは、自分がラフェラル王国侵略に関わることになるのであれば、いの一番に現地に飛んで、情報を収集しようと考える。まだ、そのような決定がラウナンから下されていないので、行動することができないと思っていた。

 ラウナンに意見するのは、かなり危険であることも分かっているから―…。

 「………「緑色の槍」以外の勢力か―…。」

と、ラウナンは呟く。

 (……ラフェラル王国の裏の者と「緑色の槍」以外の勢力となると―…。このようなクーデターを成功させるためには、軍部の力が必要になるが、軍事貴族らのほとんどはシエルマス側になるように買収したはずだ。それに、アマティック教の狂信的に信仰させるように洗脳した第一王妃(ババア)が一番の実質的な力を持っているから、そいつ経由でも服従させていたはず。軍部の中から裏切り者が出たとか―…。いや、クーデターを利用して、軍事貴族に対する反抗で、軍事貴族が軍人を味方にすることができなかったとか―…。それなら、十分にあり得るが、軍事貴族(あいつら)は部下ども報告によると―…。)

と、ラウナンは心の中で思いながら思い出すのだ。

 フィックバーンの報告を―…。


 ―ラフェラル王国の軍事貴族によりますと、軍部貴族に従う兵士しかおらず、反乱の見込みはないと―


 その言葉を思い出し、ラウナンは完全にこう思ってしまっていたのだ。

 軍事貴族が完全にラフェラル王国の軍部を掌握している、と―…。

 だからこそ、リーガライドらがクーデターを起こしたとしても、すぐに、クーデターを鎮圧することができると判断して、リーガライドらが反乱を起こすように選択肢を狭めていったのだから―…。

 現実は、クーデターを鎮圧することができずに、クーデター側の勝利となってしまったのだから、予想外の展開ということである。

 つまり、フィックバーンの報告には誤りがあるということになる。

 (フィックバーンの報告に謝りがあるのか。いや、フィックバーンが自ら嘘を吐こうとしたわけではなく、これを話した軍事貴族が嘘を吐いたことになるのか。偽情報を掴ませやがって―…。)

と、ラウナンは一瞬、嘘の情報を掴まされたことを悔しがるのだった。

 そんななかで、一瞬、ラウナンはフィックバーンへと厳しい視線を向けるのだった。

 フィックバーンは申し訳なさそうにする。

 フィックバーンの心の中では、

 (消息を絶った奴らがこんな情報を私に堂々と報告するとは―…。お前らのせいで、私の株が下がってしまったではないか。)

と、もうこの世にいない者たちに怒りの感情をぶつけるのだった。

 心の中で―…。

 フィックバーンも結局は、犠牲者でしかなかった。

 さて、軍事貴族がラフェラル王国の軍部をすべて掌握していることに対しての報告は間違いないことであるが、同時に、彼らは一般兵士の不満というものを見ようとしなかったせいで、一般の兵士の感情、叩き上げの思いというものを把握していれば、別の結論を導きだすことができたであろう。

 まあ、過去に戻ることができないからこそ、後悔というものは後という未来においてするのだろう。

 そして、ラフェラル王国はミラング共和国のように一般のたたき上げが出世するのがなかなかに難しい軍部構造となっており、軍事貴族の方が周辺諸国では有名になっているので、その情報に惑わされてしまったのだろう。

 ということで、シエルマスには、かなりのミスがあるということになる。

 「そうなってくると、仮に第三の勢力を想定しておくべきであろうな。だが―…、我々としては、シエルマスがやられたという理由だけでは、ミラング共和国軍を動かすことはできない。大義がないからな。大義はアマティック教の信仰者が異端者によって殺されたという理由だけか―…。これだと理由としては弱いし、第三の勢力が何であるかはっきりさせないといけなくなる。最も良い大義は、クーデターの勢力から逃れてきた王族がいれば、こっちとしても、大きな大義にすることができ、ミラング共和国軍を動かすことは簡単になる。」

と、ラウナンは言う。

 いくらラウナンでも大義がなく、侵略をしてしまえば、ミラング共和国が悪人になることは避けられないことであろうし、周辺諸国を一遍に相手にできるとは思ってもいない。

 さらに、付け加えるのなら、大義というものをいくらでもでっち上げることも可能であるが、やりすぎると効果がなくなってくるのも分かる。自分達のしたことのすべてを完全に隠し続けるということはできないのだから―…。

 そして、同時に、敵を作ること自体に抵抗はないが、多すぎるのは良くないということは分かっている。

 さて、でっち上げるという言葉をさっき使ったのであるが、でっち上げるにも実際に、現実に起こった事件でないといけない。その中に嘘を大小織り交ぜることによって、既成事実のように見せるのだ。そこには、矛盾が生じる可能性があるし、偽装している過程というものが誰かによって漏れる可能性もある。ゆえに、でっち上げばかりしていると、返って、でっち上げたことが周辺諸国にバレる可能性を上げてしまうのだ。

 人が完全に情報を秘密することができない以上、情報が漏れることは避けられない。

 バレてしまえば、周辺諸国から批判に晒されるのは当然の成り行きとなってしまう。

 だからこそ、でっち上げは少ない方が良い。

 だけど、そうでもしないとラフェラル王国に介入できないのであれば、仕方ないという気持ちと、自分の欲望という二つの感情が同時に同じ方向に向き、でっち上げを使ったとしても介入する事実を作ろうとする。

 ミラング共和国は、ラフェラル王国を征服しようとしているのだから、そのようなチャンスを逃す気はない。

 さて、でっち上げ以外のことについて考えると、大義となりうるのは、今回のクーデターから逃れたラフェラル王国の王族や貴族の誰か一人がミラング共和国にやってくることである。

 そうであれば、彼らを利用して、ラフェラル王国に介入することができる。ミラング共和国軍を十分に活用して―…。

 でっち上げであったとしても、ミラング共和国軍は積極的に協力するであろうし、ラフェラル王国を征服しながら、その土地で略奪などを働いて、自らの益を手に入れようとするだろう。

 「その大義が現れるかは、いつになるかも分からない以上、でっち上げも考えないといけないだろうなぁ~。ラウナン様よぉ~。」

と、南方担当首席であるディキッドは言う。

 でっち上げが時に必要なのはわかっている。

 南方の裏の世界では、言いがかりをつけてくる奴らは当たり前のようにいるし、ディキッド自身も時々使ったりしている。自分にとって気に食わない勢力があると、特に―…。

 そういう言いがかりとともに、自らの実力というものを示すことによって、言いがかりをも事実としようとしているのだ。

 そして、今回のラフェラル王国の侵略がミラング共和国にとって上手くいく可能性は低いだろうと、ディキッドは考えているが、ラウナンよりも実力がないということがわかっているので、反抗することはしないし、少しでもラウナンの作戦の成功確率を上げる方法を言う。

 無理矢理に理由をこじつけるということを―…。

 そんななか―…。

 トントントン。

 「何だ!!!」

と、言うディルマーゼ報告官がドアの外に向かって言う。

 「ラウナン様、およびディルマーゼ報告官。私は報告官の見習いです。緊急に耳に入れて欲しい情報があります。」

と、報告官見習いと思われる人物が言う。

 その言葉は、走ってきたのか、ぜぇ~、ぜぇ~、という息を切らすような感じがあり、詰まり詰まりという感じになっているのだが、何とか、それを抑えながら言うことができたという感じだ。

 そして―…。

 「中へ入って報告せよ!!!」

と、言われると、報告官見習いは会議室の中に入る。

 そして、シエルマスの錚々たるメンバーを見て、緊張してしまうが、それでも、自分が言うべきこと、報告すべきを言わないといけないという使命感を持っていたので、何とか、この緊張に耐えることができた。

 「ラフェラル王国のフィッガーバード王子一行が我が国の首都ラルネに到着いたしました。」

と、大きな声で、誰でも聞こえるように言う。

 その言葉を聞いたラウナンは、不敵の笑みを浮かべる。

 自分の勝利を確信したかのように―…。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(121)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(29)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


『水晶』の番外編がなかなか終わることがなく、いつになったら番外編の第三章が終わるのか、と思っていたりします。

第三章が2023年9月辺りまでで仕上がればと思っていたりもします。第四章はかなり短くなると思います。で…、その後の最終章がまた、かなり長くなりそうな感じです。過去にランシュの視点で書いたところと、他の部分を第三者視点で書くので―…。

後、明日は、『この異世界に救済を』の投稿日となっています。文章量から言うと、かなり短めになってしまいました。すいません。

なかなか、進めるのが難しいのかなと思っています。


さて、2023年8月6日の『水晶』の投稿以後は、2023年8月下旬まで『水晶』の投稿はお休みします。『この異世界に救済を』に関しては、いつも通りという感じです。

こんな感じです。


読んでくださっている方々には感謝しかありません。ありがとうございます。

では―…。

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