番外編 ミラング共和国滅亡物語(119)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(27)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ラフェラル王国を併合しようとするミラング共和国。ミラング共和国でラフェラル王国で活動している商人達は、ミラング共和国からラフェラル王国に流れる商品の関税の撤廃を要求する。
ラフェラル王国の王族と貴族の多くは、その関税の撤廃に賛成するが、王族の一人であるリーガライドは反対する。そのせいで、冷や飯を食わされるのであった。リーガライドは―…。
リーガライドはそんななか、妹であるフィルスーナとともに傭兵隊「緑色の槍」のトップのアルスラードに会う。かつて、リーガライドは傭兵隊「緑色の槍」に所属したこともある。
その中で、三者の話し合いとなり、フィルスーナによって、クーデターを起こすことが決定されるのだった。計画へと移行する。
そのようなことを起こすことが都合が良いと思っているのは、ミラング共和国と繋がっている貴族達や第一王妃の勢力であった。そんななかで、シエルマスも活動をおこなっており、「緑色の槍」に派遣しているシエルマスのスパイから情報を得るのだったが、フィルスーナやアルスラードに気づかれており、スパイらは粛清されていくのだった。
その後、そのスパイが関係していたラフェラルアート(ラフェラル王国の首都)のスラム街にあるアマティック教の教会で、教会の主要な信者とシエルマスのスパイをすべてフィルスーナとラフェラル王国の裏の者達によって始末されるのだった。そのことにより、情報が遮断されることになる。
ラフェラル王国から情報が届かなくなったことに対して、シエルマスの西方担当首席がラウナンに報告し意見をもらおうとするが、その頃、ラフェラル王国ではリーガライドらのクーデターは成功するのだった。
それはどのような過程であったのだろうか?
ラフェラル王国におけるクーデター発生後、まず、宰相を中心とする貴族政力がフィルスーナとラフェラル王国の裏の者により、気絶された後、拘束される。さらに、ファングラーデはリーガライドによって捕まることになった。
第一王妃であるヒールの方は―…、クーデターを把握し、誰が起こしているのかを妄想という感じで突き止める。失敗した人間を処分しようとするが、その時、フィルスーナが現れ、ヒールが個人で雇っている裏の者で始末しようとするが失敗し、裏の者を失うという結果となった。その時のヒールの悲鳴によって、衛兵が駆けつけて、逃げたフィルスーナが狂気をはらんだ人間であることを言うのであった。
その後、ヒールは自らの執事長を軍部の拠点へと向かわせる。自らの指示をファングラーデ王の指示としてクーデター側を鎮圧するように、という命令を―…。だけど、軍事貴族もすでにクーデター側に捕らわれており、軍部もたたき上げが指揮するような状態となっており、ヒールの執事長は捕まるのであった。
フィルスーナは、再度、ヒールのもとへと向かい、少しの会話の後、ヒールを殺し、ラフェラル王国のクーデターは、リーガライド側が勝利することになるのだった。
その後、リーガライドは、ラフェラル王国の支配をフィルスーナとともにしていくことを宣言するのだった。フィルスーナにとっては、迷惑なことでしかないが―…。
一方、フィッガーバードの方は、ミラング共和国の首都ラルネへはあともう少しの距離まで近づくのであった。
そんななか、シエルマスの本部では―…。
一日が経過する。
シエルマス本部。
そこの会議室では、今にも大きな会議が始まろうとしていた。
東西南北のそれぞれの担当のトップと国内担当のトップ、シエルマスの統領であるラウナンの五人が集まり、報告官であるディルマーゼが直立の状態で司会をするという感じである。
「では、全員がお揃いになりましたので、会議を始めさせていただきます。今回の議題は、ラフェラル王国におけるクーデター側の勝利と、我が組織および我が国がどのように動くべきかということになります。」
と、ディルマーゼは言う。
ディルマーゼの発言は、平穏な会議であれば、ここで最後の言葉を言ってお開きという感じになる。
だけど、そのようなことになる可能性はここではないだろう。
その予感をディルマーゼは抱くことができた。
ゆえに、緊張感を持っている。
重い空気の中、シエルマスの統領であるラウナン=アルディエーレが口を開く。
「今回の事態、我々の中、いや、我が組織の中でもかなり予想外の出来事があったせいで、前代未聞のことになっています。だけど、我々はシエルマスであり、シエルマスはこの地域における最強の諜報および謀略組織であり、このように出し抜かれることなど有り得るはずもなかった。だからこそ、今度は、そのように出し抜いた輩を我々の計画を邪魔したら、どうなるかをしっかりと教えないといけない。」
と、ラウナンは厳つい形相をする。
それは、すでに、恐怖としか表現のしようもないもので、この場にいる者たちに恐怖と怖れに感情の花を咲かせる。
ラウナンは、常に、シエルマスの統領として、訓練生の時代から実力の違いを植え付け、それを染み込ませていくことによって、ラウナンに逆らうことができないようにしていったのだから―…。
ラウナンという存在に逆らうことがどういうことを意味するのか、それを徹底的に教えて―…。
だからこそ、彼らはラウナンの今の感情をより強く理解させられるのだった。
(ラウナンの統領がここまで怒るとは―…。ラフェラル王国のクーデター側、リーガライド王子はどこまでのことをしたんだ。それに、今回はシエルマスの沽券にかかわることだ。今回のラフェラル王国の征服に関しては、総統であるシュバリテがあまり快く賛成しているわけじゃないからな。失敗すれば、シュバリテがどのような行動をとってくるのか分かったものではない。私は、国内での情報収集になるから、状況によっては確実に大変になるな。すでになっているか。)
と、国内担当の人物が言う。
この人物の名前は、フィード=アルクマールという。
スラム街の出身であり、シエルマスに訓練生として入り、成績はかなり優秀であり、国内担当のトップに就いている。
成果は、東西南北のそれぞれの担当よりも上であり、一年の間に、国内における対外強硬派に反対する者達の多くを影から潰してきた。
さらに、旧アルデルダ領での不穏な動きにも対処しており、アマティック教の信仰者達をも利用して、反抗する奴らは影から暗殺し、見せしめも平然とおこなっている。
それが、シエルマスという組織の強さを示すことになり、誰も逆らえる者はいないと思わせ、その領地の統治を楽にさせようとするのだ。シエルマスに逆らう者などこの世に存在してはならないのだ。
ラウナンという統領の元で裏から統治されることが素晴らしい未来を保障するのだと信じながら―…。
要は、アルクマールはラウナン信仰者というわけだ。
それは、ラウナンの強さに惚れているからだ。
そして、今回のラフェラル王国のクーデター側のクーデター成功によって、すでに、国内担当は情報収集で忙しくなっており、人手にも限界というものがある以上、ラフェラル王国のクーデター側の敗北を祈るのであった。
そうすれば、人員にも余剰ができ、国内における反乱分子の鎮圧および監視にも十分に割くことができる。
自分達は国内担当なのだから、他の仕事を押し付けないで欲しいと思っているのだ。
一方―…。
(東方担当はフィックバーンか。とんだミスをしやがって―…。ラフェラル王国の件が完了したのなら、さっさと処分して欲しいぐらいだ。一体、ラフェラル王国の件でここまで、シエルマスが重要事になってしまうとは―…。どうなっていやがる!!!)
と、イラつきの感情も抱いているのが西方担当のトップである。
西方担当首席のドグラード=ポッタラ。
彼は、感情的な一面を今は見せているが、仕事となると、かなり冷徹にこなしていることから、ラウナンからの信頼はかなり高い。
ラウナンのことは評価しているが、彼の抑圧的な行動には若干ではあるが不満を抱いている。
そして、東方担当首席であるダウラーリ=フィックバーンに対する怒りにも似た感情を抱いていた。
西方担当は、リース王国の諜報や謀略をも担当するので、かなり人数がいるが、それでも、リース王国の実力のせいか、ラーンドル一派の情報は大量に入ってくるが、リーンウルネに関する情報はほとんど入ってこないのだ。どうなっているのか、意味不明であるが、完全に情報が遮断されていないので、対処が難しい、動くにも動けないという感じになっている。
そういうことをリーンウルネが想定しているわけではないが、変に怪しまれないようにするための選択であるからこそなのだろう。全員を処分するのではなく、一部を倒し、必要な情報だけを抜かせないようにするようにして―…。
一方の、ラフェラル王国は、クーデターの情報をこれ以上、知らせないために、全員を始末する必要があったのだから―…。
状況によって、判断の答えが異なるのは致し方ないことだ。
そんななかで、西方担当首席のドグラードは、東方担当のフィックバーンの失態に恨みを抱きながらも、同時にさっさと終わらせて、リース王国の方へと再度攻めるべきではないかと思っていたりする。
理由は簡単なことであり、リーンウルネ側の動向は探れないが、リース王国の騎士団の団員数が回復してきており、これ以上、時間を長引かせてしまうと、軍事力でリース王国がミラング共和国よりも強くなることは避けられない。そう、思っているし、判断している。
実際は、ラーンドル一派の息のかかった者の戦力はダウンしているが、リーンウルネの息がかかっている者たちの勢力は、ラーンドル一派に気づかれないようにしながら、着実に実力を蓄えていた。決して、目立たないようにしながら―…。
リース王国の騎士団の方に関しても、ドグラードが集めている情報はほとんど正しく、この五年と半年の間で、何人か優秀な人物が出てくるようになってきた。空を飛ぶことができる天成獣の宿っている武器を扱う者がいるとか、いないとか―…。その程度までには、情報を収集することができていた。
シエルマスの情報収集能力の高さもあるが、同時に、リース王国の中でも一部はちゃんと情報を外に漏らさないようにしっかりと徹底していることが理解することができるだろう。
(北方の方は、平和だから、東方に協力することは吝かではないが―…。それにあっちは、山脈の向こう側のことだし―…。向こうは森ばっかりで、人が住んでいるのかさえ怪しんだが―…。これで、助ければ俺が東方担当首席の座も貰えるのか?)
と、北方担当首席キールバ=バットーンが心の中で思う。
この人物は、首席の中では、一番若く、まだシエルマスに入ってから、二年しか経っていない。それだけ、優秀であり、成績も良かったりする。
だけど、シエルマスの統領であるラウナン以外からの評価は芳しくない。
その理由は、任務でやり過ぎることが多く、余計に目立ってしまうという結果になり、シエルマスという組織を必要以上に目立たせてしまう結果となり、その服装が多くの者にバレてしまう可能性だってあるのだ。
そうなってしまうと、諜報活動の支障をきたしてしまうのだ。
ゆえに、あまり、諜報や工作の任務が少ない北方担当の首席としたのだ。
要は、左遷に近いことしているというわけだ。
ラウナンもキールバのやりすぎは問題視していたが、実力があることはしっかりと理解している。だからこそ、処分しないでいるのだ。実力がある者は使えるうちはなるべくしっかりと使おうと―…。
キールバは、今の東方担当のピンチをチャンスだと考えている。
キールバは自身がシエルマスの中で優秀であることを理解しているのは勿論、ラフェラル王国の問題の確信を予想することはできている。
そして、同時にあるものを感じて取っていた。
(……………さて、真面目に考えると、ラフェラル王国には俺と同じ裏の者がおり、一般のシエルマスの諜報員では歯が立たないどころか、居場所すら探られてしまうということだ。俺の出番があるか分からないけど、男尊女卑なんて古い考え方をしない方が良いな。俺の知っている情報だと、リーガライドの妹は変人だが、かなり優秀なのではないかと思われるものが含まれている。ラウナンさんもフィックバーン先輩もその情報を絶対に無視するだろうけど、俺はその情報を無視するべきではないのよねぇ~。彼女は、絶対に優秀というか、賢いと思うんだよぉ~。)
と。
さらに、キールバの情報を付け加えるとすれば、彼は元々スラム街の住民ではなく、幼い頃、遠く西方の彼方から移動してきたそうで、ミラング共和国の人々が抱くような男尊女卑の考えを抱くことはなかった。
その考えによって、より広い視野から考えること可能にしているという言い方は、語弊があるかもしれないが、多角的に物事を考える能力は十分にあるということだ。
だけど、同時に、出世欲も強いし、活躍したいという気持ちはかなり持っており、実力もあり、これが天職とさえ、キールバは思っているのだから―…。
男尊女卑の考えがなく、かつ、多角的に考えられるからこそ、ラフェラル王国で一番恐ろしい人物がフィルスーナであることに気づくのだった。リーガライドではなく―…。
ゆえに、キールバがラフェラル王国に関わることがあるのであれば、確実に、フィルスーナは苦戦を強いられることになるだろう。未来は分からないので、確定的に思うことは止めて欲しい。
(俺は、裏の組織の対処もしないといけないのに、ラフェラル王国で苦戦するなよ。フィックバーン。どうせ、後継者はまだ育ち切れていない。シエルマスの諜報員の数も増えて充実してきたが、最近の諜報力および工作能力の能力は、前より悪化している奴も多すぎる。まあ、ラウナンさんが一度決めたことを止めるという選択肢はないことだろうな。あ~、これはどうなることやら―…。)
と、心の中で思う人物がいる。
この人物は、南方担当首席ディキッド=デイマールドという。
見た目は、厳つい感じを見せるが、これは、南方の裏の世界を牛耳る者達が、やんちゃな奴らが多く、優しい顔だとすぐに馬鹿にしてくるのだ。そのために、厳つい表情をして、強い肉体に鍛えて改造して、見た目から逆らえないように思わせるようにしているのだ。これが裏の世界を牛耳る者たちに効果覿面なのだから―…。
人を見た目と、簡単な基準を一方的に適応して判断していることから、単純な人間であり、暴力的であることを象徴しているのだろうか。決めつけるのは良くないが―…。
実際、南の裏の世界を牛耳っているのは、力自慢の者が多く、その中で少しだけ頭が良い者たちが生き残って、上の座に就くが、それでも、物理的力が中心なので、すぐに衰えるとその世界のトップの存在は簡単に交代する。
だからこそ、ディキッドにとっては、誰を相手にすれば良いのか、困るのだ。まあ、シエルマスの後ろ盾を表立って裏の世界の今のボスに言わせれば良いのだろうが、そういうのは返って、情報が集まりにくいと判断し、自身も南の裏の世界の中で有力者である地位になり、裏の世界のトップにならないようにしているのだ。
そうすることで、裏の裏から南の裏の世界を上手く動かすことに成功しているのであるが―…。
ディキッドもラフェラル王国の問題に関しては、ミラング共和国の対外強硬派およびシエルマスの統領であるラウナンが退くという選択をすることはないだろうと思っていた。
理由は、ラウナンが自分は失敗しないという幻想に囚われていることが理解できてしまうからだ。
だけど、現実、退くことも大切なことであることをディキッドは理解している。
それを提言することも可能であるが、ディキッドはラウナンより実力で劣るので、何も意見を言うことができないでいる。
実力主義のシエルマスだからこそ、実力がある者の言っていることに従うことは当たり前だと、それが正義なんだと理解させられる。
ゆえに、弱い者がいくら正しいと主張しても、強い者の前ではそれは無意味な考えでしかないのだ。
そして、会議で言葉が取り交わされる。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(120)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(28)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
PV数がすごい勢いで増えていきました。ありがとうございます。
『水晶』に関しては、番外編がなかなかに終わりそうにありません。予想以上の文章量となってしまっています。どうしてだろうと思いますが、いろいろと詰め込み過ぎたことが原因だと思います。
自分が詰め込もうしたものを多く詰め込んでいくと思いますが、頑張って、番外編を仕上げていきたいと思います。
では―…。