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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
464/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(118)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(26)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ラフェラル王国を併合しようとするミラング共和国。ミラング共和国でラフェラル王国で活動している商人達は、ミラング共和国からラフェラル王国に流れる商品の関税の撤廃を要求する。

ラフェラル王国の王族と貴族の多くは、その関税の撤廃に賛成するが、王族の一人であるリーガライドは反対する。そのせいで、冷や飯を食わされるのであった。リーガライドは―…。

リーガライドはそんななか、妹であるフィルスーナとともに傭兵隊「緑色の槍」のトップのアルスラードに会う。かつて、リーガライドは傭兵隊「緑色の槍」に所属したこともある。

その中で、三者の話し合いとなり、フィルスーナによって、クーデターを起こすことが決定されるのだった。計画へと移行する。

そのようなことを起こすことが都合が良いと思っているのは、ミラング共和国と繋がっている貴族達や第一王妃の勢力であった。そんななかで、シエルマスも活動をおこなっており、「緑色の槍」に派遣しているシエルマスのスパイから情報を得るのだったが、フィルスーナやアルスラードに気づかれており、スパイらは粛清されていくのだった。

その後、そのスパイが関係していたラフェラルアート(ラフェラル王国の首都)のスラム街にあるアマティック教の教会で、教会の主要な信者とシエルマスのスパイをすべてフィルスーナとラフェラル王国の裏の者達によって始末されるのだった。そのことにより、情報が遮断されることになる。

ラフェラル王国から情報が届かなくなったことに対して、シエルマスの西方担当首席がラウナンに報告し意見をもらおうとするが、その頃、ラフェラル王国ではリーガライドらのクーデターは成功するのだった。

それはどのような過程であったのだろうか?


ラフェラル王国におけるクーデター発生後、まず、宰相を中心とする貴族政力がフィルスーナとラフェラル王国の裏の者により、気絶された後、拘束される。さらに、ファングラーデはリーガライドによって捕まることになった。

第一王妃であるヒールの方は―…、クーデターを把握し、誰が起こしているのかを妄想という感じで突き止める。失敗した人間を処分しようとするが、その時、フィルスーナが現れ、ヒールが個人で雇っている裏の者で始末しようとするが失敗し、裏の者を失うという結果となった。その時のヒールの悲鳴によって、衛兵が駆けつけて、逃げたフィルスーナが狂気をはらんだ人間であることを言うのであった。

その後、ヒールは自らの執事長を軍部の拠点へと向かわせる。自らの指示をファングラーデ王の指示としてクーデター側を鎮圧するように、という命令を―…。だけど、軍事貴族もすでにクーデター側に捕らわれており、軍部もたたき上げが指揮するような状態となっており、ヒールの執事長は捕まるのであった。

フィルスーナは、再度、ヒールのもとへと向かい、少しの会話の後、ヒールを殺し、ラフェラル王国のクーデターは、リーガライド側が勝利することになるのだった。

その後、リーガライドは、ラフェラル王国の支配をフィルスーナとともにしていくことを宣言するのだった。フィルスーナにとっては、迷惑なことでしかないが―…。

一方、フィッガーバードの方は―…。

 クーデター成功から二日後。

 場所は、ミラング共和国の領土内。

 そこでは、ある一行がミラング共和国の首都であるラルネに向かって移動していた。

 「フィッガーバード様、ここまでくれば、盗賊どもに襲われることはないでしょう。後、一日ほど進めば、首都ラルネに到着することができましょう。」

と、フィッガーバードに部下の一人は言う。

 この人物は、フィッガーバードの身の回りの世話をする腹心の一人であり、世話係の長と言った方がわかりやすいであろう。

 彼は、フィッガーバードに明日には、ミラング共和国の首都であるラルネに到着すると言い、もう野宿は最後になるということを言って、安心させようとしているのだ。

 フィッガーバードは、昔は優しい性格をしており、誰にも優しさを振りまいて、信頼を勝ち得ていたが、フィッガーバードの母親であるヒールによる帝王学の教育の中で、次第に人格が歪んでいき、我が儘な性格になってしまった。自分が一番で、何度も言う通りにできると思うようになっていき、部下にも口当たりが強くなっていた。

 それでも、この人物は、フィッガーバードの世話をして長いからこそ、いつかきっと、あの時の優しいフィッガーバードに戻ってくると信じているのである。歪んだ人格を元に戻すのは、かなり苦労することなのであるが―…。

 そんななかでも、ちゃんと優しくされた過去があるからこそ、ここまで信じてフィッガーバードについてきているのだ。

 「そうか、私がここまで多くの日数を野宿なる野蛮なことをさせられるなんて―…。まあ、それも明日には終わるはずさ。ミラング共和国のシュバリテ総統と会見することに成功すれば、誰もが私をラフェラル王国のトップとして認めることであろう。そうすれば、母上も喜ばれることであろうし、父上も私に王の位を譲ることであろう。王国は私のものだ。私によって、ちゃんと統治されることになるのだから―…。」

と、フィッガーバードは迷いもなく言う。

 フィッガーバードは自分がラフェラル王国のトップとなり、統治する未来になることが確実に訪れるものであることを信じているというよりか、妄想やらに近いレベルで思ってしまっている。現実と妄想の区別がつかないぐらいに―…。

 まあ、ラフェラル王国の中で、一番、次の王位に近い人物は誰かと言われれば、フィッガーバードであると答える者はラフェラル王国の中で返答する者は多いだろう。

 フィッガーバードの後ろ盾となっているのがヒールであり、フィッガーバードの実の母であり、ラフェラル王国の実権を握っている第一王妃なのだから、その権力というのは絶大である。誰も真っ向から逆らおうなんてしないし、ヒールの言っている後継者と繋がりをつくることで、恩恵が得られるのではないかと考えるのは必然であるし、近づくこともするであろう。利益に目ざとい者であれば―…。

 だからこそ、フィッガーバードが有力なのであり、ミラング共和国の総統シュバリテと会見をすることができれば、それを手土産にラフェラル王国の次期国王の地位は揺るぎないものになるのだ。

 だけど、数日前にそれが実現されていれば、そのような結果になったであろうが、フィッガーバード自身は知らない。

 すでに、自らの後ろ盾というものがなくなってしまったということを―…。

 それでも、その情報が知らされていない以上、悲観する妄想など抱く気配すらない。なぜなら、フィッガーバードはラフェラル王国でクーデターが発生したということも知らないし、そのような動きが徐々に進んでいったことも知らない。

 フィッガーバードの部下の中には、何かそのような変な動きがあるのではないかという考えを抱くことができる者はいた。だが、そういう人物は、そこまでフィッガーバードに信頼されていなかったりする。そういうことに気づける人物は、すぐに、フィッガーバードの歪んだ心に気づいてしまうのだから―…。

そして、フィッガーバードから離れていくか、フィッガーバードに恨まれて、失脚するかのどちらかなのだ。

 そして、フィッガーバードは、自分がラフェラル王国の支配者たりうる資格を持っていることを言葉にして強調する。

 その強調によって、自分はラフェラル王国を統治することができるのだと―…。

 だけど、そのような自信が意味のないものになるのか、どうかは未来のある地点において、はっきりとされることになるであろう。

 「そうですね。フィッガーバード様なら、ラフェラル王国になるのは確かですし、あなたはリース王国の王族の王女であらせられたヒール様のお子でもあります。だから、ラフェラル王国を上手く統治できるのは確定事項なのです。」

と、さっきフィッガーバードに話した者は言う。

 彼も、フィッガーバードがラフェラル王国を統治できるかどうかは分からないが、このようにフィッガーバードが統治できるということを言うことは、フィッガーバードからの印象を良くすることができるし、かつ、フィッガーバードの機嫌を良くすることができるのだ。

 この人物もまた、フィッガーバードという力の恩恵に与りたいのだ。

 益を得るということは大事だが、同時に、根本というものを見失ってはならない。それを見失えば、自らの破滅が最悪の場合、待ち受けているのだから―…。手ぐすねを引きながら―…。

 「そうか、そうか。相変わらずお前は良いことを言う。私が国王になったら、執事長にしてやろうではないか!!」

と、声を張り上げながら言う。

 フィッガーバードは、さっきの従者の言葉で気分が良くなっているのは確かであり、自分がラフェラル王国の統治者として相応しいことを確かめられたのだから―…。

 これの一体、どこにラフェラル王国の統治者として相応しいかどうかを、確かめられる要素があるのだろうか。そのような要素がないことは、第三者が冷静に見れば、そのように感じてしまうのは当然というか、少し疑えば気づく可能性の高いことである。

 統治をするということは、未来においてのことであり、未来が固定された一本道であることが条件であり、人に未来を完璧に見る能力があるという二つの前提条件がなければ、そもそもそのようなことを予言することは不可能であり、良き統治をする人だと判断することはできないはずだ。

 人は、時に、未来を確定的であり、運命であるかのように言うが、未来というものが完全に見えないということが成り立つ以上、確定させて語ることなどできやしない。そのことを含めた上で考えないといけないのに、それをフィッガーバードやその部下達にはできないようだ。

 そして、フィッガーバード一行は、翌日の予定が四日ほどずれ込んでしまうのであった。

 その原因は、盗賊が近くに発生したことになり、ミラング共和国軍によって退治されるのに三日ほど時間がかかったからだ。

 その時、フィッガーバードは不満を抱くが、ミラング共和国の総統であるシュバリテに会見することを思えば、少しだけ我慢することができた。


 一方、時を戻し、シエルマスの本部。

 すぐにラウナンは指令を出す。

 「商人どもからさっさと情報を集めろ!!!」

と。

 ラウナンにとっては、今、ラフェラル王国に派遣して、情報を仕入れるのはかなり危険だと判断した。

 ラフェラル王国に派遣されているシエルマスの者達からの連絡が完全に断たれてしまっている以上、ミイラ取りがミイラになってしまうという直感を抱き、ラフェラル王国に直接シエルマスの者を派遣するという選択肢を排除した。

 この選択は決して悪いものではない。

 すでに、数日の間に、ラフェラル王国の裏の者達は、ラフェラル王国とミラング共和国の国境に派遣されている。そのため、簡単に、ミラング共和国からラフェラル王国に裏の者が向かうのはかなり難しい。行けたとしても、フィルスーナ辺りが嗅ぎ付けそうなものなので、結局、ミラング共和国のシエルマスの本部にラフェラル王国の近況がもたらされることはない、という可能性が物凄く高いということになる。

 そういう意味で、ラウナンの判断は悪いものではなく、シエルマスの数を減らすことが少なかったという結果になったのだ。

 だけど、同時に、ラフェラル王国に派遣したシエルマスからの情報が途絶えるということは、商人から聞く情報ということになり、シエルマス自身から集められる情報ではなく、商人が好んで集めた情報であり、シエルマスが望んでいる情報と嚙み合わない可能性も出てくるというわけだ。

 ラウナンもそのことを想定しているが、背に腹は代えられない。

 要は、ラフェラル王国に行って帰ってきた商人から集めてきた情報を、自分達の中で取捨選択をするしかない状態に追い詰められているし、情報精度が劣ってしまうという認識に縛られていることを明確にするのだった。

 「はい!!!」

と、報告官見習いは言いながら、東方担当に伝えるために向かうのだった。

 国内担当の方にも応援要請をかけるのだった。

 ラウナンは、

 (…………………リーガライドにしてやられているのは確かだが…、希望はあるはずだ。このままだと、私の権威が落ちてしまう。そうなると、今まで、封じてきた輩が暴走しかねない。クソッ!!!)

と、苛立つを見せるのだった。


 ラルネの中にある総統執務室。

 そこにある人物が訪れる。

 その人物は、全身、黒づくめの装束を着ており、裏の者であることが分かる。

 いや、シエルマスの服だと、総統のシュバリテには理解できる。

 「シュバリテ総統。ラフェラル王国のクーデター、……クーデター側の勝利という結果になったそうです。数日前のことですが―…。シエルマス側は、確実にクーデター側に裏をかかれてしまった模様です。」

と、短く伝える。

 その報告してきた者の言葉を聞いたシュバリテは、表情を変えることなく、ただ、大人しく頭の中で考えるのだった。

 (ラフェラル王国への侵略は時期尚早であったか。ラウナンにしては、浅い決断だったな。ラフェラル王国は大国だし、そこにいるリーガライドは優秀だという情報はこちらにも入ってきていた。傭兵隊…、「緑色の槍」。彼らは傭兵の世界では、この地域でかなり有名であり、諜報すらおこなえるほどの組織だ。そこにスパイとして侵入しても、屈服させられるか、始末されるだけであろう。シエルマスが優秀ということには変わらないが、拡大しすぎて、育成を疎かにしてきたせいだ。数も大事だが、質を伴わなければ、意味がない。何事においてもな。まあ、暫くは、ラウナンのお手並みを拝見させていただこうか。場合によっては、切り捨てた方が良いな。)

と、シュバリテは心の中で思う。

 シュバリテとしては、ラウナンという存在が頼りにもなるが、同時に、ラウナンによって政治を牛耳られ、自分の自由にできないのは悔しいとしか言えない。

 それでも、ラウナンの活躍があるからこそ、ここまでの栄華を気づくことができたのも事実だ。

 だからこそ、切り捨てるのにはもったいないと思いながらも、今回のラフェラル王国への侵攻はあまりにも無謀としか思えないし、そこで成功するのであれば、ラウナンはかなりの人物であると判断することができるが、失敗すれば、責任を取らせないといけない。

 ラウナン自身は、その責任を取ることを嫌って、裏の部隊であるシエルマスのトップという地位に留まっているのであるが、それで責任が発生しないということはない。

 どんなに実力や強さがあったとしても、天成獣の宿っている武器で強化された者が増えれば、状況によっては、ラウナンへの恨みを持っている者にも天成獣の宿っている武器が行き渡っている可能性は十分にあると判断することもできる。

 だからこそ、今度こそ、ミラング共和国の総統として、ラウナンを切り捨てて、自分が本当の意味でミラング共和国の政治の実権と同時に、自由自在に行使しようと考えるのだった。

 失敗は、貶めたい者達にそれを実現できるチャンスを与える。

 そういうことだ。

 「そうか、シエルマスも大変だな。油断しないことだ。相手はラフェラル王国。大国だ。あの国には、優秀な人材もいると聞いた。クーデターに成功した以上、我が国の商人達の要望である我が国の商品がラフェラル王国へ流れる時に発生する関税が撤廃される可能性はかなり低くなるであろうし、逆に、我が国とラフェラル王国で揉める結果となり、最悪の場合は、戦争に発展するかもしれない。軍事力がいくら我が国にあると言っても、深手を負う可能性は十分にある。気を付けるように伝えてくれ。」

と、シュバリテは言う。

 シュバリテとしては、ラフェラル王国の征服が成功してくれるのは良いことであると認識できるが、それによって、深手を負ってしまっては、後の支配で苦労することになる。旧アルデルダ領や旧ファブラでは、あまりにも苛酷な支配のために、住民の不満が溜まっていたり、税の集まりが悪くなっているということだ。それは嘆かわしいことだが、世界を征服する野望をシュバリテが持っている以上、そこからの税の集まりが悪くなることは良いことではない。

 だからこそ、ラフェラル王国への侵略は、失敗するのであれば、深手を負う前に撤退して欲しいという意味を込めるのであった。

 深手を負えば、そこから回復するには、時間がかかるからだ。

 そのような時間は、ミラング共和国には、いや、総統シュバリテには存在しない。

 そして、報告者は総統執務室から出て行くのであった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(119)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(27)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


PV数が増えますように―…。

では―…。

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